勉強法
間隔反復(分散練習) ── 1 日で 10 回より、日をあけて 10 回
一言で
同じ内容を 1 日にまとめて練習するより、日をあけて何回かに分けて戻るほうが、数日〜数か月後に残ります。心理学では「間隔効果」「分散練習」と呼ばれ、もっとも繰り返し確かめられている現象の一つです。 戻る間隔は「テストまでの期間が長いほど長く」が目安で、入試まで半年あるなら数週間単位でかまいません。
何が分かっているか
Cepeda, Pashler, Vul, Wixted & Rohrer(2006) ── 184 本の論文・317 の実験・839 件の比較をまとめたメタ分析(過去の実験結果を統計的に合算する研究)。対象は言葉を覚えて思い出す課題です。まとめて練習するより間をあけるほうが記憶が残ること、そして最適な間隔は「テストまでの期間が長いほど長くなる」ことを示しました。1 週間後のテストなら数日あけ、数か月先の入試なら数週間あける、というイメージです。
Rohrer & Taylor(2007)の実験 1 ── 大学生。同じ数の数学の問題を「1 回にまとめて解く」群と「複数回に分けて解く」群に分け、1 週間後にテスト。分けた群が大きく上回りました(要旨に具体的な % が無いので、数字は書きません)。
Rohrer, Dedrick & Stershic(2015) ── 中学 1 年生(アメリカの 7 年生)126 人。3 か月間、練習問題の並べ方を変えて解かせ、予告なしのテストを 1 日後と 30 日後に行いました。差の大きさは 1 日後で d = 0.42、30 日後で d = 0.79(d は「差の大きさ」の指標で、0.2 が小・0.5 が中・0.8 が大の目安)。この研究は「混ぜて解く」(交互練習)の実験ですが、混ぜると自然に「前の単元に日をあけて戻る」形になるので、間隔の研究としても読めます。時間がたつほど差が開いたのがポイントです。
Nakata(2015) ── 日本の大学生 128 人に英単語 20 語を学習させ、「詰め込み」と「間隔あり」、さらに「等間隔」と「間隔を広げていく」を比べた研究。間隔をあける効果は大きな効果量で確認されました。「間隔を広げていく方式」は等間隔より上でしたが、その差は限定的(統計的には有意)で、著者自身が「間隔を入れること自体のほうが、広げ方より効果が大きい」とまとめています。
Nakata & Webb(2016) ── 英単語 20 語を「まとめて回す」か「4 語・10 語に分けて回す」かを比べた研究。間隔をそろえると分け方の差はほぼ無く、間隔のほうが効果が大きい。「1 日 ◯ 語ずつ」の区切り方より「いつ戻るか」が大事、ということです。
Dunlosky, Rawson, Marsh, Nathan & Willingham(2013) ── 10 種類の勉強法を、年齢・教材・テストの種類をまたいでどれだけ通用するかで評価した総説。分散練習は「有用性:高」で、これは練習テスト(テスト効果)と並ぶ最上位の評価です。要約・マーカー・再読は「低」でした。
よくある誤解
「間をあけると忘れるから、忘れないうちに固めたい」 忘れかけたところで思い出すから残る、というのがこの現象の中身です。少し忘れているくらいがちょうどよく、「忘れた感じ」は失敗のサインではありません。大学受験の勉強法で引いた Kornell(2009)では、間隔があく回し方が 90% の参加者で勝ったのに、72% の参加者は詰めた回し方のほうがよかったと感じていました。感覚は当てになりません。
「間隔反復は単語カード専用」 Cepeda らのメタ分析は言葉の記憶が中心ですが、Rohrer らの研究は数学の問題で同じ方向の結果です。単語・用語・公式・解法のどれにも当てはまります。
「間隔は 1 日→3 日→7 日と、正確に広げないといけない」 Nakata(2015)のとおり、広げ方の差は限定的で、間隔を入れること自体のほうが大きい。カレンダーに「戻る日」が書いてあれば、日数のずれは気にしなくてよいです。
このサイトでの使い方
各単元は「解説 → 小テスト」の順に並んでいて、小テストは毎回ちがう数・ちがう語で出るので、日をあけて戻っても同じ問題の暗記にはなりません。
- 単元を終えた日 → 1 週間後 → 1 か月後 の 3 回、同じ単元の小テストに戻る。例:一次関数(式・グラフ・変化の割合) を学んだら、1 週間後に小テストの「標準」、1 か月後に「発展」
- 小テストで間違えた型は端末内に記録され、次に開いたとき「前に間違えた型をやり直す」ボタンが出ます。戻る日に、まずこのボタンから始めると、間隔をあけた復習が「間違えた所だけ」でできます(正解すると消えます)
- 紙でやりたいときは各単元のプリント(レベルと問題数を選んで印刷)。1 週間後・1 か月後の分を先に印刷して机に置いておくと、戻り忘れが減ります
- 用語は 用語集 にまとめてあります。本文の点線つきの言葉をタップすると説明が出るので、戻る日に「説明を見る前に自分で言えるか」を試してから開くと、間隔をあけた思い出す練習になります
- 教科ごとの当てはめ方は 数学・英語・社会 の勉強法に書いてあります。社会のページでは、中学 2 年生のアメリカ史で 16 週間あけた復習テストが 9 か月後にもっともよかった研究(Carpenter ほか 2009)も引いています
注意点
- 「間をあける」と「やらない」は別です。戻る日を決めておかないと、ただの放置になります
- テスト前日の詰め込みは翌日には残ります。残らないのは 1 週間後で、入試は数か月先だから間隔が要る、という話です
- ここに挙げた数字は平均の差です。全員に同じだけ差が出るわけではありません。日本の中高生で同じ差が出るかを直接確かめた研究は、Nakata(2015)(日本の大学生)以外は引けていません
引いた論文
番号は docs/参考文献ログ.md の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。
- #5 Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132, 354–380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
- #1 Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498. https://doi.org/10.1007/s11251-007-9015-8
- #2 Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S. (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology, 107, 900–908. https://doi.org/10.1037/edu0000001
- #11 Nakata, T. (2015). Effects of expanding and equal spacing on second language vocabulary learning: Does gradually increasing spacing increase vocabulary learning? Studies in Second Language Acquisition, 37, 677–711. https://doi.org/10.1017/S0272263114000825
- #12 Nakata, T., & Webb, S. (2016). Does studying vocabulary in smaller sets increase learning? The effects of part and whole learning on second language vocabulary acquisition. Studies in Second Language Acquisition, 38, 523–552. https://doi.org/10.1017/S0272263115000236
- #6 Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14, 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- #33 Kornell, N. (2009). Optimising learning using flashcards: Spacing is more effective than cramming. Applied Cognitive Psychology, 23, 1297–1317. https://doi.org/10.1002/acp.1537
- #24 Carpenter, S. K., Pashler, H., & Cepeda, N. J. (2009). Using tests to enhance 8th grade students’ retention of U.S. history facts. Applied Cognitive Psychology, 23, 760–771. https://doi.org/10.1002/acp.1507