行政裁量・行政立法・行政計画 ── 問題
基礎
- 行政裁量に関する次の判例で、最高裁判所(日光太郎杉事件は東京高等裁判所)が示した結論として妥当なものはどれですか。── 伊方原発訴訟(最判平成 4 年) (ア 原子炉設置許可の安全性については、危険を主張する住民の側が、最新の科学的知見に基づいてその存在を厳密に立証しなければならない イ 原子炉設置許可の判断は専門技術的裁量に属し、裁判所は調査審議・判断の過程に看過し難い過誤・欠落があるかを審査する ウ 原子炉設置許可の判断は羈束行為であり、法定の技術基準を満たしていれば行政庁は許可しなければならない エ 原子炉設置許可の判断について、裁判所は最新の科学的知見に基づいて自ら安全性を判断し、行政庁の判断を置きかえる undefined 原子炉設置許可の判断は高度に専門技術的であるため、裁判所はその適否を審査することができない)
- 次のものは、行政立法の分類ではどれに当たりますか。── 国家公務員法の委任を受けて、禁止される政治的行為の内容を定める人事院規則 (ア 法規命令のうち執行命令 イ 行政規則 ウ 行政計画 エ 法規命令のうち委任命令 undefined 行政行為)
- 行政裁量と司法審査に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 行政庁の裁量処分は、法律が明文で裁量を認めている場合に限って認められ、要件の解釈に裁量が認められることはない イ 行政庁の裁量処分について、裁判所は行政庁と同じ立場に立って処分の当否を判断し、不当と考えれば取り消すことができる ウ 行政庁の裁量処分は、裁量権の範囲を超え、またはその濫用があった場合に限り、裁判所はこれを取り消すことができる エ 行政庁の裁量処分は、行政庁が定めた処分基準に従っている限り、平等原則や比例原則に反していても違法とはならない undefined 行政庁の裁量処分は、行政庁の専門的判断を尊重すべきであるから、いかなる場合も裁判所の審査の対象にならない)
- 法規命令と行政規則に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 政令は内閣が定める命令であるため、法律の委任がなくても罰則を設けることができる イ 法規命令は国民の権利義務に関わるルールで法律の根拠が要るのに対し、行政規則は行政内部のルールで法律の根拠がなくても定めることができる ウ 法規命令も行政規則も国民の権利義務に関わるルールであり、いずれも法律の個別の委任がなければ定めることができない エ 執行命令は法律の委任を受けて新たに国民の権利義務の内容を定める命令であり、委任命令は法律を実施するための手続や様式を定める命令である undefined 審査基準や処分基準は行政手続法に基づいて定められるため、法規命令として国民と裁判所を拘束する)
- 裁量処分の手続的な統制に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 行政庁の裁量処分については、手続の公正さは裁量の問題ではないため、裁判所は手続の瑕疵を審査することができない イ 法律が諮問機関への諮問を要求している場合でも、諮問手続に瑕疵があることを理由として処分が違法になることはない ウ 多数の申請者から少数を選ぶ個人タクシー事業の免許では、行政庁は審査基準を設定し、申請者に主張と証拠提出の機会を与えて判断すべきである エ 個人タクシー事業の免許の審査基準は、法律または政令で定めなければならず、行政庁の内部基準では足りない undefined 個人タクシー事業の免許は行政庁の裁量に属するため、審査基準を設けず申請者の意見も聴かずに免許の可否を判断しても、手続上の違法は生じない)
標準
- 次の命令等について、最高裁判所が示した結論として妥当なものはどれですか。── 制度開始前の寄附金の募集実績を理由にふるさと納税の指定を否定できるとした総務大臣の告示の規定(最判令和 2 年) (ア 委任の範囲を超えるが、法的安定性の観点から有効として扱われる イ 白紙委任にあたり、委任した法律の規定自体が違憲無効である ウ 行政規則にすぎないため、委任の範囲は問題にならない エ 委任の範囲を逸脱しており、無効である undefined 委任の範囲内であり、有効である)
- 次の行為について、最高裁判所の判例に照らして妥当な説明はどれですか。── 土地区画整理組合の設立の認可(最判昭和 60 年) (ア 処分性が認められ、取消訴訟の対象になる イ 処分性の有無にかかわらず、当事者訴訟でのみ争うことができる ウ 処分性は認められないが、無効確認訴訟の対象にはなる エ 処分性が認められず、取消訴訟の対象にならない undefined 処分性が認められるが、出訴期間の制限は受けない)
