行政上の強制措置と行政罰 ── 問題
基礎
- 次の行政活動は、行政上の強制措置の分類ではどれに当たりますか。── 違法建築物の除却命令に従わない所有者に代わり、市が業者に建物を取り壊させ、その費用を所有者から徴収する (ア 執行罰 イ 即時強制 ウ 強制徴収 エ 直接強制 undefined 代執行)
- 次の金銭的な負担・制裁は、どれに分類されますか。── 無許可で飲食店を営業した者に、食品衛生法に基づき裁判所が刑事訴訟法の手続で科す罰金 (ア 行政刑罰 イ 交通反則金 ウ 課徴金 エ 秩序罰(過料) undefined 執行罰)
- 行政代執行法に基づく代執行の要件に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 代執行の対象となるのは他人が代わってすることができる作為義務に限られ、営業停止命令のような不作為義務の不履行に対して代執行を行うことはできない イ 条例に基づいて課された義務については、行政代執行法の適用がないため、条例に代執行の根拠規定を置かなければ代執行を行うことができない ウ 代執行を行うには義務者の同意が必要であり、義務者が拒否した場合には裁判所の許可を得なければならない エ 代執行は義務の不履行があれば直ちに行うことができ、他の手段による履行確保が困難かどうかや公益への影響を考慮する必要はない undefined 代執行は行政上の義務全般を対象とするため、営業停止命令に従わずに営業を続ける者に対しても、営業を止めさせる代執行を行うことができる)
- 即時強制に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 即時強制は、義務を命じる暇がない場合などに、あらかじめ義務を課すことなく直接に身体や財産に実力を加えて行政目的を実現するもので、法律または条例の根拠が必要である イ 即時強制は行政手続であるため、身体の自由に関わる場合であっても、憲法 31 条や 35 条の趣旨が及ぶことはない ウ 即時強制は緊急の必要に基づいて行われるものであるから、法律や条例の根拠がなくても、行政機関の判断で行うことができる エ 即時強制は行政上の義務の履行確保の手段であるため、行政代執行法 1 条により、条例で定めることはできず法律の根拠が必要である undefined 即時強制は、行政上の義務が履行されない場合に、義務者の身体や財産に実力を加えて義務の内容を実現するものであり、行政上の強制執行の一種である)
- 行政上の強制執行に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 行政上の強制執行の手段のうち、現行法上最も広く用いられているのは直接強制である イ 行政上の強制執行を行うには、義務を課す行政行為の根拠法とは別に、強制執行を認める法律の根拠が必要である ウ 行政行為には自力執行力が備わっているため、義務を課す行政行為の根拠法があれば、それとは別の法律の根拠がなくても強制執行できる エ 金銭給付義務の不履行に対する強制徴収は、国税徴収法の滞納処分の手続ではなく、民事執行法の手続によって行われる undefined 行政上の強制執行は義務の不履行を前提としない点で、即時強制と区別される)
標準
- 行政上の義務履行確保・行政罰に関する次の判例で、最高裁判所が示した結論として妥当なものはどれですか。── 宝塚市パチンコ条例事件(最判平成 14 年) (ア 条例に基づく義務の履行は、行政代執行法によって確保することができないため、民事訴訟によることが認められる イ 地方公共団体が私人に対して義務の履行を求める訴訟は、行政権の主体としてであれ財産権の主体としてであれ、地方公共団体が原告である以上、法律上の争訟にあたらず不適法である ウ 地方公共団体が条例上の義務の履行を求める訴訟は、条例が議会の議決を経た法規である以上、法律に特別の規定がなくても法律上の争訟として適法に提起することができる エ 地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟にあたらず、法律に特別の規定がない限り不適法である undefined 条例に基づく建築中止命令に従わない者に対しては、地方公共団体は民事訴訟による差止めを求めることができ、その判決に基づいて強制執行できる)
- 地方自治法が定める条例・規則の罰則について、条例に定めることができる過料の上限として正しいものはどれですか。 (ア 3 万円以下 イ 10 万円以下 ウ 5 万円以下 エ 50 万円以下 undefined 30 万円以下)
