高1 / 歴史総合 / ht-07
大衆社会と大正デモクラシー・民族運動
この単元でできるようになること
- 大衆社会の成立(アメリカの大量生産・大量消費、都市化、マスメディア、女性の社会進出)を説明できる
- 日本の(民本主義・護憲運動・政党内閣・普通選挙法と治安維持法)を説明できる
- 大正期の社会運動(労働・農民・女性・部落解放・社会主義)と大衆文化(新聞・雑誌・ラジオ・映画・サラリーマン・モダンガール)を説明できる
- 大戦後のアジアの民族運動(三・一運動・五・四運動・ガンディーの非暴力・トルコ革命・エジプト・インドネシア・ベトナム)を説明できる
- 「大衆化」が民主主義を広げる一方で、ファシズムや戦争への動員にもつながった両面を説明できる
入試での位置づけ
歴史総合の第 2 の柱「大衆化」。「普通選挙法と治安維持法が同じ年(1925)に成立した意味」「民本主義と民主主義の違い」「三・一運動と五・四運動の共通の背景(民族自決)」「大衆消費社会の資料(ラジオ・自動車の普及グラフ)」が定番です。
1. 大衆社会の成立
まずここだけ
- 大衆:都市に住む労働者・サラリーマン(新中間層)・学生など、政治や消費の主役になる多数の人々。義務教育の普及とマスメディア(新聞・雑誌・ラジオ・映画)が共通の情報を与える
- アメリカ(1920 年代「永遠の繁栄」):フォードのT 型自動車(ベルトコンベアによる大量生産 → 安い価格・高い賃金)、大量消費(家電・ラジオ・映画・ジャズ・スポーツ)、割賦販売・広告、都市化(1920 年に都市人口が農村を超える)、女性参政権(1920)。影:禁酒法(1919〜33)、移民法(1924:アジア系移民の禁止、日本で反発)、KKK(人種差別)、農業不況
- ヨーロッパ:ワイマール憲法(1919 ドイツ:男女普通選挙・社会権を定めた当時最も民主的な憲法)、イギリスの労働党内閣(1924)、男女普通選挙(英 1928)。ファシズムの登場(イタリアのムッソリーニ 1922 ローマ進軍)
- 大衆化の両面:民主主義の拡大(普通選挙・労働者政党)/画一化・扇動されやすさ → ファシズム・戦争動員(ht-08)
2. 大正デモクラシー
まずここだけ
理論:吉野作造の民本主義(1916):主権が天皇にあっても、政治の目的は民衆の利益、決定は民衆の意向に。普通選挙と政党内閣を主張(「民主主義」だと天皇主権と矛盾するので言い換え)。美濃部達吉の天皇機関説(天皇は国家という法人の最高機関。憲法学の通説 → 1935 年に排撃)。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1912〜13 | 第 1 次護憲運動:桂太郎内閣(藩閥・陸軍)に「閥族打破・憲政擁護」(尾崎行雄・犬養毅)→ 大正政変(民衆運動で内閣が倒れる:初) |
| 1914 | 第 2 次大隈内閣 → 大戦参戦 |
| 1918 | 米騒動 → 原敬内閣:初の本格的政党内閣(立憲政友会、原は「平民宰相」・衆議院議員)。ただし普通選挙には反対(選挙権を 3 円に引き下げ)。1921 暗殺 |
| 1920 | 戦後恐慌 |
| 1923 | 関東大震災:死者 10 万以上、朝鮮人・中国人の虐殺(流言)、社会主義者・労働運動家の殺害(甘粕事件・亀戸事件)、震災手形 |
| 1924 | 第 2 次護憲運動(清浦奎吾の貴族院内閣に反対)→ 護憲三派(憲政会・政友会・革新倶楽部)の加藤高明内閣 → 以後 1932 年まで「憲政の常道」(衆議院の多数党が組閣) |
