行政事件訴訟法 ── 問題
基礎
- 行政事件訴訟法の取消訴訟について、管轄に関する規定として正しいものはどれですか。 (ア 被告の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所に限って提起することができ、処分庁の所在地や原告の普通裁判籍の所在地を基準とする管轄は、当事者双方の合意がある場合を除き認められていない イ 原告の住所地を管轄する地方裁判所に限って提起することができ、処分庁の所在地を基準とする管轄は認められていない ウ 取消訴訟は東京地方裁判所の専属管轄であり、他の地方裁判所に提起することはできない エ 被告の普通裁判籍の所在地又は処分庁の所在地を管轄する地方裁判所のほか、国を被告とする場合は原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも提起することができる undefined 取消訴訟の第一審は高等裁判所であり、被告の所在地を管轄する高等裁判所に提起しなければならない)
- 行政事件訴訟法の訴訟類型に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 土地収用における損失補償の額を起業者と土地所有者の間で争う訴えは、抗告訴訟のうち処分の取消しの訴えにあたる イ 行政事件訴訟法は抗告訴訟を法定の 6 類型に限定しており、法定されていない無名抗告訴訟を提起することは認められない ウ 民衆訴訟と機関訴訟は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する客観訴訟であるため、法律に特別の定めがなくても、公益の実現を求める何人でも提起することができる エ 抗告訴訟として法定されているのは、処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴えの 6 つである undefined 当事者訴訟は行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟であり、営業停止処分の取消しを求める訴えがその典型である)
- 取消訴訟の審理に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 裁判所は、当事者が主張していない事実についても職権で探知し、これに基づいて処分の違法性を判断することができる イ 処分の取消訴訟と裁決の取消訴訟の双方を提起できる場合、裁決の取消訴訟においても原処分の違法を主張することができる ウ 処分の違法性は、口頭弁論終結時の法令と事実を基準として判断される エ 裁判所は、必要があると認めるときは職権で証拠調べをすることができるが、その結果について当事者の意見を聴かなければならない undefined 原告は、自己の法律上の利益に関係のない違法であっても、処分に何らかの違法があればこれを理由として取消しを求めることができる)
- 当事者訴訟・民衆訴訟・機関訴訟に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 地方公共団体の住民が、当該団体の違法な公金支出について提起する住民訴訟は、自己の権利利益の救済を目的とする抗告訴訟の一種である イ 当事者訴訟には取消訴訟の出訴期間の規定が準用されるため、公法上の法律関係の確認の訴えは処分を知った日から 6 か月以内に提起しなければならない ウ 在外国民が次回の衆議院議員選挙において投票できる地位にあることの確認を求める訴えは、選挙の効力を争う民衆訴訟にあたる エ 土地収用に伴う損失補償の額について、起業者と土地所有者の間で争う訴えは、法律の定めにより当事者間の訴訟の形式をとる形式的当事者訴訟である undefined 地方公共団体の長と議会との間の権限の存否に関する争いは、対等な当事者間の紛争であるため、法律の定めがなくても実質的当事者訴訟として提起することができる)
- 行政事件訴訟法の教示に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 取消訴訟を提起できる処分を書面でするときは、相手方に被告とすべき者・出訴期間、審査請求前置の定めがあればその旨を書面で教示しなければならない イ 行政庁が教示をしなかった場合、その処分は教示の欠缺により無効となり、相手方は取消訴訟を提起するまでもなく処分に従う必要がない ウ 行政庁は、取消訴訟を提起できる処分を書面でする場合、相手方から求めがあったときに限り、出訴期間を教示すれば足りる エ 行政庁は、取消訴訟を提起できる処分をする場合、書面か口頭かを問わず、被告とすべき者と出訴期間を教示しなければならない undefined 取消訴訟に関する教示の義務は行政不服審査法に定められており、行政事件訴訟法には教示の規定はない)
標準