- 行政代執行法に基づく代執行の手続に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 代執行に要した費用は行政庁が負担し、義務者に請求する場合には民事訴訟を提起して支払を求めなければならない イ 代執行は、相当の履行期限を定めた文書による戒告、代執行令書による通知、実行、費用の徴収の順で進み、非常の場合や危険切迫の場合には戒告と通知を省略できる ウ 代執行の戒告は口頭で行うことができ、代執行令書による通知も、義務者が所在不明の場合を除いて行政庁の判断で省略することができる エ 代執行は、まず代執行令書によって代執行の時期と費用の概算見積額を通知し、その後に文書による戒告を行い、それでも履行がないときに実行する順で進む undefined 代執行の戒告や代執行令書による通知は代執行の準備行為にすぎないため、取消訴訟の対象となる処分にはあたらない)
- 執行罰と直接強制に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 直接強制については行政代執行法が一般的な根拠規定を置いているため、各行政庁は個別の法律の根拠がなくても直接強制を行うことができる イ 執行罰は、義務が履行されるまで反復して科すことができる点で、過去の違反に対する制裁である行政罰と異なり、現行法では砂防法に規定があるにとどまる ウ 執行罰は過去の義務違反に対する制裁であるため、1 つの義務違反について 1 回しか科すことができず、刑罰と併科することもできない エ 直接強制は義務を命じることなく直接に義務者の身体や財産に実力を加える手段であり、即時強制と同じ意味で用いられる undefined 執行罰として科される過料は刑罰であるため、刑法総則が適用され、刑事訴訟法の手続によって裁判所が科す)
- 行政刑罰と秩序罰に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 科料は秩序罰であり、過料は刑罰であるため、科料には刑法総則が適用されないが、過料には適用される イ 行政刑罰には法律に特別の定めがない限り刑法総則が適用され、刑事訴訟法の手続により科されるのに対し、秩序罰である過料は刑罰ではなく、刑法総則も刑事訴訟法も適用されない ウ 行政刑罰も秩序罰も行政上の義務違反に対する制裁である点で共通するため、いずれも刑法総則が適用され、刑事訴訟法の手続によって裁判所が科すことになる エ 秩序罰である過料は刑罰ではないため法律の根拠を要せず、行政機関は所掌事務の範囲内であれば自由に過料を科すことができる undefined 行政刑罰では、違反行為をした従業者のほかに事業主である法人を処罰する両罰規定を設けることは、過失のない者を処罰するもので責任主義に反し許されない)
- 過料を科す手続に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 条例に基づく過料は地方公共団体の長が科すが、その納付がない場合には強制徴収の手段がないため、支払を求める民事訴訟を提起しなければならない イ 法律に基づく過料は刑事訴訟法の手続により刑事裁判所が科し、条例に基づく過料は地方公共団体の議会の議決によって科す ウ 法律に基づく過料も条例に基づく過料も、刑罰ではないが裁判所の関与が必要であるため、いずれも非訟事件手続法により裁判所が科し、地方公共団体の長が科すことはできない エ 条例に基づく過料は地方公共団体の長が科すが、告知や弁明の機会を与える必要はなく、納付がない場合には民事訴訟によって請求する undefined 法律に基づく過料は非訟事件手続法により裁判所が科すのに対し、条例や規則に基づく過料は地方公共団体の長が、あらかじめ告知と弁明の機会を与えた上で行政処分として科す)
- 行政上の義務履行確保のその他の手段に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 交通反則金の通告を受けた者が反則金を納付すれば刑事訴追を受けないが、通告に処分性はなく、争うには反則金を納付せずに刑事手続で争うことになる イ 交通反則金の通告は運転者に納付義務を生じさせる行政処分であるため、これを争うには取消訴訟を提起しなければならない ウ 制裁を目的として違反者の氏名を公表することは事実行為にすぎないため、法律や条例の根拠がなくても自由に行うことができる エ 行政指導に従わない事業者に対して、行政指導とは無関係な行政サービスの提供を拒否することは、義務履行確保の手段として適法である undefined 課徴金は刑罰の一種であるため、その納付命令は刑事訴訟法の手続により裁判所が行う)
発展