| 1925 | 普通選挙法:25 歳以上の男子全員に選挙権(納税要件撤廃、有権者 4 倍の 1,240 万人)。女性は除外。同時に治安維持法:国体の変革・私有財産制の否認を目的とする結社を処罰(共産主義・無政府主義の取り締まり。1928 年に死刑追加、対象拡大)→「飴と鞭」。日ソ基本条約(国交樹立)が同年 |
| 1928 | 第 1 回普通選挙、三・一五事件(共産党員の一斉検挙) |
限界:女性参政権なし、治安維持法、政党の腐敗・財閥との結びつき → 1930 年代に軍部が台頭すると崩れる(ht-08)。
3. 社会運動と大衆文化
ここまでできれば十分
| 分野 | 内容 |
|---|---|
| 労働運動 | 友愛会(1912 鈴木文治)→ 日本労働総同盟(1921)、メーデー(1920〜)、労働争議の増加 |
| 農民運動 | 日本農民組合(1922)、小作争議(小作料の減免要求) |
| 女性運動 | 平塚らいてうの青鞜社(1911「元始、女性は太陽であった」)、新婦人協会(1920 平塚・市川房枝:治安警察法 5 条改正 → 女性の政治集会参加が可能に)、婦人参政権獲得期成同盟会(1924) |
| 部落解放 | 全国水平社(1922「人の世に熱あれ、人間に光あれ」水平社宣言) |
| 社会主義 | 日本共産党(1922 非合法)、無産政党(労働農民党 1926) |
| 教育・学問 | 大学令(1918)で私立大学、自由教育運動、『改造』『中央公論』、マルクス主義の流行 |
| 大衆文化 | 新聞(発行 100 万部)、『キング』(1925 大衆雑誌)、円本・岩波文庫、ラジオ放送(1925)、映画(活動写真 → トーキー)、サラリーマン・職業婦人(タイピスト・電話交換手・バスガール)、モガ・モボ、文化住宅、カレー・トンカツ、百貨店・ターミナルデパート(阪急)、甲子園(1924)、野球・宝塚 |
| 文学・芸術 | 白樺派(武者小路実篤・志賀直哉)、芥川龍之介、プロレタリア文学(小林多喜二『蟹工船』1929)、竹久夢二、『赤い鳥』(児童文学) |
4. アジアの民族運動
まずここだけ
背景:民族自決(十四か条)・ロシア革命・大戦での動員 → 「自分たちにも」。
| 地域 | 運動 | 内容 |
|---|---|---|
| 朝鮮 | 三・一独立運動(1919.3.1) | ソウルの独立宣言から全土に「独立万歳」デモ → 朝鮮総督府が武力弾圧(死者数千)。上海に大韓民国臨時政府。日本は武断政治 → 文化政治(憲兵警察廃止・新聞許可)に転換するが、同化政策は続く |
| 中国 | 五・四運動(1919.5.4) | パリ講和会議で二十一か条の取り消し・山東返還が拒否 → 北京の学生デモから全国的な反日・反帝国主義運動(日本商品ボイコット)→ 中国はヴェルサイユ条約調印を拒否。中国国民党(1919 孫文)・中国共産党(1921)→ 第 1 次国共合作(1924)→ 北伐(1926〜 蔣介石)→ 上海クーデタ(1927 国共分裂)→ 1928 南京国民政府が中国統一(張作霖爆殺事件で日本が張学良を国民政府側へ)。新文化運動(陳独秀『新青年』・胡適・魯迅:白話・儒教批判) |
| インド | ガンディーの非暴力・不服従 | 大戦協力の見返りの自治が与えられず、ローラット法(令状なし逮捕)・アムリットサル事件(1919)→ 国民会議派が非暴力・不服従(スワラージ・スワデーシ)、塩の行進(1930)。ネルーは完全独立を主張。ヒンドゥーとイスラーム(ジンナーの全インド=ムスリム連盟)の分裂 |
| トルコ | トルコ革命 | ムスタファ=ケマルが侵攻したギリシア軍を撃退、スルタン制廃止(1922)、トルコ共和国(1923)、ローザンヌ条約で不平等条約撤廃。カリフ制廃止・政教分離・女性参政権・文字改革(ローマ字)などの近代化 |
