中2〜3 国語 / 古典 / k-11
漢文の基礎(返り点・書き下し文・故事成語)
この単元でできるようになること
- (レ点・一二点・上下点)の読む順序がわかり、書き下し文(漢字かな交じり文)に直せる
- 送りがな(漢字の右下に片仮名)と置き字(而・於・于・焉)、助詞・助動詞に当たる漢字をひらがなに直す決まりがわかる
- 漢文の訓読の基本(「不」→「ず」、「可」→「べし」、「如・若」→「ごとし」、「也」→「なり」、再読文字「未」「当」「将」)と、返読文字(不・有・無・自・与・多・少)を知っている
- (矛盾・五十歩百歩・推敲・蛇足・漱石枕流・温故知新・四面楚歌・臥薪嘗胆・杞憂・呉越同舟・朝三暮四・背水の陣・画竜点睛・登竜門・完璧)の意味と由来が言える
- 論語(子曰く…・学而時習之・温故知新・己の欲せざる所…)、漢詩(五言絶句・七言律詩・押韻・対句・起承転結・李白・杜甫)の基礎がわかる
入試での位置づけ
返り点に従って読む順番を数字で示す問題と書き下し文を選ぶ問題が定番。レ点(1 字返る)・一二点(2 字以上返る)・上下点(一二点をはさんで返る)の 3 つで 9 割が解ける。故事成語は意味と由来の対応、漢詩は絶句(4 句)・律詩(8 句)、五言(1 句 5 字)・七言(1 句 7 字)と押韻の位置(偶数句末)。
1. 返り点
まずここだけ
漢文は中国語の語順(主語−動詞−目的語:我読書)なので、日本語(我書を読む)に直すには返って読む。その順序を示す記号が返り点(漢字の左下につく)。
| 返り点 | 読み方 | 例 |
|---|---|---|
| レ点 | すぐ下の 1 字を先に読み、上に返る | 読レ書 → 書を読む |
| 一・二(三)点 | 二 のついた字はとばし、一 を読んでから 二 へ返る(2 字以上はなれて返る) | 読二漢文一 → 漢文を読む |
| 上・下(中)点 | 一二点をはさんでさらに大きく返る。上 を読んでから 下 へ | 有下朋自遠方来上 → 朋の遠方より来たる有り |
| 一レ点 | 一点とレ点が重なる。まずレ点で 1 字返り、一の働きで二へ | |
| 甲乙点 | 上下点でも足りないとき |
読む順番の手順:
- 返り点のない字は上から順に読む
- レ点は「下の 1 字 → 自分」
- 二・三・下の字はとばして、一・上を読んだあとに戻る
- 返り点が重なる(一レ・上レ)ときは、レ点を先に処理
「不レ知」→ 知らず(知 → 不) 「学二而時習一之」は置き字の例 → 学びて時に之を習ふ(学 → 而(読まない)→ 時 → 習 → 之…実際は「習レ之」) 「我二読一書」は不自然な例。典型:「欲二読一書」→ 書を読まんと欲す(欲をとばす→ 読をとばす?… 正しくは「欲レ読レ書」)
典型例:
- 「温レ故而知レ新」→ 故きを温めて新しきを知る(故 → 温 → 新 → 知。而は置き字)
- 「己所不欲、勿施於人」に返り点:己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ
- 「百聞不二如一一見」→ 百聞は一見に如かず(百聞 → 一見 → 如 → 不)
2. 書き下し文の決まり
まずここだけ
書き下し文:漢文を返り点・送りがなに従って漢字かな交じりの日本語の文に直したもの。
| 決まり | 例 |
|---|---|
| 送りがな(漢字の右下の片仮名)はひらがなにして漢字のあとに続ける | 読ム → 読む |
| 助詞・助動詞に当たる漢字はひらがなに直す | 不(ず・ざる)・也(なり)・之(の・これ)・可(べし)・如(ごとし)・与(と)・而(て・も)・耳(のみ)・乎(か・や) |
| 置き字は読まない | 而(順接・逆接のつなぎ)・於・于(〜に・〜より)・焉(文末)・矣 |
| 再読文字は2 回読む(1 回目は副詞的に、返ってもう一度助動詞的に) | 未(いまだ〜ず)・当(まさに〜べし)・将(まさに〜んとす)・応(まさに〜べし)・宜(よろしく〜べし)・須(すべからく〜べし)・猶(なほ〜ごとし) |
| 歴史的仮名遣いで書く | 思ふ・言ふ・なほ |
返読文字(必ず下から返って読む字):不・非・無・有・自・従・与・多・少・難・易・如・若。 訓読の定番:「曰」=いはく、「矣・焉」=読まない、「所」=ところ、「者」=もの・は、「安・何」=いづくんぞ・なんぞ(疑問・反語)。
3. 故事成語
ここまでできれば十分
| 故事成語 | 意味 | 由来 |
|---|---|---|
| 矛盾 | つじつまが合わないこと | どんな盾も突き通す矛と、どんな矛も通さない盾を売る商人(韓非子) |
| 五十歩百歩 | 大差がないこと | 50 歩逃げた兵が 100 歩逃げた兵を笑う(孟子) |
| 推敲 | 詩や文章を何度も練り直すこと | 賈島が「推す」か「敲く」かで迷った |
