刑法総論②(違法性阻却:正当防衛・緊急避難・正当行為) ── 問題
基礎
- 正当防衛の要件について、「不正の侵害」に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 「不正」とは犯罪が成立することを意味し、侵害者に責任能力と故意があることが必要であるため、幼児や心神喪失者の攻撃に対しては正当防衛ではなく緊急避難しかできない イ 「不正」とは有責な行為であることを意味し、動物の攻撃は飼い主の管理責任の問題として飼い主の不正な侵害と同視されるため、動物に対する反撃は常に正当防衛となる ウ 「不正」の侵害は他人の権利を侵害する行為に限られ、自己の権利に対する侵害については正当防衛ではなく自救行為の問題となる エ 「不正」とは違法であることを意味し、侵害者に責任能力や故意があることは必要でないため、幼児や心神喪失者の攻撃に対しても正当防衛ができる undefined 「不正」の侵害は故意による行為に限られ、過失によって生じた侵害に対しては正当防衛は成立せず、緊急避難の問題となる)
- 次の用語の説明として妥当なものはどれですか。「自救行為」 (ア 権利を侵害された者が法的手続によらずに自力で権利を回復する行為をいい、侵害された権利が財産権である限り、侵害からの時間の経過や回復の方法を問わず違法性が阻却されると判例は広く認めており、盗まれた物を後日取り返す行為は不可罰である イ 侵害が現に行われている最中にその侵害者に反撃して権利を守る行為をいい、急迫不正の侵害に対する反撃として 36 条により違法性が阻却される ウ 権利を侵害された者が法的手続によらずに自力で権利を回復する行為をいい、法治国家では権利の回復は裁判所の手続によるべきであるから、法的手続を待っては回復が不可能になる緊急の場合であっても一切許されず、いかなる場合も違法性は阻却されない エ 権利を侵害された者が法的手続によらずに自力で権利を回復する行為をいい、原則として許されないが、法的手続を待っては回復が不可能または著しく困難になる緊急の場合に限って例外的に違法性が阻却されると考えられている undefined 権利を侵害された者が裁判所の判決を得た後にその執行を自ら行う行為をいい、民事執行法上の手続として法令行為にあたる)
- 正当防衛と緊急避難に関する条文の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 正当防衛は「現在の危難」に対する行為、緊急避難は「急迫不正の侵害」を避けるための行為であり、いずれも程度を超えた場合は情状により刑を減軽または免除することができる イ 正当防衛は「急迫不正の侵害」に対する行為、緊急避難は「現在の危難」を避けるための行為であり、いずれも程度を超えた場合は刑が常に減軽される ウ 正当防衛は「急迫不正の侵害」に対する行為、緊急避難は「現在の危難」を避けるための行為であり、いずれも程度を超えた場合は情状により刑を減軽または免除することができる エ 正当防衛と緊急避難はいずれも「急迫不正の侵害」に対する行為であり、違いは守る法益が自己のものか他人のものかという点にある undefined 正当防衛は「急迫不正の侵害」に対する行為、緊急避難は「現在の危難」を避けるための行為であり、程度を超えた場合は正当防衛では刑が減免されるが緊急避難では減免されない)
- 誤想過剰防衛に関する最高裁の判例(最決昭和 62 年 3 月 26 日)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 女性が襲われていると誤信した空手有段者が男性に回し蹴りをして死亡させた事案で、他人の権利を守るための行為であり誤信に相当の理由があるとして正当防衛の成立を認めた イ 女性が襲われていると誤信した空手有段者が男性に回し蹴りをして死亡させた事案で、急迫不正の侵害を誤信した以上は反撃の程度を問わず事実の錯誤として故意が阻却され、過失致死罪が成立するにとどまるとした ウ 女性が襲われていると誤信した空手有段者が男性に回し蹴りをして死亡させた事案で、急迫不正の侵害が存在しない以上は過剰防衛の規定を適用する余地はないとして刑の減軽を認めなかった エ 女性が襲われていると誤信した空手有段者が男性に回し蹴りをして死亡させた事案で、誤信した侵害に対する反撃としても行きすぎているとして、36 条 2 項の適用または準用により刑を減軽できるとした undefined 女性が襲われていると誤信した空手有段者が男性に回し蹴りをして死亡させた事案で、誤信は違法性の錯誤にあたるとして 38 条 3 項ただし書により刑を減軽した)
