勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

英語の勉強法 ── 研究で確かめられている5つのやり方

このページも数学の勉強法と同じ立場です。実験で比べた結果が論文になっているやり方だけを集めました。研究ごとに「だれを対象に・何を比べて・どれくらい差が出たか」を書きます。数字が出せないものは、出せないと書きます。

英語は、単語・熟語・文法の形など覚えるものが多い教科です。そのため研究も「単語をどう覚えると残るか」に集まっています。ここではそれを中心に、読解と文法にも触れます。

今日からやること

  1. 単語帳は英語を隠し、日本語を見て英語を書く。今日覚えた語は、3日後と1週間後にも同じやり方でテストする
  2. 正解できた単語も、テストから外さない。「覚えた」と感じても、日をあけてもう一度出す
  3. 1日10分、教科書の本文を音声を聞きながら読む。知らない単語が1ページに1〜2語のやさしさで

結論の表

やり方ひとことで英語ではこうする証拠の強さ
① 見るより思い出す単語は眺めず、隠して言う・書く日本語を見て英語を言う/書く。覚えた語もテストは続ける強い(実験+メタ分析)
② 間をあけて戻る1日で10回より、数日に分けて10回同じ単語帳を「1日目・3日目・7日目・14日目」に回す強い(実験+メタ分析)
③ 文の中で何度も出会う単語は文脈で10回会うと定着しやすい単語帳の例文を読む+やさしい英文をたくさん読む中〜強
④ やさしい英文を多く読む(多読)辞書なしで読める本をたくさん中学レベルの読み物・教科書の本文を音声つきで中(メタ分析あり)
⑤ 文法は「型」で書いて使う説明を読むより、型で文を作る1つの形で3〜5文を作る→直してもらう→書きかえ問題中(数学の「例題学習」「練習テスト」の知見を流用)

証拠の強さは3点で判定しています。中高生に近い対象か。時間をおいたテストがあるか。複数の研究で同じ方向の結果が出ているか。


① 見るより思い出す(練習テスト・想起練習)

何をするか

単語帳を「読む」のをやめます。日本語を見て英語を言う(書く)、英語を見て日本語を言うをくり返します。正解できた単語も、テストから外しません。

どんな研究があるか

Karpicke & Roediger(2008)

さらに、学生が予想した「どれくらい覚えているか」は、実際の点数とほぼ関係がありませんでした。つまり「覚えた気がする」は当てになりません。

Rowland(2014)は、テスト効果の研究をまとめたメタ分析(過去の実験を統計でまとめる研究)です。自分で思い出して書くテスト(再生)は、選択肢から選ぶテスト(再認)より差が大きいという結果でした。

Elgort(2011)は、単語カードの暗記が浅い知識にしかならないかを調べました。48語を意図して覚えさせ、反応の速さを測る実験(プライミング)で調べました。すると暗記した語でも、形と意味が自動で結びついていました。「カードで覚えた単語は使えない」という通説への反証です。

英語での具体例

注意点


② 間をあけて戻る(分散練習)

何をするか

同じ単語を1日で何回も見るのではなく、日をあけて見直します。間隔は「1日後→3日後→1週間後→2週間後」と広げていくのが目安です。

どんな研究があるか

Nakata(2015)

著者自身も「広げ方より、間隔を入れること自体のほうが大事」とまとめています。

Nakata & Webb(2016)は、20語をまとめて回すか、4語・10語に分けて回すかを比べました。間隔をそろえると、分け方の差はほぼありませんでした。「1日◯語ずつ」の区切り方より、「いつ戻るか」が大事ということです。

数学の勉強法で引いた Cepeda ほか(2006) のメタ分析(184論文)も同じ結論です。テストまでの期間が長いほど、ちょうどよい間隔も長くなります。

英語での具体例

注意点


③ 文の中で何度も出会う

何をするか

単語帳だけでなく、例文や英文の中で繰り返し出会うようにします。目安は10回です。

どんな研究があるか

Webb(2007)

10回出会うとかなり身につきます。ただし完全に使えるようになるには、10回より多く必要という結果です。

Webb & Chang(2015)

一方で「よく出てくる語ほど覚える」という関係は、統計的に意味のある差になりませんでした。回数は理由の一つであって、全部ではないということです。

英語での具体例

注意点


④ やさしい英文を多く読む(多読)

何をするか

辞書を引かずに読めるレベルの英文を、たくさん読みます。わからない単語は飛ばし、話の流れを追います。

どんな研究があるか

Nakanishi(2015)

d は「差の大きさ」の目安です(効果量 d。0.2 が小、0.5 が中、0.8 が大)。著者は「多読は読む力を伸ばすので、授業の一部にすべき」と結論しています。

Nation(2006)は、必要な単語の量を計算した研究です。英文の98%の単語がわかれば、助けなしで読めるという前提で計算しています。

中学までに学ぶ語は、小学校で 600〜700 語・中学校で 1,600〜1,800 語です。出典は学習指導要領(平成 29 年告示)です。だから入試の長文は、知っている単語の割合が高くなるよう作られています。一般向けの英文をいきなり読むと知らない単語だらけになるのは当然です。やさしい本から始める理由はここにあります。