| 蛇足 | よけいなつけたし | 蛇の絵を早く描けた者が足まで描いて負けた(戦国策) |
| 温故知新 | 古いことを研究して新しい知識を得る | 論語「故きを温めて新しきを知る」 |
| 四面楚歌 | 周りが敵ばかりで孤立 | 項羽が漢軍に囲まれ、四方から楚の歌が聞こえた(史記) |
| 臥薪嘗胆 | 目的のために苦労に耐える | 呉王夫差が薪の上に寝、越王勾践が苦い胆をなめて復讐を誓った |
| 呉越同舟 | 仲の悪い者が同じ場所にいる・協力する | 敵国の呉と越の人が同じ舟に乗る(孫子) |
| 杞憂 | 必要のない心配 | 杞の国の人が天が落ちてくると心配した(列子) |
| 朝三暮四 | 目先のちがいにだまされる・ごまかす | 猿にとちの実を朝 3 つ夕 4 つ → 朝 4 つ夕 3 つで喜ばせた(荘子) |
| 背水の陣 | 退路を断って全力で事にあたる | 韓信が川を背にして陣を敷き勝った(史記) |
| 画竜点睛 | 最後の仕上げ(「画竜点睛を欠く」=仕上げが足りない) | 竜の絵に瞳を描き入れると飛び去った |
| 登竜門 | 出世・成功への関門 | 黄河の竜門をのぼった鯉が竜になる |
| 完璧 | 欠点がまったくないこと(もとは「璧を完うす」) | 藺相如が璧(玉)を無事に持ち帰った(史記) |
| 漱石枕流 | 負け惜しみの強いこと | 「石に枕し流れに漱ぐ」を言い間違えて強弁した(夏目漱石の名の由来) |
| 塞翁が馬 | 人生の幸不幸は予測できない | 塞翁の馬が逃げたり戻ったりした |
| 他山の石 | 他人の誤りも自分の参考になる | 詩経 |
| 守株 | 古い習慣にこだわり進歩がない | 切り株にぶつかった兎を待ち続けた農夫(韓非子) |
4. 論語と漢詩
ここまでできれば十分
『論語』:孔子(紀元前 6〜5 世紀・春秋時代)と弟子の言行録。儒教の基本。「子曰く」で始まる。
- 「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや」(学而)
- 「故きを温めて新しきを知る、以て師と為るべし」(温故知新)
- 「己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ」
- 「学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆し」
- 「過ちて改めざる、是を過ちと謂ふ」「朋有り遠方より来たる」
漢詩の形式:
| 形式 | 句数 | 1 句の字数 |
|---|---|---|
| 五言絶句 | 4 句 | 5 字 |
| 七言絶句 | 4 句 | 7 字 |
| 五言律詩 | 8 句 | 5 字 |
| 七言律詩 | 8 句 | 7 字 |
- 押韻:偶数句の末(七言は第 1 句末も)で同じ響きの字をそろえる
- 対句:律詩の 3・4 句、5・6 句は対になる
- 起承転結:絶句の 4 句の構成
- 代表:李白(「静夜思」「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」)、杜甫(「春望」「絶句」)、王維、孟浩然(「春暁」:春眠暁を覚えず)、白居易
5. よくある間違い
- レ点を「上の字に返る」と逆に読む(下の 1 字を先に読んで上に返る)
- 二点の字を先に読む(とばして一点のあとに)
- 置き字「而・於」を読む(読まない)
- 「不」を漢字のまま書き下す(ずとひらがなに)
- 再読文字「未」を 1 回だけ読む(いまだ〜ずと 2 回)
- 絶句と律詩の句数(絶句 4・律詩 8)、五言と七言の字数
- 矛盾の由来を「盾と剣」(矛と盾)、五十歩百歩を「大きな差」(大差なし)
6. 自己チェック
- レ点=1 字返る、一二点=2 字以上返る、上下点=一二点をはさんで返る
- 書き下し:送りがなはひらがな、不・也・之・可・如 はひらがな、而・於・焉 は読まない、未・当・将 は 2 回
- 故事成語:矛盾・五十歩百歩・推敲・蛇足・四面楚歌・臥薪嘗胆・呉越同舟・杞憂・朝三暮四・背水の陣
- 論語:子曰く・温故知新・己の欲せざる所
- 漢詩:絶句 4 句・律詩 8 句、五言 5 字・七言 7 字、押韻は偶数句末
7. 小テストへ
→ 小テスト(k-11)
関連する単元
参考資料
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編』── 「我が国の言語文化に関する事項(古典:漢文の訓読の仕方)」第 2 学年
- 各社中学国語教科書「漢文の読み方」── 返り点・書き下し文の決まりは共通。論語の章句・漢詩(春暁・静夜思・春望・絶句)は教科書掲載
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koko/japanese/k-11/ / 更新 2026-09-12