財政・地方自治・憲法改正 ── 問題
基礎
- 財政に関する憲法の規定について、決算(90 条)に関する説明として正しいものはどれですか。 (ア 内閣が検査し、次の年度に国会の議決を経なければ支出の効力が失われる イ 会計検査院が検査し、衆議院の優越により衆議院の議決が国会の議決となる ウ 会計検査院が検査し、国会が承認しなければ内閣は総辞職しなければならない エ 会計検査院がすべて検査し、内閣は次の年度にその検査報告とともに国会に提出しなければならない undefined 国会が直接検査し、その結果を内閣と会計検査院に通知する)
- 地方自治法の直接請求について、市長の解職に必要な署名数と請求先の組み合わせとして正しいものはどれですか。 (ア 有権者の 3 分の 1 以上 ── 選挙管理委員会 イ 有権者の 3 分の 1 以上 ── 長 ウ 有権者の 50 分の 1 以上 ── 選挙管理委員会 エ 有権者の 50 分の 1 以上 ── 長 undefined 有権者の 3 分の 1 以上 ── 議会の議長)
- 財政民主主義に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 憲法 83 条は国の財政を処理する権限は内閣に属すると定めており、国会は決算の審査を通じて事後的に関与するにとどまる イ 財政民主主義の原則により、国債の発行は国会の議決を要しないが、租税の賦課には法律の根拠が必要である ウ 憲法 83 条は国の財政を処理する権限は国会の議決に基づいて行使しなければならないと定めており、予算の議決・租税法律主義・決算の国会提出などはこの原則の具体化である エ 財政民主主義の原則により、皇室の費用は国会の議決を経ることなく皇室が自ら決定できる undefined 財政民主主義の原則により、内閣は財政状況を国会にのみ報告すればよく、国民への報告は不要である)
- 憲法 89 条と私立学校への助成に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 私学助成は 89 条後段の問題ではなく、89 条前段の政教分離の問題として合憲性が判断される イ 私立学校振興助成法などにより業務・会計の報告徴収や予算変更の勧告などの監督が及んでいれば「公の支配」に属するとして、私学助成を合憲とするのが通説・実務である ウ 89 条後段は教育の事業への支出を一切禁止しているため、私立学校への助成は法律の定めがあっても許されない エ 私立学校は国や地方公共団体の設置するものではないため「公の支配」に属さず、私学助成は 89 条後段に反し違憲であるとするのが通説・実務である undefined 89 条後段は「公の支配」に属しない事業への支出を禁止しているが、教育の事業はこの規定の対象外である)
- 地方自治法の直接請求に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 地方税の賦課徴収に関する条例も、他の条例と同様に制定・改廃の直接請求の対象となる イ 長の解職の請求は有権者の 3 分の 1 以上の署名で議会に対して行い、議会の 3 分の 2 以上の同意で長は失職する ウ 条例の制定・改廃の請求は有権者の 50 分の 1 以上の署名で長に対して行い、長は意見を付けて議会にかけるが、議会が否決すれば条例は成立しない エ 議会の解散の請求は有権者の 50 分の 1 以上の署名で長に対して行い、長が議会を解散する undefined 条例の制定・改廃の請求は有権者の 3 分の 1 以上の署名で選挙管理委員会に対して行い、住民投票で過半数の同意があれば条例は成立する)
標準
- 次の事例について、判例の考え方に照らした結論として妥当なものはどれですか。G 県では条例により処罰される行為が、隣の H 県では処罰されない。G 県で処罰された I は、地域によって取扱いが異なることは 14 条の平等原則に反すると主張した。 (ア 条例による地域差は 14 条の問題ではなく 31 条の問題であり、罰則の内容が明確であれば地域差があっても許される イ 地域による取扱いの差が生じるのは条例が法律の範囲を超えているからであり、条例は 94 条に反し無効である ウ 憲法が地方公共団体に条例制定権を認めた以上、地域によって取扱いに差が生じることは当然に予定されており、14 条に反しない エ 地域による取扱いの差は 14 条に反するが、地方自治の本旨との調整のため、罰則が罰金にとどまる場合に限って許される undefined 同じ行為が地域によって処罰されたりされなかったりすることは法の下の平等に反するため、罰則を伴う条例は全国一律の内容でなければならない)