- 伊方原発訴訟(最判平成 4 年)における最高裁判所の判断として妥当なものはどれですか。 (ア 原子炉設置許可の適否は、原子力委員会の専門技術的な調査審議の結果に裁判所が拘束されるため、その判断過程を審査する余地はない イ 裁判所は、口頭弁論終結時ではなく処分時の科学的知見を基準として、原子炉の安全性を自ら判断しなければならない ウ 原子炉設置許可の判断は高度の専門技術的な事項に関するものであるから、裁判所はその適法性を審査することができない エ 原子炉の安全性を争う住民の側が、設置許可の判断に不合理な点があることを、自ら科学的な資料を収集して厳密に立証しなければならない undefined 行政側が判断に不合理な点のないことを相当の根拠をもって示さない場合には、判断に不合理な点があることが事実上推認される)
- 裁量処分の判断過程審査に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 判断過程審査とは、裁判所が行政庁と同じ立場に立って処分の当否を審査し、自らの判断で処分を置きかえる手法である イ 判断過程審査は、処分の手続が法定の手順どおりに行われたかを審査する手法で、考慮事項の重みづけは対象にしない ウ 判断過程審査とは、処分の結論が社会観念上著しく妥当を欠くかどうかだけを審査する手法で、結論に至る過程は審査の対象にしない エ 判断過程審査は、日光太郎杉事件で東京高等裁判所が用いたが、最高裁判所はこの手法を採用したことがない undefined 判断過程審査とは、行政庁が考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮していないかなど、結論に至る過程の合理性を審査する手法である)
- 通達に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 通達は行政機関内部の命令にすぎず国民の権利義務に直接影響を及ぼさないため、通達そのものは取消訴訟の対象となる処分にあたらない イ 通達をきっかけとして課税が行われた場合、その課税は法律ではなく通達に基づくものであるから、租税法律主義に反し違法である ウ 通達は行政規則であるが、国民の権利義務に関わる内容を含む場合には法律の個別の委任が必要である エ 裁判所は法令の解釈に際して通達に拘束されるため、通達に従って行われた処分を通達と異なる解釈で違法と判断することはできない undefined 通達は上級行政機関が発する法規命令であり、国民を直接拘束するため、通達そのものが取消訴訟の対象となる処分にあたる)
- 法律による命令への委任に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 国会は唯一の立法機関であるから、法律が国民の権利義務に関わる事項の定めを命令に委任することは、いかなる場合も許されない イ 国家公務員の政治的行為の禁止を人事院規則に委任した国家公務員法の規定は、白紙委任にあたるとして猿払事件で違憲とされた ウ 委任命令の内容が法律の委任の範囲を超えているかどうかは、行政庁の裁量に属する事項であり、裁判所の審査の対象にならない エ 法律が命令に立法を委任することは認められるが、委任の目的や範囲を法律で定めない白紙委任は、国会を唯一の立法機関とする憲法 41 条に反して許されない undefined 法律の委任を受けた命令は、法律と同じ効力をもつため、委任した法律の趣旨に反する内容を定めても無効にはならない)
- 宜野座村工場誘致事件(最判昭和 56 年)における最高裁判所の判断として妥当なものはどれですか。 (ア 工場誘致の決定は住民の権利義務に影響する行政計画であり、相手方はその変更決定の取消訴訟を提起して争うことができる イ 地方公共団体の施策は住民の意思に基づいて変更されるべきものであるから、選挙による長の交代を理由とする計画の変更は、相手方にいかなる損害が生じても責任を生じさせない ウ 地方公共団体が計画を変更した場合、相手方は損失補償を請求できるが、不法行為に基づく損害賠償を請求することはできない エ 計画を変更すること自体は違法ではないが、計画を信頼して活動に入った相手方に代償措置を講じることなく一方的に撤回して損害を与えることは、不法行為責任を生じさせ得る undefined 地方公共団体が工場誘致を決定し相手方に協力を約束した以上、その後の事情の変化にかかわらず計画を変更することは信義則に反し、変更自体が違法である)
発展
