行政法の基本原理と行政組織 ── 問題
基礎
- 行政法の基本原理のうち「法律の留保」の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 国民の権利義務に関するルールを定めることができるのは法律だけであるという原則 イ 行政活動は法律に違反してはならないという原則で、すべての行政活動に及ぶ ウ 行政の目的に対して手段が過剰であってはならないという原則で、警察行政から発展した エ 一定の行政活動を行うには法律の根拠が要るという原則で、その範囲について学説が分かれる undefined 行政の言動を信頼した国民の利益を裏切ってはならないという原則で、工場誘致の判例で認められた)
- 国の収入支出の決算を検査する会計検査院は、権限の内容に着目した行政機関の分類ではどれにあたりますか。 (ア 監査機関 イ 参与機関 ウ 執行機関 エ 諮問機関 undefined 補助機関)
- 行政主体・行政機関・行政庁の用語に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 行政庁とは、市役所や県庁のように行政事務を処理する建物や役所そのものをいう イ 行政機関はすべて行政庁であり、補助機関や諮問機関も外部に意思を表示する権限をもつ ウ 独立行政法人は国の一部であって、独立した行政主体ではない エ 行政庁とは、行政主体の意思を決定し外部に表示する権限をもつ行政機関をいい、市長や知事がこれにあたる undefined 行政主体とは、大臣や知事のように行政の権限を行使する自然人をいう)
- 地方公共団体に置かれる行政委員会・委員に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 監査委員は合議制の行政委員会であり、委員会として意思決定を行う イ 地方公共団体の行政委員会は、条例で自由に新設することができる ウ 教育委員会と選挙管理委員会は、都道府県と市町村の双方に置かれる合議制の執行機関である エ 行政委員会は長の補助機関であり、長の指揮監督を受けて事務を処理する undefined 公安委員会と農業委員会は、どちらも市町村に置かれる)
標準
- 法律の留保の範囲に関する学説のうち、重要事項留保説の内容として妥当なものはどれですか。 (ア 権力的な形式で行われる行政活動には、利益を与えるものでも法律の根拠が要るとする立場 イ 侵害行政に加えて、生存権の保障にかかわる給付行政にも法律の根拠が要るとする立場 ウ 国民にとって本質的・重要な事項は法律で定めなければならないとする立場で、ドイツの判例で形成された エ 行政活動のすべてに法律の根拠が要るとする立場で、民主的正統性を重視する undefined 国民の権利や自由を制限し義務を課す行政活動にだけ法律の根拠が要るとする立場で、通説・実務の立場とされる)
- 公物の時効取得(最判昭和 51 年)に関する最高裁判所の判断として妥当なものはどれですか。 (ア 開業を阻止する目的で急いで行った児童遊園の設置認可は行政権の著しい濫用であり、これを理由とする営業停止処分は違法である イ 租税法律関係にも信義則の適用はあり得るが、税務官庁が公的見解を表示したことなどの特別の事情がある場合に限られる ウ 長年公の目的に使われず黙示の公用廃止があったと認められる公共用財産は、取得時効の対象になる エ 施策を信頼して資金を投じた相手方に対し、代償措置なく信頼を裏切ることは、やむを得ない事情がない限り不法行為責任を生じさせる undefined 自ら違法な通達を作った側が消滅時効を主張することは、信義則に反して許されない)
- 国の行政組織に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 内閣府は国家行政組織法に基づいて置かれる省の 1 つで、その長は内閣官房長官である イ 国家行政組織法 8 条に基づく審議会は、処分などの対外的な権限をもつ行政庁である ウ 省・委員会・庁は国家行政組織法 8 条に基づいて置かれ、審議会は同法 3 条に基づいて置かれる エ 公正取引委員会と国家公安委員会は内閣府の外局として置かれる合議制の行政委員会である undefined 人事院は総務省の外局として置かれる庁であり、その長は総務大臣である)
- 諮問機関と参与機関に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 電波監理審議会は諮問機関、法制審議会は参与機関の例である イ 法律で諮問が義務づけられている場合に諮問を経ないで行った処分は、手続の瑕疵として違法となり得る ウ 諮問機関は法律の根拠がなければ設置できないが、参与機関は行政庁の判断で自由に設置できる エ 参与機関の議決は行政庁を拘束せず、行政庁は参考意見として扱えば足りる undefined 諮問機関の答申は行政庁を法的に拘束するので、答申と異なる処分は当然に無効になる)
- 上級行政機関の下級行政機関に対する指揮監督権に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 上級行政機関は、下級行政機関の違法または不当な行為を取り消し、または停止することができる イ 下級行政機関は、上級行政機関の訓令が不当だと考えるときは、これに従う義務を負わない ウ 上級行政機関の訓令は、下級行政機関を拘束するとともに、国民に対しても直接の法的拘束力をもつ エ 上級行政機関は、下級行政機関の事務を監視することはできるが、事前に許可・承認を求めさせることはできない undefined 上級行政機関は、法律に特別の定めがなくても、下級行政機関の権限を代わって行使することができる)
