勉強法
交互練習(混ぜて解く) ── 型ごとに並んだ問題集の弱点を埋める
一言で
問題集は「今日の単元の問題が 12 問並ぶ」形がふつうです。この形だと、問題を読む前から解き方がわかっています。交互練習は、今日の型と前の単元の型を混ぜて並べて解くやり方で、「どの解き方を使うか」を毎回自分で選ぶ練習になります。 中学生の教室で確かめられており、練習中の正解率は下がるのに、あとのテストでは上回ります。
何が分かっているか
Rohrer & Taylor(2007) ── 大学生・2 つの実験。数学の問題を「型ごとにまとめて解く」群と「混ぜて解く」群に分け、1 週間後にテスト。混ぜた群が大きく上回りました(要旨には「vastly superior」とありますが、具体的な % は要旨に無いので数字は書きません)。
Rohrer, Dedrick & Stershic(2015) ── 中学 1 年生(アメリカの 7 年生)126 人。3 か月間、同じ練習問題を「混ぜた順」と「型ごとにまとめた順」で解かせ、最後に予告なしのテスト。混ぜて解いた生徒のほうが 1 日後のテストでも 30 日後のテストでも高得点で、差の大きさは1 日後で d = 0.42、30 日後で d = 0.79(d は「差の大きさ」の指標で、0.2 が小・0.5 が中・0.8 が大の目安)。時間がたつほど差が開いたのがポイントです。
Rohrer, Dedrick, Hartwig & Cheung(2020) ── 7 年生の数学 54 クラスを対象にした、事前登録つきのランダム化比較試験(何を測るかをあらかじめ登録してから行う、信頼度の高いやり方)。4 か月間、混ぜた宿題と型ごとの宿題を割り当て、1 か月後に予告なしのテスト。混ぜた群 61%、型ごとの群 38%(d = 0.83)。先生は特別な研修なしで実施でき、結果を知る前のアンケートで先生たち自身がこのやり方を支持していました。
Dunlosky ら(2013) ── 10 種類の勉強法の総説で、交互練習は「有用性:中」。練習テスト・分散練習(「高」)の次の評価です。なお、上の 2015 年・2020 年の教室実験はこの総説(2013 年)より後に出たもので、総説の評価には入っていません。
よくある誤解
「混ぜると練習中に間違えが増えるから、悪いやり方だ」 練習中の正解率が下がるのは、この方法の一部です。Rohrer らの実験でも、練習中は型ごとの群のほうがよく解けていて、差が出たのはあとのテストです。「できていない気分」になるのが普通だと知っておいてください。
「習ったその日から混ぜればよい」 何も知らない状態で混ぜても、選びようがありません。新しい型を習った日は、まず型ごとに数問解いて手順を覚えてから(解答例から学ぶ)混ぜます。
「交互練習は数学だけの話」 確かめられているのは主に数学ですが、「どの型かを自分で見分ける」必要がある教科なら同じ考え方が使えます。英語の文法(不定詞か動名詞か)、理科の計算(密度・オーム・湿度)、社会の対応表(出来事と人物)などです。ただし数学以外で同じ大きさの差が出るかは、このサイトで引いた論文からは言えません。
このサイトでの使い方
各単元の小テストは「その単元だけ」で出ますが、混ぜて解くための入口も用意してあります。
- 全単元まぜこぜテスト:教科の全単元から混ぜて出す小テストです。数学 全単元まぜこぜテスト・高校数学 全 45 単元まぜこぜテスト。解説に「【単元名】」がつくので、どの単元の型だったかを答え合わせのあとに確かめられます
- 単元の小テストを2〜3 単元ぶん続けて解く:例えば 正負の数の加法・減法 → 正負の数の乗法・除法・累乗 → 四則の混じった計算・素因数分解 を 1 セットで。似た型がとなり合う単元ほど、見分ける練習になります(一次関数(式・グラフ・変化の割合) と 一次関数と方程式・交点、因数分解 と 二次方程式 など)
- プリントを単元ごとに数枚印刷して、ページを切り離して混ぜる。紙なら「どの単元の問題か」の手がかりを消しやすいです
- 「前に間違えた型をやり直す」ボタンは、間違えた型を 1 型 1 問ずつ混ぜて出すので、これ自体が小さな交互練習になっています
注意点
- ポイントは「解く前に型を判断する」こと。混ぜているのに「これは ◯◯ の問題」と書いてあったら意味が半減します
- 混ぜると自然に「前の単元に日をあけて戻る」形になるので、間隔反復 と一緒に起きます。2 つは別の現象ですが、実際の勉強では同時に使えます
- 引いた研究はアメリカの 7 年生と大学生が対象です。日本の中高生で同じ差が出るかを直接確かめた研究は、このページではまだ引けていません
- 「d = 0.8」のような数字は平均の差です。全員に同じだけ差が出るわけではありません
引いた論文
番号は docs/参考文献ログ.md の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。
- #1 Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498. https://doi.org/10.1007/s11251-007-9015-8
- #2 Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S. (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology, 107, 900–908. https://doi.org/10.1037/edu0000001
- #3 Rohrer, D., Dedrick, R. F., Hartwig, M. K., & Cheung, C.-N. (2020). A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology, 112, 40–52. https://doi.org/10.1037/edu0000367
- #6 Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14, 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266