財政政策の効果(ケインズと新古典派・公共選択) ── 問題
基礎
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 40 + 0.5(Y − T)、租税が所得に比例する T = 0.5Y で表される(C:消費、Y:国民所得、T:租税。投資と政府支出は一定)。政府支出を 30 増やしたとき、国民所得はいくら増えますか。
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 40 + 0.5(Y − T) で表される(C:消費、Y:国民所得、T:定額税。投資と政府支出は一定)。定額税を 30 減税したとき、国民所得はいくら増えますか。
- 財政政策の効果をめぐる議論のうち、ルーカス(合理的期待形成学派)の主張として妥当なものはどれですか。 (ア 裁量的な政策はラグのために景気をかえって不安定にするので、貨幣供給量を一定率で増やすルールに従うべきである イ 不況期には政府支出の増加や減税によって有効需要を作り出す裁量的な財政政策が必要である ウ 合理的な期待のもとでは、あらかじめ予想された政策は物価に織り込まれ、生産や雇用を動かすことができない エ 高すぎる税率は労働や投資の意欲を弱めるので、減税によって供給力を高めれば税収もかえって増えうる undefined 公債の発行による減税は将来の増税と等価であり、人々は減税分を貯蓄するので需要は増えない)
- 財政政策に関する用語のうち、財政錯覚の説明として妥当なものはどれですか。 (ア 政府支出と租税を同額増やしたときに国民所得が増える倍率で、その値は 1 になる イ 有権者が公債の将来負担を正しく認識せず、政府支出の費用を実際より小さく感じること ウ 政府支出の増加が利子率を上昇させ、民間投資を減少させることで財政政策の効果が弱まる現象 エ 政府が景気の状況を判断して政府支出や税を増減させる政策 undefined 累進課税や失業給付のように、政府が新たな決定をしなくても景気の変動を自動的に和らげるしくみ)
標準
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 40 + 0.8(Y − T) で表される(C:消費、Y:国民所得、T:定額税。投資は一定)。政府が政府支出と定額税をともに 60 増やして均衡予算を保ったとき、国民所得はいくら増えますか。
- ある閉鎖経済で、限界消費性向が 0.8、所得税の税率が 0.5(比例税)である。民間投資が 30 減少したとき、比例税がまったくない場合と比べて、国民所得の減少がどれだけ小さくてすみますか(ビルトイン・スタビライザーによって防がれる所得の減少分)。
- ある年度の国の一般会計で、歳出総額が 120 兆円(うち国債費が 22 兆円)、税収などの歳入(公債金を除く)が 65 兆円で、不足分は公債金でまかなった。この年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)はいくらですか(赤字ならマイナスで答える。兆円)。
- ある開放経済で、限界消費性向が 0.9、限界輸入性向が 0.1 である(租税は定額、投資・政府支出・輸出は一定)。政府支出を 60 増やしたとき、国民所得はいくら増えますか。
- 公共選択論におけるログローリングの説明として妥当なものはどれですか。 (ア 3 人以上が 3 つ以上の案を多数決で決めるとき、順位が循環して決められないことがある イ 多数決のもとでは、有権者の選好の分布のちょうど真ん中に位置する人が望む政策が選ばれ、政党の政策は中央に寄る ウ 議員どうしが互いの法案に賛成票を融通しあう票の取引で、それぞれの地元向け支出が通って全体の支出が膨らむ エ 利益集団が規制や補助金によって得られる利益を求めてロビー活動に資源を費やし、生産的でない活動に資源が流れること undefined 官僚は自分の部局の予算を最大化しようとするため、公共サービスが過大に供給される)
- 経済政策のラグに関して、認知ラグの説明として妥当なものはどれですか。 (ア 景気の変化が起きてから、政策当局がそれに気づくまでの時間差 イ 景気の変化から政策の実行までの時間差の総称で、認知ラグと実施ラグを合わせたもの ウ 政策の必要性を認識してから、実際に政策が実行されるまでの時間差で、予算の国会審議を要する財政政策のほうが長い エ 政策が実行されてから、その効果が経済に現れるまでの時間差で、金利から投資へと波及する金融政策のほうが長い undefined 政策の実行から効果の発現までの時間差の別名で、政策当局の外側で生じるラグ)
