国家賠償法と損失補償 ── 問題
基礎
- 国家賠償法について、4 条・5 条・6 条に関する説明として正しいものはどれですか。 (ア 国家賠償法は民法の特別法であるため、民法の規定は一切適用されず、失火責任法による免責も認められない イ 他の法律に国又は公共団体の責任を免除・制限する定めがある場合、その定めは憲法 17 条の具体化として常に有効であり、裁判所が違憲と判断することはない ウ 被害者が外国人である場合には、国家賠償法は一切適用されず、外国人は民法の不法行為の規定によってのみ賠償を求めることができる エ 国家賠償法に定めのない事項については民法の規定によるため、失火責任法も適用され、公務員の失火については重大な過失がなければ国又は公共団体は責任を負わない undefined 被害者が外国人である場合には、その国籍国が日本人に対して同様の賠償を認めているかどうかにかかわらず、国家賠償法が適用される)
- 国家賠償法 1 条の「公権力の行使」と「公務員」に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 「公務員」とは国家公務員法・地方公務員法上の身分を有する者をいい、委託を受けて公権力を行使する民間人は含まれない イ 「公権力の行使」には国の行為のみが含まれ、地方公共団体の行為による損害は民法の不法行為の規定によって処理される ウ 「公権力の行使」は、純粋な私経済作用と 2 条の営造物の設置・管理を除くすべての行政作用を含むと解されており、公立学校における教育活動も含まれる エ 「公権力の行使」には立法作用と司法作用は含まれず、国会議員の立法行為や裁判官の裁判が国家賠償法上違法と評価されることはない undefined 「公権力の行使」は、行政処分や強制執行など国民に一方的に義務を課し権利を制限する権力的作用に限られ、行政指導や公立学校の教育活動のような非権力的作用は民法の不法行為の規定によって処理される)
- 損失補償の基本に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 損失補償については国家賠償法が一般法として適用され、同法に定めのない事項は民法による イ 損失補償が必要となるのは、財産権の制限が不特定多数の者に対して一般的に課される場合であり、特定の者のみに課される場合は対象とならない ウ 損失補償は、違法な公権力の行使によって生じた損害を公務員に代わって国又は公共団体が填補する制度であり、憲法 17 条がその根拠となる エ 損失補償は公務員の故意又は過失によって生じた損失を対象とするものであり、無過失の行為による損失は対象とならない undefined 損失補償は、適法な公権力の行使によって特定の者に生じた特別の犠牲を、公平の見地から全体の負担において填補する制度であり、憲法 29 条 3 項がその根拠となる)
- 国家賠償法 1 条と 2 条の比較に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 1 条も 2 条も公務員又は管理者の故意又は過失を要件とする過失責任であり、両者の違いは損害の原因が人の行為か物の状態かという点にとどまる イ 1 条は公務員の故意又は過失を要件とする過失責任であるのに対し、2 条は営造物の設置又は管理の瑕疵があれば足りる無過失責任である ウ 1 条の責任は国のみが負い、2 条の責任は地方公共団体のみが負う エ 1 条に基づく請求は民事訴訟で行うのに対し、2 条に基づく請求は行政事件訴訟法上の抗告訴訟で行わなければならない undefined 1 条は無過失責任であるのに対し、2 条は管理者の故意又は過失を要件とする過失責任である)
- 国家賠償法の求償に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 公務員の違法行為について国又は公共団体が損害を賠償した場合、被害者は賠償を受けた額を超える損害について公務員個人に請求することができる イ 公の営造物の設置・管理の瑕疵について損害を賠償した国又は公共団体は、損害の原因について責任を負うべき他の者がいるときは、その者に対して求償することができる ウ 公務員の違法行為について損害を賠償した国又は公共団体は、当該公務員に軽過失があるにすぎない場合でも、その公務員に求償することができる エ 費用負担者が損害を賠償した場合、費用負担者は損害を賠償する責任のある者に対して求償することができず、内部の負担は行政上の協議によって定める undefined 国家賠償法には求償の規定がなく、求償の可否は民法の規定によって判断される)
標準
