憲法総論と人権総論(人権の享有主体・私人間効力) ── 問題
基礎
- 次の判例について、マクリーン事件(最大判昭和 53 年)で最高裁が示した結論として妥当なものはどれですか。 (ア 外国人には日本の政治に関わる活動の自由が一切保障されないため、政治活動を理由とする在留期間更新の拒否は当然に適法である イ 外国人の在留の可否は法務大臣の完全な自由裁量であり、その判断が裁判所の審査の対象になることはない ウ 外国人の人権は法律の範囲内でのみ保障されるため、出入国管理令に明文の規定がない以上、在留中の政治活動を在留期間更新の判断で考慮することは許されない エ 外国人にも日本国民と全く同じ人権保障が及ぶため、合法的な政治活動を理由に在留期間の更新を拒否することは違憲である undefined 外国人にも権利の性質上許される限り人権保障が及ぶが、在留制度の枠内の保障であり、在留中の政治活動を在留期間更新の消極的事情として考慮できる)
- 日本国憲法の条文について、天皇の国事行為として憲法 6 条・7 条に定められているものはどれですか。 (ア 内閣総理大臣の指名 イ 法律の制定 ウ 条約の締結 エ 衆議院の解散 undefined 最高裁判所裁判官の指名)
- 外国人の人権に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 人権規定は、権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き、外国人にも等しく及ぶ イ 外国人には自由権が保障されるが、13 条の幸福追求権に由来する権利は保障されない ウ 外国人にも入国の自由が保障され、正当な理由なく入国を拒むことは憲法に反する エ 人権規定は日本国民を対象とするものであり、外国人には法律で定めた範囲でのみ保障される undefined 外国人にも国政選挙の選挙権が保障されるが、被選挙権は保障されない)
- 憲法総論に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 憲法の前文は憲法の一部として法規範性をもつが、前文のみを根拠に裁判で権利を主張できる裁判規範性は否定的に解されている イ 日本国憲法は改正の手続が法律と同じである軟性憲法であり、国会の過半数の議決で改正できる ウ 立憲的意味の憲法とは、「憲法」という名称をもつ成文の法典のことをいう エ 憲法 99 条の憲法尊重擁護義務は、公務員だけでなくすべての国民に課されている undefined 天皇は国政に関する権能を有しないが、国事行為については天皇自身がその責任を負う)
標準
- 次の事例について、判例の考え方に照らした結論として妥当なものはどれですか。株式会社 B の取締役が、会社の資金から特定の政党に政治献金を行った。株主 C が、この献金は会社の目的の範囲外で無効だと主張した。 (ア 献金は無効である。法人は人権の享有主体ではなく、政治的行為の自由をもたないからである イ 献金は目的の範囲内で有効である。会社も社会的実在として政治的行為の自由をもち、政党への寄付はその一環と認められる ウ 献金は目的の範囲外で無効である。会社は営利を目的とするため、営利と無関係な政治献金は定款に反する エ 献金は有効だが、取締役は株主全員の同意を得ていない点で会社に対する損害賠償責任を負う undefined 献金は目的の範囲外で無効である。会社は強制加入団体と同様に構成員の思想が多様だからである)
- 憲法総論・人権総論の考え方について、憲法が最高法規である実質的な根拠として一般に説明されるものはどれですか。 (ア 憲法が最高裁判所の違憲審査権によって守られていること イ 憲法が人間の権利・自由を保障する規範であること(97 条が 98 条の直前に置かれている) ウ 憲法が天皇によって公布され、国民全体に義務として課されていること エ 憲法の改正には法律より厳しい手続が定められていること(硬性憲法) undefined 憲法が国の唯一の立法機関である国会によって制定されたこと)
- 外国人の地方選挙権に関する最高裁判所の判例(最判平成 7 年)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 憲法は外国人に地方選挙権を保障しておらず、法律で付与することも国民主権の原理に反して許されない イ 憲法は外国人の選挙権について何も定めておらず、その可否は各地方公共団体の条例に委ねられる ウ 憲法は外国人に地方選挙権を保障していないが、永住者等に法律で地方選挙権を付与することは憲法上禁止されていない エ 憲法は外国人に地方選挙権を保障しており、それを認めていない公職選挙法の規定は違憲である undefined 憲法は外国人に国政選挙権を保障していないが、地方選挙権は 93 条 2 項の「住民」として当然に保障される)
- 法人の人権に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 強制加入団体である司法書士会が被災した他の司法書士会に復興支援の寄付をすることは、目的の範囲外で無効である イ 法人は自然人と異なり人権の享有主体とはならないため、政治的行為の自由は認められない ウ 任意加入団体の決議は構成員全員を拘束するため、政治献金に反対する構成員も負担を免れない エ 会社の政治献金は、選挙権をもたない法人による政治への介入であり、定款の目的の範囲外で無効である undefined 強制加入団体である税理士会が政治団体への寄付を目的として特別会費を徴収する決議は、目的の範囲外で無効である)