- 医薬品ネット販売事件(最判平成 25 年)における最高裁判所の判断として妥当なものはどれですか。 (ア 省令の規定は委任の範囲を逸脱しているが、すでに多数の事業者がこれに従っていることから、法的安定性の観点から有効として扱われる イ 薬事法が郵便等販売の規制を省令に委任した規定そのものが白紙委任にあたり、憲法 41 条に違反して無効である ウ 一般用医薬品の郵便等販売を一律に禁止する省令の規定は、国民の生命・健康の保護という目的に照らして合理的であり、委任の範囲内で有効である エ 一般用医薬品の郵便等販売を一律に禁止する省令の規定は、職業選択の自由を侵害するものとして憲法 22 条 1 項に違反し無効である undefined 一般用医薬品の郵便等販売を一律に禁止する省令の規定は、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である)
- 土地区画整理事業計画の決定の処分性に関する最高裁判所の判例(最大判平成 20 年)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 事業計画の決定により宅地所有者等は建築制限を受け、換地処分に至る手続が進む地位に立たされるため、この段階で争わせることが実効的な権利救済に資するとして、処分性を肯定した イ 事業計画の決定は行政計画であり、行政手続法の意見公募手続を経ていれば適法であるため、処分性の有無を判断する必要はないとした ウ 事業計画は事業の青写真にすぎず、宅地所有者等の権利に具体的な変動を生じさせるものではないとして、処分性を否定した従来の判例(最大判昭和 41 年)をそのまま維持した エ 事業計画の決定は用途地域の指定と同じく一般的・抽象的な効果しかもたないため処分性はなく、後の換地処分の段階で個別に争えば足りるとした undefined 事業計画の決定には処分性は認められないが、施行地区内の宅地所有者等は、計画の無効確認を求める当事者訴訟によって争うことができるとした)
- 行政計画に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 国民の権利を直接制限する拘束的計画も、目標を示すにとどまる非拘束的計画も、法律による行政の原理から、いずれも法律の根拠がなければ策定できない イ 都市計画の決定は多数の利害を調整する高度に政策的な判断であるから、その内容の当否は裁判所の審査の対象にならず、手続の適否だけが審査される ウ 用途地域の指定は、指定と同時に建築制限が生じるため、土地区画整理事業計画の決定と同じく処分性が認められる エ 都市計画の決定には行政庁の広範な裁量が認められるが、重要な事実の基礎を欠くか、事実の評価が明らかに合理性を欠くなど社会通念に照らし著しく妥当を欠く場合には違法となる undefined 行政手続法は、行政計画の策定について公聴会の開催と 30 日以上の意見公募手続を行政庁に義務づけており、これを欠く計画は違法となる)
行政裁量・行政立法・行政計画 ── 解答
基礎
- イ 原子炉設置許可の判断は専門技術的裁量に属し、裁判所は調査審議・判断の過程に看過し難い過誤・欠落があるかを審査する 原子炉設置許可の判断は専門技術的裁量に属し、裁判所は調査審議・判断の過程に看過し難い過誤・欠落があるかを審査する。裁量処分は裁量権の逸脱・濫用がある場合に限り取り消せる(行政事件訴訟法 30 条)。「審査が一切及ばない」「裁判所が判断を置きかえる」はどちらも誤り。
- エ 法規命令のうち委任命令 国家公務員法の委任を受けて、禁止される政治的行為の内容を定める人事院規則は「法規命令のうち委任命令」。国民の権利義務に関わる新たな内容を法律の委任で定めるのが委任命令、手続・様式だけを定めるのが執行命令。通達・審査基準・要綱は行政内部のルール(行政規則)で、国民も裁判所も拘束しない。
- ウ 行政庁の裁量処分は、裁量権の範囲を超え、またはその濫用があった場合に限り、裁判所はこれを取り消すことができる 行政事件訴訟法 30 条。裁判所は判断代置をせず、逸脱・濫用の有無を審査する。要件の解釈にも裁量(要件裁量)が認められ得る。処分基準に従っていても、比例原則・平等原則に反すれば裁量権の濫用となる。
- イ 法規命令は国民の権利義務に関わるルールで法律の根拠が要るのに対し、行政規則は行政内部のルールで法律の根拠がなくても定めることができる 委任命令は新たに権利義務の内容を定めるもの、執行命令は手続・様式を定めるもの。審査基準・処分基準は行政規則で、国民・裁判所を直接には拘束しない。憲法 73 条 6 号ただし書により、政令に罰則を設けるには法律の委任が要る。
- ウ 多数の申請者から少数を選ぶ個人タクシー事業の免許では、行政庁は審査基準を設定し、申請者に主張と証拠提出の機会を与えて判断すべきである 個人タクシー事件(最判昭和 46 年 10 月 28 日)。群馬中央バス事件(最判昭和 50 年 5 月 29 日)は、諮問手続に重大な瑕疵があれば処分が違法となり得ることを前提にした(事案では瑕疵なし)。