- 地方自治と憲法改正について、憲法改正の限界について通説(限界説)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 憲法の基本原理は改正できないが、96 条の改正手続そのものは通常の法律と同じ手続で改正できる イ 憲法改正は条文の一部の修正に限られ、新たな条文を追加することや章を新設することはできない ウ 憲法改正権は憲法制定権力が憲法によって作り出した権力であるため、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義などの基本原理を破壊する改正はできない エ 96 条の手続を踏めばいかなる内容の改正も可能であり、国民主権を天皇主権に改めることも法的には許される undefined 憲法改正は国会の発議によるため、その限界は国会の判断に委ねられ、裁判所は改正の内容を審査できない)
- 租税法律主義に関する最高裁判所の判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 旭川市国民健康保険条例事件では、国民健康保険料は 84 条の租税にあたるため、保険料率を条例で定めず告示に委任することは違憲であるとした イ パチンコ球遊器事件では、通達は法律ではないため、通達を根拠として新たに課税を行うことは 84 条の租税法律主義に反し違憲であるとした ウ 旭川市国民健康保険条例事件では、国民健康保険料は租税ではないため 84 条の趣旨は一切及ばず、料率の決定方法は市長の裁量に委ねられるとした エ 判例によれば、84 条の租税法律主義は国税についてのみ適用され、地方税については条例で自由に課税要件を定めることができる undefined パチンコ球遊器事件では、通達をきっかけに課税が行われた場合でも、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、課税処分は法の根拠に基づくものとして 84 条に反しないとした)
- 予算に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 国会は予算を減額修正することはできるが、増額修正はいかなる場合も内閣の予算作成権を侵害するため許されないとするのが政府見解である イ 予算の作成・提出権は内閣に専属するが、国会議員も予算案を発議することができる ウ 通説は予算を法律とは異なる国法の一形式ととらえる予算法形式説をとっており、この立場では予算は政府を拘束する法規範であるが国民を直接拘束するものではない エ 年度開始までに予算が成立しないときは、明治憲法と同様に前年度の予算をそのまま施行することが憲法で認められている undefined 通説は予算を法律の一種ととらえる予算法律説をとっており、予算が成立すればそれに対応する法律がなくても内閣は支出をすることができる)
- 地方公共団体の組織に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 地方公共団体の長と議会の議員はいずれも住民の直接選挙で選ばれる首長制(二元代表制)がとられているが、議会による長の不信任決議と長による議会の解散など議院内閣制的な要素も取り入れられている イ 最高裁は東京都の特別区を憲法上の地方公共団体にあたるとし、区長の公選制を廃止した法律を違憲とした ウ 93 条 2 項の「住民」には外国人も含まれるため、外国人に地方選挙権を認めていない公職選挙法は違憲である エ 地方公共団体の議会は諮問機関であり、条例の制定権は長に属する undefined 地方公共団体の長は議会の議員の中から議会が選出する議院内閣制がとられており、住民が長を直接選挙することは憲法上認められていない)
- 徳島市公安条例事件(最大判昭和 50 年)で最高裁判所が示した法律と条例の関係に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 法律が規制している事項については、目的のいかんを問わず条例で重ねて規制することはできず、法律より厳しい基準を定める条例は常に無効である イ 法律に明文の規定がない事項については、法律がその事項を規制せず放置する趣旨である場合でも、条例で自由に規制することができる ウ 法律と条例が同じ目的で同じ事項を規制する場合、条例は法律と全く同じ内容でなければならず、規制対象を広げること(横出し)は許されない エ 条例は住民の代表機関が制定する自主法であるため、法律と矛盾抵触しても地域の実情に適合する限り有効である undefined 法律と条例が矛盾抵触するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するだけでなく、それぞれの趣旨・目的・内容・効果を比較して判断すべきであり、法律が全国一律の規制を意図していなければ、同じ目的でより厳しい規制を定める条例も許される)
発展
- 条例制定権の限界に関する説明として妥当でないものはどれですか。 (ア 法定受託事務についても、法令に反しない範囲であれば地方公共団体は条例を制定することができる イ 条例で財産権を制限することは 29 条 2 項の「法律」に反せず、災害防止のための内在的制約であれば補償も不要であるとするのが判例である ウ 条例で罰則を定めるには、政令への委任と同様に法律による個別具体的な委任が必要であり、地方自治法の一般的な委任規定では 31 条の要請を満たさないとするのが判例である エ 条例による課税は 84 条の「法律の定める条件」による課税として許されるが、地方税法の趣旨に反する条例は違法無効であるとするのが判例である undefined 条例によって処罰の有無に地域差が生じることは、憲法が条例制定権を認めた以上当然に予定されており、14 条に反しないとするのが判例である)
