数学Ⅰ / データの分析 / h1-14
データの分析 ② ── 散布図・相関係数・仮説検定の考え方
この単元でできるようになること
- 散布図から正の相関・負の相関・相関なしを読み取れる
- 共分散・相関係数を定義から計算できる
- 相関係数の値(−1 ≦ r ≦ 1)と散布図の形を対応づけられる
- 「相関がある ≠ 因果関係がある」を説明できる
- 仮説検定の考え方(帰無仮説・有意水準・棄却)を、コイン投げの例で説明できる
入試での位置づけ
散布図と相関係数は、共通テスト「データの分析」で箱ひげ図と並ぶ主役です。計算より「散布図と相関係数の対応」「変換したときに相関係数がどうなるか」「相関と因果の違い」が問われます。仮説検定は新課程で数学Ⅰに加わった内容で、「考え方」を問う問題として出題されます。
1. 散布図と相関
まずここだけ
2 つの変量 x、y の組を座標にとった図が散布図。
| 形 | 相関 |
|---|---|
| 右上がりに点が並ぶ | 正の相関(x が大きいと y も大きい) |
| 右下がりに並ぶ | 負の相関 |
| ばらばら | 相関がない |
点が直線の近くに集まるほど「相関が強い」。
2. 共分散と相関係数
まずここだけ
x の平均を x̄、y の平均を ȳ とする。
共分散 sₓᵧ = 偏差の積の平均 = {(x₁ − x̄)(y₁ − ȳ) + … + (xₙ − x̄)(yₙ − ȳ)} / n
相関係数 r = sₓᵧ / (sₓ sᵧ)(共分散を、x と y の標準偏差の積で割る)
| r の値 | 意味 |
|---|---|
| r = 1 | 完全な正の相関(点が右上がりの直線上) |
| 0.7 ≦ r < 1 | 強い正の相関(目安) |
| r ≒ 0 | 相関がない |
| −1 < r ≦ −0.7 | 強い負の相関(目安) |
| r = −1 | 完全な負の相関 |
−1 ≦ r ≦ 1 は必ず成り立つ。r の符号 = 共分散の符号 = 相関の向き。
計算例
| x | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| y | 2 | 4 | 5 | 4 | 10 |
x̄ = 3、ȳ = 5。 偏差 x:−2, −1, 0, 1, 2 偏差 y:−3, −1, 0, −1, 5 積:6, 1, 0, −1, 10 → 合計 16 → 共分散 16/5 = 3.2 sₓ² = (4 + 1 + 0 + 1 + 4)/5 = 2、sᵧ² = (9 + 1 + 0 + 1 + 25)/5 = 7.2 r = 3.2 / √(2 × 7.2) = 3.2 / √14.4 = 3.2 / 3.79… ≒ 0.84(強い正の相関)
計算のコツ
表を作る:x、y、x − x̄、y − ȳ、(x − x̄)²、(y − ȳ)²、(x − x̄)(y − ȳ) の 7 列。合計を出してから n で割る。共通テストでは r の値そのものより「√ の中」の形が問われるので、途中の合計を正確に。
3. 相関係数の性質
ここまでできれば十分
| 操作 | 相関係数 |
|---|---|
| x、y の全部に定数を足す | 変わらない |
| x を正の数倍、y を正の数倍 | 変わらない |
| x または y を負の数倍 | 符号が変わる |
| 単位を変える(cm → m) | 変わらない |
相関係数は「散らばりを標準化したもの」なので、平行移動・拡大縮小で不変。
相関と因果
「アイスの売上と水難事故の件数に正の相関がある」→ アイスが事故を起こすのではなく、気温という第 3 の要因(交絡)が両方を増やしている。
相関がある ⇒ 因果関係がある、とは言えない。共通テストの記述選択で「〜の原因である」と断定する選択肢は誤りになることが多い。
外れ値の影響
1 つの外れ値で相関係数は大きく変わる。散布図で外れ値を確認してから r を解釈する。
4. 仮説検定の考え方
ここまでできれば十分
「このコインは表が出やすいか」を、「そうでないと仮定して、実際の結果がどれくらい珍しいか」で判断する方法。
手順(例:コインを 10 回投げて 9 回表が出た):
- 帰無仮説 H₀:「コインは公正(表の確率 1/2)」と仮定する(否定したい主張の逆)
- 対立仮説 H₁:「表が出やすい」
- 有意水準を決める:例えば 5%(「5% 以下でしか起きないことが起きたら、仮定を疑う」)
- H₀ のもとで、観測結果以上に極端な結果が起きる確率を求める(または実験・シミュレーションの結果表から読む)
- 公正なコインで 10 回中 9 回以上表:確率 ≒ 1.1%
- その確率が有意水準より小さい → H₀ を棄却(「公正とは言えない → 表が出やすいと判断」) 有意水準より大きい → H₀ は棄却できない(「表が出やすいとは言えない」。公正だと証明されたわけではない)
用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 帰無仮説 | 「差がない・偏りがない」という、否定されることを期待する仮説 |
| 対立仮説 | 示したい主張 |
| 有意水準 | 「珍しい」と判断する基準の確率(5% や 1%) |
| 棄却する | 帰無仮説を捨てる(対立仮説を採用) |
注意
- 棄却できない = 帰無仮説が正しい、ではない(証拠不十分、というだけ)
- 有意水準を 1% にすると棄却しにくくなる(より慎重)
- 共通テストでは、シミュレーション結果の度数分布表(「1000 回中、9 回以上表が出たのは 11 回」など)を読んで「棄却できるか」を答える形が多い
5. 自己チェック
- 散布図の向きと r の符号が一致しているか
- r = 共分散 ÷(sₓ × sᵧ)。共分散だけで強さを判断しない
- 定数を足す・正の数倍しても r は変わらない
- 「相関がある」を「原因である」と読んでいないか
- 仮説検定:帰無仮説のもとでの確率 < 有意水準 なら棄却。棄却できなくても「正しい」とは言えない
6. 小テストへ
→ 小テスト(h1-14)
関連する単元
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編』── 数学Ⅰ「(4) データの分析 ア(イ) 散布図,相関係数、(ウ) 仮説検定の考え方」
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/math/h1-14/ / 更新 2026-09-12