標準
- エ 委任の範囲を逸脱しており、無効である 委任の範囲を逸脱しており、無効である。委任命令が法律の委任の範囲を超えると、その部分は無効。無効とされたのは監獄法施行規則・児童扶養手当法施行令・医薬品ネット販売省令・地方自治法施行令・ふるさと納税告示。銃刀法のサーベル登録事件だけは委任の範囲内とされた。
- ア 処分性が認められ、取消訴訟の対象になる 処分性が認められ、取消訴訟の対象になる。土地区画整理事業計画の決定は、建築制限が生じ換地処分に至る手続が進むため処分性あり(青写真判決を変更)。用途地域の指定は法令と同じ一般的・抽象的効果で処分性なし。通達は行政内部の命令で処分性なし。
- undefined 行政側が判断に不合理な点のないことを相当の根拠をもって示さない場合には、判断に不合理な点があることが事実上推認される 審査対象は原子力委員会等の調査審議・判断の過程に看過し難い過誤・欠落があるかであり、判断の基準は現在(口頭弁論終結時)の科学技術水準。資料を行政側が保持していることから、主張・立証の負担を事実上行政側に負わせた。
- undefined 判断過程審査とは、行政庁が考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮していないかなど、結論に至る過程の合理性を審査する手法である 日光太郎杉事件(東京高判昭和 48 年 7 月 13 日)が原点。最高裁も小田急高架訴訟(最判平成 18 年 11 月 2 日)やエホバの証人剣道受講拒否事件(最判平成 8 年 3 月 8 日)で考慮事項の審査を行っている。結論だけを見るのは社会観念審査。
- ア 通達は行政機関内部の命令にすぎず国民の権利義務に直接影響を及ぼさないため、通達そのものは取消訴訟の対象となる処分にあたらない 墓地埋葬通達事件(最判昭和 43 年 12 月 24 日)。パチンコ球遊器事件(最判昭和 33 年 3 月 28 日)は、通達を機縁とする課税でも法の正しい解釈に合致していれば適法とした。裁判所は通達に拘束されず、通達は行政規則なので法律の委任は不要。
- エ 法律が命令に立法を委任することは認められるが、委任の目的や範囲を法律で定めない白紙委任は、国会を唯一の立法機関とする憲法 41 条に反して許されない 猿払事件(最大判昭和 49 年 11 月 6 日)は国家公務員法 102 条 1 項の委任を合憲とした。委任の範囲を超える命令は無効で、その判断は裁判所が行う(監獄法施行規則事件・児童扶養手当法施行令事件など)。
- エ 計画を変更すること自体は違法ではないが、計画を信頼して活動に入った相手方に代償措置を講じることなく一方的に撤回して損害を与えることは、不法行為責任を生じさせ得る 最判昭和 56 年 1 月 27 日。計画変更は原則自由だが、相手方の信頼を不当に破壊する形で損害を与えれば不法行為責任(損害賠償)を負い得る。損失補償ではなく不法行為の問題として構成した。
発展
- undefined 一般用医薬品の郵便等販売を一律に禁止する省令の規定は、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である 郵便等販売を一律に禁止することは職業活動の自由を相当程度制約するので、法律の委任がその趣旨を明確に読み取れるものである必要があるとし、薬事法の規定からはそれが読み取れないため委任の範囲を逸脱し違法・無効とした。憲法違反の判断はしていない。
- ア 事業計画の決定により宅地所有者等は建築制限を受け、換地処分に至る手続が進む地位に立たされるため、この段階で争わせることが実効的な権利救済に資するとして、処分性を肯定した 最大判平成 20 年 9 月 10 日。「青写真」として処分性を否定した最大判昭和 41 年 2 月 23 日を変更した。換地処分の段階では事業が進んでおり事情判決の可能性が高いことも理由。用途地域の指定(最判昭和 57 年 4 月 22 日)とは結論が異なる。
- エ 都市計画の決定には行政庁の広範な裁量が認められるが、重要な事実の基礎を欠くか、事実の評価が明らかに合理性を欠くなど社会通念に照らし著しく妥当を欠く場合には違法となる 小田急高架訴訟本案判決(最判平成 18 年 11 月 2 日)。行政手続法には計画策定手続の一般規定はなく、意見公募手続の対象は「命令等」。法律の根拠が要るのは拘束的計画。用途地域の指定には処分性がない。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zg-03/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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