債権総論①(債務不履行・債権者代位権・詐害行為取消権) ── 問題
基礎
- 債務不履行に関する民法の規定について、不確定期限のある債務はいつから履行遅滞になりますか。 (ア 期限が到来した時から当然に遅滞になり、債務者がそれを知っていたかどうかは問わない イ 債権者が期限の到来を証明して裁判上の請求をした時から遅滞になる ウ 期限到来後に履行の請求を受けた時か、期限の到来を知った時の、いずれか遅い時から遅滞になる エ 期限到来後に履行の請求を受けた時か、期限の到来を知った時の、いずれか早い時から遅滞になる undefined 期限の到来を債務者が知った時から遅滞になり、債権者の請求があっても知らなければ遅滞にならない)
- 債権者代位権と詐害行為取消権を比較したとき、被保全債権の弁済期についての説明として妥当なものはどれですか。 (ア 債権者代位権は裁判所の許可を得れば弁済期前でも行使でき、詐害行為取消権は弁済期の到来を要する イ 債権者代位権も詐害行為取消権も、被保全債権の弁済期が到来していなければ行使できない ウ 債権者代位権は保存行為を除き被保全債権の弁済期の到来を要するが、詐害行為取消権は弁済期の到来を要しない エ 債権者代位権は保存行為を含めて被保全債権の弁済期の到来を要しないが、詐害行為取消権は弁済期の到来を要する undefined 債権者代位権も詐害行為取消権も、被保全債権の弁済期の到来を要しない)
- 債務不履行による損害賠償に関する民法の規定の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 損害賠償は現物の給付によるのが原則であり、金銭による賠償は当事者の特約がある場合に限られる イ 契約成立の時点で履行が不能であった場合には契約は当初から無効となるため、債権者は債務不履行を理由とする損害賠償を請求することができず、契約締結上の過失の問題となるにすぎない ウ 債務者は、契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由による不履行であれば、損害賠償責任を負わない エ 債権者は、債務不履行の事実に加えて、債務者に故意または過失があったことを自ら証明しなければ、損害賠償を請求することができない undefined 当事者が損害賠償の額をあらかじめ定めていた場合、裁判所はその額を増減することができない)
- 債権者代位権に関する民法の規定の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 被代位権利の目的が可分であるときでも、債権者は被代位権利の全額について代位行使することができる イ 債権者が債務者の権利を代位行使したときは、債務者はその権利について自ら取立てその他の処分をすることができなくなる ウ 債権者は、被保全債権の弁済期が到来していなくても、裁判所の許可を得れば債務者の権利を代位行使することができる エ 債権者は、債務者の一身に専属する権利および差押えを禁じられた権利を代位行使することができない undefined 相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁を、代位行使する債権者に対して主張することができない)
標準
- 次の事例について、民法の規定および判例に照らした結論として妥当なものはどれですか。A は B に対して 500 万円の貸金債権をもつ。B は支払不能の状態で、債権者の一人である C とだけ通じ、他の債権者を害する意図で、C に対する 400 万円の債務の弁済として唯一の財産である自動車を引き渡した。 (ア A は、B と C が通謀して他の債権者を害する意図で行った弁済であることを主張して、詐害行為として取り消すことができる イ A は、B の無資力を知った時から 10 年以内であれば、いつでも弁済の取消しを請求できる ウ A は、C への弁済が B の既存の債務の弁済である以上、B と C の主観にかかわらず詐害行為として取り消すことはできない エ A は、弁済の取消しを裁判外の意思表示によって行い、自動車を自己に引き渡すよう C に請求できる undefined A は、C が B の無資力を知っていたことさえ証明すれば、B と C の通謀がなくても弁済を取り消すことができる)
- 次の行為が詐害行為取消権の対象になるかどうかについて、民法の規定および判例に照らして妥当なものはどれですか。債務者が既存の債務について、弁済期の到来前に、特定の債権者のために自己の不動産に抵当権を設定した場合について。 (ア 既存の債務のための担保の供与は、抵当権の設定登記がされる前に限り、対象になる イ 既存の債務のための担保の供与は、被担保債権額が債務者の総財産の半分を超えるときに限り、対象になる ウ 債務者が支払不能になる前 30 日以内にされ、債権者と通謀して他の債権者を害する意図があったときは、対象になりうる エ 既存の債務のための担保の供与は、他の債権者との平等を害するため、債務者が支払不能であったかどうかや主観にかかわらず常に対象になる undefined 既存の債務のための担保の供与は、財産の減少をもたらさないため、いかなる場合も対象にならない)
