財政政策の効果(ケインズと新古典派・公共選択) ── 問題
基礎
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 20 + 0.8(Y − T)、租税が所得に比例する T = 0.5Y で表される(C:消費、Y:国民所得、T:租税。投資と政府支出は一定)。政府支出を 60 増やしたとき、国民所得はいくら増えますか。
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 20 + 0.5(Y − T) で表される(C:消費、Y:国民所得、T:定額税。投資と政府支出は一定)。定額税を 10 減税したとき、国民所得はいくら増えますか。
- 財政政策の効果をめぐる議論のうち、ブキャナン(公共選択論)の主張として妥当なものはどれですか。 (ア 合理的な期待のもとでは、あらかじめ予想された政策は物価に織り込まれ、生産や雇用を動かすことができない イ 公債の発行による減税は将来の増税と等価であり、人々は減税分を貯蓄するので需要は増えない ウ 政治家や官僚も自己利益で行動するため、好況期の引き締めは行われにくく、財政赤字が積み上がりやすい エ 裁量的な政策はラグのために景気をかえって不安定にするので、貨幣供給量を一定率で増やすルールに従うべきである undefined 不況期には政府支出の増加や減税によって有効需要を作り出す裁量的な財政政策が必要である)
- 財政政策に関する用語のうち、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 公債金を除く歳入から国債費を除く歳出を差し引いたもので、その年の政策経費を税収でまかなえているかを示す イ 累進課税や失業給付のように、政府が新たな決定をしなくても景気の変動を自動的に和らげるしくみ ウ 政府支出と租税を同額増やしたときに国民所得が増える倍率で、その値は 1 になる エ 政府が景気の状況を判断して政府支出や税を増減させる政策 undefined 政府支出の増加が利子率を上昇させ、民間投資を減少させることで財政政策の効果が弱まる現象)
標準
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 50 + 0.6(Y − T) で表される(C:消費、Y:国民所得、T:定額税。投資は一定)。政府が政府支出と定額税をともに 10 増やして均衡予算を保ったとき、国民所得はいくら増えますか。
- ある閉鎖経済で、限界消費性向が 0.5、所得税の税率が 0.5(比例税)である。民間投資が 120 減少したとき、比例税がまったくない場合と比べて、国民所得の減少がどれだけ小さくてすみますか(ビルトイン・スタビライザーによって防がれる所得の減少分)。
- ある年度の国の一般会計で、歳出総額が 100 兆円(うち国債費が 20 兆円)、税収などの歳入(公債金を除く)が 60 兆円で、不足分は公債金でまかなった。この年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)はいくらですか(赤字ならマイナスで答える。兆円)。
- ある開放経済で、限界消費性向が 0.9、限界輸入性向が 0.1 である(租税は定額、投資・政府支出・輸出は一定)。政府支出を 120 増やしたとき、国民所得はいくら増えますか。
- 公共選択論における中位投票者定理の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 3 人以上が 3 つ以上の案を多数決で決めるとき、順位が循環して決められないことがある イ 多数決のもとでは、有権者の選好の分布のちょうど真ん中に位置する人が望む政策が選ばれ、政党の政策は中央に寄る ウ 議員どうしが互いの法案に賛成票を融通しあう票の取引で、それぞれの地元向け支出が通って全体の支出が膨らむ エ 官僚は自分の部局の予算を最大化しようとするため、公共サービスが過大に供給される undefined 利益集団が規制や補助金によって得られる利益を求めてロビー活動に資源を費やし、生産的でない活動に資源が流れること)
- 経済政策のラグに関して、実施ラグの説明として妥当なものはどれですか。 (ア 景気の変化が起きてから、政策当局がそれに気づくまでの時間差 イ 景気の変化から政策の実行までの時間差の総称で、認知ラグと実施ラグを合わせたもの ウ 政策の実行から効果の発現までの時間差の別名で、政策当局の外側で生じるラグ エ 政策の必要性を認識してから、実際に政策が実行されるまでの時間差で、予算の国会審議を要する財政政策のほうが長い undefined 政策が実行されてから、その効果が経済に現れるまでの時間差で、金利から投資へと波及する金融政策のほうが長い)