- 憲法の人権規定の私人間効力に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 判例は、私人間の争いは民法 90 条などの私法の一般条項を通じて憲法の趣旨を取り込んで解決するという間接適用説の立場に立っている イ 判例は、憲法の人権規定は国家と個人の関係のみを規律するとして、私人間の争いに憲法の趣旨を一切及ぼさない立場に立っている ウ 判例は、私人間には憲法が直接適用されるとしつつ、企業の契約締結の自由を理由に思想を理由とする雇入れ拒否を適法とした エ 判例は、憲法の人権規定が私人間にも直接適用されるとして、私人による人権侵害を憲法違反として無効とする立場に立っている undefined 通説によれば、労働基本権を定める 28 条や投票の秘密を定める 15 条 4 項も、私人間には直接適用されない)
- 砂川事件(最大判昭和 34 年)で最高裁判所が示した内容として妥当なものはどれですか。 (ア 駐留米軍は 9 条 2 項の「戦力」にあたるため違憲であり、安保条約もこれに基づく限りで無効である イ 駐留米軍はわが国が指揮権・管理権をもつものではないため 9 条 2 項の「戦力」にあたらず、安保条約のような高度に政治性のある条約は一見きわめて明白に違憲無効でない限り司法審査になじまない ウ 安保条約は国会の承認を経た条約であるため憲法より優位に立ち、裁判所は憲法適合性を審査できない エ 自衛隊はわが国が指揮権をもつ実力組織であるため 9 条 2 項の「戦力」にあたり、違憲である undefined 安保条約の憲法適合性は高度に政治的な問題であるため、裁判所は一切審査できず、駐留米軍の合憲性についても判断を示さなかった)
- 外国人の人権に関する最高裁判所の判例の説明として妥当でないものはどれですか。 (ア 在留外国人には、海外旅行後に日本に再入国する自由が憲法 22 条 2 項により保障されている イ 外国人の政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定に影響を及ぼすようなものを除いて保障される ウ 社会保障について自国民を在留外国人より優先的に扱うことは、立法府の裁量の範囲に属する エ みだりに指紋の押捺を強制されない自由は憲法 13 条により保障され、外国人にも等しく及ぶ undefined 公権力の行使等を行う管理職への昇任を日本国民に限ることは、憲法 14 条に反しない)
発展
- 公務員の政治的行為に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 猿払事件では、より制限的でない他の選びうる手段があるかを厳格に審査した上で、禁止規定を合憲とした イ 堀越事件では、猿払事件の判例を明示的に変更し、公務員の政治的行為の禁止規定そのものを違憲とした ウ 堀越事件では、管理職的地位にある職員による政党機関紙の配布も、休日であれば処罰の対象にならないとした エ 堀越事件では、禁止される「政治的行為」を職務の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものに限定して解釈し、管理職でない職員の休日の政党機関紙配布を無罪とした undefined 猿払事件では、公務員の政治的行為の禁止は必要最小限度を超えるとして、勤務時間外の行為への適用を違憲とした)
- 被収容者の人権に関するよど号ハイジャック記事抹消事件(最大判昭和 58 年)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 未決拘禁者の新聞閲読の制限は、明白かつ現在の危険が存在する場合にのみ許され、本件の記事抹消は違法とされた イ 新聞記事の抹消は行政権による表現内容の事前審査であるから検閲にあたり、憲法 21 条 2 項により絶対的に禁止される ウ 未決拘禁者の新聞閲読を制限できるのは、閲読を許すと監獄内の規律・秩序の維持に放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性がある場合に、必要かつ合理的な範囲に限られる エ 未決拘禁者は特別権力関係にあるため、監獄の長は法律の根拠なくその判断で新聞閲読を制限でき、その判断は司法審査の対象にならない undefined 未決拘禁者は無罪の推定を受けるため、その新聞閲読の自由は一般国民と全く同じ基準で保障され、制限は一切許されない)
- 次の事例のうち、最高裁判所の判例の考え方に照らして、憲法または法律に反するとされる可能性がもっとも高いものはどれですか。 (ア 法務大臣が、在留期間の更新を申請した外国人の在留中の合法的な政治活動を、消極的な事情として考慮する イ 私立大学が、学則により学生の学外政治団体への加入を届出制とし、違反した学生を退学処分とする ウ 国が、私人との対等な立場で行う土地の売買契約を締結する際に、その用途が 9 条に反するかを考慮しない エ 強制加入団体である税理士会が、政治資金規正法上の政治団体に寄付するための特別会費を、会員の多数決で徴収する undefined 株式会社が、株主総会の決議を経ずに、取締役の判断で政党に相当額の政治献金をする)
憲法総論と人権総論(人権の享有主体・私人間効力) ── 解答
基礎