- 履行に代わる損害賠償(填補賠償)を債権者が請求できる場合として、民法 415 条 2 項が定めるものの組合せとして妥当なものはどれですか。 (ア 履行が不能であるとき/債務者が破産手続開始の決定を受けたとき/債権者が受領を拒んだとき イ 履行が不能であるとき/債務者が履行遅滞に陥ったとき/債権者が相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がなかったとき ウ 契約が解除されたとき/債務者が履行遅滞に陥って相当期間が経過したとき/債権者が損害の発生とその額を証明したとき エ 履行が不能であるとき/債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したとき/契約が解除され、または債務不履行による解除権が発生したとき undefined 債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したとき/債務者が無資力となったとき/履行期が到来したとき)
- 損害賠償の範囲と過失相殺に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 債務不履行から通常生ずべき損害についても、債務者がその発生を予見すべきであったときに限り、賠償の範囲に含まれる イ 将来の利益についての損害賠償額を定める際に中間利息を控除するときは、判決の時点の法定利率による ウ 特別の事情によって生じた損害は、当事者が契約締結の時にその事情を現に知っていたときに限り、賠償の範囲に含まれる エ 債務不履行の場合、債権者に過失があったときでも、裁判所は損害賠償の責任そのものを否定することはできず、賠償額を減らすことができるにとどまると解されている undefined 特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに賠償の範囲に含まれ、判例はその予見可能性を債務不履行の時を基準に判断する)
- 詐害行為取消権の効果に関する民法の規定の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は、訴訟の当事者である債権者と受益者の間でのみ生じ、債務者には及ばない イ 詐害行為取消請求の訴えは、債務者と受益者の双方を共同被告として提起しなければならない ウ 債権者は、受益者に対して金銭の支払を求める場合、債務者に支払うよう請求できるにとどまり、自己への支払を求めることはできない エ 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者およびそのすべての債権者に対してもその効力を有する undefined 債権者は、詐害行為の目的が可分である場合でも、その行為の全部について取消しを請求することができる)
- 受領遅滞と弁済の提供に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 受領遅滞になると、債務者の債務は供託を経なくても当然に消滅し、債務者は目的物を自由に処分して代金の支払を請求することができる イ 債務者が弁済の提供をしても、債権者が現実に受領するまでは、債務者は履行遅滞の責任を免れない ウ 受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行が不能となったときは、その不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる エ 受領遅滞によって履行の費用が増加したときは、その増加額は債務者が負担する undefined 判例は、継続的な売買契約の買主についても信義則上の引取義務を認めたことはなく、受領遅滞を理由とする損害賠償請求を一貫して否定している)
発展
- 債権者代位権の被代位権利に関する判例・規定の説明として妥当でないものはどれですか。 (ア 金銭の支払を目的とする権利を代位行使する債権者は、相手方に対して自己に直接支払うよう求めることができ、受領した金銭を債務者への返還債務と相殺できる イ 債権者が被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく債務者に対して訴訟告知をしなければならない ウ 対抗要件を備えた不動産の賃借人は、賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使しなくても、自ら占有者に対して妨害の停止を請求することができる エ 遺留分侵害額請求権は、権利者がこれを行使する確定的な意思を外部に表明した後であっても、行使上の一身専属権として代位行使の対象にならない undefined 名誉毀損による慰謝料請求権は、被害者が請求権を行使する意思を表示しただけでは代位行使できないが、具体的な金額が当事者間で客観的に確定したときは代位行使できる)