- 緊急避難の法的性質に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 緊急避難の法的性質については争いがなく、条文が「罰しない」と定めていることから一致して責任阻却事由と解されている イ 通説は緊急避難を違法性阻却事由と解しており、この立場では緊急避難は適法な行為であるため、緊急避難に対して正当防衛をすることはできない ウ 判例は緊急避難を処罰阻却事由と解しており、この立場では緊急避難は違法かつ有責な行為であるが政策的に処罰されないにとどまる エ 通説は緊急避難を違法性阻却事由と解しており、この立場では緊急避難に対して正当防衛も緊急避難もすることができない undefined 通説は緊急避難を責任阻却事由と解しており、この立場では緊急避難は違法ではあるが非難できない行為であるため、緊急避難に対して正当防衛をすることができる)
- 「不正対正」「正対正」の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 「不正対正」とは違法な行為に対して違法な行為で対抗することを意味し、正当防衛は違法性が阻却されるのではなく責任が阻却されるにとどまる イ 正当防衛は危難と無関係な第三者に害を転嫁する「正対正」の関係にあり、緊急避難は不正な侵害者に反撃する「不正対正」の関係にあるため、正当防衛には補充性と法益の権衡という厳しい要件が課される ウ 正当防衛と緊急避難はいずれも「正対正」の関係にあり、両者の違いは危難の原因が人の行為か自然現象かという点だけである エ 正当防衛は不正な侵害者に反撃する「不正対正」の関係にあり、緊急避難は危難と無関係な第三者に害を転嫁する「正対正」の関係にあるため、緊急避難には補充性と法益の権衡という厳しい要件が課される undefined 正当防衛と緊急避難はいずれも「不正対正」の関係にあり、両者の違いは守ることができる法益の範囲と、業務上特別の義務がある者への適用の有無だけである)
標準
- 正当防衛と緊急避難の比較について、補充性の要否の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 正当防衛も緊急避難もいずれも「やむを得ずにした行為」を要件としているため他に方法がない場合に限って成立し、逃げることができた場合にはいずれも成立せず過剰防衛または過剰避難として刑が減免されるにとどまる イ 正当防衛は不正な侵害に対する反撃であるため他に逃げる方法があっても成立するが、緊急避難は正当な第三者に害を転嫁するためその行為が危難を避ける唯一の手段であることが必要である ウ 正当防衛は不正な侵害者であっても人の法益を侵害する以上は他に逃げる方法がない場合に限って成立するが、緊急避難は危難が現在する以上は他に避ける方法があっても成立し、唯一の手段であることは要求されない エ 正当防衛も緊急避難もいずれも他に方法があっても成立し、補充性はいずれの要件にもなっていないが、緊急避難では法益の権衡が要求される点で異なる undefined 補充性は正当防衛・緊急避難のいずれにも要求されないが、業務上特別の義務がある者については正当防衛・緊急避難ともに補充性が要求される)
