市場の失敗(外部性・公共財・情報の非対称性) ── 問題
基礎
- ある財の需要曲線が P = 50 − Q(P は価格、Q は数量)、この財を生産する企業の私的限界費用が PMC = 16 + Q である。生産 1 単位あたり 12 の外部不経済(周囲への被害)が生じるとき、社会的に最適な生産量はいくらですか。
- ある財の需要曲線が P = 118 − Q(P は価格、Q は数量)、私的限界費用が PMC = 18 + Q である。この財の生産は周囲に外部不経済をもたらし、その外部限界費用は 3Q で表される。社会的に最適な生産量を実現するために生産 1 単位あたりに課すべきピグー税の額はいくらですか。
- 市場の失敗のうち、情報の非対称性の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 売り手と買い手の一方だけが財の質や相手の行動を知っているため、質の悪い財が残ったり注意が緩んだりする イ 非競合性と非排除性をもつ財では対価を払わない利用者を締め出せず、市場に任せると供給が過少になる ウ 固定費用が大きく平均費用が下がり続ける産業では 1 社が供給する方が安くなり、放置すると独占価格になる エ 政府が税や規制で市場に介入した結果、市場が本来なら達成できたはずの効率的な配分が損なわれる undefined ある経済主体の活動が市場の取引を通さずに他の主体の利益や費用に影響し、生産量が最適水準からずれる)
- 公共財に関する用語のうち、フリーライダー問題の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 消費が競合するのに対価を払わない人を締め出せず、使いすぎによって枯渇しやすい財 イ 対価を払わなくても消費できるため、誰も自分から費用を負担しようとしなくなる問題 ウ 対価を払わない人を締め出すことはできるが、混雑しない限り消費が競合しない財 エ 対価を支払わない人をその財の消費から締め出すことができないという性質 undefined ある人がその財を消費しても、他の人が消費できる量が減らないという性質)
- 財の分類に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 一般道路は混雑しているかどうかにかかわらず、つねに非競合性と非排除性を満たす純粋公共財である イ 共有の漁場は誰でも利用できるうえに一人が獲っても他の人の取り分が減らないため、純粋公共財である ウ 有料の衛星放送は対価を払わなくても視聴できるため、非排除性をもつ純粋公共財である エ 国防は対価を払わない人を締め出すことができるが消費が競合しないため、クラブ財に分類される undefined 混雑していない有料道路は、対価を払わない人を締め出せるが消費が競合しない準公共財(クラブ財)にあたる)
標準
- 住民 A と住民 B の 2 人からなる社会で、ある公共財に対する A の限界便益が MB_A = 49 − Q、B の限界便益が MB_B = 66 − Q(Q は公共財の量)で表され、公共財の限界費用は 47 で一定である。この公共財の社会的に最適な供給量はいくらですか。
- ある財に対する消費者の私的限界便益(需要曲線)が P = 53 − Q(P は価格、Q は数量)、限界費用が MC = 5 + Q である。この財の消費は周囲にも便益を及ぼし、その外部限界便益は 1 単位あたり 10 で一定である。社会的に最適な生産量はいくらですか。
- 情報の非対称性に関する用語のうち、スクリーニングの説明として妥当なものはどれですか。 (ア 情報を持っていない側が、複数の契約を用意して相手が自分でタイプを明かすよう仕向ける行動 イ 情報を持っている側が、学歴や保証書などによって自分のタイプを相手に示そうとする行動 ウ 政府が取引の当事者双方に情報の開示を義務づけ、市場から情報の偏りそのものを取り除く政策 エ 取引の前に相手のタイプが分からないため、質の悪い財や高リスクの加入者ばかりが市場に残る現象 undefined 取引の後に相手の行動を観察できないため、保険に入った人が注意を怠るなど行動が変わってしまう現象)
- 外部性への対処法のうち、コースの定理の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 被害を受ける側に生産量に応じた補助金を与え、外部費用の負担を政府が肩代わりして市場の生産量をそのまま認める イ 排出できる総量を決めてその権利を売買させ、削減費用の低い主体が多く削減することで全体の削減費用を最小にする ウ 政府が排出量や生産量の上限を定めて守らせる方法で、企業ごとの削減費用の違いを反映しにくく非効率になりやすい エ 最適生産量における外部限界費用と同じ額を生産 1 単位あたりに課し、私的限界費用を社会的限界費用に一致させる undefined 取引費用がゼロで権利の帰属が明確なら、当事者の交渉によって権利の初期配分にかかわらず効率的な配分が実現する)
