勉強法
理科の勉強法 ── 研究で確かめられている4つのやり方
このページも数学・英語と同じ立場です。実験で比べた結果が論文になっているやり方だけを集めました。研究ごとに「だれを対象に・何を比べて・どれくらい差が出たか」を書きます。数字が要旨に無いものは書きません。
理科は「暗記が半分、計算が半分」と言われます。でも研究で見ると、どちらも同じやり方が通用します。用語も計算も、残るやり方は3つです。読み返すより思い出す・まとめるより説明する・間をあけて戻る。しかも理科には、中学生の教室で行われた実験がそろっています。
今日からやること
- 解説を読んだら閉じて小テスト。まちがえた問題は、3日後と1週間後にもう一度解く
- まとめノートを作る時間を、白紙に用語・式・実験の流れを思い出して書く時間に変える。1単元10分で
- 定期テスト2週間前からは、ノートを読み返す代わりに範囲の小テストを通しで受ける
結論の表
| やり方 | ひとことで | 理科ではこうする | 証拠の強さ |
|---|---|---|---|
| ① 小テストで思い出す | 授業のあと・単元の前に短いテストを受ける | 解説を読んだら閉じて小テスト。まちがえた問題は日をあけてもう一度 | 強い(中学の教室実験で +13〜25%) |
| ② まとめノートより「思い出して書く」 | 図をまとめる時間を、白紙に思い出して書く時間に | 解説を閉じて、白紙に用語・式・実験の流れを書き出す | 強い(理科の文章で実験) |
| ③ 自分に説明する | 「なぜそうなる?」を自分の言葉で言う | 実験結果の理由、公式がそうなる理由を一文で言う | 中〜強(中2相当の血液循環の文章で実験) |
| ④ 聞くだけより手を動かす | 授業を聞くだけより、解く・書く・話す | 動画や授業のあとは問題を解く。読んだ実験は手順を自分で言う | 強い(225研究のメタ分析・大学) |
証拠の強さは3点で判定しています。中高生に近い対象か。時間をおいたテストがあるか。複数の研究で同じ方向の結果が出ているか。
① 小テストで思い出す(練習テスト)
何をするか
単元を学んだら、まとめを読み返さずに小テストを受けます。まちがえたら答えを確認し、数日あけてもう一度。点数はつけなくてよいです(成績に入らない、気軽なテスト)。
どんな研究があるか
McDaniel, Agarwal, Huelser, McDermott & Roediger(2011)
- 対象:アメリカの中学 2 年(8 年生)の理科の授業
- 比べたもの:授業内容の一部だけを選択式の小テスト(答えの確認つき)に出し、出さなかった内容と単元末テストで比べた
- 結果:小テストに出した内容は、単元末テストで 13〜25% 高い正答率
小テストを置く時期も比べました。「授業の前」「授業の直後」「単元テスト前の復習」です。復習として行った小テストの差が最も大きく、その差は学期末・学年末のまとめのテストまで残りました。
Roediger, Agarwal, McDaniel & McDermott(2011)は、同じ設計の社会科の研究です(→ 社会の勉強法)。対象はアメリカの 6 年生(ミドルスクール・小学 6 年相当)です。教科がちがっても同じ結果でした。
Butler(2010)
- 比べたもの:文章を学んだあと「くり返し読む」か「くり返しテスト」か
- 測ったもの:1 週間後に、同じ問題・同じ分野の新しい推論問題・ちがう分野の推論問題
- 結果:くり返しテストのほうが、暗記だけでなく応用(転移)でも上
「テストで覚えた知識は応用できない」という心配への反証です。
理科での具体例
- このサイトの各単元は「解説 → 小テスト」の順です。解説を閉じてから小テストを始める
- まちがえた問題は、その場で解説に戻って確認する。そのあと3 日後・1 週間後にもう一度(数を変えて出るので、同じ型の別問題になります)
- 定期テスト前は、ノートを読み返す代わりに単元一覧から小テストを通しで受ける。研究で差が最も大きかったのは「テスト前の復習としての小テスト」です
- 計算単元(密度・オーム・質量比・湿度・速さ・仕事)は、公式を「見る」のではなく白紙に書いてから問題を解く
注意点
- 小テストは答えの確認(フィードバック)つきで行う。研究ではいつも正解が示されていました
- 選択式でも差は出ます(研究は選択式)。ただ英語の勉強法で引いた Rowland(2014) のメタ分析では、自分で書くテストのほうが差が大きい。選択式で正解したら、用語を書いてみます
② まとめノートより「思い出して書く」
何をするか
単元が終わったら、教科書や解説を閉じて白紙に書き出します。覚えている用語・式・実験の流れ・図です。書けなかったところだけ、解説で確認します。きれいなまとめノートを作る時間を、これに置きかえます。
どんな研究があるか
Karpicke & Blunt(2011)(Science 誌)
- 教材:理科の授業で使うのと同じ種類の科学の文章
- 比べたもの:「くり返し読む」「概念図(用語を線でつないだ図)を作りながら学ぶ」「思い出して書く」
- 結果:1 週間後のテストで、思い出して書いた群が、概念図を作った群より上