- 次の事例について、最高裁判所の判例の考え方に照らした結論として妥当なものはどれですか。A 県知事は、B が計画する病院の開設について、医療法に基づき病床数が過剰であるとして開設中止の勧告をした。勧告に従わないと保険医療機関の指定を受けられない運用が定着している。B はこの勧告の取消訴訟を提起した。 (ア 勧告には処分性が認められない。B は保険医療機関の指定拒否処分がされた段階でその取消訴訟を提起すれば足り、勧告の段階で争う必要はないからである イ 勧告には処分性が認められる。勧告は行政指導であるが、これに従わない場合には保険医療機関の指定を受けられないという不利益が法の仕組み上予定されており、病院経営が事実上不可能になるからである ウ 勧告には処分性が認められない。勧告は相手方の任意の協力を求める行政指導にすぎず、保険医療機関の指定を受けられないという不利益は事実上のものであって、勧告自体が国民の権利義務を直接形成する法的効果をもたないからである エ 勧告には処分性が認められる。医療法上の勧告はすべて行政処分としての性格をもち、行政手続法の不利益処分に関する規定が適用されるからである undefined 勧告には処分性が認められない。勧告に不服がある B は、公法上の当事者訴訟として勧告に従う義務のないことの確認を求めるべきだからである)
- 取消訴訟の原告適格・訴えの利益に関する最高裁判所の判例について、自動車運転免許の停止処分の取消訴訟において、停止期間が経過し、さらに前歴として不利益に扱われる期間も経過した場合の訴えの利益に関する判断として妥当なものはどれですか。 (ア 停止期間が経過しても、処分の違法を確定させることは将来の国家賠償請求の前提として必要であるため、訴えの利益は認められる イ 停止処分は期間の経過後も運転免許の更新時に考慮されるため、免許が失効するまで訴えの利益は認められる ウ 処分の法的効果は失われており、名誉・感情・信用が害されるとしてもそれは事実上の効果にすぎないため、訴えの利益は認められない エ 停止処分を受けたという事実は本人の名誉や信用を害し続けるため、期間の経過にかかわらず訴えの利益は認められる undefined 停止期間の経過により処分の効果は消滅するが、免許証への記載が残る限り訴えの利益は認められる)
- 取消訴訟の原告適格に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 鉄道の特急料金の認可について、特急を日常的に利用する通勤者には、料金を不当に高く設定されない法律上の利益があるため原告適格が認められる イ 処分の相手方以外の第三者には、処分の根拠法令に当該第三者の利益を保護する旨の個別具体的な明文の規定がある場合に限って原告適格が認められ、関係法令の趣旨から原告適格を導くことはできない ウ 公正競争規約の認定について、一般消費者は表示に関して事実上の利害関係を有するため、消費者団体にも原告適格が認められる エ 史跡の指定解除処分について、当該遺跡を研究対象とする学術研究者には、文化財保護条例上の法律上の利益があるため原告適格が認められる undefined 裁判所は、処分の相手方以外の者の原告適格を判断するにあたり、処分の根拠法令の趣旨・目的のほか、関係法令の趣旨・目的や、処分により害されることとなる利益の内容・性質・程度をも考慮しなければならない)
- 取消訴訟の判決とその効力に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 処分を取り消す判決は、訴訟の当事者である原告と被告との間でのみ効力を有し、訴訟に参加しなかった第三者には及ばないため、第三者との関係では処分は取消し後も有効なものとして扱われ、第三者の再審の訴えの制度も設けられていない イ 申請を却下した処分が判決により取り消された場合、処分庁は判決の拘束力により申請を認容する処分をしなければならず、別の理由で再び却下することはできない ウ 裁判所は、処分が違法であっても、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、一切の事情を考慮して取消しが公共の福祉に適合しないと認めるときは、請求を棄却し、判決の主文で処分が違法であることを宣言することができる エ 処分を取り消す判決が確定した場合、処分庁は取消判決の趣旨に従って改めて処分を取り消す行為をしなければ、処分の効力は失われない undefined 事情判決がされた場合、原告は処分が違法であることの宣言を得られるが、訴訟費用はすべて原告の負担となる)
