数学Ⅰ / 数と式 / h1-05
集合と命題 ── 必要条件・十分条件・対偶・背理法
この単元でできるようになること
- 集合の記号(∈、⊂、∩、∪、補集合)と、ベン図で共通部分・和集合が数えられる
- ド・モルガンの法則が使える
- 命題「p ⇒ q」の真偽を、反例で判断できる
- ・十分条件・必要十分条件を、集合の包含関係で判定できる
- 逆・裏・対偶を作れ、「対偶の真偽はもとの命題と一致する」を使って証明できる
- 背理法の型がわかる
入試での位置づけ
「必要条件・十分条件」は共通テスト数学Ⅰ・A のほぼ毎年出る小問です。集合の要素の個数(ベン図)も同様。対偶・背理法は記述式の証明(√2 が無理数、など)で使われ、国公立二次で問われます。この単元は計算が少ないぶん、言葉の定義を正確に覚えることがすべてです。
1. 集合
まずここだけ
| 記号 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| a ∈ A | a は A に属する | a は A の要素 |
| A ⊂ B | A は B の部分集合 | A の要素はすべて B の要素 |
| A ∩ B | 共通部分(かつ) | 両方に属する要素の集合 |
| A ∪ B | 和集合(または) | 少なくとも一方に属する要素の集合 |
| Ā(A の補集合) | A でない | 全体集合 U の中で A に属さない要素 |
| ∅ | 空集合 | 要素が 1 つもない集合 |
表し方:要素を書き並べる {1, 2, 3}、条件で書く {x | x は 6 の正の約数}。
要素の個数
n(A) で A の要素の個数を表す。
n(A ∪ B) = n(A) + n(B) − n(A ∩ B)(重なりを 1 回引く)
1〜100 の整数で、3 の倍数または 5 の倍数は何個か。 n(A) = 33、n(B) = 20、n(A ∩ B) = 15 の倍数の個数 = 6 n(A ∪ B) = 33 + 20 − 6 = 47 どちらの倍数でもない:100 − 47 = 53
ド・モルガンの法則
(A ∩ B) の補集合 = Ā ∪ B̄(「かつ」の否定は「または」) (A ∪ B) の補集合 = Ā ∩ B̄(「または」の否定は「かつ」)
「3 の倍数でも 5 の倍数でもない」= Ā ∩ B̄ = (A ∪ B) の補集合。
2. 命題と条件
まずここだけ
命題:正しいか正しくないかが決まる文。「p ならば q」を p ⇒ q と書き、p を仮定、q を結論という。
真偽の判定:
- p ⇒ q が偽であることを示すには、反例(p を満たすが q を満たさない例)を 1 つ挙げればよい
- 真であることを示すには、すべての場合で成り立つことを示す
「x = 2 ⇒ x² = 4」は真 「x² = 4 ⇒ x = 2」は偽(反例:x = −2)
条件の否定
| 条件 | 否定 |
|---|---|
| x > 3 | x ≦ 3 |
| x = 3 | x ≠ 3 |
| p かつ q | p でない または q でない |
| p または q | p でない かつ q でない |
| すべての x で p | ある x で p でない |
| ある x で p | すべての x で p でない |
「かつ」⇔「または」、「すべて」⇔「ある」が入れかわる。
3. 必要条件・十分条件 ── ここが一番の差
まずここだけ
p ⇒ q が真のとき、
- p は q であるための十分条件(p が成り立てば q には十分)
- q は p であるための必要条件(p が成り立つには q が必要)
p ⇒ q と q ⇒ p の両方が真なら、p は q であるための必要十分条件(p ⇔ q、同値)。
判定の手順
- p ⇒ q は真か?(反例を探す)
- q ⇒ p は真か?(反例を探す)
- 表で判定
| p ⇒ q | q ⇒ p | p は q であるための |
|---|---|---|
| 真 | 真 | 必要十分条件 |
| 真 | 偽 | 十分条件(必要ではない) |