その差は、理解や推論を問う問題でも保たれました。最終テストが概念図を描く課題のときでも同じです。まとめを作るほうが深く学べそうに見えますが、思い出す練習のほうが上だったのです。
Nesbit & Adesope(2006)は、概念図そのもののメタ分析です。55 研究・5,818 人が対象です(小 4〜大学・理科を含む)。概念図を使う学習は、使わない学習より記憶が伸びました。ただし差の大きさは、使い方によって小〜大とばらつきました。
つまり概念図はむだではありません。「読むだけ」よりは良く、「思い出す練習」には及ばないという位置です。
理科での具体例
- 血液の循環を学んだら、白紙に心臓の 4 つの部屋・血管の名前・血液の流れる順を書く。書けたら解説と照らし合わせる
- 実験(例:酸化銅と炭素)は、手順・起こること・確認方法・注意点を 4 行で思い出して書く
- 図をまとめるなら、見ながら写さない。一度見て、閉じて描く。描けなかった部分が弱点です
注意点
- 白紙に書くと、ほとんど書けないのが普通です。書けなかった経験そのものが、次に残ります
- まとめノートが好きなら、作ったあとに閉じて思い出す時間を足す。作ること自体はむだではありません(Nesbit & Adesope)
③ 自分に説明する(自己説明)
何をするか
解説を読みながら、一文ごとに自分に問います。「これはなぜ?」「前の文とどうつながる?」。答えを自分の言葉で言うか書きます。答えが出なくてもかまいません。
どんな研究があるか
Chi, de Leeuw, Chiu & LaVancher(1994)
- 対象:中学 2 年(8 年生)。人の血液循環の文章を読んだ
- 比べたもの:14 人は「一行読むごとに自分に説明する」。10 人は同じ文章を二度読むだけ
- 結果:読む前と後のテストで、説明した群のほうが伸びが大きかった
とくに説明を多く出した生徒は、複雑な問いに答える力や、書かれていないしくみを推論する力が高かったのです。訓練なしに「説明して」と頼んだだけで、この差が出ています。
数学の勉強法で引いた Dunlosky ほか(2013) は、自己説明を「有用性・中」としています(練習テスト・分散練習の次)。
理科での具体例
- 「水に食塩を溶かすと、下のほうが濃くなる?」→「ならない。溶けた粒が全体に広がるから」と、理由を一文で
- 公式は「なぜその割り算か」を言う。「圧力=力÷面積。同じ力でも、面積が小さいと一点に集まるから」
- 実験結果の予想を先に言ってから解説を読む。予想と違ったところが記憶に残ります
注意点
- 説明が正しいかは解説で確かめる。自己説明は考える習慣をつけるもので、正解を保証するものではありません
- 時間がかかるので、全部にやらなくてよい。「なぜ?」と思ったところだけで十分です
④ 聞くだけより手を動かす(能動学習)
何をするか
授業・動画・解説を受け取るだけで終わらせません。直後に問題を解く・図を描く・人に説明する。
どんな研究があるか
Freeman ほか(2014)
- 対象:理科・数学・工学の大学授業 225 研究のメタ分析
- 比べたもの:講義だけの授業と、学生が解く・話す・考える活動を含む授業(アクティブラーニング)
- 結果:試験の点は平均 0.47 標準偏差(約 6%)高く、講義だけの授業の学生は落第する確率が 1.5 倍
「0.47 標準偏差」は、差の大きさの目安「効果量 d」と同じ物差しです。0.2 が小・0.5 が中・0.8 が大の目安です。差はどの分野でも、クラスの大きさにかかわらず見られました。小さいクラス(50 人以下)で最大でした。
大学の研究ですが、「聞いて終わり」と「手を動かす」の差は、中学でも同じ方向と考えられます。数字は大学のものとして読んでください。
理科での具体例
- 授業を聞いたら、その日のうちに教科書の問題か、このサイトの小テストを 10 分。部活から帰ったあとでもできる量です
- 実験は見学で終わらせず、手順を自分で言えるまで。動画で見た実験も「何を確かめる実験で、何が起きたら成功か」を言う
- 友達と問題を出し合うと、①と④の両方になる
注意点
- 「手を動かす」は「きれいなノート作り」ではありません(②参照)。考えて答えを出す活動であることが大事です
まとめ:理科の 1 週間の回し方(例)
| 日 | やること |
|---|---|
| 授業の日 | 解説を読む → 閉じて小テスト(基礎)→ まちがえた問題の解説を確認 |
| 3 日後 | 同じ単元の小テスト(標準)。白紙に用語・式を書き出す(②) |
| 1 週間後 | 前週の単元をまとめて小テスト。理由が言えない用語に「なぜ?」(③) |
| 定期テスト前 | ノートを読む代わりに、範囲の小テストを通しで受ける(①で最も差が大きかったやり方) |
大学受験(高校理科)ではこう使う
高校理科の単元は 物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎の 39 単元(共通テスト理科①の範囲)。