- 次の記述のうち、2020 年 4 月施行の改正民法の内容として妥当なものはどれですか。 (ア 詐害行為取消請求を認容する判決の効力は、取消債権者と受益者の間でのみ生じ、債務者には及ばないことが明文化された イ 履行遅滞に陥った債務者に対しては、履行の催告をしなくても、直ちに履行に代わる損害賠償を請求できることとされた ウ 詐害行為取消権の長期の期間制限は、行為の時から 20 年から 10 年に短縮された エ 特別の事情によって生じた損害は、債務者が契約締結時にその事情を予見していた場合に限り賠償の範囲に含まれることとされた undefined 債権者代位権を行使した債権者は、債務者に代わって権利を行使する以上、債務者はその権利について処分権限を失うこととされた)
- 次の事例のうち、民法の規定および判例に照らして、A の請求が認められる可能性がもっとも高いものはどれですか。 (ア A は B に対する債権を保全するため B の C に対する代金債権を代位行使したところ、C が B に対する同時履行の抗弁を主張した。A は、代位権の行使に対しては抗弁を対抗できないとして、C に代金の支払を請求する イ B が相続の放棄をしたため、B の債権者 A が、相続放棄は詐害行為にあたるとして、その取消しを裁判上請求する ウ A は B に対して期限の定めのない貸金債権をもつ。A は B に履行の請求をしないまま、貸付けの日からの遅延損害金の支払を B に請求する エ B は C に対する金銭債権をもつが、B には十分な資力がある。B の債権者 A が、B の弁済期到来後の貸金債権を保全するため、B の C に対する金銭債権を代位行使して C に支払を請求する undefined B が唯一の財産である不動産を C に代物弁済として譲渡し、これによって B が無資力となった。C は譲渡の当時 B の無資力を知っていた。B の債権者 A が C に対して代物弁済の取消しを裁判上請求する)
- 安全配慮義務と債務不履行に関する判例の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 最高裁は、安全配慮義務は私法上の雇用契約における使用者が労働者に対して負う義務であり、公法上の関係である国と公務員の間には適用されないとした イ 最高裁は、国が公務員に対して、公務遂行のための場所・設備の設置管理や公務の管理にあたり、生命・健康を危険から保護するよう配慮すべき義務を信義則上負うとした ウ 最高裁は、安全配慮義務違反による損害賠償請求権は、被害者が損害を知った時から 3 年で時効消滅するとした エ 最高裁は、安全配慮義務は不法行為法上の一般的な注意義務にすぎず、これに違反しても契約上の債務不履行責任は生じないとした undefined 最高裁は、安全配慮義務は雇用契約書に明記された場合に限って生じ、明記のない公務員関係では認められないとした)
債権総論①(債務不履行・債権者代位権・詐害行為取消権) ── 解答
基礎
- エ 期限到来後に履行の請求を受けた時か、期限の到来を知った時の、いずれか早い時から遅滞になる 期限到来後に履行の請求を受けた時か、期限の到来を知った時の、いずれか早い時から遅滞になる。412 条(履行期と履行遅滞)・413 条(受領遅滞)・419 条(金銭債務の特則)の条文どおり。
- ウ 債権者代位権は保存行為を除き被保全債権の弁済期の到来を要するが、詐害行為取消権は弁済期の到来を要しない 債権者代位権は保存行為を除き被保全債権の弁済期の到来を要するが、詐害行為取消権は弁済期の到来を要しない。代位権は 423 条〜423 条の 7、取消権は 424 条〜426 条。改正前の「裁判上の代位」は廃止され、取消権の長期の期間制限は 20 年から 10 年に短縮された。
- ウ 債務者は、契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由による不履行であれば、損害賠償責任を負わない 415 条 1 項ただし書。免責事由の立証責任は債務者にある。原始的不能でも損害賠償は可能(412 条の 2 第 2 項)。金銭賠償が原則(417 条)。賠償額の予定について「裁判所は増減できない」との文言は 2020 年改正で削除された(420 条)。
- エ 債権者は、債務者の一身に専属する権利および差押えを禁じられた権利を代位行使することができない 423 条 1 項ただし書。改正前の裁判上の代位は廃止され、弁済期前に行使できるのは保存行為のみ(423 条 2 項)。債務者は処分権限を失わない(423 条の 5)。範囲は自己の債権額の限度(423 条の 2)。相手方は抗弁を対抗できる(423 条の 4)。
標準
- ア A は、B と C が通謀して他の債権者を害する意図で行った弁済であることを主張して、詐害行為として取り消すことができる A は、B と C が通謀して他の債権者を害する意図で行った弁済であることを主張して、詐害行為として取り消すことができる。順に、423 条の 2・423 条の 3(代位権の範囲と直接請求)、424 条(詐害行為取消権は裁判上の請求)、423 条の 7(登記請求権の転用は無資力不要)、424 条の 3(偏頗行為は支払不能時の通謀害意が要件)、416 条 2 項(特別損害)に対応する。
