高1 / 歴史総合 / ht-06
第一次世界大戦とロシア革命・ヴェルサイユ体制
この単元でできるようになること
- 大戦前の二つの陣営(三国同盟・三国協商)とバルカン問題から、サライェヴォ事件(1914)で大戦に至る経過を説明できる
- 第一次世界大戦が「総力戦」であった意味(長期化・新兵器・国民の動員・女性の社会進出・植民地の動員)を説明できる
- 日本の参戦と二十一か条の要求、大戦景気、シベリア出兵・米騒動を説明できる
- ロシア革命(1917 二月・十月)とソヴィエト政権、各国の対ソ干渉戦争を説明できる
- (十四か条・国際連盟・民族自決・ドイツへの制裁)とワシントン体制、その限界を説明できる
入試での位置づけ
「総力戦が社会をどう変えたか(女性参政権・大衆化 → ht-07)」「二十一か条の要求と中国の反応(五・四運動)」「十四か条と国際連盟の限界(アメリカ不参加)」「ワシントン会議と日本」が定番。同盟・協商の国名、1914・1917・1919・1921〜22 の年号は確実に。
1. 大戦への道
まずここだけ
- 三国同盟(1882):ドイツ・オーストリア・イタリア(ビスマルクのフランス孤立化)
- 三国協商:露仏同盟(1894)+英仏協商(1904)+英露協商(1907)= イギリス・フランス・ロシア。ドイツの世界政策(3B・建艦競争)に対抗
- バルカン問題:オスマン帝国の衰退で「ヨーロッパの火薬庫」。パン=スラヴ主義(ロシア・セルビア)vs パン=ゲルマン主義(ドイツ・オーストリア)。1908 オーストリアがボスニア・ヘルツェゴヴィナを併合、1912〜13 バルカン戦争
- 1914.6.28 サライェヴォ事件:オーストリア皇太子夫妻をセルビア人青年が暗殺 → 7 月オーストリアがセルビアに宣戦 → ロシア(セルビア側)・ドイツ(オーストリア側)・フランス・イギリス(ドイツのベルギー侵犯)が参戦 → 同盟の連鎖で世界大戦
- 同盟国:ドイツ・オーストリア・オスマン帝国・ブルガリア。連合国:イギリス・フランス・ロシア・日本(日英同盟を理由に 1914.8 参戦)・イタリア(1915 同盟を離れ連合国側)・アメリカ(1917)など
2. 総力戦としての大戦
まずここだけ
- 短期決戦の予想が外れ、西部戦線は塹壕戦で膠着(マルヌ・ヴェルダン・ソンム)。4 年 3 か月、死者 約 1,000 万(兵士)+民間人
- 新兵器:機関銃・毒ガス・戦車・飛行機・潜水艦(U ボート)
- 総力戦:国家が経済・国民生活のすべてを戦争に動員。配給制・統制経済、女性が軍需工場で働く → 戦後の女性参政権(イギリス 1918、ドイツ 1919、アメリカ 1920)、労働者の協力 → 社会権・労働者の地位向上、植民地の兵士・労働者の動員(インド 100 万人以上)→ 自治・独立の要求、プロパガンダ(宣伝)とメディア
- アメリカの参戦(1917.4):ドイツの無制限潜水艦作戦(ルシタニア号 1915)→ 連合国に物資と資金 → 戦後アメリカは債権国に
- 秘密外交:イギリスがアラブに独立を約束(フサイン・マクマホン協定 1915)しつつ、ユダヤ人に国家建設を支持(バルフォア宣言 1917)、英仏露で中東分割(サイクス・ピコ協定 1916)→ パレスチナ問題の原因
- 1918.11 ドイツでキール軍港の水兵反乱 → ドイツ革命、皇帝退位、休戦(11.11)
3. 日本と大戦
まずここだけ
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1914 | 参戦(第 2 次大隈内閣):ドイツ領の青島・山東半島と南洋諸島を占領 |
| 1915 | 二十一か条の要求(袁世凱政府に):山東のドイツ権益の継承、旅順・大連の租借期限と満鉄の 99 年延長、南満州・東部内モンゴルの権益、漢冶萍公司の共同経営、(第 5 号:政治・財政・軍事顧問 → 削除)。中国は 5 月 9 日を国恥記念日に。反日感情と米英の警戒 |