- 宝塚市パチンコ条例事件(最判平成 14 年)における最高裁判所の判断として妥当なものはどれですか。 (ア 地方公共団体が条例に基づく建築中止命令の履行を民事訴訟で求めることは、条例が住民の代表機関である議会の議決を経た法規である以上、法律上の争訟として適法である イ 地方公共団体が行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟にはあたるが、行政代執行法が定める手続によるべきであるから、権利保護の必要性を欠き不適法である ウ 国や地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対し行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法 3 条 1 項の法律上の争訟にあたらず、法律に特別の規定がない限り不適法である エ 条例に基づく義務の履行は行政代執行法によって確保することができないため、地方公共団体は民事訴訟によってその履行を求めることができる undefined 地方公共団体が財産権の主体として私人に対し土地の明渡しを求める訴訟も、地方公共団体が原告である以上、法律上の争訟にあたらず不適法である)
- 行政上の義務履行確保の手段と条例の関係に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 条例で直接強制や執行罰などの強制執行の手段を新たに創設することはできないが、代執行は条例に基づく義務についても行政代執行法により行うことができ、即時強制は条例で定めることができる イ 行政上の義務の履行確保は地方公共団体の自治事務に属するため、法律の授権がなくても、条例で直接強制や執行罰を含むあらゆる強制執行の手段を創設することができる ウ 条例で強制執行の手段を創設できない代わりに、地方公共団体は行政権の主体として条例上の義務の履行を民事訴訟で求めることが判例上認められている エ 行政代執行法は法律に基づく義務の不履行だけを対象としているため、条例に基づく義務の不履行について代執行を行うには、条例に独自の代執行の根拠規定が必要である undefined 即時強制は国民の身体や財産に直接実力を加える手段であるため、条例で定めることはできず、法律の根拠がなければ行うことができない)
- 行政上の制裁と二重処罰の禁止に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 秩序罰である過料は刑罰ではないが、同一の違反行為について刑罰と過料を併科することは、実質的な二重処罰として憲法 39 条に反する イ 加算税は実質的に刑罰の性質をもつため、加算税を課した後に同一の事実について罰金を科すことは憲法 39 条に反する ウ 課徴金は違反行為による経済的利得を剥奪するものであるから、同一の違反行為について罰金と併科するには、罰金額を課徴金額から控除する明文の規定が必要である エ 執行罰は過去の違反に対する制裁であるから、同一の義務違反について刑罰と執行罰を併科することは憲法 39 条に反する undefined 刑罰と秩序罰である過料、刑罰と課徴金、刑罰と加算税は、いずれも目的や性質を異にするため、同一の違反行為について併科しても憲法 39 条に反しない)
行政上の強制措置と行政罰 ── 解答
基礎
- undefined 代執行 代執行。代執行=代替的作為義務を行政が代わって実現し費用を徴収、執行罰=過料の予告による心理的強制(砂防法のみ)、直接強制=義務者の身体・財産への実力行使(個別法のみ)、強制徴収=金銭給付義務の滞納処分、即時強制=義務を課さずに直接実力を加える。
- ア 行政刑罰 行政刑罰。行政刑罰は刑法 9 条の刑で刑事訴訟法により科す。秩序罰の過料は刑罰ではなく、法律に基づくものは非訟事件手続法で裁判所が、条例・規則に基づくものは地方公共団体の長が科す。執行罰は制裁ではなく履行確保の手段。課徴金・反則金はいずれも刑罰ではない。
- ア 代執行の対象となるのは他人が代わってすることができる作為義務に限られ、営業停止命令のような不作為義務の不履行に対して代執行を行うことはできない 行政代執行法 2 条。代替的作為義務の不履行+他の手段では困難+放置が著しく公益に反する、の 3 要件。2 条の「法律」には条例が含まれるため、条例上の義務にも行政代執行法により代執行できる。義務者の同意や裁判所の許可は不要。
- ア 即時強制は、義務を命じる暇がない場合などに、あらかじめ義務を課すことなく直接に身体や財産に実力を加えて行政目的を実現するもので、法律または条例の根拠が必要である 即時強制は義務の不履行を前提としない点で強制執行と異なる。法律の根拠が要るが、義務履行確保の手段ではないので条例でも定められる(放置自転車の撤去条例など)。人身の自由に関わる即時強制には憲法 31 条・35 条の趣旨が及び得る。
- イ 行政上の強制執行を行うには、義務を課す行政行為の根拠法とは別に、強制執行を認める法律の根拠が必要である 行政代執行法 1 条。強制執行は義務の不履行を前提とする(即時強制は前提としない)。直接強制は一般法がなくほとんど用いられない。強制徴収は国税徴収法の滞納処分の手続(督促・差押え・換価・配当)による。
標準
- エ 地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟にあたらず、法律に特別の規定がない限り不適法である 地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟にあたらず、法律に特別の規定がない限り不適法である。強制徴収の手段があれば民事訴訟は使えず、行政権の主体としての義務履行請求訴訟は法律上の争訟にあたらない。追徴税・課徴金は刑罰ではないため罰金との併科は二重処罰にあたらない。
