勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

大学受験の勉強法 ── 1年の計画に研究の知見を組みこむ

教科ごとの勉強法(数学・英語・理科・社会・国語)で引いた研究は、大学生が対象のものが多いです。高校生は年齢も学び方も近い対象ですが、そのまま同じ差が出るとは限りません。 このページでは、教科をまたいで受験の 1 年をどう組むかに関わる研究を足します。共通テストや大学入試そのものを対象にした実験は見つけていません。一般的な学習の研究を受験に当てはめたものとして読んでください。

今日からやること

  1. 単語帳は「1 日 1 ページを完璧に」をやめる。毎日 5 ページずつ進めながら、前の日の分にも戻る
  2. 今週の計画を「◯曜の◯時、どこで、何を何分」の形で 3 つ書く。例「部活から帰って手を洗ったら、机で英単語 20 分」
  3. 赤本は解答を隠し、本番と同じ時間を計って解く。答え合わせのあと、間違いを 3 つに分ける

結論の表

やり方ひとことで受験ではこうする証拠の強さ
① 単語カードは「大きな束」で回す小分けにすると間隔が縮んで残りにくい100 枚を 4 束に分けず 1 束で回す。アプリの「今日の復習」も同じ理屈強い(3 実験・90% の人で分散が勝つ)
② 「いつ・どこで・何を」を決めるやる気より、条件つきの予定「帰宅したら机で英単語 20 分」のように if–then で書く強い(94 の検証のメタ分析・d=0.65)
③ 自分の「覚えた感」を信用しない人は自分の学習を見誤る小テストの結果で判断する。スラスラ読める=覚えた、ではない強い(レビュー・多数の実験)
④ 寝る記憶は寝ている間に固まる徹夜で詰めるより、寝る前に思い出して寝る強い(生理学の総説)
⑤ 過去問・模試は「テスト」として使う答えを見ながら読まず、解いてから直す時間を計って解く → 採点 → まちがいを分類 → 数週間後に再挑戦強い(練習テストの研究の応用)

d は効果量(差の大きさの目安。0.2 が小・0.5 が中・0.8 が大)です。


① 単語カードは「大きな束」で回す(分散の実用形)

何をするか

単語カード(紙でもアプリでも)を1 つの大きな束で回します。同じカードに戻るまでの間隔が、自然に長くなります。

どんな研究があるか

Kornell(2009)

ところが最初の学習のあと、72% の参加者は「小分けのほうが覚えられた」と感じていました。正しいやり方ほど、本人には手ごたえが薄いということです。

英語の勉強法で引いた Nakata & Webb(2016)も同じ方向です。20 語を小分けにしても、間隔をそろえると差はほぼ無く、間隔の差のほうが大きい結果でした。

受験での具体例


② 「いつ・どこで・何を」を決める(実行意図)

何をするか

「今週は英語をがんばる」ではなく、状況(if)と行動(then)を結びつけて書きます。これを実行意図と呼びます。

どんな研究があるか

Gollwitzer & Sheeran(2006)

受験での具体例


③ 自分の「覚えた感」を信用しない(メタ認知の錯覚)

何をするか

「わかった気がする」「スラスラ読める」を、覚えた証拠にしません。覚えたかどうかは、閉じて思い出せるか(小テスト)で判断します。メタ認知とは、自分の理解を自分で見張る力のことです。

どんな研究があるか

受験での具体例


④ 寝る(記憶の固定)

何をするか

睡眠時間を削って勉強時間を足しません。寝る前に、その日の内容を思い出してから寝ます。

どんな研究があるか

Rasch & Born(2013) 睡眠と記憶についての、100 年以上の研究の総説です(Physiological Reviews)。睡眠が記憶の保持を高めることは確立した事実とされています。 昔は「寝ている間はじゃまが入らないから守られる」という説明でした。いまは「睡眠中に記憶が積極的に固定される(システム統合)」という見方が中心です。とくに深い眠り(徐波睡眠)が大切とされています。

Curcio, Ferrara & De Gennaro(2006) 睡眠不足と学習能力・学業成績の関係を整理した総説です(Sleep Medicine Reviews)。要旨が取得できなかったため、数字は書きません。題名と掲載誌(睡眠医学の専門誌)から、睡眠不足が学習に不利に働く方向の整理だということだけ挙げておきます。

受験での具体例


⑤ 過去問・模試は「テスト」として使う

何をするか

過去問は時間を計って解く → 採点 → まちがいを分類 → 数週間後にもう一度、の順で使います。模試も同じで、返ってきたあとの直しが本体です。

どんな研究があるか

受験での具体例


1 年の組み方(例)

時期柱
〜夏前単元の解説 → 小テスト(基礎・標準)を全範囲。単語・用語は大きな束で毎日(①)。週の計画は if–then で(②)
夏全範囲の小テストを通しで。「大丈夫と思う単元」こそテスト(③)。過去問を 1 年分、時間を計って(⑤)
秋過去問・模試を本番形式で。まちがいを 3 分類 → 単元へ戻る。2 周目は数週間あけて
冬新しい教材を増やさない。既習の小テストと過去問 2 周目。睡眠を削らない(④)
直前寝る前の思い出し。前日の詰め込みは「明日」には残るが、それ以上は期待しない

参考文献(DOI は確認ずみ・2026-09-12)

  1. Kornell, N. (2009). Optimising learning using flashcards: Spacing is more effective than cramming. Applied Cognitive Psychology, 23(9), 1297–1317. https://doi.org/10.1002/acp.1537
  2. Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1
  3. Bjork, R. A., Dunlosky, J., & Kornell, N. (2013). Self-regulated learning: Beliefs, techniques, and illusions. Annual Review of Psychology, 64, 417–444. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-113011-143823
  4. Rasch, B., & Born, J. (2013). About sleep’s role in memory. Physiological Reviews, 93(2), 681–766. https://doi.org/10.1152/physrev.00032.2012
  5. Curcio, G., Ferrara, M., & De Gennaro, L. (2006). Sleep loss, learning capacity and academic performance. Sleep Medicine Reviews, 10(5), 323–337. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2005.11.001 (要旨未取得・題名と書誌のみ)
  6. (教科ページから再引用)Nakata & Webb (2016) / Karpicke & Roediger (2008) / Roediger & Karpicke (2006) / Rowland (2014) / Cepeda et al. (2006) / Carpenter et al. (2009) / Rohrer & Taylor (2007) / Rohrer et al. (2015, 2020) / McDaniel et al. (2011) / Butler (2010) ── DOI は各教科ページと docs/参考文献ログ.md に記載

確認方法:書誌は CrossRef API、要旨は OpenAlex/Semantic Scholar API で取得。本文の数字は要旨に書かれているものだけです。生データは docs/参考文献_生データ_大学受験_2026-09-12.txt。