| 1915〜 | 大戦景気:ヨーロッパが戦争で輸出できない市場(アジア)へ日本製品を輸出、連合国への軍需品、アメリカへの生糸、海運・造船(船成金)。債務国から債権国へ、重化学工業の発展、工業生産額 > 農業生産額(1919)。一方で物価上昇、貧富の差 |
| 1917 | 石井・ランシング協定(アメリカが日本の中国での特殊権益を承認) |
| 1918 | シベリア出兵(ロシア革命への干渉、〜1922 年まで日本だけ居残る)→ 米の買い占めで米価が急騰 → 米騒動(富山の女性たちから全国 70 万人に拡大、軍隊出動)→ 寺内正毅内閣退陣 → 原敬の本格的政党内閣(ht-07) |
| 1919 | パリ講和会議に五大国の一員として参加(西園寺公望)。山東権益・南洋諸島の委任統治を獲得。人種差別撤廃提案(否決) |
4. ロシア革命(1917)
まずここだけ
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 1917.3 | 二月革命(ロシア暦):戦争と食料不足への不満で首都ペトログラードの労働者・兵士が蜂起、ニコライ 2 世が退位 → ロマノフ朝滅亡。臨時政府(ブルジョワ・ケレンスキー)とソヴィエト(労働者・兵士の評議会)の二重権力 |
| 1917.4 | レーニン帰国、「四月テーゼ」(すべての権力をソヴィエトへ、即時停戦) |
| 1917.11 | 十月革命:ボリシェヴィキ(レーニン・トロツキー)が臨時政府を倒し、世界初の社会主義政権(ソヴィエト政権)。「平和に関する布告」(無併合・無賠償・民族自決の即時講和)、「土地に関する布告」 |
| 1918.3 | ブレスト=リトフスク条約でドイツと単独講和(大きな領土を失う)。一党独裁・赤軍・チェカ(秘密警察) |
| 1918〜22 | 対ソ干渉戦争(英仏米日のシベリア出兵など)と内戦(白軍 vs 赤軍)。戦時共産主義 → 1921 新経済政策(ネップ)(一部市場経済を認める) |
| 1919 | コミンテルン(第三インターナショナル:世界革命の指導) |
| 1922 | ソヴィエト社会主義共和国連邦(ソ連)成立 |
| 1924 | レーニン死去 → スターリンが権力掌握(一国社会主義、五か年計画 1928〜、農業集団化、大粛清) |
意味:資本主義に対するもう 1 つの体制の登場 → 各国で共産党結成(日本共産党 1922)、資本主義国は社会主義への恐れから社会政策を進める一方、反共(治安維持法 1925)も。植民地の民族運動を支援。
5. ヴェルサイユ体制とワシントン体制
まずここだけ
- 十四か条(1918.1 アメリカ大統領ウィルソン):秘密外交の廃止・海洋の自由・軍備縮小・民族自決・国際平和機構の設立
- パリ講和会議(1919.1〜):英(ロイド=ジョージ)・仏(クレマンソー)・米(ウィルソン)・伊・日の五大国。敗戦国・ソヴィエトは不参加
- ヴェルサイユ条約(1919.6 対ドイツ):アルザス・ロレーヌをフランスへ、全植民地の放棄(委任統治へ)、軍備制限(徴兵禁止・陸軍 10 万)、ラインラント非武装、巨額の賠償金(1921 年に 1,320 億金マルク)→ ドイツの不満(「背後の一突き」・ナチスの台頭の土壌)
- 民族自決:東欧にポーランド・チェコスロヴァキア・ハンガリー・ユーゴスラヴィア・フィンランド・バルト三国などが独立。ただしアジア・アフリカの植民地には適用されず → 朝鮮の三・一独立運動、中国の五・四運動(1919)、インド・エジプトの運動
- 国際連盟(1920、本部ジュネーヴ):史上初の集団安全保障機構。常任理事国:英・仏・日・伊(のち独・ソ)。限界:提唱国アメリカが不参加(上院の反対:モンロー主義)、ドイツ・ソ連は当初除外、全会一致制、制裁は経済制裁だけ(軍事力なし)。新渡戸稲造が事務次長