- 計算は「式を立てるまで」を自分で:物理基礎(pb-)・化学基礎(cb-)の小テストは数が毎回変わります。答えの暗記ではなく、「どの式をどう使うか」の練習になる。解説の例題は閉じて解く
- 用語は「なぜそうなるか」とセットで:生物基礎(bb-)・地学基礎(eb-)の分類問題は、暗記カードに「理由」を 1 行足す(精緻化)。「免疫 → なぜ二次応答は速いか」
- グラフ・図の読み取り:共通テストは初見の図が多い。解説の図(例:pb-06 のエネルギーの図、eb-08 の HR 図)を閉じて描き直す。これが思い出す練習になります
- 中学に戻る:力と運動(pb-01〜03)は s3-01〜02、物質量と化学反応式(cb-04〜06)は s2-04〜05 が土台
参考文献(DOI は確認ずみ・2026-09-12)
- McDaniel, M. A., Agarwal, P. K., Huelser, B. J., McDermott, K. B., & Roediger, H. L. (2011). Test-enhanced learning in a middle school science classroom: The effects of quiz frequency and placement. Journal of Educational Psychology, 103(2), 399–414. https://doi.org/10.1037/a0021782
- Roediger, H. L., Agarwal, P. K., McDaniel, M. A., & McDermott, K. B. (2011). Test-enhanced learning in the classroom: Long-term improvements from quizzing. Journal of Experimental Psychology: Applied, 17(4), 382–395. https://doi.org/10.1037/a0026252
- Butler, A. C. (2010). Repeated testing produces superior transfer of learning relative to repeated studying. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36(5), 1118–1133. https://doi.org/10.1037/a0019902
- Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Retrieval practice produces more learning than elaborative studying with concept mapping. Science, 331(6018), 772–775. https://doi.org/10.1126/science.1199327
- Nesbit, J. C., & Adesope, O. O. (2006). Learning with concept and knowledge maps: A meta-analysis. Review of Educational Research, 76(3), 413–448. https://doi.org/10.3102/00346543076003413
- Chi, M. T. H., de Leeuw, N., Chiu, M.-H., & LaVancher, C. (1994). Eliciting self-explanations improves understanding. Cognitive Science, 18(3), 439–477. https://doi.org/10.1207/s15516709cog1803_3
- Freeman, S., Eddy, S. L., McDonough, M., Smith, M. K., Okoroafor, N., Jordt, H., & Wenderoth, M. P. (2014). Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(23), 8410–8415. https://doi.org/10.1073/pnas.1319030111
- (数学・英語の勉強法から再引用)Dunlosky et al. (2013) https://doi.org/10.1177/1529100612453266 / Rowland (2014) https://doi.org/10.1037/a0037559 / Cepeda et al. (2006) https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354
確認方法:CrossRef API で書誌を、OpenAlex API で要旨を取得し、本文に書いた数字は要旨に書かれているものだけを使いました。生データは docs/参考文献_生データ_理社国_2026-09-12.txt。