- ウ 5 万円以下 条例に定めることができる過料の上限は「5 万円以下」。地方自治法 14 条 3 項: 条例には 2 年以下の拘禁刑、100 万円以下の罰金、拘留、科料、没収、5 万円以下の過料を定められる。15 条 2 項: 規則には 5 万円以下の過料だけを定められる。
- イ 代執行は、相当の履行期限を定めた文書による戒告、代執行令書による通知、実行、費用の徴収の順で進み、非常の場合や危険切迫の場合には戒告と通知を省略できる 行政代執行法 3 条〜6 条。戒告は文書で行う。費用は文書で納付を命じ、納付がなければ国税滞納処分の例により徴収する(民事訴訟は不要)。戒告・代執行令書による通知には処分性が認められると解されている。
- イ 執行罰は、義務が履行されるまで反復して科すことができる点で、過去の違反に対する制裁である行政罰と異なり、現行法では砂防法に規定があるにとどまる 執行罰は履行確保の手段で反復可能、刑罰との併科も可能。直接強制には一般法がなく個別法(成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法など)にわずかにあるだけ。直接強制は義務の不履行を前提とする点で即時強制と異なる。執行罰の過料は刑罰ではない。
- イ 行政刑罰には法律に特別の定めがない限り刑法総則が適用され、刑事訴訟法の手続により科されるのに対し、秩序罰である過料は刑罰ではなく、刑法総則も刑事訴訟法も適用されない 過料は刑罰ではない。両罰規定は事業主の選任・監督上の過失を推定するものとして認められている(最大判昭和 32 年 11 月 27 日)。科料(刑罰)と過料(秩序罰)を取り違えないこと。過料にも法律・条例の根拠が要る。
- undefined 法律に基づく過料は非訟事件手続法により裁判所が科すのに対し、条例や規則に基づく過料は地方公共団体の長が、あらかじめ告知と弁明の機会を与えた上で行政処分として科す 地方自治法 149 条 3 号・255 条の 3。条例・規則に基づく過料は長が科し、納付がなければ地方税の滞納処分の例により強制徴収できる(231 条の 3)。法律に基づく過料は非訟事件手続法により裁判所が科す。
- ア 交通反則金の通告を受けた者が反則金を納付すれば刑事訴追を受けないが、通告に処分性はなく、争うには反則金を納付せずに刑事手続で争うことになる 交通反則金通告事件(最判昭和 57 年 7 月 15 日)。制裁的公表には法律・条例の根拠が要ると考えられている。指導要綱に従わせるための給水拒否は違法(武蔵野市マンション事件)。課徴金は刑罰ではなく行政処分として納付を命じる。
発展
- ウ 国や地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対し行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法 3 条 1 項の法律上の争訟にあたらず、法律に特別の規定がない限り不適法である 最判平成 14 年 7 月 9 日。行政権の主体としての義務履行請求は、自己の権利利益の保護救済を目的とするものではなく法律上の争訟にあたらないとした。財産権の主体としての訴えは別。条例上の義務でも代替的作為義務なら行政代執行法による代執行は可能。
- ア 条例で直接強制や執行罰などの強制執行の手段を新たに創設することはできないが、代執行は条例に基づく義務についても行政代執行法により行うことができ、即時強制は条例で定めることができる 行政代執行法 1 条の「法律」に条例は含まれないため強制執行手段の創設は不可。2 条の「法律」には条例が含まれるため条例上の代替的作為義務には代執行が可能。即時強制は義務履行確保の手段ではないので条例で定められる。民事訴訟の道は宝塚市事件で否定された。
- undefined 刑罰と秩序罰である過料、刑罰と課徴金、刑罰と加算税は、いずれも目的や性質を異にするため、同一の違反行為について併科しても憲法 39 条に反しない 過料と刑罰(最判昭和 39 年 6 月 5 日)、追徴税と罰金(最大判昭和 33 年 4 月 30 日)、課徴金と罰金(最判平成 10 年 10 月 13 日)の併科はいずれも 39 条に反しない。執行罰は制裁ではなく履行確保の手段で、刑罰との併科も可能。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zg-05/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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