- 正当行為・被害者の承諾について、身体に対する被害者の承諾に関する判例(最決昭和 55 年 11 月 13 日)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 保険金をだまし取る目的で被害者の承諾を得て自動車を衝突させ傷害を負わせた事案で、身体は本人が処分できる法益であり真意による承諾がある以上、違法性は阻却され傷害罪は成立しないとした イ 保険金をだまし取る目的で被害者の承諾を得て自動車を衝突させ傷害を負わせた事案で、傷害の程度が軽微であれば承諾により違法性が阻却されるが本件は重傷であったため阻却されないとした ウ 保険金をだまし取る目的で被害者の承諾を得て自動車を衝突させ傷害を負わせた事案で、承諾の動機・目的、手段、傷害の部位・程度など諸般の事情を考慮し、違法性は阻却されないとした エ 保険金をだまし取る目的で被害者の承諾を得て自動車を衝突させ傷害を負わせた事案で、承諾は傷害罪の構成要件該当性を否定するため、詐欺罪だけが成立するとした undefined 保険金をだまし取る目的で被害者の承諾を得て自動車を衝突させ傷害を負わせた事案で、承諾があっても傷害の結果が生じている以上は承諾の動機や目的を問わず違法性は阻却されないとした)
- 緊急避難の要件に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 「現在の危難」は人の違法な行為によるものに限られ、自然災害や動物の攻撃から逃れるために他人の法益を侵害した場合は緊急避難ではなく正当防衛の問題となり、補充性は要求されない イ 避難行為は危難を避けるために有効な手段であれば足り、他により穏当な手段があったとしても緊急避難の成立は妨げられない ウ 「現在の危難」は自然災害によるものに限られ、人の行為によって生じた危難については正当防衛だけが問題となる エ 「現在の危難」は人の違法な行為によるものに限られず、自然災害や動物の攻撃によるものでもよく、避難行為はその危難を避けるための唯一の手段でなければならない undefined 緊急避難によって守ることができる法益は生命と身体に限られ、財産に対する危難を避けるために他人の法益を侵害することは許されない)
- 侵害の予期と急迫性に関する最高裁の判例(最決平成 29 年 4 月 26 日)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 侵害を予期していた場合に急迫性が認められるかは、もっぱら行為者が侵害の機会を利用して積極的に加害する意思をもっていたかどうかという主観的な事情だけで判断し、客観的な状況は考慮しない イ 侵害を予期していた場合には、予期した以上は警察に通報するなどして侵害を避けることができたはずであるから、予期の内容や程度、凶器の準備の有無を問わず急迫性は認められない ウ 侵害を予期していた場合に急迫性が認められるかは、予期の内容や程度、侵害を避けることの容易さ、凶器の準備の有無、侵害に臨んだ状況などの行為全般の状況に照らして判断する エ 侵害を予期していた場合には急迫性は常に認められるが、防衛の意思が否定されることによって正当防衛が成立しないことがある undefined 侵害を予期していた場合であっても、行為者が凶器を準備していなかった限り、他の事情を考慮することなく急迫性が認められる)
- 自招侵害に関する最高裁の判例(最決平成 20 年 5 月 20 日)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 被告人が相手を殴って立ち去った後に追いかけてきた相手から殴られ反撃した事案で、被告人は自ら侵害を招いたが相手の攻撃は新たな急迫不正の侵害にあたるとして正当防衛の成立を認めた イ 被告人が相手を殴って立ち去った後に追いかけてきた相手から殴られ反撃した事案で、被告人の反撃は防衛の意思を欠き専ら攻撃の意思によるものであるとして正当防衛を否定した ウ 被告人が相手を殴って立ち去った後に追いかけてきた相手から殴られ反撃した事案で、被告人は相手が追いかけてくることを予期し、その機会を利用して積極的に加害する意思をもって侵害に臨んだものであるとして、昭和 52 年決定の枠組みにより急迫性の要件を欠くとして正当防衛を否定した エ 被告人が相手を殴って立ち去った後に追いかけてきた相手から殴られ反撃した事案で、相手の攻撃は被告人の先行する暴行に対する正当防衛であって適法であり「不正の侵害」にあたらないとして、被告人の反撃について正当防衛を否定し緊急避難の成否を検討した undefined 被告人が相手を殴って立ち去った後に追いかけてきた相手から殴られ反撃した事案で、被告人は自ら侵害を招いたものであり、相手の攻撃が先行する暴行の程度を大きく超えない以上、反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないとして正当防衛を否定した)