- 次の事例について、国家賠償法に関する最高裁判所の判例の考え方に照らした結論として妥当なものはどれですか。非番の警察官 A が、制服を着用して職務質問を装い、通行人 B から金品を奪おうとして B に重傷を負わせた。B は都道府県に対して国家賠償を請求した。 (ア 都道府県は責任を負わない。A の行為は犯罪行為であり、犯罪行為は公権力の行使にあたらないため、B は A 個人に民法上の請求をするほかない イ 都道府県は責任を負う。公務員が主観的に私利を図る目的であっても、客観的に職務執行の外形を備える行為であれば「職務を行うについて」にあたる ウ 都道府県は責任を負わない。A は非番であり、私利を図る目的で行動していたため、職務を行うについての行為にはあたらない エ 都道府県は責任を負う。ただし A に故意があるため、B は都道府県と A 個人のいずれに対しても直接に賠償を請求することができる undefined 都道府県は責任を負わない。B が A を真正の職務執行中の警察官と信じたことについて B にも過失があるため、国家賠償の要件を欠く)
- 損失補償について、財産権の制限に補償が必要かどうか(特別の犠牲)に関する判例(奈良県ため池条例事件・最大判昭和 38 年)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア ため池の堤とうでの耕作を禁止する条例は、財産権の制限を法律ではなく条例で定めた点で憲法 29 条 2 項に反し無効である イ ため池の堤とうでの耕作を禁止する条例による制限は、警察目的の規制であっても財産上の損失が生じている以上、常に補償が必要である ウ ため池の堤とうでの耕作を禁止する条例による制限は、災害を防止するために財産権に内在する制約として当然に受忍すべきものであり、補償は不要である エ ため池の堤とうでの耕作を禁止する条例による制限は、堤とうの所有者という特定の者に対して、従来からの使用を全面的に禁止するという財産権の本質的内容を侵す強度の制限を課すものであるため、補償が必要である undefined ため池の堤とうでの耕作を禁止する条例による制限は、補償を要する特別の犠牲にあたるが、条例に補償規定がないため制限自体が無効となる)
- 規制権限の不行使に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 宅地建物取引業者の免許を知事が取り消さなかったことについて、業者と取引した者に対する関係で国家賠償法 1 条の違法が認められた イ 規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨・目的や権限の性質に照らし、具体的事情の下で許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、被害を受けた者との関係で国家賠償法 1 条の違法となる ウ 筑豊じん肺訴訟と水俣病関西訴訟では、いずれも規制権限の不行使は行政庁の裁量の範囲内であるとして国の責任が否定された エ 規制権限を行使するかどうかは行政庁の自由裁量に属するため、権限の不行使が国家賠償法 1 条の違法と評価されることはない undefined 規制権限を行使すれば被害を防止できた場合には、行政庁が被害の発生を予見できたかどうかや、権限行使に伴う他の利益との調整の必要性にかかわらず、結果の発生をもって権限の不行使は常に違法となる)
- 立法行為・立法不作為に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 在外国民に選挙権の行使を認めていなかった公職選挙法の状態について、立法措置が必要不可欠で明白であったのに正当な理由なく長期にわたって放置したとして、国家賠償法 1 条の違法を認め、賠償を命じた イ 国会議員の立法行為は、その内容が憲法に違反していれば直ちに国家賠償法 1 条の違法となり、国会議員は個々の国民に対して法的義務を負うため、国は当該法律により不利益を受けた個々の国民に対して賠償責任を負う ウ 在宅投票制度を廃止して復活させなかった立法不作為について、身体障害者の選挙権行使を妨げるものとして国家賠償法 1 条の違法を認めた エ 国会議員が国会の質疑において特定の個人の名誉を害する発言をした場合、その発言は職務行為であっても国家賠償法 1 条の違法となり、国は常に賠償責任を負う undefined 女性についてのみ 6 か月の再婚禁止期間を定めていた民法の規定について、100 日を超える部分を違憲としたうえで、その立法不作為は国家賠償法 1 条の違法にもあたるとして賠償を命じた)
