勉強法

更新 2026-09-18 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

解答例から学ぶ(例題学習) ── 初めての型は、解く前に解き方を読む

一言で

初めての型の問題をいきなり自力で解こうとすると、頭の中で「あれこれ試す」ことに力を使い、肝心の解き方が残りません。最初は解答例(解き方が全部書いてあるもの)を読み、そのあと似た問題を解くほうが、速く・間違いも少なく身につく、という研究があります。 ただし効果が確かめられているのは同じ構造の問題に限られます。型を覚えたあとは、読むのをやめて解く側に切りかえます。

何が分かっているか

このテーマで 参考文献ログ に載っている論文は 1 本です。関連する研究は他にもありますが、DOI と要旨を確認できたものだけを引く方針なので、ここでは 1 本にとどめます。

Sweller & Cooper(1985) ── 代数(文字式・方程式)の学習。9 年生・11 年生(日本の中 3・高 2 相当)・大学生を対象に 5 つの実験を行いました。解答例を読んでから類題を解く群は、自力で解く群より学習にかかる時間が短く、その後の類題も速く・誤りが少なく解けました。ただしこの効果は「同じ構造の問題」に限られ、構造がちがう問題には広がらなかった、とはっきり書かれています(時間や誤りの具体的な数値は要旨に無いので書きません)。

この研究のあとに広がった考え方が「認知負荷」です。人が一度に考えられる量には限りがあり、初めての型で「試行錯誤」に使う分は、解き方を覚える分から差し引かれる、という説明です。上の実験はその出発点になった研究の一つで、教科書の「例題 → 練習問題」という並びには、この根拠があります。

「同じ型に限る」の裏返しとして、型を見分ける力は別に鍛える必要があります。それを扱うのが 交互練習(混ぜて解く) で、中学 1 年生 126 人の実験(Rohrer ほか 2015)や 54 クラスのランダム化比較試験(Rohrer ほか 2020・1 か月後テスト 61% 対 38%)で確かめられています。また、型を覚えたあとに解答例を読み続けるのは「再読」に近く、Dunlosky ら(2013)の 10 技法の評価で再読は「有用性:低」、閉じて解く練習テストは「高」でした。

よくある誤解

「解答を見るのは、ずるい・力がつかない」 初めての型では、解答例を読む群のほうが速く正確になった、というのが Sweller & Cooper の結果です。見ないで悩む時間は、初めての型ではむしろ解き方の学習を妨げます。ずるいのは「見た解答を写して終わる」ことで、そのあと閉じて類題を解くまでが 1 セットです。

「例題を読んで理解できたから、もう解けるはず」 効果は「読んだあとに類題を解く」形で測られています。読んで「わかった」で止まると、テスト効果 のページで引いた Roediger & Karpicke(2006)の「自信だけ上がった状態」になります。

「例題をたくさん読めば、初見の問題にも強くなる」 効果が「同じ構造の問題」に限られた、と原論文が書いています。構造のちがう問題や、どの型かを見分ける力は、例題を読むだけではつきません。混ぜて解く練習が別に要ります。

このサイトでの使い方

各単元の解説には、「まずここだけ」(その単元で最初に押さえる型)と「例」(数を入れて最後まで解いた解答例)があります。これを Sweller & Cooper の「解答例」として使います。

  1. 新しい単元では、解説の「例」を1 行ずつ「なぜこの一手なのか」を確かめながら読む。ただ目で追うだけでは薄いです。例:一次関数(式・グラフ・変化の割合) の「変化の割合」の例、因数分解(たすきがけ・おきかえ・3 次) のたすきがけの例
  2. 読み終えたら解説を閉じて、小テスト(基礎)を解く。小テストは毎回ちがう数で出るので、「同じ構造で数がちがう類題」になります
  3. 間違えたら、その場の解説を解答例として読み直し、「同じ型でもう 1 問」で別の数の問題を解く
  4. 型を覚えたら、解答例を読み続けない。翌日からは「前に間違えた型をやり直す」ボタンと 全単元まぜこぜテスト に切りかえ、型を見分ける側の練習に移る
  5. 英語でも同じです。英作文の型(条件英作文・自由英作文) の型(例文)を先に読み、日本語だけ見て英文を書く。数学以外で同じ大きさの効果が出るかは、引いた論文からは言えません

使う順番をまとめると、解答例を読む → 閉じて類題を解く → 混ぜて解く。このサイトの単元ページは、上から順にその並びになっています。

注意点

引いた論文

番号は docs/参考文献ログ.md の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。