英語での具体例

注意点


⑤ 文法は「型」で書いて使う

何をするか

文法の説明を読んで「わかった」で終わらせません。その形で自分の文を3〜5個作ります。間違いを直してもらい、次の日に書きかえ問題を解きます。

どんな研究があるか

英語の文法学習を中高生で比べた大規模な研究は、この記事の基準(DOI 確認・数字あり)では限られていました。そこで、ここは数学の勉強法で引いた一般的な学習研究を流用しています。

英語での具体例

注意点


よく聞くけれど証拠が弱いもの

「単語は書いて覚える(何十回も書く)」

同じ単語を何十回も書き写すのは、見ながら書いています。①の「思い出す」が入っていないので、練習テストの差が出にくいのです。書くなら、隠して思い出してから書く。

「単語は文脈で覚えるべきで、単語帳は浅い知識にしかならない」

Elgort(2011)は、単語カードで意図して覚えても形と意味が自動で結びつくことを示しました。単語帳が「浅い」とは言えません。一方で Webb(2007)は、文脈で10回以上出会う価値も示しています。どちらか、ではなく両方です。

「自分は耳で覚えるタイプだから聞くだけ」

数学の勉強法でも引いた Pashler ほか(2008)の総説です。学習スタイルに合わせた指導が有利という証拠は「ほとんどない」としています。英語では、音と文字の両方で出会うほうが結びつきが強くなります(Webb & Chang の方法も、読みながら聞く)。


5つをつなげた1週間の型(例)

中3・高校受験向け。1日30〜40分。部活のあとでも回せる量です。

曜日やること
月単語帳 新規50語:日本語→英語で隠してテスト(①)。わからない語に印
火月曜の50語を再テスト(②)+文法1単元の解説→例文を和文英訳(⑤)
水単語帳 新規50語+火曜の文法の小テスト(⑤)
木水曜の50語を再テスト+教科書本文を音声つきで2回読む(③④)
金月・水の100語を再テスト(②)+長文1題(設問先読み・e3-08)
土今週の文法の書きかえ・並べかえ10問(①⑤)+やさしい英文を10分(④)
日休み、または先週・先々週の単語をまとめて再テスト(②)

ポイントは3つです。単語はいつも隠してテストし、同じ語に日をあけて3回以上戻る。文法は読むより書く。長文はやさしいものを量で。


この記事の立場

大学受験(高校英語)ではこう使う

高校英語の単元は 文法 20・語彙 4・読解 4・作文とリスニング 2 の 30 単元。


参考文献

  1. Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966–968. https://doi.org/10.1126/science.1152408
  2. Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432–1463. https://doi.org/10.1037/a0037559
  3. Elgort, I. (2011). Deliberate learning and vocabulary acquisition in a second language. Language Learning, 61(2), 367–413. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00613.x
  4. Nakata, T. (2015). Effects of expanding and equal spacing on second language vocabulary learning: Does gradually increasing spacing increase vocabulary learning? Studies in Second Language Acquisition, 37(4), 677–711. https://doi.org/10.1017/S0272263114000825
  5. Nakata, T., & Webb, S. (2016). Does studying vocabulary in smaller sets increase learning? The effects of part and whole learning on second language vocabulary acquisition. Studies in Second Language Acquisition, 38(3), 523–552. https://doi.org/10.1017/S0272263115000236
  6. Webb, S. (2007). The effects of repetition on vocabulary knowledge. Applied Linguistics, 28(1), 46–65. https://doi.org/10.1093/applin/aml048
  7. Webb, S., & Chang, A. C.-S. (2015). Second language vocabulary learning through extensive reading with audio support: How do frequency and distribution of occurrence affect learning? Language Teaching Research, 19(6), 667–686. https://doi.org/10.1177/1362168814559800
  8. Nakanishi, T. (2015). A meta-analysis of extensive reading research. TESOL Quarterly, 49(1), 6–37. https://doi.org/10.1002/tesq.157
  9. Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82. https://doi.org/10.3138/cmlr.63.1.59
  10. Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
  11. Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
  12. Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
  13. Sweller, J., & Cooper, G. A. (1985). The use of worked examples as a substitute for problem solving in learning algebra. Cognition and Instruction, 2(1), 59–89. https://doi.org/10.1207/s1532690xci0201_3
  14. Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105–119. https://doi.org/10.1111/j.1539-6053.2009.01038.x