- 憲法改正の国民投票に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 国民投票法により、国民投票は国会の発議の日から 30 日以内に行われ、投票権者は満 20 歳以上の日本国民で、有権者総数の過半数の賛成があれば承認される イ 国民投票法により、国民投票は国会の発議の日から 60 日以後 180 日以内に行われ、投票権者は満 18 歳以上の日本国民で、有効投票総数の過半数の賛成があれば承認される ウ 憲法 96 条は国民投票の承認の要件を「過半数」と定めているが、国民投票法はこれを有権者総数の過半数と定め、あわせて最低投票率を 50 パーセントとしている エ 国民投票で承認されなかった場合、国会は同一内容の改正案を 10 年間発議することができない undefined 国民投票は必ず衆議院議員総選挙と同時に行わなければならず、特別の国民投票を単独で実施することは認められていない)
- 憲法改正に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 憲法改正の発議は各議院の出席議員の 3 分の 2 以上の賛成を要し、参議院が否決した場合には衆議院が総議員の 3 分の 2 以上で再可決すれば発議したものとみなされる イ 日本国憲法は明治憲法 73 条の改正手続によって成立したため、通説は日本国憲法を明治憲法の改正として法的に連続したものと説明している ウ 憲法改正の原案は内閣のみが国会に提出することができ、国会議員には原案の提出権が認められていない エ 憲法改正が国民投票で承認されたときは、内閣総理大臣が内閣の名で直ちにこれを公布する undefined 憲法改正の発議は各議院の総議員の 3 分の 2 以上の賛成を要し、この点について衆議院の優越は認められておらず、両院がそれぞれ可決して初めて国会が発議したことになる)
- 次の記述のうち、憲法または法律の定めに照らして正しいものはどれですか。 (ア 予備費の支出について事後に国会の承諾が得られなかった場合、その支出はさかのぼって無効となり、内閣は支出額を国庫に返還しなければならない イ 予備費の支出について事後に国会の承諾が得られなかった場合でも、既に行われた支出の法的効力には影響せず、内閣の政治責任が問われるにとどまる ウ 予算について参議院が衆議院と異なる議決をした場合、両院協議会を開かずに衆議院が出席議員の 3 分の 2 以上で再可決すれば予算は成立する エ 決算について国会が否認の議決をした場合、当該年度の支出はすべて無効となり、内閣は総辞職しなければならない undefined 会計検査院は内閣の下に置かれる行政機関であるため、内閣の指揮監督に従って決算を検査する)
財政・地方自治・憲法改正 ── 解答
基礎
- エ 会計検査院がすべて検査し、内閣は次の年度にその検査報告とともに国会に提出しなければならない 会計検査院がすべて検査し、内閣は次の年度にその検査報告とともに国会に提出しなければならない。財政の条文は「誰が・何を・どの段階で」を主語つきで確認する。
- ア 有権者の 3 分の 1 以上 ── 選挙管理委員会 市長の解職の直接請求は有権者の 3 分の 1 以上 ── 選挙管理委員会。「50 分の 1 は長・監査委員/3 分の 1 は選管(解散・解職)と長(主要公務員)」と 2 グループで覚える。有権者 40 万人超の団体では 3 分の 1 の要件が緩和される。
- ウ 憲法 83 条は国の財政を処理する権限は国会の議決に基づいて行使しなければならないと定めており、予算の議決・租税法律主義・決算の国会提出などはこの原則の具体化である 83 条。国債の発行(債務負担)も国会の議決による(85 条)。皇室費用は予算に計上して国会の議決を経る(88 条)。内閣は国会と国民に財政状況を報告する(91 条)。
- イ 私立学校振興助成法などにより業務・会計の報告徴収や予算変更の勧告などの監督が及んでいれば「公の支配」に属するとして、私学助成を合憲とするのが通説・実務である 「公の支配」を緩やかに解し、89 条後段の趣旨を公費の濫用防止と理解する立場。宗教系私立学校への助成は前段(政教分離)との関係も問題になりうるが、教育目的の助成は許されると解されている。
- ウ 条例の制定・改廃の請求は有権者の 50 分の 1 以上の署名で長に対して行い、長は意見を付けて議会にかけるが、議会が否決すれば条例は成立しない 条例制定改廃は 50 分の 1・長。解散は 3 分の 1・選管・住民投票。長の解職は 3 分の 1・選管・住民投票。地方税等に関する条例は直接請求の対象外。
標準