- 行政法の法源に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 行政法には統一的な法典がなく、憲法・法律・命令・条例などの成文法源のほか、慣習法・判例法などの不文法源がある イ 命令のうち政令は各省大臣が、省令は内閣が制定する ウ 地方公共団体の規則は議会が制定し、条例は長が制定する エ 条約は国家間の取決めであるから、公布されても国内の行政法の法源にはならない undefined 通達は上級機関が下級機関に対して発する命令であり、国民を拘束する法源である)
- 条例と法律による行政の原理に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 条例は長が制定する規則と同じ効力をもち、両者が矛盾したときは後に制定されたものが優先する イ 条例は法律ではないので、住民に義務を課し権利を制限する規定を条例で定めることはできない ウ 法律の留保の原則は国の行政にだけ及び、地方公共団体の行政には及ばない エ 条例には罰則を設けることができず、条例違反に対する制裁は行政指導によるほかない undefined 地方公共団体が住民に義務を課し権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除き、条例によらなければならない)
発展
- 行政庁の権限の行使の形態のうち、「代決」の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 決裁権者が不在のときに、他の者が一時的に代わって決裁し、外部には行政庁の名で表示する イ 権限そのものが他の機関に移るので法律の根拠が要り、受任機関が自己の名で権限を行う ウ 行政庁の意思で他の機関に代理権を与えるもので、権限は移らず、法律の根拠は不要と解されている エ 補助機関が内部的に決裁し、外部には行政庁の名で表示するもので、法律の根拠は不要である undefined 長の欠缺など法律で定めた事由が生じたときに、法律の定めに従って他の機関が権限を代わって行う)
- 税務署が青色申告の承認をしていない納税者から長年青色申告書を受理し続けた後、承認がないことを理由に更正処分をした。この事案についての最高裁判所の判断として妥当なものはどれですか。 (ア 租税法律主義が支配する租税法律関係には信義則が適用される余地はなく、更正処分は当然に適法である イ 租税法律関係にも信義則の適用はあり得るが、税務官庁が公的見解を表示したことなど納税者の信頼を保護しなければ正義に反する特別の事情が要る ウ 青色申告書を受理し続けた以上、税務署は黙示に承認をしたものとみなされ、更正処分は違法である エ 納税者に有利な扱いを長年続けた場合、行政庁はその扱いに拘束され、将来にわたって変更することはできない undefined 信義則は私法上の原則であるから、行政法の領域では一切適用されない)
- 公物に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 道路占用許可による電柱の設置は、行政行為の分類では許可にあたる イ 河川や海浜のような自然公物は、公用開始行為を必要とせずに公物となる ウ 公共用財産は、いかなる場合も私人が取得時効によって所有権を取得することはない エ 道路や公園のような人工公物は、公用開始行為がなくても、物理的に完成すれば当然に公物となる undefined 公物は国や地方公共団体が所有するものに限られ、私人の所有地が公物となることはない)
- A 県知事は、法律の規定に基づき、ある許可の権限を B 保健所長に委任した。その後、B 保健所長が申請者に不許可処分をした。この場合に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 委任後も A 県知事は同じ許可の権限を並行して行使でき、申請者は A 県知事に改めて許可を求めることができる イ 委任によって A 県知事は B 保健所長に対する指揮監督権も失うので、処分の内容について指示することは一切できない ウ 権限は移転していないので、不許可処分は A 県知事の名で行われ、処分庁は A 県知事である エ 権限の委任は行政内部の事務処理にすぎないので、法律の根拠がなくても知事の判断だけで行うことができる undefined 権限は B 保健所長に移転しているので、不許可処分は B 保健所長の名で行われ、処分庁は B 保健所長である)
行政法の基本原理と行政組織 ── 解答
基礎
- エ 一定の行政活動を行うには法律の根拠が要るという原則で、その範囲について学説が分かれる 法律の留保は「一定の行政活動を行うには法律の根拠が要るという原則で、その範囲について学説が分かれる」。法律の優位はすべての行政活動に及び、範囲で学説が分かれるのは法律の留保である。
- ア 監査機関 国の収入支出の決算を検査する会計検査院は監査機関。諮問機関の答申は行政庁を拘束しないが、参与機関の議決は拘束する点で区別する。
