高1 / 化学基礎 / cb-10
金属のイオン化傾向・電池・電気分解
この単元でできるようになること
- の順(Li K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb (H₂) Cu Hg Ag Pt Au)を言え、金属と水・酸・酸素との反応性を判断できる
- 金属イオンの水溶液に別の金属を入れたときの反応(イオン化傾向の大きい金属が溶け、小さい金属が析出)を予測できる
- 電池のしくみ(負極で酸化・正極で還元、電子は負極 → 正極、電流は逆)と、ダニエル電池・鉛蓄電池・燃料電池の反応を書ける
- 電気分解(陽極で酸化・陰極で還元)で各極に生じる物質を判断し、流れた電気量から生成量を計算できる(ファラデーの法則)
- 金属の製錬(鉄・アルミニウム)と腐食・めっきを酸化還元として説明できる
入試での位置づけ
イオン化傾向は「どの金属が溶けるか・析出するか」の判断問題として頻出。電池はダニエル電池の各極の反応と電子の向き、電気分解は各極の生成物と量的関係(1 mol の e⁻ = 9.65 × 10⁴ C)が共通テストの定番です。「負極・陽極 = 酸化」「正極・陰極 = 還元」で統一して覚えると混乱しません。
1. イオン化傾向
まずここだけ
金属が水溶液中で陽イオンになろうとする性質の強さ。大きいほど酸化されやすい(強い還元剤)。
Li > K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H₂) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au (リッチに貸そうかな、まああてにすんな、ひどすぎる借金)
| 金属 | 水との反応 | 酸との反応 | 空気中の酸化 |
|---|---|---|---|
| Li・K・Ca・Na | 常温の水と反応して H₂ | 反応 | すぐ酸化 |
| Mg | 熱水と反応 | 反応 | 加熱で酸化 |
| Al・Zn・Fe | 高温の水蒸気と反応 | 希酸と反応して H₂ | 加熱で酸化 |
| Ni・Sn・Pb | × | 希酸と反応(Pb は遅い) | |
| Cu・Hg・Ag | × | 希酸 ×、硝酸・熱濃硫酸(酸化力のある酸)には溶ける | |
| Pt・Au | × | 王水(濃硝酸 + 濃塩酸 1:3)にのみ溶ける | 酸化されない |
不動態:Al・Fe・Ni は濃硝酸に入れると表面に緻密な酸化被膜ができて溶けない。
金属イオンとの反応:イオン化傾向の大きい金属が溶け(酸化)、小さい金属のイオンが析出(還元)。
Zn を CuSO₄ 水溶液に入れる:Zn + Cu²⁺ → Zn²⁺ + Cu(Zn が溶け、Cu が付着) Cu を ZnSO₄ 水溶液に入れる:反応しない Cu を AgNO₃ 水溶液に入れる:Cu + 2Ag⁺ → Cu²⁺ + 2Ag(銀樹)
2. 電池 ── 酸化還元でつくる電流
まずここだけ
2 種類の金属を電解質水溶液に入れると電池になる。
| 極 | イオン化傾向 | 反応 | 電子 |
|---|---|---|---|
| 負極 | 大きい金属 | 酸化(溶けて電子を出す) | 出る |
| 正極 | 小さい金属 | 還元(電子を受け取る) | 入る |
電子は負極 → 正極(導線内)、電流は正極 → 負極。電圧(起電力)は 2 つの金属のイオン化傾向の差が大きいほど大きい。
ダニエル電池(Zn | ZnSO₄aq | CuSO₄aq | Cu、素焼き板で仕切る)
- 負極:Zn → Zn²⁺ + 2e⁻(Zn 板が減る)
- 正極:Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu(Cu 板が増える、CuSO₄ の青色が薄くなる)
- 素焼き板:2 液の混合を防ぎつつイオンを通す
その他の電池:
| 電池 | 負極 | 正極 | 電解質 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ボルタ電池 | Zn | Cu | 希硫酸 | 正極で H₂ 発生、すぐ電圧低下 |
| マンガン乾電池 | Zn | MnO₂ | ZnCl₂・NH₄Cl | 一次電池 |
| 鉛蓄電池 | Pb | PbO₂ | 希硫酸 | 二次電池(充電可)。放電で両極に PbSO₄、硫酸が薄くなる |
| リチウムイオン電池 | 黒鉛(Li) | LiCoO₂ など | 二次電池、軽くて高電圧 | |