- 行政事件訴訟法の執行停止と内閣総理大臣の異議に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 執行停止の要件である「重大な損害」は、2004 年改正前の「回復の困難な損害」より厳格な要件であり、金銭で回復できる損害は一切含まれない イ 内閣総理大臣の異議は裁判所を拘束しないため、裁判所は異議に理由がないと認めるときは執行停止をすることができる ウ 裁判所は、取消訴訟が提起された場合、当事者の申立てがなくても、重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは職権で処分の執行停止をすることができ、その際に処分庁の意見を聴く必要はない エ 執行停止の決定に対しては、原告・被告のいずれも不服を申し立てることができない undefined 内閣総理大臣は執行停止の申立てがあった場合、執行停止の決定の前後を問わず理由を付して異議を述べることができ、異議があったときは裁判所は執行停止をすることができず、すでにした執行停止は取り消さなければならない)
- 取消訴訟の訴えの利益に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 市街化調整区域内の土地についての開発許可は、これにより建築制限が解除される仕組みになっているため、開発工事が完了した後も許可の取消しを求める訴えの利益は失われない イ 土地改良事業の施行認可の取消訴訟において、工事が完了し、換地処分も終わって原状回復が社会的・経済的に著しく困難となった場合には、認可を取り消しても事業を元に戻すことができないため訴えの利益は失われる ウ 生活保護の変更決定の取消訴訟において、原告である受給者が死亡した場合、保護受給権は相続人に承継されるため相続人が訴訟を承継する エ メーデーのための皇居外苑の使用不許可処分について、集会の期日が経過した後も、将来同種の申請をする可能性がある限り訴えの利益は失われない undefined 運転免許証の更新にあたり優良運転者である旨の記載をされなかった者には、記載の有無は法的地位に影響しないため、更新処分の取消しを求める訴えの利益は認められない)
- 次の事例で、原告が目的を達するために提起すべき訴訟として妥当なものはどれですか。── B の隣地に建築基準法に違反する建物が建てられたが、市は是正命令を出さない。B はこの違法状態による重大な損害を避けるため、市に是正命令を出させたい。 (ア 市の不作為について不作為の違法確認訴訟を提起する イ B は是正命令の申請をしていないが、是正命令の不作為の違法確認訴訟と併合して申請型の義務付け訴訟を提起する ウ 違法建築物の存在を前提とする法律関係について、実質的当事者訴訟を提起する エ 一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり他に適当な方法がないとして、非申請型の義務付け訴訟を提起する undefined 建物の建築確認の差止訴訟を提起する)
- 次の行為の処分性について、最高裁判所の判例に照らして妥当な説明はどれですか。── 労働者災害補償保険法に基づく労災就学援護費の不支給決定(最判平成 15 年) (ア 処分性は認められない。援護費は法律ではなく通達に基づく給付であり、その支給・不支給は行政内部の判断にすぎず、法的効果をもたない イ 処分性は認められない。援護費の請求権は法律により直接発生するため、不支給決定は事実の通知にすぎない ウ 処分性は認められる。援護費の支給は生存権の保障に関わるため、憲法 25 条から直接処分性が導かれる エ 処分性は認められる。法の仕組み上、支給決定によって初めて具体的な請求権が生ずるものとされているため、不支給決定は受給資格を否定する法的効果をもつ undefined 処分性は認められない。援護費の不支給は民事上の債務不履行として争えばよいからである)
- 取消訴訟の原告適格に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 場外車券発売施設の設置許可の取消訴訟では、生活環境の悪化を受けるおそれがあるとして、周辺の一般住民に原告適格が認められた イ 風俗営業の許可の取消訴訟では、良好な風俗環境の中で生活する利益が風俗営業法により個別的に保護されているとして、周辺住民に原告適格が認められた ウ 史跡指定の解除処分の取消訴訟では、遺跡を研究の対象とする学術研究者に原告適格が認められた エ 定期航空運送事業の免許の取消訴訟では、騒音で社会通念上著しい障害を受ける空港周辺の住民に原告適格が認められた(新潟空港事件) undefined 鉄道の特急料金の認可の取消訴訟では、認可は利用者の利益を個別的に保護する趣旨を含むとして、通勤で特急を利用する者に原告適格が認められた)
- 仮の義務付け・仮の差止めに関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 仮の義務付けは、義務付け訴訟を提起する前であっても、緊急の必要があれば単独で申し立てることができる イ 仮の義務付け・仮の差止めは、執行停止と同じく重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに認められ、本案について理由があるかどうかは一切考慮されない ウ 仮の義務付けの決定に対しては、内閣総理大臣の異議の制度は適用されない エ 仮の義務付け・仮の差止めは、本案訴訟の提起後、償うことのできない損害を避ける緊急の必要があり、本案に理由があるとみえるときに申立てにより認められる undefined 仮の義務付け・仮の差止めは裁判所が職権で行うことができ、当事者の申立ては要件とされていない)