| エジプト | ワフド党 | 1922 イギリスから条件つき独立(スエズ運河はイギリス管理) |
| 西アジア | イラン(レザー=ハーン、パフレヴィー朝 1925)、サウジアラビア(1932)、パレスチナへのユダヤ人移住とアラブ人の対立(イギリス委任統治) | |
| 東南アジア | インドネシア国民党(スカルノ 1927)、ベトナム(ホー=チ=ミン、インドシナ共産党 1930)、フィリピン(1934 独立法 → 1946 独立) |
5. 年表
| 年 | 世界 | 日本 |
|---|---|---|
| 1911 | 青鞜社 | |
| 1912 | 第 1 次護憲運動・友愛会 | |
| 1916 | 吉野作造「民本主義」 | |
| 1918 | 原敬内閣 | |
| 1919 | 三・一運動(朝鮮)・五・四運動(中国)・ワイマール憲法・ローラット法 | |
| 1920 | アメリカ女性参政権 | 新婦人協会・メーデー |
| 1921 | 中国共産党 | 原敬暗殺 |
| 1922 | ムッソリーニ政権、エジプト独立 | 全国水平社・日本共産党・日本農民組合 |
| 1923 | トルコ共和国 | 関東大震災 |
| 1924 | 第 1 次国共合作、米移民法 | 第 2 次護憲運動 → 加藤高明内閣 |
| 1925 | 普通選挙法・治安維持法・ラジオ放送 | |
| 1926 | 北伐開始 | 昭和改元 |
| 1927 | 上海クーデタ | 金融恐慌 |
| 1928 | 南京国民政府の統一 | 第 1 回普通選挙・三・一五事件・張作霖爆殺 |
| 1930 | 塩の行進 |
6. よくある間違い
- 民本主義を民主主義と同じとする(主権の所在を問わない点が違う)
- 原敬内閣が普通選挙を実現したとする(原は反対。実現は 1925 加藤高明内閣)
- 普通選挙法で女性も選挙権を得たとする(男子のみ。女性は 1945 年)
- 治安維持法と普通選挙法を別の年とする(同じ 1925 年)
- 三・一運動と五・四運動の順を逆にする(3 月 1 日 → 5 月 4 日、同じ 1919 年)
- 五・四運動のきっかけを「二十一か条の要求そのもの」とする(パリ講和会議で取り消しが拒否されたこと)
- ガンディーを武装闘争の指導者とする(非暴力・不服従)
- トルコ共和国の指導者をムハンマド=アリーとする(ムスタファ=ケマル)
- 「憲政の常道」を明治時代とする(1924〜32 年)
7. 自己チェック
- 大衆社会の成立条件(大量生産・都市化・マスメディア・教育)とアメリカの 1920 年代を言えるか
- 民本主義・天皇機関説の内容、第 1・2 次護憲運動の年と結果を言えるか
- 原敬内閣の意味と限界、普通選挙法と治安維持法(1925)の内容を言えるか
- 大正期の社会運動(友愛会・青鞜社・新婦人協会・水平社・共産党)を言えるか
- 三・一運動・五・四運動の背景・経過・結果を比べて言えるか
- ガンディー・ケマルの運動の特徴を言えるか
8. 小テストへ
→ 小テスト(ht-07)
関連する単元
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』── 「歴史総合」C (2) 第一次世界大戦と大衆社会
- 吉野作造「憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず」(『中央公論』1916)、水平社宣言(1922)、普通選挙法・治安維持法(1925)の条文
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/social/ht-07/ / 更新 2026-09-13