- 国家賠償法 2 条の「公の営造物」と「瑕疵」に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 「公の営造物」は国又は公共団体が所有権を有する不動産に限られ、所有権をもたずに管理しているだけの物は含まれない イ 営造物の利用者が通常の用法に即しない異常な行動をとった結果として生じた事故についても、営造物に事故を防止する設備がなかった以上、瑕疵が認められる ウ 「公の営造物」には道路・河川などの不動産だけでなく、公用車や学校の設備などの動産も含まれ、河川や海岸のような自然公物も含まれる エ 空港や幹線道路の騒音のように、営造物の利用によって周辺住民に生ずる被害は、営造物自体に物理的な欠陥がない限り「瑕疵」にはあたらない undefined 「瑕疵」とは営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが、管理者に過失がなかったことを立証すれば瑕疵は否定される)
- 国家賠償法 1 条の「違法」と「過失」に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 国家賠償法 1 条の責任は、加害公務員の氏名と所属を特定して主張・立証することが訴訟要件となっている イ 国家賠償法 1 条の「違法」は取消訴訟における処分の違法と同一の概念であり、処分が取消訴訟で違法と判断されれば、担当した公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていたかどうかを問わず国家賠償法上も違法となる ウ 集団予防接種の副作用による被害について、加害行為を行った公務員を具体的に特定できなくても、一連の行為のいずれかに違法・過失があれば国又は公共団体は責任を負う エ 予防接種の副作用による重い障害について、最高裁判所は憲法 29 条 3 項を類推適用して損失補償による救済を認めた undefined 国会議員が国会の質疑で行った発言については、その内容が特定の個人の名誉を害するものであれば、目的や認識を問わず国家賠償法 1 条の違法となる)
- 次の事例で、被害者が損害や損失の填補を求める根拠として妥当なものはどれですか。── 国立病院の医師 E が、手術の際に注意義務を怠り、患者 F に後遺症を生じさせた。 (ア 国家賠償法 1 条に基づき、国立病院の医療行為を公権力の行使として、医師の過失を立証して国に賠償を求める イ 国立病院の医師は公務員であるため、国は責任を負わず、医師 E 個人にのみ損害賠償を求めることができる ウ 国公立病院の医療行為は公権力の行使にあたらない私経済作用と解されているため、民法(使用者責任など)に基づいて国に損害賠償を求める エ 憲法 29 条 3 項に基づき、医療という公共の目的による特別の犠牲として損失補償を求める undefined 国家賠償法 2 条に基づき、病院という営造物の管理の瑕疵として国に賠償を求める)
- 国家賠償法 1 条の「違法」に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 税務署長がした更正処分が取消訴訟で取り消された場合には、更正処分は当然に国家賠償法上違法と評価され、国は賠償責任を負う イ 国会議員が国会で行った質疑・演説によって個人の名誉が害された場合には、その発言は当然に国家賠償法上違法と評価される ウ 検察官が公訴を提起した事件について無罪判決が確定した場合には、公訴の提起は当然に国家賠償法上違法と評価される エ パトカーの追跡中に逃走車両が第三者を負傷させても、追跡の開始・継続や方法が不必要・不相当でない限り、追跡は国家賠償法上違法とならない undefined 裁判官がした裁判が上訴審で取り消された場合には、その裁判は当然に国家賠償法上違法と評価され、国は賠償責任を負う)
- 土地収用に伴う損失補償に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 収用に伴う損失の補償は収用される土地の対価に限られ、残地の価格の減少や建物の移転に要する費用はいずれも補償の対象にならない イ 補償金の額に不服がある土地所有者は、収用委員会の裁決の取消訴訟を提起して補償額の増額を求めなければならない ウ 収用の補償には土地の対価のほか、残地の価格の減少に対する補償や建物の移転料など、収用により通常受ける損失の補償も含まれる エ 収用によって土地所有者が受ける精神的苦痛についても、財産権の補償と並んで損失補償の対象となる undefined 補償金は事業認定の告示の前にあらかじめ支払われなければならず、事後の補償は憲法 29 条 3 項に反する)
発展