- 外部性に関するコースの定理の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 取引費用がゼロで権利の帰属が明確であれば、当事者の交渉によって効率的な配分が実現し、権利をどちらに与えても到達する生産量は同じである イ 権利の初期配分は資源配分の効率性を左右するが、当事者の間の所得分配には影響を与えない ウ 権利を被害を受ける側に与えた場合にだけ、当事者の交渉によって効率的な配分が実現する エ 取引費用が大きいほど交渉による解決が容易になるため、当事者の数が多い公害問題ほどこの定理が当てはまる undefined 政府がピグー税を課すことが効率的な配分を実現する唯一の方法であり、当事者の交渉では解決できない)
- 中古車市場を例にした「レモンの市場」の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 売り手だけが車の品質を知っているため、買い手は平均的な品質を前提とした価格しか払わず、質の良い車の持ち主が売るのをやめて取引が縮小する イ 品質の良い車ほど高い価格で売れることが買い手に知られているため、売り手は品質を高める努力を続け、取引は拡大する ウ 買い手が車を購入したあとに手入れを怠るようになる現象で、取引後の行動が観察できないことから生じるモラルハザードの例である エ 買い手だけが車の品質を知っているため、売り手は高い価格を提示できず、質の悪い車の持ち主が売るのをやめて取引が縮小する undefined 売り手が品質を偽って表示することを政府が禁止すれば、買い手と売り手の情報の差は完全になくなり、市場は効率的になる)
発展
- ある財の需要曲線が P = 63 − Q(P は価格、Q は数量)、私的限界費用が PMC = 9 + Q、生産に伴う外部限界費用が 4Q である。この市場を放置した場合に生じる死荷重(厚生損失)はいくらですか。
- ある財の私的限界便益(需要曲線)が P = 80 − Q、限界費用が MC = 20 + Q で、この財の消費は 1 単位あたり 10 の外部経済(周囲への便益)をもたらす。この市場に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 外部経済は消費者に便益を与えるだけで生産量には影響しないため、市場の生産量は社会的に最適な水準と一致する イ 市場の生産量は 30 で、社会的に最適な 35 より少なく、1 単位あたり 10 の補助金を出せば最適な生産量が実現する ウ 市場の生産量は 30 で、社会的に最適な 40 より少なく、1 単位あたり 5 の補助金を出せば最適な生産量が実現する エ 市場の生産量は 30 で、社会的に最適な 25 より多く、1 単位あたり 10 の税を課せば最適な生産量が実現する undefined 市場の生産量は 35 で、社会的に最適な 30 より多く、1 単位あたり 5 の税を課せば最適な生産量が実現する)
- 情報の非対称性への対策に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 自動車保険の免責金額や医療保険の自己負担は、加入前に高リスクの人を見分けることを目的とし、逆選択を完全に解消するしくみである イ 自動車保険の免責金額や医療保険の自己負担は、損失の一部を加入者に負わせることで契約後の注意を促し、モラルハザードを抑えるしくみである ウ 公的医療保険への強制加入は、加入後の受診回数を制限することによってモラルハザードを防ぐことを主な目的とする制度である エ 免責金額を大きくするほど加入者が損失を気にしなくなるため、モラルハザードは深刻になる undefined 経営者に対する成果連動型の報酬は、株主の行動を経営者が観察できないことから生じるモラルハザードを抑えるしくみである)
市場の失敗(外部性・公共財・情報の非対称性) ── 解答
基礎
- 11 社会的限界費用 SMC = PMC + 外部限界費用 = 16 + Q + 12 = 28 + Q。最適生産量は 需要 = SMC より 50 − Q = 28 + Q → Q = 11。市場に任せると 需要 = PMC より 50 − Q = 16 + Q → Q = 17 となり、外部不経済のもとでは最適より 6 多く生産される(過剰生産)。
- 60 社会的限界費用 SMC = PMC + 外部限界費用 = 18 + Q + 3Q = 18 + 4Q。最適生産量は 需要 = SMC より 118 − Q = 18 + 4Q → Q* = 20。ピグー税は最適生産量における外部限界費用なので 3Q* = 3 × 20 = 60。税を課すと企業の見る限界費用が 18 + Q + 60 になり、需要と等しくなる生産量が 20 に一致する。市場の生産量(50)での外部限界費用ではないことに注意。
- ア 売り手と買い手の一方だけが財の質や相手の行動を知っているため、質の悪い財が残ったり注意が緩んだりする 情報の非対称性とは、売り手と買い手の一方だけが財の質や相手の行動を知っているため、質の悪い財が残ったり注意が緩んだりする。市場の失敗は「完全競争の前提が崩れて、価格に任せても効率的な配分にならない」場面の総称で、政府が介入する根拠になる。政府の介入がかえって非効率を生む場合は「政府の失敗」と呼び、市場の失敗とは区別する。
- イ 対価を払わなくても消費できるため、誰も自分から費用を負担しようとしなくなる問題 フリーライダー問題とは、対価を払わなくても消費できるため、誰も自分から費用を負担しようとしなくなる問題。非競合性と非排除性の両方をもつのが純粋公共財、一方だけなら準公共財。フリーライダー問題は非排除性から生じ、市場に任せると公共財が過少供給になる理由になる。
