事務管理・不当利得・不法行為 ── 問題
基礎
- 民法の条文について、不当利得における善意の受益者の返還義務の範囲として正しいものはどれですか。 (ア 受けた利益の全額に利息を付けて返還しなければならない イ 受けた利益を返還する義務はなく、損失者は損害賠償を請求できるにとどまる ウ 受けた利益の全額を返還し、なお損失があればその賠償も負う エ 利益が現に存する限度で返還すればよい undefined 受けた利益の半額を返還すればよい)
- 物損事故による不法行為の損害賠償請求権について、被害者が損害および加害者を知った時から進行する消滅時効の期間として正しいものはどれですか。 (ア 20 年 イ 1 年 ウ 5 年 エ 10 年 undefined 3 年)
- 事務管理に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 管理者は、管理を始めた後であっても、自分の都合でいつでも管理をやめることができる イ 本人の意思に反することが明らかな場合でも、管理者が本人のためにする意思をもっていれば事務管理は成立する ウ 管理者は、本人の意思を知っているか推知できるときは、その意思に従って管理しなければならない エ 事務管理が成立すると管理者に代理権が生じ、本人の名でした契約の効果は本人に帰属する undefined 管理者は、本人に対して管理の報酬を請求することができる)
- 一般不法行為(709 条)の成立要件に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 損害が発生していなくても、権利の侵害があれば損害賠償請求権が発生する イ 不法行為が成立するには加害者の故意が必要であり、過失による侵害は不法行為にならない ウ 加害者の故意または過失は、債務不履行と同じく加害者の側が自分に過失がなかったことを立証しなければならない エ 加害者に責任能力がなくても、故意または過失があれば加害者本人が賠償責任を負う undefined 加害者の故意または過失は、原則として被害者の側が立証しなければならない)
標準
- 次の判例について、生命侵害における慰謝料請求権の相続に関する最高裁判所の判例の結論として妥当なものはどれですか。 (ア 慰謝料請求権は相続されるが、近親者は 711 条による固有の慰謝料を請求できなくなる イ 被害者本人が生前に請求の意思を表明した場合に限り、慰謝料請求権は相続される ウ 慰謝料請求権は、被害者が即死した場合には発生しないため相続もされない エ 慰謝料請求権は一身専属的な権利であるため、相続の対象にならない undefined 被害者本人が請求の意思を表明していなくても、慰謝料請求権は当然に相続される)
- 次の事例について、民法の規定および判例に照らした結論として妥当なものはどれですか。隣人 A の留守中に台風で A 宅の屋根が壊れたため、頼まれていない B が業者を呼んで応急修理をし、修理代 5 万円を支払った。B は修理の手配に 2 日を費やした。 (ア B は A に修理代 5 万円の償還を請求できるが、2 日分の報酬は請求できない イ B は A に頼まれていない以上、修理代 5 万円の償還も請求できない ウ B は修理代 5 万円を A に請求できず、業者に対して返還を求めるほかない エ B は A に修理代 5 万円の償還と 2 日分の報酬の両方を請求できる undefined B は A の承諾を事後に得た場合に限り、修理代 5 万円の償還を請求できる)
- 不当利得の返還に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 法律上の原因がないことを知らずに利益を受けた者は、利益が現に存する限度で返還すればよく、受け取った金銭を生活費に充てた場合には利益は現存しないものとして扱われる イ 法律上の原因がないことを知って利益を受けた者は、受けた利益の全額を返還すれば足り、利息を付ける必要はない ウ 法律上の原因がないことを知らずに利益を受けた者も、受けた利益の全額に利息を付けて返還しなければならない エ 法律上の原因がないことを知らずに利益を受けた者は、利益が現に存する限度で返還すればよく、受け取った金銭を生活費に充てた場合には利益は現存するものとして扱われる undefined 受益者が善意か悪意かにかかわらず、返還の範囲は損失者が実際に受けた損失の額で決まる)
- 不法原因給付(708 条)に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 登記のある建物を贈与した場合、引渡しをすれば登記を移転しなくても 708 条の「給付」があったといえる イ 強行法規に違反する契約に基づく給付は、すべて 708 条の不法原因給付にあたる ウ 愛人関係を維持する目的で建物を贈与し引き渡した場合、贈与者は不当利得としても所有権に基づいても返還を請求できず、建物の所有権は受贈者に帰属する エ 不法の原因が受益者のみにある場合であっても、給付者は返還を請求することができない undefined 愛人関係を維持する目的で建物を贈与し引き渡した場合、贈与者は不当利得としては返還を請求できないが、所有権に基づく返還請求はできる)