- 被害者の承諾に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 放火罪や偽証罪のような社会的・国家的法益に対する罪についても、関係する個人の承諾があれば違法性が阻却される イ 承諾が有効であるためには、被害者に承諾する能力があり、真意によるもので、行為の時に存在していることが必要であり、だまして得た承諾は無効である ウ 住居侵入罪や窃盗罪については、承諾があっても構成要件該当性は否定されず、違法性阻却の問題として諸般の事情を考慮して判断される エ 承諾は被害者の内心に存在していれば足り、行為者が承諾の存在を認識していなかった場合でも違法性は阻却される undefined 承諾は被害者の真意によるものであれば足り、行為の後に事後的に与えられた承諾であっても行為の時にさかのぼって違法性を阻却するため、事後に示談が成立すれば傷害罪は成立しない)
- 刑法 37 条 2 項の「業務上特別の義務がある者」に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 消防士が火災現場から逃れるために他人を突き飛ばして負傷させた場合、業務上特別の義務がある者であっても自己の生命に対する現在の危難がある以上は 37 条 2 項の適用はなく、通常どおり緊急避難の規定が適用される イ 業務上特別の義務がある者には緊急避難の規定は適用されないが、これは避難の意思が認められないためであり、避難の意思が認められれば緊急避難が成立する ウ 消防士が火災現場から逃れるために他人を突き飛ばして負傷させた場合、業務上特別の義務がある者として緊急避難の規定は適用されないが、休日の私生活で生じた危難については通常どおり緊急避難が認められる エ 業務上特別の義務がある者は職務中であるかどうかを問わず緊急避難の規定の適用を受けず、休日の私生活においても他人に害を転嫁して危難を避けることは許されない undefined 消防士が火災現場から逃れるために他人を突き飛ばして負傷させた場合、業務上特別の義務がある者には緊急避難だけでなく正当防衛の規定も適用されない)
- 誤想防衛の法的な扱いに関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 急迫不正の侵害がないのにあると誤信して反撃した場合、通説・判例は行為者の認識を基準として正当防衛の成立を認め違法性が阻却されると考えるため、誤信に過失があっても過失犯は成立せず民事上の責任も負わない イ 急迫不正の侵害がないのにあると誤信して反撃した場合、通説・判例は違法性の錯誤(法律の錯誤)として故意は阻却されないと考え、38 条 3 項ただし書により刑を減軽できるにとどまる ウ 急迫不正の侵害がないのにあると誤信して反撃した場合、通説・判例は責任能力の問題として 39 条により刑を減軽すると考える エ 急迫不正の侵害がないのにあると誤信して反撃した場合、通説・判例は誤信の理由の有無を問わず通常の故意犯が成立すると考え、36 条 2 項の準用により刑を減軽できるにとどまる undefined 急迫不正の侵害がないのにあると誤信して反撃した場合、通説・判例は正当防衛にあたる事実を認識している以上は事実の錯誤として故意が阻却されると考え、誤信に過失があれば過失犯が成立しうる)
発展