- 道路・河川の管理の瑕疵に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 未改修の河川については、河川が自然公物であることから、氾濫による損害について瑕疵が認められることは一切ない イ 駅のホームに点字ブロックが設置されていなかったために視覚障害者が転落した事故については、点字ブロックが設置されていなかったこと自体から直ちに瑕疵が認められる ウ 改修済みの河川については、河川管理者が改修によって安全性を確保する責任を引き受けた以上、洪水が発生した場合には改修計画で想定した規模の洪水であったかどうかを問わず当然に瑕疵が認められ、管理者は免責されない エ 道路工事現場の赤色灯が他の車両に倒された直後に発生した事故については、管理者が原状に復する時間的余裕がなかったとして瑕疵が否定された一方、故障車が国道上に約 87 時間放置されたまま発生した事故については瑕疵が認められた undefined 国道の落石事故については、防護柵の設置に多額の費用を要し予算上の制約があったことを理由に、国の責任が否定された)
- 国家賠償法 3 条から 6 条に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 郵便法が書留郵便物について郵便業務従事者の故意又は重大な過失による損害についてまで国の責任を免除していた規定は、郵便事業の特殊性から憲法 17 条に反しないとされた イ 消防職員の消火活動の不手際により残り火が再燃して建物が焼失した場合、失火責任法は適用されず、消防職員に軽過失があれば国又は公共団体は賠償責任を負う ウ 国家賠償法 6 条の相互保証主義により、外国人が被害者である場合には、その国籍国の法制度にかかわらず国家賠償法は適用されない エ 国家賠償法 3 条により費用負担者が被害者に賠償した場合、内部関係において損害を賠償する責任のある者に対して求償することは認められていない undefined 国が法律上負担すべき費用と同程度の補助金を交付し、実質的に事業を共同で行っていると認められる場合には、補助金を交付した国も 3 条の費用負担者として賠償責任を負う)
- 次の事例のうち、最高裁判所の判例の考え方に照らして、国又は公共団体の賠償責任が認められる可能性がもっとも高いものはどれですか。 (ア 国会議員が、憲法の一義的な文言に違反するとまではいえない内容の法律を制定し、その法律により一部の国民に不利益が生じた イ 厚生大臣が副作用の報告があった医薬品の承認を取り消さなかったが、当時の医学的知見に照らして承認取消しを相当とする状況にはなかった ウ 検察官が起訴した被告人について無罪判決が確定したが、起訴の時点では合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があった エ 国が、石綿工場の労働者の健康被害を防止するために排気装置の設置を義務づける省令を制定する権限をもちながら、被害の発生が予見できた時期以降も長期にわたって権限を行使しなかった undefined 裁判官が下した判決が上訴審で法令の解釈を誤ったものとして取り消されたが、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官に与えられた権限の趣旨に明らかに背いて権限を行使したと認められる事情はない)
- 損失補償に関する最高裁判所の判例の説明として妥当でないものはどれですか。 (ア 自作農創設のために農地を買収する際の対価は、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額であれば、市場価格を下回っても正当な補償にあたる イ 災害防止のためにため池の堤とうでの耕作を禁止する条例による財産権の制限は、財産権に内在する制約として受忍すべきものであり、補償を要しない ウ 法令に損失補償の規定がなくても、憲法 29 条 3 項を直接の根拠として補償を請求する余地がある エ 通常の土地収用における補償は、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような完全な補償でなければならず、金銭をもって補償する場合には被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地を取得できる金額でなければならない undefined 土地収用法が補償金の額を事業認定の告示の時における価格を基準として算定し、その後の物価変動を修正率で調整する方式を定めていることは、収用時の価格による完全な補償を保障する憲法 29 条 3 項に反して違憲である)