発展
- 義務付け訴訟に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらずこれをしない場合の義務付け訴訟のうち、申請を前提としないもの(非申請型)は、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつその損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起することができる イ 義務付け訴訟の本案において、裁判所は行政庁の裁量に属する処分については義務付けの判決をすることができず、法令の規定から処分をすべきことが明らかな場合に限って認容することができる ウ 非申請型の義務付け訴訟は、処分の相手方となるべき者に限って提起することができ、第三者が規制権限の発動を求めて提起することはできない エ 申請に対する処分の義務付けを求める訴訟(申請型)は、申請に対して相当の期間内に処分がされない場合や申請が拒否された場合のいずれにおいても単独で提起することができ、不作為の違法確認訴訟や拒否処分の取消訴訟と併合して提起する必要はない undefined 義務付け訴訟には仮の救済の制度が設けられておらず、原告は執行停止の申立てによって暫定的な救済を求めるほかない)
- 無効等確認訴訟と不作為の違法確認訴訟に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 不作為の違法確認訴訟は、法令に基づく申請をしていない者であっても、行政庁が規制権限を行使しないことにより生命・身体・財産などの法律上の利益を害されるおそれのある者であれば、申請の有無を問わず提起することができる イ 無効等確認訴訟には出訴期間の制限はないが、処分があったことを知った日から 6 か月を経過した後は提起することができない ウ 無効等確認訴訟は、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者、又は処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない者に限って提起することができる エ 無効等確認訴訟を提起するには、処分の瑕疵が重大かつ明白であることを訴訟要件として原告が疎明しなければならない undefined 不作為の違法確認訴訟の認容判決が確定すると、行政庁は原告の申請を認容する処分をする義務を負う)
- 差止訴訟と公法上の当事者訴訟に関する最高裁判所の判例(最判平成 24 年 2 月 9 日)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 懲戒処分の差止訴訟は適法であるとした上で、本案においてすべての種類の懲戒処分について差止めを認容した イ 職務命令に従う義務のないことの確認を求める訴えは、将来の処分の差止めを実質的に求めるものであるため、公法上の当事者訴訟としては不適法であり、差止訴訟によるべきであるとした ウ 差止訴訟は処分の相手方となるべき者に原告適格が認められないため、教職員は差止訴訟を提起することができず、当事者訴訟によるほかないとした エ 起立斉唱の職務命令に基づく懲戒処分は反復が見込まれ事後の救済が困難であるとして差止訴訟の「重大な損害」を認め、職務命令に従う義務がないことの確認を求める当事者訴訟も適法とした undefined 懲戒処分の差止訴訟は、処分がされた後に取消訴訟の提起と執行停止の申立てによって十分な救済を受けることができ、処分が反復して行われるとしてもそのつど争えば足りるため、「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を欠き不適法であるとした)
- 次の事例のうち、行政事件訴訟法の規定又は判例に照らして、原告の訴えが訴訟要件を満たすと考えられるものはどれですか。 (ア 処分の日から 2 年後に、処分の存在を 1 か月前に初めて知ったとして、正当な理由を主張することなく処分の取消訴訟を提起した イ 処分を知った日から 5 か月後に、審査請求を経ることなく、処分をした県の知事が所属する県を被告として、県庁所在地を管轄する地方裁判所に処分の取消訴訟を提起した ウ 申請をしていない者が、行政庁が自分に有利な処分をしないのは違法であるとして、不作為の違法確認訴訟を提起した エ 処分を知った日から 2 か月後に、処分をした県知事個人を被告として、知事の住所地を管轄する地方裁判所に処分の取消訴訟を提起した undefined 審査請求前置が個別法で定められている処分について、審査請求をした翌週に、裁決を待たずに処分の取消訴訟を提起した(緊急の必要や正当な理由は特にない))