- 次の事例について、判例の考え方に照らした結論として妥当なものはどれですか。A は B が投げた灰皿をよけて B の顔を殴り、B は倒れて動かなくなった(第 1 暴行)。A はさらに倒れている B の腹部を踏みつけた(第 2 暴行)。B は第 1 暴行によって生じた傷害により死亡した。A は第 2 暴行の時点で B の攻撃が終わっていることを認識していた。 (ア 第 1 暴行の時点で正当防衛が成立している以上、それに引き続く第 2 暴行も正当防衛の一部として違法性が阻却され、A は不可罰である イ 第 2 暴行の時点で侵害は終了していたが A は防衛の意思を失っていないため、第 2 暴行は量的過剰防衛として刑が減軽される ウ 第 2 暴行の時点で侵害は終了しており A もそれを認識していたため、第 1 暴行は正当防衛、第 2 暴行は防衛の意思のない別個の暴行として分けて評価され、全体を過剰防衛とはしない エ 第 1 暴行と第 2 暴行は同じ場所で間をおかずに行われた一連の行為であり、A が侵害の終了を認識していたとしても分断せずに全体として 1 個の過剰防衛と評価され、傷害致死罪について刑の減軽・免除の余地がある undefined 第 2 暴行は侵害終了後の行為であり防衛の意思を欠くため、死因が第 1 暴行にあるとしても一連の行為全体が違法と評価され、第 1 暴行についても正当防衛は成立せず全体が傷害致死罪となる)
- 量的過剰防衛に関する最高裁の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 最決平成 21 年 2 月 24 日は、拘置所内で同室者から折り畳み机を押しつけられた被告人が机を押し返したうえ相手の顔を殴った事案で、机を押し返した時点で侵害は終了していたとして両行為を分けて評価し、殴った行為を防衛の意思のない通常の暴行罪とした イ 判例は、量的過剰防衛については一連の行為を常に全体として 1 個の行為と評価しており、侵害終了後の行為が防衛の意思を欠いていても全体が過剰防衛となるとしている ウ 最決平成 20 年 6 月 25 日は、相手が動かなくなった後の第 2 暴行の時点で侵害が終了し被告人もそれを認識していたことから、第 1 暴行と第 2 暴行を分けて評価し、第 2 暴行を防衛の意思のない別個の暴行として全体を過剰防衛とはしなかった エ 判例は、量的過剰防衛については侵害が終了した時点で正当防衛の成立する余地がなくなるため、侵害終了後の行為は常に通常の犯罪として処罰され、過剰防衛として刑を減免することはできないとしている undefined 最決平成 20 年 6 月 25 日は、第 1 暴行と第 2 暴行が同じ場所で間をおかずに行われ時間的・場所的に連続していることから、被告人が侵害の終了を認識していたとしても両者を一連の行為として全体を 1 個の過剰防衛と評価し、傷害致死罪について刑を減軽した)
- 正当防衛の要件に関する判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 最判昭和 44 年 12 月 4 日は、防衛手段として相当性を有する反撃であれば、その結果がたまたま侵害されようとした法益より大きくなったとしても正当防衛は成立するとした イ 最判平成元年 11 月 13 日は、素手で殴りかかられた被告人が菜切包丁を構えて脅した事案で、凶器を用いた以上は防衛手段として相当性を欠くとして過剰防衛とした ウ 最判昭和 46 年 11 月 16 日は、侵害を予期していた場合には、その予期の程度にかかわらず急迫性が失われるとした エ 最判昭和 44 年 12 月 4 日は、反撃によって生じた結果が侵害されようとした法益より大きくなった場合には、手段が相当であっても法益の権衡を欠くため過剰防衛になるとした undefined 最判昭和 50 年 11 月 28 日は、防衛の意思と攻撃の意思が併存している場合には攻撃の意思がある以上は防衛の意思を認めることができないとした)
- 報道機関の取材活動と正当業務行為に関する最高裁の判例(最決昭和 53 年 5 月 31 日)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 報道機関の取材活動は表現の自由の問題であって 35 条の正当業務行為にはあたらず、取材によって秘密を漏らさせた行為は取材の手段・方法を問わず違法である イ 報道機関の取材活動は正当業務行為として違法性を阻却しうるが、取材の手段・方法が贈賄・脅迫・強要など法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認できない態様である場合は正当な取材活動の範囲を逸脱し違法となる