- 監督義務者責任(714 条)に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 加害者である未成年者に責任能力がない場合、被害者が親権者の監督義務違反を立証しなければ親権者は責任を負わない イ 加害者である未成年者に責任能力がある場合には 714 条は適用されないが、監督義務違反と損害との間に相当因果関係があれば、親権者は 709 条により責任を負うことがある ウ 責任能力の有無は年齢で一律に決まり、18 歳未満の者はすべて責任無能力者として扱われる エ 加害者である未成年者に責任能力がある場合でも、親権者は 714 条により責任を負う undefined 加害者である未成年者に責任能力がない場合、親権者は監督義務を怠らなかったことを証明しても責任を免れない)
- 使用者責任(715 条)に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 被用者の行為が外形から見て職務の範囲内と認められる場合には、取引の相手方が被用者に権限がないことを知っていたときでも、使用者責任を追及できる イ 使用者が被害者に賠償した場合、使用者は被用者に対して賠償額の全額を求償することができる ウ 被用者が先に被害者に賠償した場合、被用者は使用者に対して求償することができない エ 被用者の行為が外形から見て職務の範囲内と認められる場合でも、取引の相手方が被用者に権限がないことを知っていたか重大な過失により知らなかったときは、使用者責任を追及できない undefined 使用者と被用者の責任は補充的な関係にあり、被害者はまず被用者に請求しなければならない)
発展
- 特殊な不法行為に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 被用者の失火について使用者責任を問う場合、使用者自身に重大な過失があるかどうかで失火責任法の適用が判断される イ 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えた場合、共同行為者の間に共謀や共同の認識がなくても、行為が客観的に関連共同していれば各自が連帯して全額の賠償責任を負う ウ 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えた場合、共同行為者の間に共謀または共同の認識がなければ共同不法行為は成立しない エ 請負の注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害について、注文や指図に過失がなくても賠償責任を負う undefined 動物の占有者は、動物の種類および性質に従い相当の注意をもって管理したことを証明しても、責任を免れることができない)
- 不法行為における過失相殺(722 条 2 項)に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 被害者の過失を考慮するには被害者に事理弁識能力があれば足り、責任能力までは必要ない イ 被害者の過失を考慮するには被害者に責任能力が必要であり、責任能力のない幼児については過失相殺を行えない ウ 被害者が平均的な体格や体質と異なる身体的特徴をもっていた場合、疾患にあたらなくてもそれを理由に賠償額を減額できる エ 被害者がもともと有していた疾患が損害の拡大に寄与した場合でも、それを理由に賠償額を減額することは一切許されない undefined 裁判所は被害者の過失を考慮して賠償額を減額できるだけでなく、加害者の責任を否定することもできる)
- 不法行為による損害賠償の効果に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 不法行為による損害賠償は原状回復が原則であり、金銭賠償は原状回復が不可能な場合に限られる イ 不法行為による損害賠償債務は、被害者が加害者に履行の請求をした時から履行遅滞となる ウ 不法行為による損害賠償の範囲は、416 条とは無関係に、不法行為と事実的因果関係のあるすべての損害に及ぶ エ 被害者が生命を侵害された場合、被害者の父母・配偶者・子以外の者には固有の慰謝料が認められる余地はない undefined 不法行為による損害賠償債務は、被害者からの催告がなくても損害発生の時から履行遅滞となる)
- 特殊な不当利得(705 条〜707 条)および関連する判例に関する説明として妥当なものはどれですか。 (ア 債務が存在しないことを過失によって知らずに弁済した者は、その返還を請求することができない イ 金銭をだまし取られた者は、その金銭で弁済を受けた第三者が善意・無過失であっても、その第三者に不当利得の返還を請求できる ウ 他人の債務を自分の債務と誤信して弁済し、債権者が善意で担保を放棄した場合でも、弁済者は債権者に返還を請求できる エ 弁済期がまだ来ていないことを知りながら弁済した者は、弁済した物の返還を請求することができる undefined 債務が存在しないことを知りながら弁済した者は、その返還を請求することができない)
事務管理・不当利得・不法行為 ── 解答
基礎
- エ 利益が現に存する限度で返還すればよい 利益が現に存する限度で返還すればよい。条文の「誰が・何を証明すれば免れるか」を表で整理しておく(zm-11 解説の表を参照)。
- undefined 3 年 物損事故による不法行為の損害賠償請求権について、被害者が損害および加害者を知った時から進行する消滅時効は 3 年。不法行為は「知った時から 3 年(生命・身体は 5 年)・行為時から 20 年」、債務不履行は「知った時から 5 年・行使できる時から 10 年(生命・身体は 20 年)」。