- エ 行政庁とは、行政主体の意思を決定し外部に表示する権限をもつ行政機関をいい、市長や知事がこれにあたる 行政主体は権利義務の帰属主体である法人(国・地方公共団体・独立行政法人など)、行政機関はそのために活動する組織上の単位、行政庁はそのうち意思を決定・表示する権限をもつもの。市役所は行政庁ではなく、市長が行政庁である。
- ウ 教育委員会と選挙管理委員会は、都道府県と市町村の双方に置かれる合議制の執行機関である 教育委員会・選挙管理委員会・人事委員会(公平委員会)は都道府県・市町村に共通。公安委員会は都道府県、農業委員会は市町村に置かれる。監査委員は独任制で「委員会」ではない。委員会・委員は地方自治法 180 条の 5 に法定されており、長から独立して職権を行う。
標準
- ウ 国民にとって本質的・重要な事項は法律で定めなければならないとする立場で、ドイツの判例で形成された 重要事項留保説は「国民にとって本質的・重要な事項は法律で定めなければならないとする立場で、ドイツの判例で形成された」。範囲の広さは 侵害 < 権力・社会 < 全部 の順に広がる。
- ウ 長年公の目的に使われず黙示の公用廃止があったと認められる公共用財産は、取得時効の対象になる 公物の時効取得(最判昭和 51 年)の結論は「長年公の目的に使われず黙示の公用廃止があったと認められる公共用財産は、取得時効の対象になる」。行政法の一般原則(信義則・権限濫用の禁止)と公物法の代表判例。
- エ 公正取引委員会と国家公安委員会は内閣府の外局として置かれる合議制の行政委員会である 省・委員会・庁は国家行政組織法 3 条(3 条機関)、審議会などは 8 条(8 条機関)。内閣府は内閣府設置法に基づき、長は内閣総理大臣。人事院は国家公務員法に基づく内閣の所轄の下の機関で、総務省の外局ではない。
- イ 法律で諮問が義務づけられている場合に諮問を経ないで行った処分は、手続の瑕疵として違法となり得る 諮問機関の答申に拘束力はないが、法定の諮問手続を省略すれば違法となり得る(群馬中央バス事件 最判昭和 50 年 5 月 29 日は、諮問手続の瑕疵があっても公正な判断が妨げられたといえない限り違法にならないとした)。参与機関の議決は行政庁を拘束する。電波監理審議会は参与機関、法制審議会は諮問機関。
- ア 上級行政機関は、下級行政機関の違法または不当な行為を取り消し、または停止することができる 指揮監督権の内容は、監視権・許認可権・訓令権・取消停止権・権限争議決定権。法律に特別の定めがない限り、上級機関が下級機関の権限を代わって行使すること(代執行)はできない。訓令は行政内部を拘束するにとどまり、国民を直接拘束しない。
- ア 行政法には統一的な法典がなく、憲法・法律・命令・条例などの成文法源のほか、慣習法・判例法などの不文法源がある 条約は公布により国内法としての効力をもち法源になる。通達は行政内部のルールで法源ではない。条例は議会、規則は長が制定する。政令は内閣、省令は各省大臣が制定する。
- undefined 地方公共団体が住民に義務を課し権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除き、条例によらなければならない 地方自治法 14 条 2 項。条例は住民の代表である議会が制定するので、法律の留保の要請を満たす。同条 3 項により、条例には 2 年以下の拘禁刑・100 万円以下の罰金などの罰則を設けることができる。
発展
- ア 決裁権者が不在のときに、他の者が一時的に代わって決裁し、外部には行政庁の名で表示する 代決は「決裁権者が不在のときに、他の者が一時的に代わって決裁し、外部には行政庁の名で表示する」。判別の軸は「権限が移るか」「法律の根拠が要るか」「誰の名で行うか」の 3 つ。
- イ 租税法律関係にも信義則の適用はあり得るが、税務官庁が公的見解を表示したことなど納税者の信頼を保護しなければ正義に反する特別の事情が要る 青色申告承認事件(最判昭和 62 年 10 月 30 日)。租税法律関係でも信義則の適用があり得ることを認めつつ、法律による行政の原理との関係から、特別の事情(公的見解の表示・納税者の信頼と行動・信頼に反する課税・納税者に帰責事由がないこと)を要求した。この事案では特別の事情を否定。
- イ 河川や海浜のような自然公物は、公用開始行為を必要とせずに公物となる 人工公物は公用開始行為で公物となり、自然公物はそれを要しない。最判昭和 51 年 12 月 24 日は、黙示の公用廃止があれば公共用財産も取得時効の対象になるとした。私有地を借りて公園にする他有公物もある。道路占用許可は特許にあたる。
- undefined 権限は B 保健所長に移転しているので、不許可処分は B 保健所長の名で行われ、処分庁は B 保健所長である 権限の委任は権限そのものを移すので法律の根拠が要り、受任機関が自己の名で処分を行う。委任した機関は権限を行使できなくなるが、受任機関が下級機関であれば指揮監督権は残る。取消訴訟の被告は処分庁の所属する A 県で、処分庁は B 保健所長。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zg-01/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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