- ウ 債務者が支払不能になる前 30 日以内にされ、債権者と通謀して他の債権者を害する意図があったときは、対象になりうる 債務者が支払不能になる前 30 日以内にされ、債権者と通謀して他の債権者を害する意図があったときは、対象になりうる。相続放棄(最判昭和 49 年 9 月 20 日)・遺産分割協議(最判平成 11 年 6 月 11 日)・財産分与(最判平成 12 年 3 月 9 日)は判例、相当の対価による処分は 424 条の 2、期限前の担保供与は 424 条の 3 第 2 項による。
- エ 履行が不能であるとき/債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したとき/契約が解除され、または債務不履行による解除権が発生したとき 415 条 2 項の 3 つの場合。単なる履行遅滞では、遅延の賠償は請求できるが、本来の給付に代わる賠償は解除(または解除権の発生)を経ないと請求できない。「明確な履行拒絶」は 2020 年改正で明文化された。
- undefined 特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに賠償の範囲に含まれ、判例はその予見可能性を債務不履行の時を基準に判断する 416 条と大判大正 7 年 8 月 27 日。通常損害は予見可能性を問わない。債務不履行の過失相殺(418 条)は必要的で、責任の否定もできる(不法行為の 722 条 2 項は額の減額のみ)。中間利息控除は損害賠償請求権が生じた時点の法定利率(417 条の 2)。
- エ 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者およびそのすべての債権者に対してもその効力を有する 425 条。改正前の相対的取消しの判例が改められた。被告は受益者または転得者で、債務者には訴訟告知をする(424 条の 7)。可分なら自己の債権額の限度(424 条の 8)。金銭・動産は自己への直接の引渡しを求められる(424 条の 9)。
- ウ 受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行が不能となったときは、その不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる 413 条の 2 第 2 項。この結果、債権者は解除できず(543 条)、反対給付を拒めない(536 条 2 項)。債務は消滅しない(供託すれば消滅)。硫黄鉱石事件(最判昭和 46 年 12 月 16 日)は買主の引取義務を信義則上認めた。増加費用は債権者負担(413 条 2 項)。提供により遅滞責任を免れる(492 条)。
発展
- エ 遺留分侵害額請求権は、権利者がこれを行使する確定的な意思を外部に表明した後であっても、行使上の一身専属権として代位行使の対象にならない 遺留分侵害額請求権(改正前の遺留分減殺請求権)は原則として代位の対象にならないが、権利者が行使の確定的意思を外部に表明したときは例外的に対象になる(最判平成 13 年 11 月 22 日)。慰謝料は最判昭和 58 年 10 月 6 日。賃借人の妨害停止請求は 605 条の 4。直接請求は 423 条の 3、訴訟告知は 423 条の 6。
- ウ 詐害行為取消権の長期の期間制限は、行為の時から 20 年から 10 年に短縮された 426 条。債務者は処分権限を失わない(423 条の 5。改正前の判例と逆)。取消判決は債務者と全債権者に及ぶ(425 条)。填補賠償は履行不能・明確な履行拒絶・解除(解除権発生)の場合(415 条 2 項)。特別損害は「予見すべきであったとき」(416 条 2 項)。
- undefined B が唯一の財産である不動産を C に代物弁済として譲渡し、これによって B が無資力となった。C は譲渡の当時 B の無資力を知っていた。B の債権者 A が C に対して代物弁済の取消しを裁判上請求する 1 は通常の詐害行為の要件(無資力・受益者の悪意・裁判上の請求)を満たす。相続放棄は対象外(最判昭和 49 年 9 月 20 日)。資力がある債務者への代位は保全の必要性を欠く。期限の定めのない債務は請求を受けた時から遅滞になり(412 条 3 項)、返還時期の定めのない貸金では相当の期間を定めた催告が必要(591 条 1 項)。いずれにせよ請求のないまま遅延損害金は生じない。相手方は債務者に対する抗弁を代位債権者に対抗できる(423 条の 4)。
- イ 最高裁は、国が公務員に対して、公務遂行のための場所・設備の設置管理や公務の管理にあたり、生命・健康を危険から保護するよう配慮すべき義務を信義則上負うとした 自衛隊車両整備工場事件(最判昭和 50 年 2 月 25 日)。安全配慮義務違反は債務不履行として構成されるため、時効期間は債務不履行の一般原則(改正後は権利行使できることを知った時から 5 年・行使できる時から 10 年、生命・身体の侵害は 20 年(167 条))による。
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