物権変動(177 条・178 条・即時取得) ── 問題
基礎
- A は自分の土地を B に売却したが、B はまだ所有権移転登記をしていない。次の C は民法 177 条の「第三者」に当たりますか。判例の考え方に照らして妥当なものを選びなさい。── 何の権原もなく、この土地に無断で資材を置いて占拠している C (ア 第三者に当たり、C が登記を備えていなくても B は C に対抗できない イ 第三者に当たらず、B は登記がなくても C に所有権を対抗できる ウ 第三者に当たるが、C は B の所有権を争うことができない エ 第三者に当たり、C が善意の場合に限り B は登記がなければ対抗できない undefined 第三者に当たり、B は登記がなければ C に所有権を対抗できない)
- A は自分の所有する動産を B に売却した。次の方法で引渡しが行われた場合、民法上どの種類の引渡しに当たりますか。── A はその動産を倉庫業者 C に預けており、C に対して「今後は B のために保管せよ」と指示し、B もこれを承諾した。 (ア 指図による占有移転(184 条) イ 引渡しに当たらず、B は対抗要件を備えていない ウ 占有改定(183 条) エ 簡易の引渡し(182 条 2 項) undefined 現実の引渡し(182 条 1 項))
- 物権変動に関する民法の規定および判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 動産の所有権の移転は、現実に物を引き渡した時に効力を生じ、引渡しがなければ当事者間でも所有権は移転しない イ 不動産の所有権は、売買契約が成立しただけでは移転せず、所有権移転登記をした時に初めて移転する ウ 物権の設定および移転は当事者の意思表示のみによって効力を生じ、不動産の登記は第三者に対抗するための要件である エ 不動産の登記には公信力が認められるため、無権利者名義の登記を信じて取引した者は、原則として所有権を取得する undefined 物権は当事者の合意によって自由に創設することができる)
- 動産の物権変動に関する民法の規定および判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 動産に関する物権の譲渡を第三者に対抗するには現実の引渡しが必要であり、占有改定や指図による占有移転では対抗要件を備えたことにならない イ 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ第三者に対抗することができず、この引渡しには占有改定も含まれる ウ 登録された自動車の所有権の譲渡も、引渡しによって第三者に対抗することができる エ 動産の譲受人は、譲渡人からその動産を預かっている受寄者に対しては、引渡しを受けていなくても所有権を主張して返還を求めることができる undefined 動産の物権変動には登記のような公示方法が存在しないため、譲受人は引渡しの有無にかかわらず、すべての第三者に所有権を対抗することができる)
- 即時取得の対象となるものとして妥当なものはどれですか。 (ア 伐採前の立木 イ 土地上の建物 ウ 登録を受けていない自動車 エ 土地 undefined 道路運送車両法による登録を受けている自動車)
標準
- 次の事例について、判例の考え方に照らした結論として妥当なものはどれですか。B は 1995 年から A の土地を所有の意思をもって善意無過失で占有を始め、2005 年に取得時効が完成した。A は 2007 年にこの土地を D に売り、D は登記を備えた。B は登記を備えていない。 (ア B は登記がなくても D に対して時効による所有権の取得を対抗できる。時効の効力は起算日にさかのぼるため、D は無権利者 A からの譲受人となるからである イ B は D に対して時効による所有権の取得を対抗できる。B は時効の起算点を 1997 年にずらすことで、D を時効完成前の第三者として扱えるからである ウ B は D に対して時効による所有権の取得を対抗できる。ただしそれは D が B の占有を知っていた場合に限られる エ B は D に対して時効による所有権の取得を対抗できない。D は時効完成後に現れた第三者であり、B と D は対抗関係に立ち、登記を備えた D が優先する undefined B は D に対して時効による所有権の取得を対抗できない。D が登記を備えた以上、B がその後さらに 10 年間占有を続けても時効取得を主張することはできない)
- 次の事例について、C にカメラの即時取得(民法 192 条)が成立するかどうか、民法の規定および判例の考え方に照らして妥当なものを選びなさい。── 17 歳の B は、自分が所有するカメラを親権者の同意なく C に売って引き渡した。その後、B の親権者はこの売買を取り消した。C は B が未成年者であることを知らなかった。 (ア A が追認した場合に限り即時取得が成立する イ 占有開始から 2 年を経過するまでは即時取得が成立しない ウ 即時取得は成立しない エ C が善意であれば、過失があっても即時取得が成立する undefined 即時取得が成立する)