ウ 報道機関の取材活動が正当業務行為にあたるかは取材源の同意の有無だけで判断され、取材源が同意して秘密を提供した場合は取材の手段・方法を問わず違法性が阻却される エ 報道機関の取材活動は国民の知る権利に奉仕するものであるため、取材の手段・方法が贈賄・脅迫・強要にあたる場合であっても、真に報道の目的から出たものである限り正当業務行為として違法性が阻却され処罰されない undefined 報道機関の取材活動は正当業務行為として違法性を阻却しうるが、公務員に秘密を漏らすようそそのかす行為は取材の手段・方法を問わず常に違法となる)
刑法総論②(違法性阻却:正当防衛・緊急避難・正当行為) ── 解答
基礎
- エ 「不正」とは違法であることを意味し、侵害者に責任能力や故意があることは必要でないため、幼児や心神喪失者の攻撃に対しても正当防衛ができる 「不正」とは違法であることを意味し、侵害者に責任能力や故意があることは必要でないため、幼児や心神喪失者の攻撃に対しても正当防衛ができる。
- エ 権利を侵害された者が法的手続によらずに自力で権利を回復する行為をいい、原則として許されないが、法的手続を待っては回復が不可能または著しく困難になる緊急の場合に限って例外的に違法性が阻却されると考えられている 権利を侵害された者が法的手続によらずに自力で権利を回復する行為をいい、原則として許されないが、法的手続を待っては回復が不可能または著しく困難になる緊急の場合に限って例外的に違法性が阻却されると考えられている。
- ウ 正当防衛は「急迫不正の侵害」に対する行為、緊急避難は「現在の危難」を避けるための行為であり、いずれも程度を超えた場合は情状により刑を減軽または免除することができる 36 条は「急迫不正の侵害」、37 条は「現在の危難」。過剰防衛(36 条 2 項)・過剰避難(37 条 1 項ただし書)はいずれも任意的減免。
- エ 女性が襲われていると誤信した空手有段者が男性に回し蹴りをして死亡させた事案で、誤信した侵害に対する反撃としても行きすぎているとして、36 条 2 項の適用または準用により刑を減軽できるとした 勘違い騎士道事件。傷害致死罪の成立を認めたうえで、誤想過剰防衛として 36 条 2 項による刑の減軽を認めた。
- イ 通説は緊急避難を違法性阻却事由と解しており、この立場では緊急避難は適法な行為であるため、緊急避難に対して正当防衛をすることはできない 違法性阻却事由説(通説)・責任阻却事由説・二分説。違法性阻却と考えると避難行為は適法なので、これに対する正当防衛はできず、緊急避難で対抗することになる。
- エ 正当防衛は不正な侵害者に反撃する「不正対正」の関係にあり、緊急避難は危難と無関係な第三者に害を転嫁する「正対正」の関係にあるため、緊急避難には補充性と法益の権衡という厳しい要件が課される 緊急避難は正対正なので、要件が厳しい(補充性・法益の権衡・業務上特別義務者の除外)。
標準
- イ 正当防衛は不正な侵害に対する反撃であるため他に逃げる方法があっても成立するが、緊急避難は正当な第三者に害を転嫁するためその行為が危難を避ける唯一の手段であることが必要である 正当防衛は不正な侵害に対する反撃であるため他に逃げる方法があっても成立するが、緊急避難は正当な第三者に害を転嫁するためその行為が危難を避ける唯一の手段であることが必要である。
- ウ 保険金をだまし取る目的で被害者の承諾を得て自動車を衝突させ傷害を負わせた事案で、承諾の動機・目的、手段、傷害の部位・程度など諸般の事情を考慮し、違法性は阻却されないとした 保険金をだまし取る目的で被害者の承諾を得て自動車を衝突させ傷害を負わせた事案で、承諾の動機・目的、手段、傷害の部位・程度など諸般の事情を考慮し、違法性は阻却されないとした。
- エ 「現在の危難」は人の違法な行為によるものに限られず、自然災害や動物の攻撃によるものでもよく、避難行為はその危難を避けるための唯一の手段でなければならない 37 条 1 項。危難の原因は問わない(自然災害・動物も可)。補充性(唯一の手段)が必要。守れる法益は生命・身体・自由・財産(条文列挙)。