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 40 + 0.75(Y − T)(C:消費、Y:国民所得、T:定額税)で表され、投資と政府支出は一定である。次の 3 つの政策による国民所得の増加分の組み合わせとして正しいものはどれですか。A:政府支出を 40 増やす。B:定額税を 40 減税する。C:政府支出と定額税をともに 40 増やす。 (ア A:160、B:120、C:0 イ A:120、B:90、C:30 ウ A:120、B:160、C:40 エ A:160、B:120、C:40 undefined A:160、B:160、C:0)
- ある閉鎖経済で、消費関数が C = 50 + 0.5(Y − T)、租税が所得に比例する T = 0.2Y で表される(C:消費、Y:国民所得、T:租税。投資と政府支出は一定)。政府支出を 60 増やしたとき、国民所得はいくら増えますか。 (ア 120 イ 100 ウ 66 エ 30 undefined 200)
- ある閉鎖経済で、限界消費性向が 0.5、所得税の税率が 0.2(比例税)である。民間投資が 60 減少したとき、比例税がまったくない場合と比べて、国民所得の減少がどれだけ小さくてすみますか(ビルトイン・スタビライザーによって防がれる所得の減少分)。 (ア 120 イ 40 ウ 20 エ 12 undefined 100)
- サプライサイド経済学とラッファー曲線に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア サプライサイド経済学は、政府支出の拡大によって総需要を刺激することが経済成長の源泉であるとする イ サプライサイド経済学は 1930 年代の大恐慌期にケインズが提唱し、アメリカのニューディール政策の理論的な基礎になった ウ ラッファー曲線は税率と税収の関係が逆 U 字型になることを示し、税率が高すぎる場合は減税でかえって税収が増えるとする エ ラッファー曲線は税率が高いほど税収がつねに増えることを示し、増税による財政再建の根拠とされた undefined ラッファー曲線によれば、税率をゼロにすると課税ベースが最大になるため税収も最大になる)
発展
- 政府が 10000 の減税を行い、その財源を公債の発行でまかなった。この公債は利子率 10% で 3 年後に利子とともに一括償還され、償還の財源はそのときの増税でまかなわれる。リカードの等価定理が想定するように、家計がこの将来の増税を正しく予想するとき、家計が予想する 3 年後の増税額はいくらですか。
- ある国の所得税の課税ベース(課税対象となる所得の総額)は、税率が高いほど労働意欲の低下などで縮小し、税率 t(%)のとき 5000 × (1 − t/100) になるとする。税率が 80% のときの税収はいくらですか。
- リカードの等価定理(バローの中立命題)に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 公債発行による減税は将来の増税と等価であるため、人々は減税分を貯蓄し、減税は消費を増やさない イ この定理が成り立つとき、公債の発行は民間の資本蓄積を大きく減らし、将来世代の負担となる ウ 公債発行による減税は、人々が将来の増税を予想しないため、増税による財源調達より大きく消費を増やす エ 借入れができない流動性制約下の家計が多いほど、この定理は成り立ちやすくなる undefined バローは、人々が自分の世代の利益しか考えないことを前提に、世代をまたぐ場合にも中立性が成り立つことを示した)
- 公共選択論の立場からの財政政策に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 政治家は嫌われる増税や歳出削減、好況期の引き締めを避けがちなので、ケインズ的な財政運営は赤字を積み上げやすい イ 官僚は自らの部局の予算を最小化しようとするため、公共サービスは過少供給になりやすい ウ 中位投票者定理によれば、多数決による選挙では選好の分布の両端に位置する有権者が望む極端な政策が結果として選ばれやすい エ 政府は公益のために合理的に行動するため、裁量的な財政政策は景気を効果的に安定させることができる undefined 公共選択論は財政ルールによる制約を否定し、その時々の政治判断に財政運営を委ねるべきだと主張する)
- ある国の所得税の課税ベース(課税対象となる所得の総額)は、税率が高いほど労働意欲の低下などで縮小し、税率 t(%)のとき 10000 × (1 − t/100) になるとする。税率が 80% のときの税収と、税収が最大になる税率の組み合わせとして正しいものはどれですか。 (ア 税収 1600、最大になる税率 80% イ 税収 8000、最大になる税率 100% ウ 税収 2000、最大になる税率 50% エ 税収 8000、最大になる税率 50% undefined 税収 1600、最大になる税率 50%)