- undefined 混雑していない有料道路は、対価を払わない人を締め出せるが消費が競合しない準公共財(クラブ財)にあたる 排除の可否と競合の有無の 2 軸で分ける。有料道路は排除できる(料金所)が、空いていれば競合しないのでクラブ財。国防は排除できず競合もしない純粋公共財。一般道路は混雑すると競合するのでコモンプール財に近くなる。漁場は競合する(獲れば減る)。有料放送は契約者以外を排除できる。
標準
- 34 公共財は全員が同じ量を消費するので、限界便益を縦に足す。社会的限界便益 = (49 − Q) + (66 − Q) = 115 − 2Q。これを限界費用 47 と等しくおいて 115 − 2Q = 47 → Q = 34(サミュエルソン条件)。このとき A の限界便益は 15、B の限界便益は 32 で、和が 47 になっている。私的財のように需要曲線を横に足してはいけない。
- 29 社会的限界便益 = 私的限界便益 + 外部限界便益 = 53 − Q + 10 = 63 − Q。最適生産量は 社会的限界便益 = MC より 63 − Q = 5 + Q → Q = 29。市場に任せると 53 − Q = 5 + Q → Q = 24 で、最適より 5 少ない(過少生産)。1 単位あたり 10 のピグー補助金を出せば需要曲線が 10 だけ上に移り、最適生産量が実現する。
- ア 情報を持っていない側が、複数の契約を用意して相手が自分でタイプを明かすよう仕向ける行動 スクリーニングとは、情報を持っていない側が、複数の契約を用意して相手が自分でタイプを明かすよう仕向ける行動。逆選択は「取引前・タイプが隠れている」、モラルハザードは「取引後・行動が隠れている」で区別する。シグナリングは情報を持つ側、スクリーニングは持たない側が行う点を入れかえた選択肢に注意。
- undefined 取引費用がゼロで権利の帰属が明確なら、当事者の交渉によって権利の初期配分にかかわらず効率的な配分が実現する コースの定理は、取引費用がゼロで権利の帰属が明確なら、当事者の交渉によって権利の初期配分にかかわらず効率的な配分が実現する。ピグー税・排出権取引は価格(費用)を通じて企業の行動を変える方法、直接規制は量を命じる方法、コースの定理は政府が介入しなくても当事者の交渉で解決しうるという考え方。
- ア 取引費用がゼロで権利の帰属が明確であれば、当事者の交渉によって効率的な配分が実現し、権利をどちらに与えても到達する生産量は同じである コースの定理は、取引費用ゼロと権利の明確化を条件に、交渉だけで効率的な配分に到達するという主張。権利を工場に与えても住民に与えても生産量は同じ(効率性は初期配分によらない)で、違うのは誰が誰に払うかという分配だけ。当事者が多く交渉費用が大きい現実の公害問題には当てはめにくいため、税や規制が使われる。
- ア 売り手だけが車の品質を知っているため、買い手は平均的な品質を前提とした価格しか払わず、質の良い車の持ち主が売るのをやめて取引が縮小する アカロフが示した逆選択の代表例。品質を知っているのは売り手で、買い手は平均を想定した価格しか払わない。すると良い車が市場から退出し、残った車の平均品質がさらに下がり、価格も下がるという悪循環になる。取引前にタイプが分からない問題なので、モラルハザード(取引後の行動)ではない。
発展
- 972 市場の生産量は 需要 = PMC より 63 − Q = 9 + Q → Qm = 27。最適生産量は 需要 = SMC(= 9 + 5Q)より Q* = 9。死荷重は Q* から Qm の間で SMC が需要曲線を上回る部分の三角形。底辺 = 27 − 9 = 18、高さ = Qm での SMC − 需要価格 = 144 − 36 = 108。18 × 108 ÷ 2 = 972。
- イ 市場の生産量は 30 で、社会的に最適な 35 より少なく、1 単位あたり 10 の補助金を出せば最適な生産量が実現する 市場:80 − Q = 20 + Q → Q = 30。社会的限界便益は 80 − Q + 10 = 90 − Q なので、最適:90 − Q = 20 + Q → Q = 35。外部経済では市場の生産量が最適より少ない(過少生産)。外部限界便益と同じ 10 のピグー補助金で需要曲線が 10 上に移り、Q = 35 になる。放置したときの死荷重は 5 × 10 ÷ 2 = 25。
- イ 自動車保険の免責金額や医療保険の自己負担は、損失の一部を加入者に負わせることで契約後の注意を促し、モラルハザードを抑えるしくみである 免責や自己負担は「損失の一部を本人に負わせる」ことで契約後の行動を慎重にさせる、モラルハザード対策。強制加入は、健康な人が抜けて高リスクの人だけが残る逆選択への対策。成果連動報酬は、株主(プリンシパル)が経営者(エージェント)の行動を観察できないことへの対策で、向きが逆。免責を大きくすると本人負担が増えるので注意は強まる。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/keizai/ze-06/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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