勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

数学の勉強法 ── 研究で確かめられている4つのやり方

このページには、実験で比べた結果が論文になっているやり方だけを集めました。「らしい」という話は入れていません。研究ごとに「だれを対象に・何を比べて・どれくらい差が出たか」を書きます。数字が出せないものは、出せないと書きます。

今日からやること

  1. 問題集を解くとき、今日のページに前のページの問題を2〜3問まぜる。どの解き方を使うか、自分で選ぶ練習になります
  2. 解説を読んだら閉じて小テストを1回。読み返すのは、解けなかった問題の解説だけにします
  3. 今日終えた単元を、1週間後と1か月後にもう一度解く日としてカレンダーに書く

結論の表

やり方ひとことで数学ではこうする証拠の強さ
① 混ぜて解く(交互練習)同じ型ばかり続けず、違う型を混ぜる今日の型に、前の単元の問題も混ぜて解く強い(中学生の教室で確かめられている)
② 間をあけて戻る(分散練習)1日でまとめず、日をあけて同じ内容に戻る解いた単元に1週間後・1か月後にもう一度戻る強い(数百の実験のまとめがある)
③ 見返すより解く(練習テスト)解説を読み返すより、閉じて自分で解く解説を読んだら閉じて小テスト。読み直しは解けなかった所だけ強い
④ 解答例をまず読む(例題学習)初めての型は、解答例を先に読む新しい単元は「解き方を見る→似た問題を解く」の順で条件つき(同じ型の問題に限る)

順番に説明します。


① 混ぜて解く(交互練習)

何をするか

問題集は「今日の単元の問題が12問並ぶ」形がふつうです。これだと、読む前から解き方がわかっています。今日習ったやり方を使うに決まっているからです。

でも定期テストや入試では、どの型の問題かを自分で見分けます。交互練習は、今日の型と前の単元の型を混ぜて並べるやり方です。「どの解き方を使うか」を毎回自分で選ぶ練習になります。

どんな研究があるか

Rohrer, Dedrick & Stershic(2015)

d は「差の大きさ」の目安です(効果量 d。0.2 が小、0.5 が中、0.8 が大)。時間がたつほど差が開いたのがポイントです。

Rohrer, Dedrick, Hartwig & Cheung(2020)

先生は特別な研修なしで実施できました。結果を知る前のアンケートでも、先生たち自身がこのやり方を支持していました。

Rohrer & Taylor(2007)は大学生の研究です。型ごとに解いた群と混ぜて解いた群を、1週間後にテストしました。混ぜた群が大きく上回りました(要旨には具体的な%が示されていないので数字は書きません)。

数学での具体例

注意点


② 間をあけて戻る(分散練習)

何をするか

1回で10問まとめて解くより、日をあけて数問ずつのほうが長く残ります。これを「間隔効果」といいます。心理学で、もっとも繰り返し確かめられている現象の一つです。

どんな研究があるか

Cepeda, Pashler, Vul, Wixted & Rohrer(2006)

1週間後の定期テストなら数日あける。数か月先の入試なら数週間あける、というイメージです。

Rohrer & Taylor(2007)の実験1は大学生の研究です。同じ問題数を、1回にまとめて解く群と複数回に分けて解く群で比べました。1週間後のテストで、分けた群が大きく上回りました。

数学での具体例

注意点


③ 見返すより解く(練習テスト)

何をするか

解説やノートを読み返すより、閉じて自分で思い出す・解くほうが残ります。これを「テスト効果」「検索練習」といいます。

どんな研究があるか

Roediger & Karpicke(2006)

しかも読み直し群は、「覚えている自信」だけは高くなっていました。読み直しは「わかった気」を作り、テストは本当に残るものを作る。これがこの研究の要点です。

Dunlosky ら(2013)は、10種類の勉強法を評価した総説(研究をまとめた論文・58ページ)です。年齢・教材・テストの種類が変わっても通用するかを見ています。

マーカーと再読は、多くの生徒がやっている方法です。それなのに、点数を安定して押し上げる証拠がないと書かれています。

数学での具体例

注意点


④ 解答例をまず読む(例題学習)

何をするか

初めての型をいきなり自力で解こうとすると、あれこれ試すことに頭を使います。そのぶん、肝心の解き方が残りません。最初は解答例(解き方が全部書いてあるもの)を読み、そのあと似た問題を解く。このほうが速く、間違いも少なく身につきます。

どんな研究があるか

Sweller & Cooper(1985)

ただしこの差は「同じ構造の問題」に限られました。構造が違う問題には広がらなかったと、はっきり書かれています。

数学での具体例

注意点


よく聞くけれど証拠が弱いもの

「自分は視覚型だから図で覚える」(学習スタイル)

Pashler, McDaniel, Rohrer & Bjork(2008)は、学習スタイルの考え方を調べた総説です。「視覚型・聴覚型」のように診断して、それに合わせて教えると点数が伸びる、という考え方です。

著者らは「あらゆる学習スタイル説が否定されたとは言えない(検証自体が少ない)」とも書いています。それでも、「自分は○○型だから」で勉強法を選ぶ根拠は、いまのところありません。

数学なら、関数や図形は誰にとっても図が有利です。計算ルールは誰にとっても手を動かすのが有利です。単元に合わせて選ぶのであって、自分のタイプに合わせるのではありません。

マーカー・再読・要約

Dunlosky ら(2013)で「有用性:低」だった方法です。やってはいけないわけではありません。危ないのは、これだけで勉強した気になることです。線を引いた所を、あとで閉じて思い出せるか(③)で確かめてください。


4つをつなげた1週間の型(例)

日やること根拠
1日目新しい単元の解説を読む。例を解答例として読む → 小テスト(基礎)④ → ③
2日目前日の単元の小テスト(標準)+前の単元の問題を数問混ぜる③ ①
4日目2つ前の単元に戻って小テスト②
7日目今週の単元をすべて混ぜて解く① ② ③

日数は目安です。大事なのは「読んだら解く」「日をあけて戻る」「混ぜる」の3つが入っていることです。部活のある日は、2日目と4日目の小テストを1回15分にしても回せます。


この記事の立場

大学受験(高校数学)ではこう使う

高校数学の単元は 数Ⅰ・A・Ⅱ・B・C の 45 単元。やり方は中学と同じで、変わるのは「混ぜる幅」です。


参考文献

  1. Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498. https://doi.org/10.1007/s11251-007-9015-8
  2. Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S. (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology, 107, 900–908. https://doi.org/10.1037/edu0000001
  3. Rohrer, D., Dedrick, R. F., Hartwig, M. K., & Cheung, C.-N. (2020). A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology, 112, 40–52. https://doi.org/10.1037/edu0000367
  4. Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning. Psychological Science, 17, 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
  5. Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132, 354–380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
  6. Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14, 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
  7. Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9, 105–119. https://doi.org/10.1111/j.1539-6053.2009.01038.x
  8. Sweller, J., & Cooper, G. A. (1985). The use of worked examples as a substitute for problem solving in learning algebra. Cognition and Instruction, 2, 59–89. https://doi.org/10.1207/s1532690xci0201_3