- 取消訴訟の審理における裁判所の権限に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 裁判所は、処分の取消訴訟において、処分が違法と認めるときは、処分の取消しに代えて自ら適法な処分の内容を定める判決をすることができる イ 裁判所は、当事者が主張しない事実についても職権で探知し、その事実に基づいて判決をすることができる ウ 裁判所は、処分をした行政庁以外の行政庁を職権で訴訟に参加させることはできず、行政庁の参加は当該行政庁の申立てがある場合に限られる エ 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため必要があるときは、被告側の行政庁に対し、処分の内容・根拠法令・原因事実・理由を明らかにする資料の提出を求めることができる undefined 裁判所は、処分の理由を明らかにする資料の提出を行政庁に求めることはできず、資料の提出は当事者の申立てによる文書提出命令によらなければならない)
- 取消訴訟の訴えの利益に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 建築確認の取消訴訟では、建築工事が完了した後も、違反建築物に対する是正命令の前提として確認の効力を争う利益があるとして訴えの利益が認められた イ 運転免許停止処分の取消訴訟では、停止期間と前歴としての不利益期間が経過した後も、名誉・信用の回復のために訴えの利益が認められた ウ 生活保護の変更決定の取消訴訟では、受給者が死亡した場合でも保護受給権は相続人に承継されるとして、相続人による訴訟の承継が認められた エ 保安林指定解除の取消訴訟では、洪水などを防ぐ代替施設が設置されたことにより、周辺住民の訴えの利益は失われたとされた(長沼ナイキ事件) undefined 再入国不許可処分の取消訴訟では、原告が再入国の許可を受けずに出国した後も、在留資格を回復する利益があるとして訴えの利益が認められた)
行政事件訴訟法 ── 解答
基礎
- エ 被告の普通裁判籍の所在地又は処分庁の所在地を管轄する地方裁判所のほか、国を被告とする場合は原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも提起することができる 被告の普通裁判籍の所在地又は処分庁の所在地を管轄する地方裁判所のほか、国を被告とする場合は原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも提起することができる。出訴期間(14 条)・被告(11 条)・自由選択主義(8 条)・管轄(12 条)・執行停止(25 条)は 2004 年改正後の条文で覚える(zg-09 解説 §4・§5)。
- エ 抗告訴訟として法定されているのは、処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴えの 6 つである 3 条 2〜7 項。民衆訴訟・機関訴訟は法律に定めがある場合に法律に定める者に限り提起できる(42 条)。当事者訴訟は対等な当事者間の公法上の法律関係に関する訴訟(4 条)で、損失補償額の争いは形式的当事者訴訟。無名抗告訴訟は否定されていない。
- エ 裁判所は、必要があると認めるときは職権で証拠調べをすることができるが、その結果について当事者の意見を聴かなければならない 職権証拠調べ(24 条)はできるが職権探知はできない。違法判断の基準時は処分時。取消理由の制限(10 条 1 項)。原処分主義(10 条 2 項)により裁決の取消訴訟では裁決固有の瑕疵しか主張できない。
- エ 土地収用に伴う損失補償の額について、起業者と土地所有者の間で争う訴えは、法律の定めにより当事者間の訴訟の形式をとる形式的当事者訴訟である 土地収用法 133 条の訴えは形式的当事者訴訟の典型。在外国民選挙権訴訟(最大判平成 17 年 9 月 14 日)の地位確認の訴えは公法上の当事者訴訟。住民訴訟は民衆訴訟(客観訴訟)。長と議会の争いは機関訴訟で、法律に定めがある場合に限られる(42 条)。当事者訴訟に出訴期間の規定は準用されない。
- ア 取消訴訟を提起できる処分を書面でするときは、相手方に被告とすべき者・出訴期間、審査請求前置の定めがあればその旨を書面で教示しなければならない 行政事件訴訟法 46 条(2004 年改正で新設)。口頭でする処分は除かれる。教示を欠いても処分は無効にならず、出訴期間の徒過について「正当な理由」の考慮事情になり得る。行政不服審査法 82 条の教示(不服申立て)と並ぶ制度。
標準