- A は 2022 年 2 月に、自分の所有するカメラをB に盗まれた。その後、B はこのカメラを、事情を知らない C に売却して引き渡した。C は B の物だと信じ、そう信じたことに過失がなかった。A が C に対してカメラの回復を請求できる期間について、民法の規定として妥当なものはどれですか。 (ア 2022 年 2 月から 1 年間は回復を請求できる イ 2022 年 2 月から 2 年間は回復を請求できる ウ 期間の制限なく回復を請求できる エ 回復を請求することはできない undefined 2022 年 2 月から 5 年間は回復を請求できる)
- 民法 177 条の「第三者」に関する判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 177 条の第三者とは、当事者およびその包括承継人以外のすべての者をいい、不法占拠者に対しても登記がなければ所有権を対抗できない イ 177 条の第三者とは、当事者およびその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう ウ 不動産の賃借人は、その賃借権について対抗要件を備えていても、新たに不動産を取得した者に対する関係で 177 条の第三者に当たらない エ 不動産の登記名義人が偽造書類によって登記を得た無権利者であっても、その者から譲り受けた者は 177 条の第三者に当たる undefined 不動産が二重に譲渡された場合、第一の譲渡があったことを知っていた第二譲受人は、177 条の第三者に当たらない)
- 契約の解除と登記に関する判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 解除の遡及効は第三者に一切及ばないため、解除の前後を問わず、目的不動産を譲り受けた第三者は登記の有無にかかわらず保護される イ 解除後に目的不動産を譲り受けた第三者は、解除の事実を知っていた場合には、登記を備えていても解除者に対抗することができない ウ 解除前に目的不動産を譲り受けた第三者は、解除原因があることについて善意であれば、登記を備えていなくても 545 条 1 項ただし書によって保護される エ 解除前に目的不動産を譲り受けた第三者が 545 条 1 項ただし書によって保護されるためには、その第三者が登記を備えていることが必要である undefined 解除後に目的不動産を譲り受けた第三者との関係では、解除によって所有権が当然に解除者に復帰するため、解除者は登記がなくても第三者に対抗できる)
- 相続と登記に関する民法の規定および判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 相続放棄をした者の相続分を、放棄後に差し押さえた債権者に対しては、他の相続人は登記がなければ自己の権利を対抗することができない イ 相続による不動産の権利の承継は、法定相続分を超える部分についても、登記がなくても第三者に対抗することができる ウ 共同相続人の 1 人が相続不動産について単独名義の登記をして第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は自己の法定相続分について、登記がなくてもその第三者に対抗することができる エ 遺贈によって不動産を取得した受遺者は、登記がなくても、遺贈後に相続人からその不動産を譲り受けた第三者に対抗することができる undefined 遺産分割によって法定相続分を超える権利を取得した相続人は、遺産分割の遡及効により、登記がなくても分割後の第三者にその権利を対抗することができる)
- 即時取得に関する民法の規定および判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 即時取得が成立するためには取得者が善意無過失であることが必要であり、善意は推定されるが無過失は推定されないため、取得者が無過失を立証しなければならない イ 即時取得は動産の占有に公信力を認める制度であるから、取引行為によらずに占有を取得した場合にも成立する ウ 即時取得が成立するためには取得者が善意無過失であることが必要であるが、無過失についても推定が働くため、取得者が無過失を立証する必要はない エ 即時取得によって取得できる権利は所有権に限られ、質権を即時取得することはできない undefined 即時取得は、占有改定による引渡しを受けた場合にも成立する)
発展
- 背信的悪意者に関する判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 背信的悪意者から不動産を譲り受けた転得者は、転得者自身が背信的悪意者と評価されない限り、登記のない第一譲受人に対して所有権の取得を対抗することができる イ 背信的悪意者は 177 条の第三者に当たるが、第一譲受人に対して信義則上、登記の欠缺を主張することが許されないだけであるから、第一譲受人が登記を備えれば背信的悪意者が優先する ウ 背信的悪意者の理論は、不動産の二重譲渡の場合にのみ適用され、取得時効の完成後に不動産を取得した第三者には適用されない エ 背信的悪意者から不動産を譲り受けた転得者は、前主が無権利者である以上、善意であっても登記のない第一譲受人に対抗することができない undefined 背信的悪意者とは、二重譲渡の事実を知って不動産を譲り受けた者をいい、その主観的な害意の有無は問わない)