- 営造物の供用に伴う周辺住民の被害(供用関連瑕疵)に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 供用関連瑕疵が認められるのは営造物の利用者が被害を受けた場合に限られ、利用者でない周辺住民が被害を受けた場合には 2 条の責任は生じない イ 国道 43 号線訴訟では、道路が公共性の高い施設であることを理由に、周辺住民の被害がどれほど大きくても瑕疵は認められないとした ウ 大阪空港訴訟では、空港の供用に伴う騒音被害について 2 条の瑕疵を認め、過去の損害賠償に加えて夜間の航空機の離着陸の差止めも民事訴訟として認めた エ 国道 43 号線訴訟では、周辺住民の騒音・排気ガスの被害が受忍限度を超えるとして設置・管理の瑕疵による賠償を認めたが、供用の差止めは認めなかった undefined 国家賠償法 2 条の瑕疵は営造物そのものの物的な欠陥に限られるため、営造物に欠陥がなければ、その利用によって周辺住民に被害が生じても瑕疵は認められない)
- 損失補償の要否に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 道路工事の結果、ガソリンスタンドの地下タンクの移設が必要になった場合、その費用は道路工事によって通常生ずべき損失として道路法 70 条の補償の対象になる イ 道路工事で地下タンクが消防法の技術基準に適合しなくなったための移設費用は、警察規制に基づく損失として道路法 70 条の補償の対象にならない ウ 補償は財産の供与と同時に行われなければならず、事後に補償することは憲法 29 条 3 項に反する エ 法令に補償の規定がない財産権の制限については、憲法 29 条 3 項を直接の根拠として補償を請求することはできず、法令自体が違憲無効となる undefined 予防接種の副作用による健康被害について、最高裁判所は憲法 29 条 3 項を直接の根拠として損失補償を認めた)
国家賠償法と損失補償 ── 解答
基礎
- エ 国家賠償法に定めのない事項については民法の規定によるため、失火責任法も適用され、公務員の失火については重大な過失がなければ国又は公共団体は責任を負わない 国家賠償法に定めのない事項については民法の規定によるため、失火責任法も適用され、公務員の失火については重大な過失がなければ国又は公共団体は責任を負わない。1 条(代位責任・求償は故意重過失のみ)、2 条(無過失責任・高知落石事件)、3 条(費用負担者・鬼ヶ城事件)、4 条(失火責任法の適用)、6 条(相互保証主義)、公定力と国賠請求(最判昭和 36 年 4 月 21 日)を条文と判例で押さえる(zg-10 解説 §1・§3・§4)。
- ウ 「公権力の行使」は、純粋な私経済作用と 2 条の営造物の設置・管理を除くすべての行政作用を含むと解されており、公立学校における教育活動も含まれる 広義説(最判昭和 62 年 2 月 6 日ほか)。公務員は身分でなく機能で判断され、委託を受けた民間人も含む(最判平成 19 年 1 月 25 日)。立法・司法作用も対象になりうる(在外国民選挙権訴訟、裁判官の裁判に関する最判昭和 57 年 3 月 12 日)。地方公共団体も国家賠償法の対象。
- undefined 損失補償は、適法な公権力の行使によって特定の者に生じた特別の犠牲を、公平の見地から全体の負担において填補する制度であり、憲法 29 条 3 項がその根拠となる 損失補償は「適法」「特別の犠牲」「29 条 3 項」の 3 語で整理する。国家賠償は「違法」「17 条」。損失補償に一般法はなく、個別法と憲法直接請求による。特別の犠牲は特定の者に強度の制限が課される場合。
- イ 1 条は公務員の故意又は過失を要件とする過失責任であるのに対し、2 条は営造物の設置又は管理の瑕疵があれば足りる無過失責任である 1 条は故意・過失が要件、2 条は瑕疵(通常有すべき安全性の欠如)があれば足りる。いずれも国・公共団体が主体で、請求はどちらも民事訴訟による。
- イ 公の営造物の設置・管理の瑕疵について損害を賠償した国又は公共団体は、損害の原因について責任を負うべき他の者がいるときは、その者に対して求償することができる 2 条 2 項。1 条 2 項の公務員への求償は故意または重大な過失がある場合に限られる。公務員個人は被害者に対して直接責任を負わない(最判昭和 30 年 4 月 19 日)。3 条 2 項により、費用負担者が賠償したときは内部関係で責任のある者に求償できる。
標準
- イ 都道府県は責任を負う。公務員が主観的に私利を図る目的であっても、客観的に職務執行の外形を備える行為であれば「職務を行うについて」にあたる 都道府県は責任を負う。公務員が主観的に私利を図る目的であっても、客観的に職務執行の外形を備える行為であれば「職務を行うについて」にあたる。外形標準説(最判昭和 31 年 11 月 30 日)、職務行為基準説(最判平成 5 年 3 月 11 日)、検察官の公訴提起(芦別事件 最判昭和 53 年 10 月 20 日)、高知落石事件(最判昭和 45 年 8 月 20 日)、大東水害訴訟(最判昭和 59 年 1 月 26 日)。判例は結論と理由づけの一言をセットで覚える(zg-10 解説 §1・§3)。
