勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

「視覚型・聴覚型」で勉強法を変える必要はあるか ── 学習スタイル説の検証

一言で

「自分は視覚型だから図で覚える」「聴覚型だから聞いて覚える」。このように学習スタイル(自分に合う学び方のタイプ)を診断し、それに合わせて教えると有利になる、という考え方があります。 きちんとした方法の研究を集めた総説では、有利という証拠は「ほとんど見つからなかった」(virtually no evidence)。 好みの学び方があるのは確かでも、好みに合わせて勉強法を変える根拠はいまのところありません。変えるなら「自分のタイプ」ではなく、単元と目的に合わせます。

今日からやること

  1. 「自分は ◯◯ 型」で勉強法を決めるのをやめる。代わりに単元で選ぶ。グラフや図形は図をかき、計算は手を動かし、英単語は音と文字の両方で覚える
  2. マーカーを引いたページは、その日のうちに閉じて、引いた言葉を白い紙に書き出せるか試す
  3. 定期テスト 2 週間前からは、タイプに関係なく全員に向くとされる 2 つを使う。閉じて解く小テストと、日をあけて戻る復習

何が分かっているか

Pashler, McDaniel, Rohrer & Bjork(2008) 学習スタイル説を検証した総説です。著者らは「この説が正しいと言えるための実験の形」を先に決めました。

この形で行われた研究は少なく、あったもののいくつかはむしろこの考えと反対の結果でした。結論は「学習スタイルに合わせた指導が有利という証拠は virtually no evidence(ほとんど無い)」です。 ただし著者らは「あらゆる学習スタイル説が否定されたとは言えない(検証自体が少ない)」とも書いています。

Dunlosky, Rawson, Marsh, Nathan & Willingham(2013) 10 種類の勉強法を、年齢・教材・テストの種類をまたいで通用するかで評価した総説です(58 ページ)。

大事なのは、評価が「タイプ別」ではなく全員に対して出ていることです。マーカーと読み返しは多くの生徒がやっている方法なのに、安定して押し上げる証拠がない、と明記されています。 イメージ法(頭の中に絵を描いて覚える)が「低」なのも、「視覚型なら絵で覚えれば」という発想への一つの反証です。

Bjork, Dunlosky & Kornell(2013) 大学受験の勉強法でも引いた総説です。人は、自分がどう学びどう覚えるかについて、まちがった思い込みをもちやすいことを、多くの実験からまとめています。「自分は ◯◯ 型」という自己診断も、その一つとして読めます。 英語の勉強法で引いた Karpicke & Roediger(2008)でも、「覚えたと思う」予想と 後日の成績は無相関でした。

よくある誤解

「好みの学び方があるのだから、それに合わせるのが自然だ」 「好みがある」ことと「好みに合わせると結果がよくなる」ことは別です。Pashler らが調べたのは後者で、そちらの証拠がほとんど無い、という話です。 好みでやり方を選ぶこと自体は自由です。ただ「型に合っているから伸びる」と期待する根拠はありません。

「証拠が無い=学習スタイル説は完全に否定された」 著者らは「否定されたとは言えない(きちんとした検証が少ない)」と書いています。言えるのは「いまのところ、勉強法を変える根拠にはならない」までです。

「図で覚えるのは視覚型の人だけに向いている」 関数のグラフ・図形・回路図・雨温図のような単元は、誰にとっても図があると分かりやすくなります。計算のルールは、誰にとっても手を動かすのが有利です。 入試の問題用紙にはグラフ・図・史料が載ります。「自分は視覚型ではないから図は見ない」は、そもそも入試の形と合いません。

このサイトでの使い方

このサイトは「タイプ別」の勉強法を用意していません。代わりに、全員に対して証拠のある 2 つ(練習テスト・分散練習)を単元ページの作りに組み込んであります。

注意点

引いた論文

番号は docs/参考文献ログ.md の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。