- ウ 憲法が地方公共団体に条例制定権を認めた以上、地域によって取扱いに差が生じることは当然に予定されており、14 条に反しない 憲法が地方公共団体に条例制定権を認めた以上、地域によって取扱いに差が生じることは当然に予定されており、14 条に反しない。対応する判例:旭川市国民健康保険条例事件(最大判平成 18 年)・神奈川県臨時特例企業税事件(最判平成 25 年)・徳島市公安条例事件(最大判昭和 50 年)・大阪市売春取締条例事件(最大判昭和 37 年)・東京都売春等取締条例事件(最大判昭和 33 年)。
- ウ 憲法改正権は憲法制定権力が憲法によって作り出した権力であるため、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義などの基本原理を破壊する改正はできない 憲法改正権は憲法制定権力が憲法によって作り出した権力であるため、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義などの基本原理を破壊する改正はできない。
- undefined パチンコ球遊器事件では、通達をきっかけに課税が行われた場合でも、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、課税処分は法の根拠に基づくものとして 84 条に反しないとした パチンコ球遊器事件(最判昭和 33 年 3 月 28 日)。旭川市国保条例事件は保険料を租税でないとしつつ 84 条の趣旨は及ぶとし、本件は合憲とした。地方税も地方税法の枠内で条例により定める(84 条の「法律の定める条件」)。
- ウ 通説は予算を法律とは異なる国法の一形式ととらえる予算法形式説をとっており、この立場では予算は政府を拘束する法規範であるが国民を直接拘束するものではない 予算法形式説。予算と法律の不一致は制度上ありうる。増額修正は限界説が多数だが政府見解も可能とする。予算の提出権は内閣のみ(73 条 5 号・86 条)。日本国憲法に前年度予算施行の制度はなく、暫定予算で対応する(財政法)。
- ア 地方公共団体の長と議会の議員はいずれも住民の直接選挙で選ばれる首長制(二元代表制)がとられているが、議会による長の不信任決議と長による議会の解散など議院内閣制的な要素も取り入れられている 93 条と地方自治法。「住民」は日本国民(最判平成 7 年 2 月 28 日)。特別区は当時憲法上の地方公共団体にあたらないとされ、区長公選制廃止は合憲(最大判昭和 38 年 3 月 27 日)。議会は議事機関で条例を制定する。
- undefined 法律と条例が矛盾抵触するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するだけでなく、それぞれの趣旨・目的・内容・効果を比較して判断すべきであり、法律が全国一律の規制を意図していなければ、同じ目的でより厳しい規制を定める条例も許される 上乗せ条例・横出し条例が許される枠組み。法律が放置する趣旨なら条例は違法。目的が異なれば法律の目的・効果を阻害しない限り有効。
発展
- ウ 条例で罰則を定めるには、政令への委任と同様に法律による個別具体的な委任が必要であり、地方自治法の一般的な委任規定では 31 条の要請を満たさないとするのが判例である 大阪市売春取締条例事件(最大判昭和 37 年 5 月 30 日)は、条例は自主法で法律に類するため、相当な程度に具体的で限定された委任で足りるとした。他は奈良県ため池条例事件・神奈川県臨時特例企業税事件・東京都売春等取締条例事件・地方自治法のとおり。
- イ 国民投票法により、国民投票は国会の発議の日から 60 日以後 180 日以内に行われ、投票権者は満 18 歳以上の日本国民で、有効投票総数の過半数の賛成があれば承認される 日本国憲法の改正手続に関する法律(2007 年成立・2010 年施行)。最低投票率の定めはない。96 条は特別の国民投票または国会の定める選挙の際の投票のいずれも認めている。再発議の制限規定はない。
- undefined 憲法改正の発議は各議院の総議員の 3 分の 2 以上の賛成を要し、この点について衆議院の優越は認められておらず、両院がそれぞれ可決して初めて国会が発議したことになる 96 条。原案は国会議員が提出(衆議院 100 人以上・参議院 50 人以上の賛成。国会法)。公布は天皇が国民の名で行う。通説は八月革命説により、明治憲法の改正の限界を超えた新憲法の制定と説明する。
- イ 予備費の支出について事後に国会の承諾が得られなかった場合でも、既に行われた支出の法的効力には影響せず、内閣の政治責任が問われるにとどまる 87 条 2 項。決算の否認も支出の効力に影響しない(90 条)。予算は両院協議会の開催が必須で、不一致なら衆議院の議決が国会の議決となる(60 条 2 項)。会計検査院は内閣から独立した憲法上の機関(90 条・会計検査院法)。
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