- イ 勧告には処分性が認められる。勧告は行政指導であるが、これに従わない場合には保険医療機関の指定を受けられないという不利益が法の仕組み上予定されており、病院経営が事実上不可能になるからである 勧告には処分性が認められる。勧告は行政指導であるが、これに従わない場合には保険医療機関の指定を受けられないという不利益が法の仕組み上予定されており、病院経営が事実上不可能になるからである。医療法勧告(最判平成 17 年 7 月 15 日・肯定)、保育所廃止条例(最判平成 21 年 11 月 26 日・肯定)、用途地域指定(最判昭和 57 年 4 月 22 日・否定)、土地区画整理事業計画決定(最大判平成 20 年 9 月 10 日・肯定に変更)、通達(最判昭和 43 年 12 月 24 日・否定)。処分性は「法の仕組みの中で直接・具体的な不利益が確実か」で判断する(zg-09 解説 §2)。
- ウ 処分の法的効果は失われており、名誉・感情・信用が害されるとしてもそれは事実上の効果にすぎないため、訴えの利益は認められない 処分の法的効果は失われており、名誉・感情・信用が害されるとしてもそれは事実上の効果にすぎないため、訴えの利益は認められない。もんじゅ事件(最判平成 4 年 9 月 22 日)、小田急高架訴訟(最大判平成 17 年 12 月 7 日)、免許停止(最判昭和 55 年 11 月 25 日)、建築確認(最判昭和 59 年 10 月 26 日)、免職と立候補(最大判昭和 40 年 4 月 28 日)。訴えの利益は「残っている法効果」を探す(zg-09 解説 §3)。
- undefined 裁判所は、処分の相手方以外の者の原告適格を判断するにあたり、処分の根拠法令の趣旨・目的のほか、関係法令の趣旨・目的や、処分により害されることとなる利益の内容・性質・程度をも考慮しなければならない 9 条 2 項(2004 年改正)。主婦連ジュース事件(最判昭和 53 年 3 月 14 日)、近鉄特急料金事件(最判平成元年 4 月 13 日)、伊場遺跡事件(最判平成元年 6 月 20 日)はいずれも原告適格を否定。明文の規定がなくても法令の趣旨から個別的利益として保護されていれば原告適格は認められる。
- ウ 裁判所は、処分が違法であっても、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、一切の事情を考慮して取消しが公共の福祉に適合しないと認めるときは、請求を棄却し、判決の主文で処分が違法であることを宣言することができる 事情判決(31 条)。取消判決には第三者効がある(32 条)。取消判決には形成力があり、処分庁の取消し行為は不要。拘束力(33 条)により同一理由で同一処分はできないが、別の理由による再処分は妨げられない。訴訟費用について特別の規定はない。
- undefined 内閣総理大臣は執行停止の申立てがあった場合、執行停止の決定の前後を問わず理由を付して異議を述べることができ、異議があったときは裁判所は執行停止をすることができず、すでにした執行停止は取り消さなければならない 27 条。執行停止は申立てが必要(25 条 2 項)。「重大な損害」は「回復の困難な損害」より緩和された要件で、損害の回復の困難の程度・性質・程度、処分の内容・性質を考慮する(25 条 3 項)。異議には裁判所を拘束する効力がある。執行停止の決定には即時抗告ができる(25 条 7 項)。
- ア 市街化調整区域内の土地についての開発許可は、これにより建築制限が解除される仕組みになっているため、開発工事が完了した後も許可の取消しを求める訴えの利益は失われない 最判平成 27 年 12 月 14 日。土地改良事業は工事完了後も訴えの利益あり(最判平成 4 年 1 月 24 日。原状回復の困難は事情判決の考慮事情)。優良運転者の記載は法律上の地位にかかわり訴えの利益あり(最判平成 21 年 2 月 27 日)。生活保護受給権は一身専属で訴訟は終了(朝日訴訟)。皇居外苑は期日経過で消滅(最大判昭和 28 年 12 月 23 日)。
- エ 一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり他に適当な方法がないとして、非申請型の義務付け訴訟を提起する 一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり他に適当な方法がないとして、非申請型の義務付け訴訟を提起する。申請あり → 申請型義務付け(取消訴訟または不作為の違法確認と併合)、申請なし → 非申請型義務付け、これからされる処分 → 差止め、出訴期間経過+重大明白 → 無効等確認、権利義務の確認 → 当事者訴訟(在外国民選挙権訴訟 最大判平成 17 年 9 月 14 日)(zg-09 解説 §1・§6)。
- エ 処分性は認められる。法の仕組み上、支給決定によって初めて具体的な請求権が生ずるものとされているため、不支給決定は受給資格を否定する法的効果をもつ 処分性は認められる。法の仕組み上、支給決定によって初めて具体的な請求権が生ずるものとされているため、不支給決定は受給資格を否定する法的効果をもつ。否定は「焼却場・通達・用途地域・内定取消し・行政指導一般」、肯定は「仕組み全体の中で不利益が確実に生ずる」行為(二項道路一括指定・労災就学援護費・食品衛生法違反通知・輸入禁制品該当通知など)(zg-09 解説 §2)。