- ウ 侵害を予期していた場合に急迫性が認められるかは、予期の内容や程度、侵害を避けることの容易さ、凶器の準備の有無、侵害に臨んだ状況などの行為全般の状況に照らして判断する 最決平成 29 年 4 月 26 日。昭和 52 年決定の「積極的加害意思」の枠組みを、行為全般の状況による総合判断として整理した。
- undefined 被告人が相手を殴って立ち去った後に追いかけてきた相手から殴られ反撃した事案で、被告人は自ら侵害を招いたものであり、相手の攻撃が先行する暴行の程度を大きく超えない以上、反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえないとして正当防衛を否定した 最決平成 20 年 5 月 20 日。急迫性や防衛の意思という個別要件ではなく、「反撃行為に出ることが正当とされる状況における行為とはいえない」という判断枠組みを用いた。
- イ 承諾が有効であるためには、被害者に承諾する能力があり、真意によるもので、行為の時に存在していることが必要であり、だまして得た承諾は無効である 承諾の有効要件:承諾能力・真意・行為時の存在。住居侵入・窃盗など個人的法益で「意思に反すること」が構成要件になっている罪では、承諾により構成要件該当性が否定される。社会的・国家的法益は個人が処分できない。
- ウ 消防士が火災現場から逃れるために他人を突き飛ばして負傷させた場合、業務上特別の義務がある者として緊急避難の規定は適用されないが、休日の私生活で生じた危難については通常どおり緊急避難が認められる 37 条 2 項は緊急避難だけの制限。業務の性質上危険に立ち向かうべき者(警察官・消防士・自衛官など)に、その業務の場面で適用されない。
- undefined 急迫不正の侵害がないのにあると誤信して反撃した場合、通説・判例は正当防衛にあたる事実を認識している以上は事実の錯誤として故意が阻却されると考え、誤信に過失があれば過失犯が成立しうる 誤想防衛は違法性阻却事由にあたる事実の錯誤。故意を阻却し、過失犯の余地が残る(zc-03)。誤想過剰防衛は勘違い騎士道事件(36 条 2 項の準用)。
発展
- ウ 第 2 暴行の時点で侵害は終了しており A もそれを認識していたため、第 1 暴行は正当防衛、第 2 暴行は防衛の意思のない別個の暴行として分けて評価され、全体を過剰防衛とはしない 第 2 暴行の時点で侵害は終了しており A もそれを認識していたため、第 1 暴行は正当防衛、第 2 暴行は防衛の意思のない別個の暴行として分けて評価され、全体を過剰防衛とはしない。
- ウ 最決平成 20 年 6 月 25 日は、相手が動かなくなった後の第 2 暴行の時点で侵害が終了し被告人もそれを認識していたことから、第 1 暴行と第 2 暴行を分けて評価し、第 2 暴行を防衛の意思のない別個の暴行として全体を過剰防衛とはしなかった 平成 20 年決定は分断(第 1 暴行は正当防衛、第 2 暴行は別個の暴行)。平成 21 年決定は一連の行為として全体を 1 個の過剰防衛と評価。両者は侵害の継続性と防衛の意思の有無で分かれる。
- ア 最判昭和 44 年 12 月 4 日は、防衛手段として相当性を有する反撃であれば、その結果がたまたま侵害されようとした法益より大きくなったとしても正当防衛は成立するとした 昭和 44 年判決:結果の大小ではなく手段の相当性で判断。平成元年判決:包丁を構えただけなら相当性の範囲内。昭和 50 年判決:併存は可、専ら攻撃の意思は不可。昭和 46 年判決:予期だけでは急迫性は失われない。
- イ 報道機関の取材活動は正当業務行為として違法性を阻却しうるが、取材の手段・方法が贈賄・脅迫・強要など法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認できない態様である場合は正当な取材活動の範囲を逸脱し違法となる 外務省秘密漏洩事件(西山記者事件)。取材のためのそそのかしも正当業務行為になりうるが、手段・方法が社会観念上是認できない場合は違法。
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