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 40 + 0.75(Y − T)(C:消費、Y:国民所得、T:定額税)で表され、投資と政府支出は一定である。次の 3 つの政策による国民所得の増加分の組み合わせとして正しいものはどれですか。A:政府支出を 40 増やす。B:定額税を 40 減税する。C:政府支出と定額税をともに 40 増やす。 (ア A:160、B:120、C:0 イ A:120、B:90、C:30 ウ A:120、B:160、C:40 エ A:160、B:120、C:40 undefined A:160、B:160、C:0)
発展
- 政府が 1000 の減税を行い、その財源を公債の発行でまかなった。この公債は利子率 10% で 2 年後に利子とともに一括償還され、償還の財源はそのときの増税でまかなわれる。リカードの等価定理が想定するように、家計がこの将来の増税を正しく予想するとき、家計が予想する 2 年後の増税額はいくらですか。
- ある国の所得税の課税ベース(課税対象となる所得の総額)は、税率が高いほど労働意欲の低下などで縮小し、税率 t(%)のとき 1000 × (1 − t/100) になるとする。税率が 50% のときの税収はいくらですか。
- リカードの等価定理(バローの中立命題)に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 公債発行による減税は将来の増税と等価であるため、人々は減税分を貯蓄し、減税は消費を増やさない イ この定理が成り立つとき、公債の発行は民間の資本蓄積を大きく減らし、将来世代の負担となる ウ 公債発行による減税は、人々が将来の増税を予想しないため、増税による財源調達より大きく消費を増やす エ 借入れができない流動性制約下の家計が多いほど、この定理は成り立ちやすくなる undefined バローは、人々が自分の世代の利益しか考えないことを前提に、世代をまたぐ場合にも中立性が成り立つことを示した)
- 公共選択論の立場からの財政政策に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 政治家は有権者に嫌われる増税や歳出削減を避け、好況期の財政引き締めを行いたがらないため、ケインズ的な財政運営は赤字を積み上げやすい イ 官僚は自らの部局の予算を最小化しようとするため、公共サービスは過少供給になりやすい ウ 中位投票者定理によれば、多数決では選好の分布の両端に位置する有権者が望む極端な政策が選ばれやすい エ 政府は公益のために合理的に行動するため、裁量的な財政政策は景気を効果的に安定させることができる undefined 公共選択論は財政ルールによる制約を否定し、その時々の政治判断に財政運営を委ねるべきだと主張する)
財政政策の効果(ケインズと新古典派・公共選択) ── 解答
基礎
- 100 可処分所得は (1 − 0.5)Y なので、所得が 1 増えたときの消費の増加は 0.8 × (1 − 0.5) = 0.4。乗数 = 1/(1 − 0.4) = 1/0.6 = 5/3。ΔY = 5/3 × 60 = 100。比例税がなければ乗数は 1/(1 − 0.8) = 5 なので、税がビルトイン・スタビライザーとして働き効果を小さくしている。
- 10 減税 10 のうち消費に回るのは 0.5 × 10 = 5 だけで、残りは貯蓄される。租税乗数 = 0.5/(1 − 0.5) = 1 → ΔY = 1 × 10 = 10。同額の政府支出なら乗数 2 で 20 増えるので、減税のほうが効果は小さい。
- ウ 政治家や官僚も自己利益で行動するため、好況期の引き締めは行われにくく、財政赤字が積み上がりやすい ブキャナン(公共選択論):政治家や官僚も自己利益で行動するため、好況期の引き締めは行われにくく、財政赤字が積み上がりやすい。政府の失敗を分析し、均衡予算などの財政ルールを主張した。
- ア 公債金を除く歳入から国債費を除く歳出を差し引いたもので、その年の政策経費を税収でまかなえているかを示す プライマリーバランス(基礎的財政収支):公債金を除く歳入から国債費を除く歳出を差し引いたもので、その年の政策経費を税収でまかなえているかを示す。国債費 − 公債金収入 とも書ける。日本では黒字化が財政目標に掲げられている。
標準
- 10 政府支出の効果 = 1/(1 − 0.6) × 10 = 5/2 × 10 = 25(増加)。増税の効果 = 0.6/(1 − 0.6) × 10 = 3/2 × 10 = 15(減少)。差し引き 25 − 15 = 10。均衡予算乗数は限界消費性向によらず 1 で、所得は ΔG と同じだけ増える。