- ワシントン会議(1921〜22、アメリカ主催):海軍軍縮条約(主力艦 米英 5:日 3:仏伊 1.67)、四か国条約(太平洋の現状維持 → 日英同盟廃棄)、九か国条約(中国の主権尊重・門戸開放 → 石井・ランシング協定廃棄、日本は山東権益を中国に返還)。→ ワシントン体制:アジア・太平洋で日本の膨張を抑える枠組み。日本は協調外交(幣原喜重郎)で受け入れる
- その他:不戦条約(1928 パリ)、ロンドン海軍軍縮条約(1930 補助艦)、ロカルノ条約(1925 ドイツの国際社会復帰 → 1926 国際連盟加盟)
6. 年表
| 年 | 世界 | 日本 |
|---|---|---|
| 1882 | 三国同盟 | |
| 1907 | 英露協商 → 三国協商完成 | |
| 1914.6 | サライェヴォ事件 → 7〜8 月 大戦開始 | 8 月 参戦 |
| 1915 | イタリア参戦、ルシタニア号 | 二十一か条の要求 |
| 1917 | アメリカ参戦(4 月)、ロシア二月革命(3 月)・十月革命(11 月)、バルフォア宣言 | 石井・ランシング協定 |
| 1918 | 十四か条、ブレスト=リトフスク、11 月 ドイツ革命・休戦 | シベリア出兵・米騒動、原敬内閣 |
| 1919 | パリ講和会議・ヴェルサイユ条約、コミンテルン、ワイマール憲法 | 三・一運動(朝鮮)、五・四運動(中国) |
| 1920 | 国際連盟発足 | 加盟(常任理事国) |
| 1921〜22 | ワシントン会議 | 日英同盟廃棄、山東返還 |
| 1922 | ソ連成立 | 日本共産党結成 |
7. よくある間違い
- 三国同盟と三国協商の国を混ぜる(同盟 = 独・墺・伊、協商 = 英・仏・露)
- イタリアを同盟国側で参戦したとする(1915 年に連合国側で参戦)
- 日本の参戦理由を「アメリカとの同盟」とする(日英同盟)
- 二十一か条の要求の相手を「清」とする(中華民国・袁世凱政府)
- 米騒動の原因を「不作」とする(シベリア出兵を見こんだ米の買い占め)
- 十月革命で倒されたのを「ロマノフ朝」とする(ロマノフ朝は二月革命で倒れ、十月革命は臨時政府を倒した)
- ソ連の成立を 1917 年とする(1922 年)
- 国際連盟にアメリカが加盟したとする(提唱したが不参加)
- 民族自決がアジア・アフリカに適用されたとする(ヨーロッパだけ)
- ワシントン会議で日英同盟が「強化」されたとする(廃棄)
8. 自己チェック
- 三国同盟・三国協商の国名と、サライェヴォ事件から大戦への連鎖を言えるか
- 総力戦の 4 つの特徴(長期化・新兵器・国民動員・植民地動員)と戦後への影響を言えるか
- 二十一か条・大戦景気・シベリア出兵 → 米騒動 → 原内閣を言えるか
- 二月革命(ロマノフ朝滅亡)と十月革命(ソヴィエト政権)の違い、ネップ・ソ連成立を言えるか
- 十四か条・ヴェルサイユ条約・民族自決の範囲・国際連盟の限界を言えるか
- ワシントン会議の 3 条約と日本への意味を言えるか
9. 小テストへ
→ 小テスト(ht-06)
関連する単元
- 前提:ht-05 帝国主義、h-09 日清・日露と大正(中学)
- 次に進む:ht-07 大衆社会と大正デモクラシー・民族運動
- ここで使う考え方が出てくる:kk-09 国際政治(集団安全保障・国連の前身)、gt-07 民族問題(パレスチナ)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』── 「歴史総合」C (2) 第一次世界大戦と大衆社会
- ウィルソン「十四か条」(1918)、ヴェルサイユ条約(1919)、国際連盟規約の本文(各種史料集)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/social/ht-06/ / 更新 2026-09-13