- ウ ため池の堤とうでの耕作を禁止する条例による制限は、災害を防止するために財産権に内在する制約として当然に受忍すべきものであり、補償は不要である ため池の堤とうでの耕作を禁止する条例による制限は、災害を防止するために財産権に内在する制約として当然に受忍すべきものであり、補償は不要である。河川附近地制限令事件(最大判昭和 43 年 11 月 27 日)、農地改革事件(最大判昭和 28 年 12 月 23 日)と土地収用(最判昭和 48 年 10 月 18 日)、奈良県ため池条例事件(最大判昭和 38 年 6 月 26 日)、補償の時期(最大判昭和 24 年 7 月 13 日)と福原輪中堤事件(最判昭和 63 年 1 月 21 日)。損失補償は「適法・特別の犠牲・29 条 3 項」の 3 語で整理する(zg-10 解説 §5)。
- イ 規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨・目的や権限の性質に照らし、具体的事情の下で許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、被害を受けた者との関係で国家賠償法 1 条の違法となる 筑豊じん肺訴訟(最判平成 16 年 4 月 27 日)・水俣病関西訴訟(最判平成 16 年 10 月 15 日)で違法が認められ、宅建業者事件(最判平成元年 11 月 24 日)・クロロキン訴訟(最判平成 7 年 6 月 23 日)では否定された。予見可能性・結果回避可能性を含めて「著しく合理性を欠く」かで判断する。
- ア 在外国民に選挙権の行使を認めていなかった公職選挙法の状態について、立法措置が必要不可欠で明白であったのに正当な理由なく長期にわたって放置したとして、国家賠償法 1 条の違法を認め、賠償を命じた 在外国民選挙権訴訟(最大判平成 17 年 9 月 14 日)。立法行為は原則として違法にならず(在宅投票制度廃止事件 最判昭和 60 年 11 月 21 日は違法を否定)、再婚禁止期間違憲訴訟(最大判平成 27 年 12 月 16 日)は違憲だが国賠法上は違法でないとした。国会議員の発言は特別の事情がなければ違法にならない(最判平成 9 年 9 月 9 日)。
- ウ 「公の営造物」には道路・河川などの不動産だけでなく、公用車や学校の設備などの動産も含まれ、河川や海岸のような自然公物も含まれる 営造物には動産・自然公物も含まれ、所有権は不要。瑕疵は客観的に判断され過失は不要。テニス審判台事件(最判平成 5 年 3 月 30 日)は通常の用法に即しない行動として瑕疵を否定。供用関連瑕疵は大阪空港訴訟(最大判昭和 56 年 12 月 16 日)・国道 43 号線訴訟(最判平成 7 年 7 月 7 日)で認められた。
- ウ 集団予防接種の副作用による被害について、加害行為を行った公務員を具体的に特定できなくても、一連の行為のいずれかに違法・過失があれば国又は公共団体は責任を負う 最判昭和 57 年 4 月 1 日。違法は職務行為基準説(最判平成 5 年 3 月 11 日)。予防接種禍について最高裁は禁忌者の識別を怠った過失を推定して国賠法 1 条で救済した(最判平成 3 年 4 月 19 日)。加害公務員の特定は不要。国会議員の発言は特別の事情が必要(最判平成 9 年 9 月 9 日)。
- ウ 国公立病院の医療行為は公権力の行使にあたらない私経済作用と解されているため、民法(使用者責任など)に基づいて国に損害賠償を求める 国公立病院の医療行為は公権力の行使にあたらない私経済作用と解されているため、民法(使用者責任など)に基づいて国に損害賠償を求める。違法な公権力の行使 → 1 条、営造物の瑕疵 → 2 条(無過失責任)、適法な特別の犠牲 → 損失補償、私経済作用 → 民法、失火 → 4 条により失火責任法(最判昭和 53 年 7 月 17 日)(zg-10 解説 §1・§3・§4・§5)。
- エ パトカーの追跡中に逃走車両が第三者を負傷させても、追跡の開始・継続や方法が不必要・不相当でない限り、追跡は国家賠償法上違法とならない 最判昭和 61 年 2 月 27 日(パトカー追跡)。裁判は裁判官が違法・不当な目的をもって裁判をしたなどの特別の事情が要る(最判昭和 57 年 3 月 12 日)、起訴は起訴時の合理的嫌疑があれば違法でない(芦別事件)、更正処分は職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたかで判断(最判平成 5 年 3 月 11 日)、国会議員の発言は職務と無関係に違法・不当な目的があるなど特別の事情が要る(最判平成 9 年 9 月 9 日)。
