中3 数学 / データ / m3-18
標本調査
この単元でできるようになること
- 全数調査と標本調査の違いがわかり、どちらが適切か判断できる
- 母集団・標本・標本の大きさなどの言葉を使える
- 無作為に抽出する意味と方法(乱数表・くじ・乱数さいころ)がわかる
- 標本の比率から母集団の数量を推定できる(比例式)
- 標本調査の結果の読み方と限界(「およそ」であること)を説明できる
入試での位置づけ
標本調査は、小問として出題されやすく、計算は比例式 1 本(標本の比率 = 母集団の比率)です。計算より、「全数調査か標本調査か」「無作為とは何か」「推定した値は『およそ』である」という言葉の理解が問われます。数学の教科書の最後の単元で、中1の「相対度数と確率」・中2の「箱ひげ図」に続く、データを扱う考え方の締めくくりです。
1. 全数調査と標本調査
まずここだけ
| 調査 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 対象すべてを調べる | 国勢調査、学校の健康診断、選挙の開票 | |
| 対象の一部を調べて全体を推定する | テレビの視聴率、世論調査、製品の品質検査、湖の魚の数 |
標本調査が適切な場合
- 対象が多すぎて全部は調べられない(世論調査)
- 調べると商品がだめになる(電球の寿命・缶詰の味・花火)
- 全部を調べる費用や時間に見合わない
全数調査が必要な場合
- 1 人ずつの結果そのものが必要(健康診断・入試の採点)
- 対象が少ない
「電球の寿命を全数調査すると、売る電球がなくなる」──この例が、標本調査の必要性を説明する定番です。
2. 母集団と標本
まずここだけ
- :調査の対象全体
- :母集団から取り出した一部
- 標本の大きさ:取り出した個数(「標本の数」ではなく「大きさ」)
- 抽出:母集団から標本を取り出すこと
全校生徒 600 人から 50 人を選んで通学時間を調べる → 母集団:全校生徒 600 人、標本:選んだ 50 人、標本の大きさ:50
無作為に抽出する
母集団の一部だけを調べて全体を推定するには、標本が母集団の縮図になっている必要があります。そのために、どの個体も同じ確率で選ばれるように取り出すことを (無作為抽出)といいます。
方法:くじ引き、乱数表、乱数さいころ、コンピュータの乱数 無作為でない例:「3 年生だけから選ぶ」「校門で最初に会った 50 人」「手を挙げた人」──特定の性質の人に偏るので、母集団を代表しない。
よくある間違い
- 標本の大きさを「調べた項目の数」と思う → 取り出した個体の数
- 「調べやすい人を選ぶ」を無作為と思う → 偏りが出る。同じ確率で選ばれる方法でなければ無作為ではない
- 標本が大きければ何でもよいと思う → 大きくても偏った選び方では推定がずれる
ここまでできれば十分
全数と標本の使い分け、母集団・標本・標本の大きさの言葉、無作為の意味が言えれば、この単元の前半は合格です。
3. 母集団の数量を推定する
まずここだけ
標本での比率は、母集団での比率とほぼ同じとみなして、比例式で推定します。
箱の中の 2000 個の製品から 100 個を無作為に取り出したら、不良品が 3 個あった。箱全体の不良品はおよそ何個か。 標本での比率 3/100。母集団 2000 個での不良品 x:x : 2000 = 3 : 100 → x = 60。およそ 60 個
袋の中の白玉の個数を知りたい。袋に黒玉を 100 個入れてよく混ぜ、80 個取り出したら黒玉が 10 個あった。白玉はおよそ何個か。 袋全体を N 個とすると、黒玉の比率 100/N ≒ 10/80 → N = 800。白玉 = 800 − 100 = およそ 700 個
2 つ目は「印をつけて放す」方法(湖の魚の数の推定にも使う):一部に印をつけて全体に戻し、再び取り出して印の割合から全体を推定する。
手順
- 標本での「割合」を出す(該当 ÷ 標本の大きさ)
- 母集団でも同じ割合とみなして比例式
- 答えに「およそ」をつける(推定値なので)
平均の推定
全校生徒 600 人から無作為に 30 人選び、通学時間の平均が 18.5 分だった。 → 全校生徒の通学時間の平均も およそ 18.5 分と推定する。
「標本の平均 ≒ 母集団の平均」。合計を推定するなら 18.5 × 600。
よくある間違い
- 「およそ」をつけず「60 個」と断定する → 標本調査の結果は推定値
- 比例式の対応を間違える(3 : 2000 = x : 100)→ 同じ側(標本の該当 : 標本の大きさ = 母集団の該当 : 母集団の大きさ)
- 印をつけて放す問題で、印の玉の数を引き忘れる(白玉 = 全体 − 黒玉)
4. 結果の読み方と限界
ここまでできれば十分(の次)
標本を何回か取り出すと、値はばらつく。100 個取り出して不良品が 3 個のときも 5 個のときもある。だから推定値は「およそ」であり、標本を大きくするほど、ばらつきは小さくなり、推定は母集団の値に近づく(m1-18 の「多数回で相対度数が確率に近づく」と同じ考え)。
同じ標本の大きさなら、何回も取り出して平均すると、より確かな推定になります。
入試で問われる「判断」
- 「この調査方法は適切か」→ 無作為かどうか、全数・標本の選択が妥当か
- 「推定した値は正確か」→ 「およそ」の値であり、標本を大きくすれば精度が上がる、と答える
- 「標本の平均が 18.5 分だから、全員 18.5 分」は誤り → 平均の推定であって、個人の値ではない
もう一歩(発展):標本の大きさと精度
視聴率調査は、数千万世帯から数千世帯を選んで行われます。「たった数千で全体がわかるのか」と思うかもしれませんが、無作為であれば、標本の大きさが数千あれば誤差は数 % 以内に収まることが統計学で示されています。大切なのは母集団に対する割合ではなく、標本の大きさそのものと無作為であることです。高校の「統計的な推測」で、この誤差の見積もりを学びます。
5. 自己チェック
- 全数調査と標本調査、どちらが適切かを理由(対象の数・調べると壊れる・費用)で言えるか
- 母集団・標本・標本の大きさを正しく指せるか
- 無作為 = どの個体も同じ確率で選ばれる、と説明できるか
- 推定は比例式で、対応する側をそろえたか。答えに「およそ」をつけたか
- 印をつけて放す問題で、全体から印の分を引いたか
6. 小テストへ
→ 小テスト(m3-18)
関連する単元
- 前提:m1-18 データの活用(相対度数と確率)、m2-15 箱ひげ図
- 中学数学はここまで。次は高校受験の制度・他教科、または大学受験へ
- ここで使う考え方が出てくる:高校「データの分析」「統計的な推測」
参考資料
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』第3学年 D データの活用 (1) 標本調査 ── 「標本調査の必要性と意味」「無作為に標本を取り出し、整理すること」「標本調査の方法や結果を批判的に考察し表現すること」
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koko/math/m3-18/ / 更新 2026-09-12