- ウ 管理者は、本人の意思を知っているか推知できるときは、その意思に従って管理しなければならない 697 条 2 項。管理を始めたら本人や相続人が管理できるようになるまで継続しなければならず(700 条)、報酬請求権はない。代理権も生じない(最判昭和 36 年 11 月 30 日)。本人の意思に反することが明らかなときは事務管理は成立しない。
- undefined 加害者の故意または過失は、原則として被害者の側が立証しなければならない 709 条。故意・過失の立証責任は被害者側にある(債務不履行では債務者が免責事由を立証するのと逆)。責任能力(712 条・713 条)は要件であり、責任無能力者本人は責任を負わない。損害の発生も要件。
標準
- undefined 被害者本人が請求の意思を表明していなくても、慰謝料請求権は当然に相続される 被害者本人が請求の意思を表明していなくても、慰謝料請求権は当然に相続される。判例は「結論」と「理由づけ」をセットで覚える。
- ア B は A に修理代 5 万円の償還を請求できるが、2 日分の報酬は請求できない B は A に修理代 5 万円の償還を請求できるが、2 日分の報酬は請求できない。「契約があるか → なければ事務管理・不当利得・不法行為のどれか → 誰が加害者か」の順で条文を選ぶ。
- エ 法律上の原因がないことを知らずに利益を受けた者は、利益が現に存する限度で返還すればよく、受け取った金銭を生活費に充てた場合には利益は現存するものとして扱われる 703 条・704 条。善意の受益者は現存利益、悪意の受益者は利息を付けて返還し、なお損害があれば賠償する。生活費に充てた場合は自分の財産の減少を免れているので現存し、遊興費に浪費した場合は現存しないというのが判例の考え方。
- ウ 愛人関係を維持する目的で建物を贈与し引き渡した場合、贈与者は不当利得としても所有権に基づいても返還を請求できず、建物の所有権は受贈者に帰属する 最大判昭和 45 年 10 月 21 日。返還請求ができない結果、所有権は反射的に受益者に帰属する。不法の原因が受益者のみにあるときは請求できる(708 条ただし書)。既登記建物は登記の移転まで必要(最判昭和 46 年 10 月 28 日)。「不法」は公序良俗に反する醜悪なものを指し、強行法規違反がすべて含まれるわけではない。
- イ 加害者である未成年者に責任能力がある場合には 714 条は適用されないが、監督義務違反と損害との間に相当因果関係があれば、親権者は 709 条により責任を負うことがある 最判昭和 49 年 3 月 22 日。714 条は責任無能力者の場合の規定で、監督義務を怠らなかったことを証明すれば免責される中間責任(立証責任は監督義務者側)。責任能力はおおむね 12 歳前後を目安に個別に判断される。
- エ 被用者の行為が外形から見て職務の範囲内と認められる場合でも、取引の相手方が被用者に権限がないことを知っていたか重大な過失により知らなかったときは、使用者責任を追及できない 最判昭和 42 年 11 月 2 日(相手方の悪意・重過失)。使用者から被用者への求償は信義則上相当な限度に制限され(最判昭和 51 年 7 月 8 日)、被用者から使用者への逆求償も認められる(最判令和 2 年 2 月 28 日)。使用者と被用者の責任は連帯の関係で、被害者はどちらにも全額を請求できる。
発展
- イ 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えた場合、共同行為者の間に共謀や共同の認識がなくても、行為が客観的に関連共同していれば各自が連帯して全額の賠償責任を負う 719 条・客観的関連共同説。注文者は注文・指図に過失があるときのみ責任を負う(716 条)。動物占有者は相当の注意をもって管理したことを証明すれば免責(718 条)。被用者の失火は被用者に重過失があるかで判断する(最判昭和 42 年 6 月 30 日)。
- ア 被害者の過失を考慮するには被害者に事理弁識能力があれば足り、責任能力までは必要ない 最大判昭和 39 年 6 月 24 日(事理弁識能力で足りる)。722 条 2 項は任意的で額の減額のみ(責任の否定は不可)。疾患などの素因は 722 条 2 項の類推で斟酌できるが(最判平成 4 年 6 月 25 日)、疾患にあたらない通常の体格・体質は考慮できない(最判平成 8 年 10 月 29 日)。
- undefined 不法行為による損害賠償債務は、被害者からの催告がなくても損害発生の時から履行遅滞となる 最判昭和 37 年 9 月 4 日。金銭賠償が原則(722 条 1 項 → 417 条)で、名誉毀損の原状回復(723 条)が例外。711 条の父母・配偶者・子以外にも類推で固有の慰謝料を認めた判例がある(最判昭和 49 年 12 月 17 日)。賠償範囲は 416 条の類推適用で相当因果関係の範囲に限られる。
- undefined 債務が存在しないことを知りながら弁済した者は、その返還を請求することができない 705 条(非債弁済)。知らなかった場合は過失があっても請求できる。期限前の弁済は返還請求できない(706 条)。他人の債務の弁済で債権者が善意で担保を放棄したときは請求できず、債務者に求償する(707 条)。騙取金銭による弁済は、受領者に悪意または重過失がある場合に限り返還請求できる(最判昭和 49 年 9 月 26 日)。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zm-11/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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