勉強法
数学の勉強法 ── 研究で確かめられている4つのやり方
このページには、実験で比べた結果が論文になっているやり方だけを集めました。「らしい」という話は入れていません。研究ごとに「だれを対象に・何を比べて・どれくらい差が出たか」を書きます。数字が出せないものは、出せないと書きます。
今日からやること
- 問題集を解くとき、今日のページに前のページの問題を2〜3問まぜる。どの解き方を使うか、自分で選ぶ練習になります
- 解説を読んだら閉じて小テストを1回。読み返すのは、解けなかった問題の解説だけにします
- 今日終えた単元を、1週間後と1か月後にもう一度解く日としてカレンダーに書く
結論の表
| やり方 | ひとことで | 数学ではこうする | 証拠の強さ |
|---|---|---|---|
| ① 混ぜて解く(交互練習) | 同じ型ばかり続けず、違う型を混ぜる | 今日の型に、前の単元の問題も混ぜて解く | 強い(中学生の教室で確かめられている) |
| ② 間をあけて戻る(分散練習) | 1日でまとめず、日をあけて同じ内容に戻る | 解いた単元に1週間後・1か月後にもう一度戻る | 強い(数百の実験のまとめがある) |
| ③ 見返すより解く(練習テスト) | 解説を読み返すより、閉じて自分で解く | 解説を読んだら閉じて小テスト。読み直しは解けなかった所だけ | 強い |
| ④ 解答例をまず読む(例題学習) | 初めての型は、解答例を先に読む | 新しい単元は「解き方を見る→似た問題を解く」の順で | 条件つき(同じ型の問題に限る) |
順番に説明します。
① 混ぜて解く(交互練習)
何をするか
問題集は「今日の単元の問題が12問並ぶ」形がふつうです。これだと、読む前から解き方がわかっています。今日習ったやり方を使うに決まっているからです。
でも定期テストや入試では、どの型の問題かを自分で見分けます。交互練習は、今日の型と前の単元の型を混ぜて並べるやり方です。「どの解き方を使うか」を毎回自分で選ぶ練習になります。
どんな研究があるか
Rohrer, Dedrick & Stershic(2015)
- 対象:アメリカの中学1年生(7年生)126人。3か月間、同じ練習問題を解いた
- 比べたもの:「混ぜた順」と「型ごとにまとめた順」。最後に予告なしのテスト
- 結果:混ぜた生徒が1日後も30日後も高得点。差は1日後で d = 0.42、30日後で d = 0.79
d は「差の大きさ」の目安です(効果量 d。0.2 が小、0.5 が中、0.8 が大)。時間がたつほど差が開いたのがポイントです。
Rohrer, Dedrick, Hartwig & Cheung(2020)
- 対象:7年生の数学54クラス。事前登録つきのランダム化比較試験(測るものを先に登録してから行う、信頼度の高い実験)
- 比べたもの:4か月間、混ぜた宿題と型ごとの宿題。1か月後に予告なしのテスト
- 結果:混ぜた群 61%、型ごとの群 38%(d = 0.83)
先生は特別な研修なしで実施できました。結果を知る前のアンケートでも、先生たち自身がこのやり方を支持していました。
Rohrer & Taylor(2007)は大学生の研究です。型ごとに解いた群と混ぜて解いた群を、1週間後にテストしました。混ぜた群が大きく上回りました(要旨には具体的な%が示されていないので数字は書きません)。
数学での具体例
- このサイトの小テストは「その単元だけ」です。慣れてきたら2〜3単元ぶんを続けて解く(例:正負の数の加減 → 乗除 → 文字式、を1セットに)
- 問題集は「今日のページ」に、前のページから2〜3問を混ぜる
- 大事なのは「解く前に型を判断する」こと。「これは○○の問題」と書いてあると、混ぜた意味が半分になります
注意点
- 混ぜて解くと、練習中の正解率は下がります。それでよいのです。練習中は「できていない気分」になりますが、それが普通です
- 新しい型を習った日は、まず型ごとに数問解いて手順を覚えます(④参照)。何も知らないまま混ぜても、選びようがありません
② 間をあけて戻る(分散練習)
何をするか
1回で10問まとめて解くより、日をあけて数問ずつのほうが長く残ります。これを「間隔効果」といいます。心理学で、もっとも繰り返し確かめられている現象の一つです。
どんな研究があるか
Cepeda, Pashler, Vul, Wixted & Rohrer(2006)
- 対象:184本の論文・317の実験・839件の比較をまとめたメタ分析(過去の実験を統計でまとめる研究)
- 比べたもの:まとめてやる場合と、間をあける場合
- 結果:間をあけるほうが残る。テストまでの期間が長いほど、ちょうどよい間隔も長くなる
1週間後の定期テストなら数日あける。数か月先の入試なら数週間あける、というイメージです。