- 財政政策の効果に関する記述として妥当なものはどれですか。 (ア 総供給曲線が垂直な古典派のケースでは、財政拡張は物価を変えずに国民所得だけを増やす イ 流動性のわな(LM 曲線が水平)の状態では、財政拡張は利子率を大きく上昇させるため、クラウディング・アウトによって効果が完全に失われる ウ 変動相場制で資本移動が完全な小国では、財政拡張は利子率の上昇圧力から資本流入と自国通貨高を招き、純輸出の減少で効果が打ち消されるため、国民所得は増えない エ 固定相場制で資本移動が完全な小国では、財政拡張は自国通貨高を招いて効果が打ち消されるため、金融政策の方が有効である undefined 貨幣需要の利子弾力性がゼロ(LM 曲線が垂直)の状態では、財政拡張の効果は最大になり、乗数どおりに国民所得が増える)
財政政策の効果(ケインズと新古典派・公共選択) ── 解答
基礎
- 40 可処分所得は (1 − 0.5)Y なので、所得が 1 増えたときの消費の増加は 0.5 × (1 − 0.5) = 0.25。乗数 = 1/(1 − 0.25) = 1/0.75 = 4/3。ΔY = 4/3 × 30 = 40。比例税がなければ乗数は 1/(1 − 0.5) = 2 なので、税がビルトイン・スタビライザーとして働き効果を小さくしている。
- 30 減税 30 のうち消費に回るのは 0.5 × 30 = 15 だけで、残りは貯蓄される。租税乗数 = 0.5/(1 − 0.5) = 1 → ΔY = 1 × 30 = 30。同額の政府支出なら乗数 2 で 60 増えるので、減税のほうが効果は小さい。
- ウ 合理的な期待のもとでは、あらかじめ予想された政策は物価に織り込まれ、生産や雇用を動かすことができない ルーカス(合理的期待形成学派):合理的な期待のもとでは、あらかじめ予想された政策は物価に織り込まれ、生産や雇用を動かすことができない。政策無効命題。予想されない政策だけが短期に効果を持つ。
- イ 有権者が公債の将来負担を正しく認識せず、政府支出の費用を実際より小さく感じること 財政錯覚:有権者が公債の将来負担を正しく認識せず、政府支出の費用を実際より小さく感じること。公共選択論で、財政赤字が拡大する理由の 1 つとされる。
標準
- 60 政府支出の効果 = 1/(1 − 0.8) × 60 = 5 × 60 = 300(増加)。増税の効果 = 0.8/(1 − 0.8) × 60 = 4 × 60 = 240(減少)。差し引き 300 − 240 = 60。均衡予算乗数は限界消費性向によらず 1 で、所得は ΔG と同じだけ増える。
- 100 税がなければ乗数 1/(1 − 0.8) = 5 で所得は 5 × 30 = 150 減る。税率 0.5 があると乗数は 1/(1 − 0.8 × (1 − 0.5)) = 5/3 で、減少は 50 にとどまる。差の 150 − 50 = 100 が、所得減少時に税収が自動的に減って需要を支えた分(ビルトイン・スタビライザー)。
- −33 政策的経費(国債費を除く歳出)= 120 − 22 = 98 兆円。プライマリーバランス = 税収など 65 − 政策的経費 98 = −33 兆円(赤字)。別の見方では、公債金 = 120 − 65 = 55 兆円なので、国債費 22 − 公債金 55 = −33。PB が均衡すれば、その年の政策経費をその年の税収でまかなえていることになる。
- 300 所得が 1 増えると消費が 0.9 増えるが、そのうち 0.1 は輸入に回って国内需要から漏れる。乗数 = 1/(1 − 0.9 + 0.1) = 1/0.2 = 5。ΔY = 5 × 60 = 300。輸入がなければ乗数 10 で 600 増えるので、輸入は財政政策の効果を海外に漏らす。
- ウ 議員どうしが互いの法案に賛成票を融通しあう票の取引で、それぞれの地元向け支出が通って全体の支出が膨らむ ログローリング:議員どうしが互いの法案に賛成票を融通しあう票の取引で、それぞれの地元向け支出が通って全体の支出が膨らむ。票の取引。政府支出が膨らむ理由の 1 つ。
- ア 景気の変化が起きてから、政策当局がそれに気づくまでの時間差 認知ラグ:景気の変化が起きてから、政策当局がそれに気づくまでの時間差。統計の公表に時間がかかることなどによる。財政・金融で大きな差はない。ラグが長いと、効果が出るころに景気が反転していて逆効果になるおそれがあり、マネタリストの裁量政策批判の根拠になった。
- エ A:160、B:120、C:40 政府支出乗数 = 1/(1 − 0.75) = 4 → A = 4 × 40 = 160。租税乗数 = 0.75/(1 − 0.75) = 3 → B = 3 × 40 = 120。均衡予算乗数 = 4 − 3 = 1 → C = 40。減税は減税分の一部が貯蓄に回るので政府支出より効果が小さく、同額の増税と支出増を組み合わせても所得は支出増と同じだけ増える。