| 偽 | 真 | 必要条件(十分ではない) |
| 偽 | 偽 | どちらでもない |
集合で考える
p を満たすものの集合を P、q を満たすものの集合を Q とすると、
p ⇒ q が真 ⇔ P ⊂ Q
小さい集合(P)は大きい集合(Q)の十分条件、大きい集合は小さい集合の必要条件。
「x = 2」は「x² = 4」であるための? P = {2}、Q = {2, −2}。P ⊂ Q なので p ⇒ q は真、q ⇒ p は偽。十分条件(必要ではない)
「x > 0」は「x > 3」であるための? P = {x > 0}、Q = {x > 3}。Q ⊂ P。q ⇒ p は真、p ⇒ q は偽(反例 x = 1)。必要条件(十分ではない)
覚え方
「矢印の出発点が十分、行き先が必要」。p → q なら p が十分、q が必要。「十分 → 必要」の向き。
よくある間違い
- 「必要」と「十分」を逆にする → 集合の大小で確かめる(小 ⊂ 大:小が十分、大が必要)
- 反例を探さずに「なんとなく真」と判断する → 負の数・0・1 を代入して確かめる
4. 逆・裏・対偶
ここまでできれば十分
命題 p ⇒ q に対して、
| 名前 | 形 | 真偽 |
|---|---|---|
| 逆 | q ⇒ p | もとの命題とは無関係 |
| 裏 | p̄ ⇒ q̄(両方否定) | もとの命題とは無関係 |
| 対偶 | q̄ ⇒ p̄(入れかえて両方否定) | もとの命題と必ず一致 |
命題「x = 2 ⇒ x² = 4」(真) 逆「x² = 4 ⇒ x = 2」(偽:反例 x = −2) 裏「x ≠ 2 ⇒ x² ≠ 4」(偽:反例 x = −2) 対偶「x² ≠ 4 ⇒ x ≠ 2」(真)
逆と裏は互いに対偶の関係なので、真偽が一致します。
対偶を使った証明
「n² が偶数 ⇒ n は偶数」を直接示すのは難しい。対偶「n が奇数 ⇒ n² は奇数」を示す。
n = 2k + 1 とおくと n² = 4k² + 4k + 1 = 2(2k² + 2k) + 1 で奇数。対偶が真なので、もとの命題も真。
結論の否定のほうが扱いやすいとき(「〜でない」「奇数」「無理数」)に対偶を使う。
5. 背理法
ここまでできれば十分
「結論が成り立たないと仮定して、矛盾を導く」証明法。
√2 が無理数であることの証明 √2 が有理数だと仮定すると、互いに素な自然数 m、n を使って √2 = m/n と書ける。 両辺 2 乗して 2n² = m²。m² は偶数なので m は偶数(4 節の命題)。m = 2k とおくと 2n² = 4k²、n² = 2k²。n² は偶数なので n も偶数。 m、n がともに偶数となり、「互いに素」に矛盾。よって √2 は無理数。
型
- 「〜でない」と仮定する
- 計算・推論を進める
- 仮定や既知の事実と矛盾することを示す
- 「したがって〜である」
「無理数である」「解を持たない」「〜は存在しない」など、否定形の結論を示すときに使う。
6. 自己チェック
- n(A ∪ B) で重なりを引いたか
- 「かつ」の否定は「または」(ド・モルガン)
- 必要・十分は「矢印の出発点が十分、行き先が必要」「小さい集合が十分」
- 反例を探したか(負の数・0・1)
- 対偶は「入れかえて両方否定」。逆・裏はもとと無関係
- 背理法は「〜でないと仮定」→ 矛盾
7. 小テストへ
→ 小テスト(h1-05)
関連する単元
- 前提:中2 m2-09 図形の証明(仮定と結論)
- 次に進む:h1-06 二次関数のグラフ
- ここで使う考え方が出てくる:ha-01〜04 場合の数と確率(集合の個数)、h2-02 解と係数(必要十分)、hb-03 数学的帰納法
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』── 数学Ⅰ「(1) 数と式 ア(ア) 数と集合(集合と命題)」
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/math/h1-05/ / 更新 2026-09-12