Rohrer & Taylor(2007)の実験1は大学生の研究です。同じ問題数を、1回にまとめて解く群と複数回に分けて解く群で比べました。1週間後のテストで、分けた群が大きく上回りました。
数学での具体例
- 単元を終えた日 → 1週間後 → 1か月後 の3回、同じ単元の小テストに戻る。このサイトの小テストは数を変えて出るので、答えの暗記にはなりません
- 間をあけると忘れます。でも忘れかけたところで思い出すから残るのです。少し忘れているくらいがちょうどよい
- 入試まで半年以上あるなら、間隔は数週間でよい(Cepeda らの「テストまでが長いほど間隔も長く」)
注意点
- 「間をあける」と「やらない」は別です。戻る日を決めないと、ただの放置になります。カレンダーに「○日に m1-02 に戻る」と書いておくのが確実です
③ 見返すより解く(練習テスト)
何をするか
解説やノートを読み返すより、閉じて自分で思い出す・解くほうが残ります。これを「テスト効果」「検索練習」といいます。
どんな研究があるか
Roediger & Karpicke(2006)
- 対象:大学生。文章の教材を学んだ
- 比べたもの:「くり返し読み直す」群と「読んだあと思い出すテストを受ける(答え合わせなし)」群
- 結果:5分後は読み直し群が上。2日後・1週間後はテスト群が大きく上回った
しかも読み直し群は、「覚えている自信」だけは高くなっていました。読み直しは「わかった気」を作り、テストは本当に残るものを作る。これがこの研究の要点です。
Dunlosky ら(2013)は、10種類の勉強法を評価した総説(研究をまとめた論文・58ページ)です。年齢・教材・テストの種類が変わっても通用するかを見ています。
- 有用性「高」:練習テストと分散練習の2つだけ
- 有用性「中」:交互練習・自己説明・精緻化質問(「なぜ?」と自分に問うこと)
- 有用性「低」:要約・マーカーで線を引く・再読など
マーカーと再読は、多くの生徒がやっている方法です。それなのに、点数を安定して押し上げる証拠がないと書かれています。
数学での具体例
- 解説ページを読んだら、そのまま小テストを解く。読んだだけで次に進まない
- 間違えた問題は解説を読み、同じ型の別の数で解き直す(このサイトの「もう1問」がその用途です)
- 定期テスト前にノートを見返す時間を、「ノートを閉じて例題を白紙で解き直す」時間に置きかえる
- 解説を読んで「わかる」と感じたら、それは「自信だけ上がった状態」かもしれません。閉じて解けるかで判断します
注意点
- 練習テストで間違えるのは、失敗ではなくこの方法の一部です。間違えて解説を読んだところが残ります
- 読み直しが全部ダメなわけではありません。解けなかった問題の解説を読むのは必要です。ダメなのは、解いていないのに読み返し続けることです
④ 解答例をまず読む(例題学習)
何をするか
初めての型をいきなり自力で解こうとすると、あれこれ試すことに頭を使います。そのぶん、肝心の解き方が残りません。最初は解答例(解き方が全部書いてあるもの)を読み、そのあと似た問題を解く。このほうが速く、間違いも少なく身につきます。
どんな研究があるか
Sweller & Cooper(1985)
- 対象:代数(文字式・方程式)の学習。中学3年生・高校2年生相当・大学生で5つの実験
- 比べたもの:解答例を読んでから解く群と、自力で解く群
- 結果:解答例の群は学ぶ時間が短く、その後の類題も速く・誤りが少なく解けた
ただしこの差は「同じ構造の問題」に限られました。構造が違う問題には広がらなかったと、はっきり書かれています。
数学での具体例
- このサイトの解説ページの「例」は、解答例として使えます。新しい単元では、例をひととおり読んでから小テストへ
- 読むときは「なぜこの一手なのか」を1行ずつ確かめる。目で追うだけでは身につきにくいです
- 例を読んで型を覚えたら、③と①に切りかえる(読み続けない・混ぜて解く)
注意点
- 解答例を読むのが有利なのは初めてのときです。型を覚えたあとも読み続けると、③の「読み直し」になります
- 差が出るのは「同じ型」だけです。だから型を見分ける力は、①で別に鍛えます。④→③→①の順で使い分けるのが、4つの研究をつなげた自然な形です
よく聞くけれど証拠が弱いもの
「自分は視覚型だから図で覚える」(学習スタイル)
Pashler, McDaniel, Rohrer & Bjork(2008)は、学習スタイルの考え方を調べた総説です。「視覚型・聴覚型」のように診断して、それに合わせて教えると点数が伸びる、という考え方です。
- 人に「好みの学び方」があるのは確か
- でも好みに合わせて教えたほうが伸びる証拠は「ほとんど見つからなかった」(virtually no evidence)
- きちんと検証した少数の研究の中には、反対の結果もあった