- 80 税がなければ乗数 1/(1 − 0.5) = 2 で所得は 2 × 120 = 240 減る。税率 0.5 があると乗数は 1/(1 − 0.5 × (1 − 0.5)) = 4/3 で、減少は 160 にとどまる。差の 240 − 160 = 80 が、所得減少時に税収が自動的に減って需要を支えた分(ビルトイン・スタビライザー)。
- −20 政策的経費(国債費を除く歳出)= 100 − 20 = 80 兆円。プライマリーバランス = 税収など 60 − 政策的経費 80 = −20 兆円(赤字)。別の見方では、公債金 = 100 − 60 = 40 兆円なので、国債費 20 − 公債金 40 = −20。PB が均衡すれば、その年の政策経費をその年の税収でまかなえていることになる。
- 600 所得が 1 増えると消費が 0.9 増えるが、そのうち 0.1 は輸入に回って国内需要から漏れる。乗数 = 1/(1 − 0.9 + 0.1) = 1/0.2 = 5。ΔY = 5 × 120 = 600。輸入がなければ乗数 10 で 1200 増えるので、輸入は財政政策の効果を海外に漏らす。
- イ 多数決のもとでは、有権者の選好の分布のちょうど真ん中に位置する人が望む政策が選ばれ、政党の政策は中央に寄る 中位投票者定理:多数決のもとでは、有権者の選好の分布のちょうど真ん中に位置する人が望む政策が選ばれ、政党の政策は中央に寄る。単峰型の選好を前提にする。
- エ 政策の必要性を認識してから、実際に政策が実行されるまでの時間差で、予算の国会審議を要する財政政策のほうが長い 実施ラグ:政策の必要性を認識してから、実際に政策が実行されるまでの時間差で、予算の国会審議を要する財政政策のほうが長い。財政政策は予算編成と国会審議を要するので長く、金融政策は中央銀行の決定で短い。ラグが長いと、効果が出るころに景気が反転していて逆効果になるおそれがあり、マネタリストの裁量政策批判の根拠になった。
- エ A:160、B:120、C:40 政府支出乗数 = 1/(1 − 0.75) = 4 → A = 4 × 40 = 160。租税乗数 = 0.75/(1 − 0.75) = 3 → B = 3 × 40 = 120。均衡予算乗数 = 4 − 3 = 1 → C = 40。減税は減税分の一部が貯蓄に回るので政府支出より効果が小さく、同額の増税と支出増を組み合わせても所得は支出増と同じだけ増える。
発展
- 1210 将来の増税額 = 1000 × (1 + 10/100)<sup>2</sup> = 1000 × 1.1<sup>2</sup> = 1210。家計は減税分を利子率 10% で貯蓄すれば、ちょうど将来の増税に備えられる。したがって減税は消費を増やさず、公債発行と増税は同じ効果(等価)になる。
- 250 課税ベース = 1000 × (1 − 50/100) = 500。税収 = 課税ベース × 税率 = 500 × 50/100 = 250。ちょうど税収が最大になる税率で、これ以上上げても下げても税収は減る(ラッファー曲線の頂点)。
- ア 公債発行による減税は将来の増税と等価であるため、人々は減税分を貯蓄し、減税は消費を増やさない 等価定理では、今の減税の現在価値と将来の増税の現在価値が等しいので、先を見通す家計は減税分を貯蓄して消費を変えない。よって公債による減税と増税は同じ効果(需要を増やさない)になる。流動性制約下の家計は減税分をすぐ使うので、定理は成り立ちにくくなる。定理が成り立つなら貯蓄が減税分だけ増えるので利子率は上がらず、資本蓄積も減らない。バローは利他的な遺産動機(子孫の世代まで考えて遺産を残す)を前提に、世代をまたぐ中立性を示した。
- ア 政治家は有権者に嫌われる増税や歳出削減を避け、好況期の財政引き締めを行いたがらないため、ケインズ的な財政運営は赤字を積み上げやすい ブキャナンらの公共選択論は、政治家・官僚・有権者もそれぞれの利益で行動すると考え、「政府は公益のために正しく動く」というケインズ政策の前提を批判した。減税や支出増は好かれ引き締めは嫌われるので、赤字が積み上がる(赤字バイアス)。ニスカネンのモデルでは官僚は予算を最大化しようとし、公共サービスは過大供給になる。中位投票者定理では真ん中の有権者が望む政策が選ばれる。公共選択論は裁量を疑い、均衡予算などのルールで政府を縛ることを主張する。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/keizai/zf-05/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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