| 燃料電池 | H₂ | O₂ | リン酸など | 全体で 2H₂ + O₂ → 2H₂O、水しか出ない |
- 一次電池:使い切り、二次電池:充電して繰り返し使える(充電は放電の逆反応)
3. 電気分解 ── 電気で強制的に酸化還元
ここまでできれば十分
外部電源につないで反応を起こす。陽極(+につないだ極)で酸化、陰極(−につないだ極)で還元。
| 極 | 起こる反応の優先順 |
|---|---|
| 陰極(還元) | イオン化傾向の小さい金属イオンが析出(Cu²⁺・Ag⁺)。Na⁺・K⁺ などは析出せず水が還元されて H₂(2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻) |
| 陽極(酸化) | 電極が Cu・Ag なら電極自身が溶ける。Pt・C なら Cl⁻ → Cl₂、それ以外(SO₄²⁻・NO₃⁻)は水が酸化されて O₂(2H₂O → O₂ + 4H⁺ + 4e⁻) |
| 電解液(Pt 電極) | 陰極 | 陽極 |
|---|---|---|
| 塩化銅(Ⅱ)CuCl₂ | Cu 析出 | Cl₂ |
| 硫酸銅(Ⅱ)CuSO₄ | Cu 析出 | O₂ |
| 塩化ナトリウム NaCl | H₂ | Cl₂(NaOH が残る) |
| 水(希硫酸・NaOH 少量) | H₂ | O₂(体積比 2:1) |
| 硫酸銅(Ⅱ)、Cu 電極 | Cu 析出 | 陽極の Cu が溶ける(銅の電解精錬) |
ファラデーの法則:生成量は流れた電気量に比例。電子 1 mol の電気量 = 9.65 × 10⁴ C(ファラデー定数)。 電気量 Q(C)= 電流 I(A)× 時間 t(s)
1.0 A で 32 分 10 秒(1930 s):Q = 1930 C → e⁻ = 1930 ÷ 96500 = 0.020 mol 陰極の Cu(Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu):0.010 mol = 0.64 g。陽極の O₂(4e⁻ で 1 mol):0.0050 mol = 0.112 L
4. 金属の製錬と腐食
- 鉄:鉄鉱石(Fe₂O₃)をコークスからの CO で還元:Fe₂O₃ + 3CO → 2Fe + 3CO₂(溶鉱炉)
- アルミニウム:ボーキサイト → アルミナ Al₂O₃ → 溶融塩電解(氷晶石を加えて融点を下げ電気分解)。電気を大量に使うのでリサイクルが重要
- 銅:粗銅を電解精錬して純銅(陽極泥に Ag・Au)
- さび:鉄が酸化(Fe → Fe²⁺ → 酸化鉄)。防ぐには塗装・めっき(トタン:Zn めっき、Zn が先に溶けて鉄を守る/ブリキ:Sn めっき、傷がつくと鉄が先にさびる)・合金(ステンレス)
5. よくある間違い
- 電池の「正極で酸化」(負極で酸化、正極で還元)
- 電流と電子の向きを同じにする(逆)
- 電気分解で「陽極 = 陽イオンが集まる」と思う(陽極には陰イオンが集まり酸化される)
- NaCl 水溶液の電気分解で陰極に Na が析出すると思う(H₂ 発生)
- Cu が希塩酸に溶けると思う(イオン化傾向が H より小さいので溶けない。硝酸には溶ける)
- 電気量の計算で時間を分のまま使う(秒に直す)
- Cu 1 mol の析出に e⁻ 1 mol とする(2 mol)
6. 自己チェック
- イオン化傾向の順を言えるか
- Zn を CuSO₄ に入れたときの反応を書けるか
- 負極 = 酸化・正極 = 還元、電子は負極 → 正極、と言えるか
- ダニエル電池の各極の反応式を書けるか
- 陰極・陽極の生成物の優先順を言えるか
- Q = It、e⁻ 1 mol = 9.65 × 10⁴ C で析出量を計算できるか
7. 小テストへ
→ 小テスト(cb-10)
関連する単元
- 前提:cb-09 酸化と還元、s3-05 化学変化と電池(中学)、pb-10 電気
- 次に進む:bb-01 生物の特徴(ATP のエネルギー)
- ここで使う考え方が出てくる:pb-11 エネルギーの利用(燃料電池)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』── 「化学基礎」(3) ア 化学反応(金属の酸化還元反応・電池・電気分解)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/science/cb-10/ / 更新 2026-09-12