勉強法
テスト効果(思い出す練習) ── 読み返すより、閉じて思い出す
一言で
解説やノートを読み返すより、閉じて自分で思い出す・解くほうが、数日後・数週間後に残ります。 これを「テスト効果」と呼びます。「検索練習」「想起練習」(どちらも、頭の中から答えを引き出す練習のこと)とも言います。点数をつけない小テストでも同じことが起きます。 読み返しは「わかった気」を作り、テストは「本当に残るもの」を作る。これがこの分野の要点です。
今日からやること
- 教科書やノートを 1 ページ読んだら閉じる。白い紙に、覚えている用語や式を 3 分で書き出してから開いて確かめる
- 単語帳は眺めずに、日本語を隠して英語を言う。言えなかったカードだけ別の山に分ける
- 定期テスト 1 週間前は、ノートの読み返しをやめる。問題集の小テストや過去の定期テストを、答えを隠して解く
何が分かっているか
Roediger & Karpicke(2006)
- 対象:大学生。文章の教材を学んだ
- 比べたもの:「くり返し読み直す」群と「読んだあと思い出すテストを受ける(答え合わせなし)」群
- 結果:5 分後のテストでは読み直し群が上。2 日後・1 週間後ではテスト群が上回った。読み直し群は「覚えている自信」だけが高かった(要旨に % が無いので数字は書きません)
Karpicke & Roediger(2008) 大学生がスワヒリ語の単語を覚えました。いちど正解できた単語を「その後もくり返し学習する」「くり返しテストする」「どちらもやめる」に分けています。 後日のテストでは、くり返し学習(眺める)では差が出ず、くり返しテスト(思い出す)では大きな差が出ました。 学生自身の「どれくらい覚えていると思うか」の予想は、実際の成績と関係がありませんでした(無相関)。
Rowland(2014) テスト効果の研究をまとめたメタ分析(多くの実験結果を合算する研究)です。自分で思い出して書くテスト(再生)は、選択肢から選ぶテスト(再認)より差が大きい結果でした。効果量の数値は要旨に無いので書きません。
McDaniel, Agarwal, Huelser, McDermott & Roediger(2011)
- 対象:アメリカの中学 2 年(8 年生)の理科の授業
- 比べたもの:授業内容の一部だけを選択式の小テスト(答えの確認つき)に出し、出さなかった内容と単元末テストで比べた
- 結果:小テストに出した内容は単元末テストで 13〜25% 高かった。小テストを置く時期(授業前・授業直後・単元テスト前の復習)も比べた。復習として行った小テストの差が最も大きく、学期末・学年末まで残った
Roediger, Agarwal, McDaniel & McDermott(2011) アメリカの 6 年生(日本の小 6 相当)の社会科で、同じ設計の実験を 3 つ行いました。授業内容の一部を、成績に入らない選択式の小テストに 3 回出しています。 出した内容は、出さなかった内容や「2 回見せただけ」の内容より、章末テストでも学期末テストでも上でした。 実験 3 では記述式(自分で答えを書く)の最終テストでも差が確かめられています(% は要旨に無いので書きません)。
Dunlosky ら(2013) 10 種類の勉強法をまとめた総説で、練習テストは「有用性:高」でした。分散練習(間隔反復)と並ぶ最上位です。要約・マーカー・読み返しは「低」でした。
このほか、理科の勉強法で引いた研究が 2 つあります。どちらも % は要旨に無いので書きません。
- Butler(2010):くり返しテストで覚えた知識は、ちがう分野の推論問題にも使えた(転移した)
- Karpicke & Blunt(2011):科学の教材で、思い出す練習が概念図づくりより上だった。概念図は用語を線でつないだ図のこと
よくある誤解
「テストは覚えたかを測るもので、覚えるためのものではない」 上の研究はすべて「テストを受けること自体が学習になる」ことを示しています。点数をつけない・成績に入らない小テストでも起きます。
「読んで『わかった』のだから、次に進んでよい」 Roediger & Karpicke(2006)で、読み直し群は自信だけが上がりました。Karpicke & Roediger(2008)では「覚えたと思う」予想と成績が無相関でした。 「わかった」の感覚は、残っているかどうかの目安になりません。閉じて解けるかで判断します。
「選択式の小テストでは意味がない」 McDaniel ら・Roediger らの教室の実験は、選択式で差が出ています。ただ Rowland(2014)のとおり、自分で書く形のほうが差は大きいです。選択式で正解したら、用語や式を白紙に書いてみると両方の利点が使えます。
このサイトでの使い方
各単元は「解説 → 小テスト」の順に並んでいます。テスト効果を使う手順はこうです。
- 解説を読んだら閉じて、ページ下の小テスト(基礎 10 問)を解く。読んだだけで次に進まない
- 間違えた問題は、その場の解説で確かめる。そのあと「同じ型でもう 1 問」ボタンで、別の数の問題を解き直す
- 間違えた型は端末内に記録され、次に開くと「前に間違えた型をやり直す」ボタンが出ます。3 日後・1 週間後に、まずこれから
- 定期テスト前は、ノートを読み返す代わりに単元一覧から小テストを通しで受ける。McDaniel らの研究で差が最も大きかったのは「テスト前の復習としての小テスト」でした
- 数学 全単元まぜこぜテスト は全単元から混ぜて出ます。「どの単元の問題か」を自分で見分ける練習(交互練習)と、思い出す練習を同時にできます
例:二次方程式(因数分解・平方根・解の公式) なら、解説の「まずここだけ」を読んで閉じます。小テスト → 間違えた型だけ「もう 1 問」→ 1 週間後に「前に間違えた型をやり直す」の順です。 be動詞(現在) のような英語の単元も同じです。日本語を見て英文を書けるかまで確かめると、Rowland の言う「書く形」になります。
注意点
- 小テストは答えの確認(フィードバック)つきで。教室の実験では正解が示されています
- 練習テストで間違えるのは失敗ではなく、この方法の一部です。間違えて解説を読んだところが残ります
- 読み返しが全部ダメなわけではありません。解けなかった問題の解説を読むのは必要です。ダメなのは「解いていないのに読み返し続ける」ことです
- ここの研究の多くは英語圏の学生が対象です。日本の中高生で同じ差が出るかを直接確かめた研究は、このページではまだ引けていません
引いた論文
番号は docs/参考文献ログ.md の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。
- #4 Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17, 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
- #9 Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319, 966–968. https://doi.org/10.1126/science.1152408
- #10 Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140, 1432–1463. https://doi.org/10.1037/a0037559
- #18 McDaniel, M. A., Agarwal, P. K., Huelser, B. J., McDermott, K. B., & Roediger, H. L. (2011). Test-enhanced learning in a middle school science classroom: The effects of quiz frequency and placement. Journal of Educational Psychology, 103, 399–414. https://doi.org/10.1037/a0021782
- #19 Roediger, H. L., Agarwal, P. K., McDaniel, M. A., & McDermott, K. B. (2011). Test-enhanced learning in the classroom: Long-term improvements from quizzing. Journal of Experimental Psychology: Applied, 17, 382–395. https://doi.org/10.1037/a0026252
- #6 Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14, 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- #23 Butler, A. C. (2010). Repeated testing produces superior transfer of learning relative to repeated studying. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36, 1118–1133. https://doi.org/10.1037/a0019902
- #20 Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Retrieval practice produces more learning than elaborative studying with concept mapping. Science, 331, 772–775. https://doi.org/10.1126/science.1199327