- ウ 収用の補償には土地の対価のほか、残地の価格の減少に対する補償や建物の移転料など、収用により通常受ける損失の補償も含まれる 土地収用法 71 条〜(土地の対価)・74 条(残地補償)・77 条(移転料)など。補償額の争いは収用委員会の裁決の取消訴訟ではなく、起業者と土地所有者の間の形式的当事者訴訟(133 条)による。事後の補償も許される(最大判昭和 24 年 7 月 13 日)。補償の対象は財産的・経済的な損失で、精神的損失は含まれない。
発展
- エ 道路工事現場の赤色灯が他の車両に倒された直後に発生した事故については、管理者が原状に復する時間的余裕がなかったとして瑕疵が否定された一方、故障車が国道上に約 87 時間放置されたまま発生した事故については瑕疵が認められた 最判昭和 50 年 6 月 26 日と最判昭和 50 年 7 月 25 日。多摩川水害訴訟(最判平成 2 年 12 月 13 日)は計画水準の安全性を基準にする。大東水害訴訟(最判昭和 59 年 1 月 26 日)は過渡的安全性で足りるとしたが瑕疵の可能性を否定したわけではない。点字ブロック事件(最判昭和 61 年 3 月 25 日)は普及の程度などを総合考慮。高知落石事件(最判昭和 45 年 8 月 20 日)は予算の制約を免責事由と認めなかった。
- undefined 国が法律上負担すべき費用と同程度の補助金を交付し、実質的に事業を共同で行っていると認められる場合には、補助金を交付した国も 3 条の費用負担者として賠償責任を負う 鬼ヶ城事件(最判昭和 50 年 11 月 28 日)。郵便法違憲判決(最大判平成 14 年 9 月 11 日)は書留の故意重過失免責と特別送達の軽過失免責を違憲とした。失火責任法は適用され重過失が必要(最判昭和 53 年 7 月 17 日)。6 条は相手国が日本人に同様の保護を認める場合に適用。3 条 2 項に求償規定がある。
- エ 国が、石綿工場の労働者の健康被害を防止するために排気装置の設置を義務づける省令を制定する権限をもちながら、被害の発生が予見できた時期以降も長期にわたって権限を行使しなかった 泉南アスベスト訴訟(最判平成 26 年 10 月 9 日)で規制権限の不行使が違法とされた類型。裁判官の裁判(最判昭和 57 年 3 月 12 日)、検察官の公訴提起(芦別事件)、立法行為(在宅投票制度廃止事件)、クロロキン訴訟(最判平成 7 年 6 月 23 日)はいずれも違法が否定される類型。
- undefined 土地収用法が補償金の額を事業認定の告示の時における価格を基準として算定し、その後の物価変動を修正率で調整する方式を定めていることは、収用時の価格による完全な補償を保障する憲法 29 条 3 項に反して違憲である 最判平成 14 年 6 月 11 日は土地収用法 71 条の方式を合憲とした。他の肢は、最判昭和 48 年 10 月 18 日、農地改革事件(最大判昭和 28 年 12 月 23 日)、河川附近地制限令事件(最大判昭和 43 年 11 月 27 日)、奈良県ため池条例事件(最大判昭和 38 年 6 月 26 日)のとおり。
- エ 国道 43 号線訴訟では、周辺住民の騒音・排気ガスの被害が受忍限度を超えるとして設置・管理の瑕疵による賠償を認めたが、供用の差止めは認めなかった 供用関連瑕疵(機能的瑕疵)は大阪空港訴訟(最大判昭和 56 年 12 月 16 日)と国道 43 号線訴訟(最判平成 7 年 7 月 7 日)で認められた。大阪空港訴訟は夜間飛行の差止め請求を民事訴訟としては不適法とし、過去の損害賠償は認容。国道 43 号線訴訟は公共性を理由に賠償を否定することはせず、受忍限度論で判断した。
- イ 道路工事で地下タンクが消防法の技術基準に適合しなくなったための移設費用は、警察規制に基づく損失として道路法 70 条の補償の対象にならない モービル石油事件(最判昭和 58 年 2 月 18 日)。道路工事に伴う損失であっても、消防法上の危険物規制という警察規制に由来する損失は補償されない。予防接種禍について最高裁は国家賠償(過失の推定)で救済した(最判平成 3 年 4 月 19 日)。補償規定がなくても 29 条 3 項に基づき直接請求できる余地がある(河川附近地制限令事件)。事後補償も許される(最大判昭和 24 年 7 月 13 日)。
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