- 盗品・遺失物についての即時取得の特則(民法 193 条・194 条)に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 被害者または遺失者は、盗難または遺失の時から 5 年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる イ 被害者が 194 条により代価を弁償して回復を請求する場合、占有者は代価の弁償を受けるまでの間、その物を使用収益することができない ウ 占有者が盗品を競売もしくは公の市場において、または同種の物を販売する商人から善意で買い受けたときは、被害者は占有者が支払った代価を弁償しなければ回復を請求できない エ 193 条の回復請求は、盗品・遺失物だけでなく、詐欺や横領によって占有を失った物についても認められる undefined 193 条の回復請求ができる期間中、盗品の所有権は即時取得の要件を満たした占有者に帰属しており、被害者はこれを取り戻す債権的な権利をもつにすぎない)
- 取得時効と登記に関する判例の説明として妥当でないものはどれですか。 (ア 時効取得者は、時効完成後に原所有者から不動産を譲り受けて登記を備えた第三者に対して、時効の起算点を後にずらして時効完成前の第三者として扱うことにより、登記なくして時効取得を対抗することができる イ 時効取得者は、時効完成後に原所有者から不動産を譲り受けて登記を備えた第三者に対しては、登記がなければ時効による所有権の取得を対抗することができない ウ 取得時効の起算点は占有を開始した時に固定され、時効を主張する者が任意にその起算点を選ぶことはできない エ 時効取得者は、時効完成前に原所有者から不動産を譲り受けた第三者に対しては、登記がなくても時効による所有権の取得を対抗することができる undefined 時効完成後の第三者が登記を備えた後、時効取得者がさらに時効取得に必要な期間占有を継続したときは、時効取得者は登記なくしてその第三者に時効取得を対抗することができる)
物権変動(177 条・178 条・即時取得) ── 解答
基礎
- イ 第三者に当たらず、B は登記がなくても C に所有権を対抗できる 177 条の第三者は、当事者とその包括承継人以外で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者。単純悪意者(最判昭和 32 年 9 月 19 日)・差押債権者・対抗要件を備えた賃借人(最判昭和 49 年 3 月 19 日)は当たる。不法占拠者(最判昭和 25 年 12 月 19 日)・背信的悪意者(最判昭和 43 年 8 月 2 日)・無権利者は当たらない。何の権原もなく、この土地に無断で資材を置いて占拠している C → 第三者に当たらず、B は登記がなくても C に所有権を対抗できる。
- ア 指図による占有移転(184 条) 動産の対抗要件は引渡し(178 条)。現実の引渡し・簡易の引渡し(すでに相手が所持)・占有改定(譲渡人が所持を続ける)・指図による占有移転(第三者が所持)の 4 種類があり、いずれも 178 条の引渡しに当たる。ただし占有改定では即時取得は成立しない。答え:指図による占有移転(184 条)。
- ウ 物権の設定および移転は当事者の意思表示のみによって効力を生じ、不動産の登記は第三者に対抗するための要件である 176 条・177 条。特定物売買では特約がなければ契約時に所有権が移転する(最判昭和 33 年 6 月 20 日)。登記に公信力はない。動産も意思表示で移転し、引渡しは対抗要件(178 条)。物権法定主義(175 条)。
- イ 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ第三者に対抗することができず、この引渡しには占有改定も含まれる 178 条。占有改定・簡易の引渡し・指図による占有移転も対抗要件になる。受寄者も 178 条の第三者(最判昭和 29 年 8 月 31 日)。登録自動車の対抗要件は登録。
- ウ 登録を受けていない自動車 即時取得の対象は動産(192 条)。登録自動車は登録が公示方法であり対象外(最判昭和 62 年 4 月 24 日)。未登録自動車は対象。不動産(土地・建物)とその一部である伐採前の立木は対象外。
標準
- エ B は D に対して時効による所有権の取得を対抗できない。D は時効完成後に現れた第三者であり、B と D は対抗関係に立ち、登記を備えた D が優先する B は D に対して時効による所有権の取得を対抗できない。D は時効完成後に現れた第三者であり、B と D は対抗関係に立ち、登記を備えた D が優先する。取消し前の第三者は 96 条 3 項で登記不要(最判昭和 49 年 9 月 26 日)、取消し後は 177 条(大判昭和 17 年 9 月 30 日)。解除前の第三者は登記が必要(最判昭和 33 年 6 月 14 日)。時効完成前の第三者には登記不要(最判昭和 41 年 11 月 22 日)、完成後は 177 条(最判昭和 33 年 8 月 28 日)。遺産分割で法定相続分を超える部分は登記が必要(899 条の 2)。