著者らは「あらゆる学習スタイル説が否定されたとは言えない(検証自体が少ない)」とも書いています。それでも、「自分は○○型だから」で勉強法を選ぶ根拠は、いまのところありません。
数学なら、関数や図形は誰にとっても図が有利です。計算ルールは誰にとっても手を動かすのが有利です。単元に合わせて選ぶのであって、自分のタイプに合わせるのではありません。
マーカー・再読・要約
Dunlosky ら(2013)で「有用性:低」だった方法です。やってはいけないわけではありません。危ないのは、これだけで勉強した気になることです。線を引いた所を、あとで閉じて思い出せるか(③)で確かめてください。
4つをつなげた1週間の型(例)
| 日 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1日目 | 新しい単元の解説を読む。例を解答例として読む → 小テスト(基礎) | ④ → ③ |
| 2日目 | 前日の単元の小テスト(標準)+前の単元の問題を数問混ぜる | ③ ① |
| 4日目 | 2つ前の単元に戻って小テスト | ② |
| 7日目 | 今週の単元をすべて混ぜて解く | ① ② ③ |
日数は目安です。大事なのは「読んだら解く」「日をあけて戻る」「混ぜる」の3つが入っていることです。部活のある日は、2日目と4日目の小テストを1回15分にしても回せます。
この記事の立場
- ここに挙げた研究の多くは、英語圏の学生が対象です。日本の中高生で同じ差が出るかを直接確かめた研究は、まだ引けていません
- 「d = 0.8」のような数字は平均の差です。全員に同じだけ差が出るわけではありません
- 研究は更新されます。新しい結果が出たら書き直します(更新日をページ上部に表示)
大学受験(高校数学)ではこう使う
高校数学の単元は 数Ⅰ・A・Ⅱ・B・C の 45 単元。やり方は中学と同じで、変わるのは「混ぜる幅」です。
- 混ぜて解く:共通テストは1問の中で数Ⅰ・Ⅱ・Bがつながります。単元ごとの小テストで基礎を固めてから、全 45 単元まぜこぜテストを週1回
- 例題を読む → すぐ自分で解く:解説の「解き方の流れ」を閉じてから小テスト。三角関数・指数対数・微分積分(h2-07〜h2-13)は「公式を見ずに導けるか」まで
- 中学に戻る:因数分解(h1-02)でつまずいたら m3-02 へ。二次関数(h1-06〜07)でつまずいたら m3-06(二次方程式)へ。戻るのは負けではなく、研究でいう「土台の知識の確認」です
参考文献
- Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35, 481–498. https://doi.org/10.1007/s11251-007-9015-8
- Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S. (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology, 107, 900–908. https://doi.org/10.1037/edu0000001
- Rohrer, D., Dedrick, R. F., Hartwig, M. K., & Cheung, C.-N. (2020). A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology, 112, 40–52. https://doi.org/10.1037/edu0000367
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning. Psychological Science, 17, 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132, 354–380. https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14, 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9, 105–119. https://doi.org/10.1111/j.1539-6053.2009.01038.x
- Sweller, J., & Cooper, G. A. (1985). The use of worked examples as a substitute for problem solving in learning algebra. Cognition and Instruction, 2, 59–89. https://doi.org/10.1207/s1532690xci0201_3