- undefined 外国人にも権利の性質上許される限り人権保障が及ぶが、在留制度の枠内の保障であり、在留中の政治活動を在留期間更新の消極的事情として考慮できる 外国人にも権利の性質上許される限り人権保障が及ぶが、在留制度の枠内の保障であり、在留中の政治活動を在留期間更新の消極的事情として考慮できる。判例は「結論」と「理由づけ」をセットで覚える(zh-01 解説の表を参照)。
- エ 衆議院の解散 衆議院の解散。憲法 1〜8 条(天皇)と 97〜99 条(最高法規)は条文どおりに問われやすい。
- ア 人権規定は、権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き、外国人にも等しく及ぶ マクリーン事件(最大判昭和 53 年 10 月 4 日)の性質説。入国の自由は保障されず(最大判昭和 32 年)、選挙権は国政・地方とも憲法上保障されない(最判平成 7 年 2 月 28 日)。指紋押捺の判例では 13 条に由来する自由が外国人にも及ぶとしている。
- ア 憲法の前文は憲法の一部として法規範性をもつが、前文のみを根拠に裁判で権利を主張できる裁判規範性は否定的に解されている 99 条の名宛人に国民は含まれない。日本国憲法は硬性憲法(96 条)。国事行為の責任は内閣が負う(3 条)。「憲法」という名の法典は形式的意味の憲法。
標準
- イ 献金は目的の範囲内で有効である。会社も社会的実在として政治的行為の自由をもち、政党への寄付はその一環と認められる 献金は目的の範囲内で有効である。会社も社会的実在として政治的行為の自由をもち、政党への寄付はその一環と認められる。対応する判例:マクリーン事件・八幡製鉄事件・日産自動車事件・昭和女子大事件・群馬司法書士会事件。
- イ 憲法が人間の権利・自由を保障する規範であること(97 条が 98 条の直前に置かれている) 憲法が人間の権利・自由を保障する規範であること(97 条が 98 条の直前に置かれている)。
- ウ 憲法は外国人に地方選挙権を保障していないが、永住者等に法律で地方選挙権を付与することは憲法上禁止されていない 93 条 2 項の「住民」は日本国民を指すとしつつ、傍論で、永住者等で地方公共団体と特段に緊密な関係をもつ外国人に法律で地方選挙権を与えることは憲法上禁止されていない(許容説)と述べた。「保障」と「許容」を区別する。
- undefined 強制加入団体である税理士会が政治団体への寄付を目的として特別会費を徴収する決議は、目的の範囲外で無効である 南九州税理士会事件(最判平成 8 年 3 月 19 日)。会社の政治献金は目的の範囲内(八幡製鉄事件 最大判昭和 45 年)、司法書士会の復興支援寄付は目的の範囲内(群馬司法書士会事件 最判平成 14 年)。
- ア 判例は、私人間の争いは民法 90 条などの私法の一般条項を通じて憲法の趣旨を取り込んで解決するという間接適用説の立場に立っている 三菱樹脂事件(最大判昭和 48 年 12 月 12 日)。15 条 4 項・18 条・28 条は私人間に直接適用されると一般に解されている。
- イ 駐留米軍はわが国が指揮権・管理権をもつものではないため 9 条 2 項の「戦力」にあたらず、安保条約のような高度に政治性のある条約は一見きわめて明白に違憲無効でない限り司法審査になじまない 一審(伊達判決)は駐留米軍を違憲としたが、最高裁は破棄した。「一見きわめて明白に違憲無効」でない限り審査しない、という留保つきの統治行為論的な判断。自衛隊の合憲性は判断していない。
- ア 在留外国人には、海外旅行後に日本に再入国する自由が憲法 22 条 2 項により保障されている 再入国の自由は保障されない(森川キャサリーン事件 最判平成 4 年 11 月 16 日)。他は指紋押捺事件(最判平成 7 年)・塩見訴訟(最判平成元年)・東京都管理職選考事件(最大判平成 17 年)・マクリーン事件のとおり。
発展
- エ 堀越事件では、禁止される「政治的行為」を職務の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものに限定して解釈し、管理職でない職員の休日の政党機関紙配布を無罪とした 堀越事件(最判平成 24 年 12 月 7 日)は限定解釈により無罪としたが、猿払事件(最大判昭和 49 年 11 月 6 日)を変更していない。同日の世田谷事件では管理職的地位にある職員の配布行為を有罪とした。猿払事件は合理的関連性の基準で合憲とした。
- ウ 未決拘禁者の新聞閲読を制限できるのは、閲読を許すと監獄内の規律・秩序の維持に放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性がある場合に、必要かつ合理的な範囲に限られる 障害発生の「相当の蓋然性」と「必要かつ合理的な範囲」が判断枠組み。監獄の長の判断には裁量が認められ、本件の抹消処分は適法とされた。
- エ 強制加入団体である税理士会が、政治資金規正法上の政治団体に寄付するための特別会費を、会員の多数決で徴収する 南九州税理士会事件で無効とされた類型。他の肢は、八幡製鉄事件・昭和女子大事件・百里基地訴訟・マクリーン事件で、それぞれ違法・違憲とはされなかった。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zh-01/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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