- ウ 即時取得は成立しない 即時取得は「動産・取引行為・前主が無権利者・平穏公然善意無過失・占有開始」が要件。占有改定では成立せず(最判昭和 35 年 2 月 11 日)、指図による占有移転・簡易の引渡しなら成立する(最判昭和 57 年 9 月 7 日)。登録済み自動車は対象外(最判昭和 62 年 4 月 24 日)。相続は取引行為ではない。前主が制限行為能力者で取り消された場合は取引行為自体の瑕疵で、即時取得では救われない。答え:即時取得は成立しない。
- イ 2022 年 2 月から 2 年間は回復を請求できる 即時取得の要件を満たしていても、盗品・遺失物については、被害者・遺失者は盗難・遺失の時から 2 年間、占有者に対して回復を請求できる(193 条)。詐欺・横領で失った物は自分の意思で手放しているので 193 条の対象外で、C が即時取得すれば回復できない。答え:2022 年 2 月から 2 年間は回復を請求できる。
- イ 177 条の第三者とは、当事者およびその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう 大連判明治 41 年 12 月 15 日。不法占拠者は第三者でない(最判昭和 25 年 12 月 19 日)。単純悪意者は第三者に当たる(最判昭和 32 年 9 月 19 日)。無権利者からの譲受人は第三者でない。対抗要件を備えた賃借人は第三者に当たり、新所有者は登記がなければ賃貸人の地位を主張できない(最判昭和 49 年 3 月 19 日)。
- エ 解除前に目的不動産を譲り受けた第三者が 545 条 1 項ただし書によって保護されるためには、その第三者が登記を備えていることが必要である 最判昭和 33 年 6 月 14 日(善意悪意は問わないが登記が必要。権利保護資格要件)。解除後の第三者とは 177 条の対抗関係(最判昭和 35 年 11 月 29 日)で、単純悪意者は排除されない。
- ウ 共同相続人の 1 人が相続不動産について単独名義の登記をして第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は自己の法定相続分について、登記がなくてもその第三者に対抗することができる 最判昭和 38 年 2 月 22 日(第三者は無権利者からの譲受人)。相続放棄は絶対効で登記不要(最判昭和 42 年 1 月 20 日)。遺産分割後の第三者には法定相続分を超える部分の登記が必要(899 条の 2・最判昭和 46 年 1 月 26 日)。遺贈は 177 条(最判昭和 39 年 3 月 6 日)。
- ウ 即時取得が成立するためには取得者が善意無過失であることが必要であるが、無過失についても推定が働くため、取得者が無過失を立証する必要はない 188 条により無過失も推定される(最判昭和 41 年 6 月 9 日)。取得時効では無過失は推定されないので対比して覚える。取引行為が必要。占有改定では不可(最判昭和 35 年 2 月 11 日)。質権も即時取得できる。
発展
- ア 背信的悪意者から不動産を譲り受けた転得者は、転得者自身が背信的悪意者と評価されない限り、登記のない第一譲受人に対して所有権の取得を対抗することができる 最判平成 8 年 10 月 29 日。背信性は人ごとに相対的に判断される。背信的悪意者は単なる悪意者ではなく、信義に反する事情のある者(最判昭和 43 年 8 月 2 日)。背信的悪意者は第三者から排除される。取得時効完成後の第三者にも背信的悪意者の理論は適用されうる(最判平成 18 年 1 月 17 日)。
- ウ 占有者が盗品を競売もしくは公の市場において、または同種の物を販売する商人から善意で買い受けたときは、被害者は占有者が支払った代価を弁償しなければ回復を請求できない 194 条。期間は 2 年(193 条)。詐欺・横領は対象外。占有者は弁償まで使用収益できる(最判平成 12 年 6 月 27 日)。判例は回復請求ができる 2 年間、所有権は原権利者に残ると解する。
- ア 時効取得者は、時効完成後に原所有者から不動産を譲り受けて登記を備えた第三者に対して、時効の起算点を後にずらして時効完成前の第三者として扱うことにより、登記なくして時効取得を対抗することができる 起算点は占有開始時に固定され、ずらすことはできない(最判昭和 35 年 7 月 27 日)。他は最判昭和 41 年 11 月 22 日・最判昭和 33 年 8 月 28 日・最判昭和 36 年 7 月 20 日のとおり。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zm-05/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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