- エ 定期航空運送事業の免許の取消訴訟では、騒音で社会通念上著しい障害を受ける空港周辺の住民に原告適格が認められた(新潟空港事件) 新潟空港事件は最判平成元年 2 月 17 日。風俗営業許可の周辺住民(最判平成 10 年 12 月 17 日)・場外車券発売施設(サテライト大阪事件・最判平成 21 年 10 月 15 日。周辺住民は否定、位置基準で保護される医療施設の開設者には肯定の余地)・近鉄特急料金事件(最判平成元年 4 月 13 日)・伊場遺跡事件(最判平成元年 6 月 20 日)はいずれも原告適格を否定した。
- エ 仮の義務付け・仮の差止めは、本案訴訟の提起後、償うことのできない損害を避ける緊急の必要があり、本案に理由があるとみえるときに申立てにより認められる 37 条の 5。要件は「償うことのできない損害」+「緊急の必要」+「本案について理由があるとみえる」で、執行停止(重大な損害)より厳格。本案訴訟の提起が前提で、申立てが必要。公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは認められず、内閣総理大臣の異議の規定も準用される(37 条の 5 第 4 項)。
発展
- ア 行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらずこれをしない場合の義務付け訴訟のうち、申請を前提としないもの(非申請型)は、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつその損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起することができる 37 条の 2 第 1 項。申請型は不作為の違法確認訴訟または取消訴訟・無効等確認訴訟との併合提起が必要(37 条の 3 第 3 項)。本案要件は「法令の規定から明らか」または「裁量権の逸脱・濫用」(37 条の 2 第 5 項)。仮の義務付けがある(37 条の 5)。非申請型は隣地の違法建築に是正命令を求める第三者などが典型。
- ウ 無効等確認訴訟は、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者、又は処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない者に限って提起することができる 36 条。無効等確認訴訟に出訴期間の制限はない。不作為の違法確認訴訟は申請をした者に限られる(37 条)。認容判決は不作為の違法を確認するだけで、何らかの応答義務は生ずるが認容処分を義務づけるものではない。瑕疵の重大明白性は本案の問題であり訴訟要件ではない。
- エ 起立斉唱の職務命令に基づく懲戒処分は反復が見込まれ事後の救済が困難であるとして差止訴訟の「重大な損害」を認め、職務命令に従う義務がないことの確認を求める当事者訴訟も適法とした 差止訴訟の適法性を認め(免職以外の処分については本案で棄却)、当事者訴訟としての確認の訴えも適法とした。差止訴訟と当事者訴訟の使い分けを示した判例。
- イ 処分を知った日から 5 か月後に、審査請求を経ることなく、処分をした県の知事が所属する県を被告として、県庁所在地を管轄する地方裁判所に処分の取消訴訟を提起した 6 か月・1 年の出訴期間内、自由選択主義、被告は県(国・公共団体)、管轄は被告の普通裁判籍所在地であり適法。前置主義では 3 か月経過などの例外がなければ裁決を経る必要がある(8 条 2 項)。処分の日から 1 年を経過すると正当な理由がない限り不適法(14 条 2 項)。被告は行政庁が所属する公共団体(11 条)。不作為の違法確認訴訟は申請者に限られる(37 条)。
- エ 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため必要があるときは、被告側の行政庁に対し、処分の内容・根拠法令・原因事実・理由を明らかにする資料の提出を求めることができる 23 条の 2(釈明処分の特則・2004 年改正)。職権証拠調べ(24 条)はできるが職権探知はできない。行政庁の訴訟参加は職権でもできる(23 条)。裁判所は処分を取り消すだけで、自ら処分の内容を定めることはできない(判断代置の禁止・権力分立)。
- エ 保安林指定解除の取消訴訟では、洪水などを防ぐ代替施設が設置されたことにより、周辺住民の訴えの利益は失われたとされた(長沼ナイキ事件) 長沼ナイキ事件(最判昭和 57 年 9 月 9 日)は原告適格を肯定した上で、代替施設の設置により訴えの利益を否定した。再入国不許可は出国により訴えの利益消滅(最判平成 10 年 4 月 10 日)、生活保護は一身専属で終了(朝日訴訟)、免許停止は期間経過で消滅(最判昭和 55 年 11 月 25 日)、建築確認は工事完了で消滅(最判昭和 59 年 10 月 26 日)。
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