- イ 100 可処分所得は (1 − 0.2)Y なので、所得 1 単位の増加に対する消費の増加は 0.5 × (1 − 0.2) = 0.4。乗数 = 1/(1 − 0.4) = 5/3。ΔY = 5/3 × 60 = 100。比例税があると乗数は定額税の場合の 1/(1 − 0.5) = 2(ΔY = 120)より小さくなる(ビルトイン・スタビライザー)。
- ウ 20 比例税なし:乗数 1/(1 − 0.5) = 2 → 所得の減少 120。比例税あり:乗数 1/(1 − 0.5(1 − 0.2)) = 5/3 → 減少 100。差 = 120 − 100 = 20。所得が減ると税も自動的に減って可処分所得の落ち込みを和らげるので、減少幅が小さくなる(ビルトイン・スタビライザー)。
- ウ ラッファー曲線は税率と税収の関係が逆 U 字型になることを示し、税率が高すぎる場合は減税でかえって税収が増えるとする サプライサイド経済学(1980 年代のレーガン政権の理論的な柱)は、減税や規制緩和で労働・貯蓄・投資の意欲を高め供給側から成長を促すとする。ラッファー曲線は税率 0% でも 100% でも税収がゼロになる逆 U 字型で、頂点より右側(高税率)でのみ減税が増収につながる。総需要を重視するケインズ政策とは対照的。
発展
- 13310 将来の増税額 = 10000 × (1 + 10/100)<sup>3</sup> = 10000 × 1.1<sup>3</sup> = 13310。家計は減税分を利子率 10% で貯蓄すれば、ちょうど将来の増税に備えられる。したがって減税は消費を増やさず、公債発行と増税は同じ効果(等価)になる。
- 800 課税ベース = 5000 × (1 − 80/100) = 1000。税収 = 課税ベース × 税率 = 1000 × 80/100 = 800。税率はすでに税収を最大にする 50% を超えており、税率を下げたほうが税収は増える(ラッファー曲線の右側)。
- ア 公債発行による減税は将来の増税と等価であるため、人々は減税分を貯蓄し、減税は消費を増やさない 等価定理では、今の減税の現在価値と将来の増税の現在価値が等しいので、先を見通す家計は減税分を貯蓄して消費を変えない。よって公債による減税と増税は同じ効果(需要を増やさない)になる。流動性制約下の家計は減税分をすぐ使うので、定理は成り立ちにくくなる。定理が成り立つなら貯蓄が減税分だけ増えるので利子率は上がらず、資本蓄積も減らない。バローは利他的な遺産動機(子孫の世代まで考えて遺産を残す)を前提に、世代をまたぐ中立性を示した。
- ア 政治家は嫌われる増税や歳出削減、好況期の引き締めを避けがちなので、ケインズ的な財政運営は赤字を積み上げやすい ブキャナンらの公共選択論は、政治家・官僚・有権者もそれぞれの利益で行動すると考え、「政府は公益のために正しく動く」というケインズ政策の前提を批判した。減税や支出増は好かれ引き締めは嫌われるので、赤字が積み上がる(赤字バイアス)。ニスカネンのモデルでは官僚は予算を最大化しようとし、公共サービスは過大供給になる。中位投票者定理では真ん中の有権者が望む政策が選ばれる。公共選択論は裁量を疑い、均衡予算などのルールで政府を縛ることを主張する。
- undefined 税収 1600、最大になる税率 50% 税収 = 税率 × 課税ベース = 0.8 × 10000 × (1 − 0.8) = 10000 × 0.8 × 0.2 = 1600。税収 R(t) = 10000 × (t/100)(1 − t/100) は t = 50% で最大(ラッファー曲線の頂点)。よって 税収 1600、最大になる税率 50%。税率 80% は頂点より高い側なので、引き下げるとかえって税収が増える。課税ベースが縮まないと考えて 10000 × 0.8 = 8000 とするのは誤り。
- ウ 変動相場制で資本移動が完全な小国では、財政拡張は利子率の上昇圧力から資本流入と自国通貨高を招き、純輸出の減少で効果が打ち消されるため、国民所得は増えない マンデル=フレミング:変動相場制では財政政策無効・金融政策有効、固定相場制では逆(財政有効・金融無効)。流動性のわなでは利子率が上がらないので財政政策は完全に有効、LM 垂直(古典派)では完全なクラウディング・アウトで無効。AS 垂直なら財政拡張は物価だけを上げる。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/keizai/zf-05/test/ / 問題は毎回の表示で数が変わります。印刷したものはその一例です。
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