高1 / 生物基礎 / bb-09
生態系と物質循環・生物多様性の保全
この単元でできるようになること
- 生態系の構成(非生物的環境・生産者・消費者・分解者)と、作用・環境形成作用を説明できる
- 食物連鎖・食物網、生態ピラミッド(個体数・生物量・エネルギー)を説明できる
- 炭素の循環と窒素の循環(窒素固定・硝化・脱窒)、エネルギーの流れ(循環しない)を区別できる
- 生態系のバランス(復元力・かく乱・キーストーン種)と、生物濃縮・富栄養化を説明できる
- 生物多様性の 3 つのレベルと、その減少の原因(外来生物・乱獲・生息地の分断・地球温暖化)と保全の取り組みを言える
入試での位置づけ
生態系は共通テストで「窒素の循環」(窒素固定細菌・硝化細菌・脱窒素細菌)と「外来生物・キーストーン種・生物濃縮」の知識問題が定番。エネルギーは循環せず熱として出ていく、炭素は循環するという区別、外来生物の具体名(オオクチバス・アライグマ・セイヨウタンポポ)は確実に。
1. 生態系の構成
まずここだけ
生態系 = 非生物的環境(光・水・温度・土壌・大気)+ 生物的環境(生物群集)
- 作用:非生物的環境 → 生物(光が光合成に影響)
- 環境形成作用:生物 → 非生物的環境(森林が湿度を上げる、土壌をつくる)
| 役割 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 生産者 | 光合成で無機物から有機物をつくる(独立栄養) | 植物・藻類・シアノバクテリア |
| 消費者 | 他の生物を食べる(従属栄養)。一次消費者(植食)・二次消費者(肉食)… | 動物 |
| 分解者 | 遺体・排出物の有機物を無機物に分解 | 菌類・細菌、ミミズ・ダンゴムシ |
栄養段階:生産者 → 一次消費者 → 二次消費者 → 高次消費者。 食物連鎖(一本の食う・食われる)と食物網(実際は網目状)。 生態ピラミッド:栄養段階が上がるほど個体数・生物量・エネルギーが減る(上位ほど少ない)。
2. 物質の循環とエネルギーの流れ
まずここだけ
炭素の循環:
- 大気中の CO₂ → 光合成で有機物に(生産者)→ 食物連鎖で移動 → 呼吸で CO₂ に戻る(全生物)→ 遺体は分解者が分解して CO₂ に
- 化石燃料の燃焼で大気の CO₂ が増加 → 地球温暖化
窒素の循環(タンパク質・核酸に必要):
| 過程 | 内容 | 生物 |
|---|---|---|
| 窒素固定 | 大気中の N₂ → アンモニウムイオン NH₄⁺ | 根粒菌(マメ科植物の根と共生)、アゾトバクター、シアノバクテリア |
| 硝化 | NH₄⁺ → 亜硝酸イオン NO₂⁻ → 硝酸イオン NO₃⁻ | 硝化細菌(亜硝酸菌・硝酸菌) |
| 窒素同化 | 植物が NO₃⁻・NH₄⁺ を吸収してアミノ酸・タンパク質を合成 | 植物 |
| 動物 | 植物を食べてタンパク質を得る | |
| 分解 | 遺体・排出物のタンパク質 → NH₄⁺ | 分解者 |
| 脱窒 | NO₃⁻ → N₂(大気へ戻す) | 脱窒素細菌 |
植物は大気の N₂ を直接使えない(根粒菌などの窒素固定が必要)。
エネルギーの流れ:
- 太陽の光エネルギー → 光合成で化学エネルギー → 食物連鎖で移動 → 各段階で呼吸により熱エネルギーとして放出 → 生態系の外へ
- エネルギーは循環しない(一方向に流れて熱として出ていく)。物質(炭素・窒素)は循環する
3. 生態系のバランス
ここまでできれば十分
- 生態系は多少の変動があっても復元力でもとに戻る。大きなかく乱(火山・伐採・外来生物)で戻れなくなることも
- キーストーン種:個体数は少ないが生態系のバランスに大きな影響を与える種。ラッコ(ウニを食べて海藻の森を守る)、ヒトデ(潮間帯で他の生物を食べて多様性を保つ)。除去すると特定の種が増えて多様性が下がる
- 生物濃縮:分解されにくい物質(DDT・PCB・水銀)が食物連鎖を通じて高次消費者に高濃度で蓄積
- 富栄養化:生活排水などで湖や海に窒素・リンが増え、プランクトンが大発生(赤潮・アオコ)→ 酸素不足で魚が死ぬ
- 自然浄化:少量の汚れは微生物の分解で浄化される。限度をこえると汚染
4. 生物多様性とその保全
ここまでできれば十分
生物多様性の 3 つのレベル:
- 遺伝的多様性:同じ種の中の遺伝子の違い
- 種多様性:種の数と割合
- 生態系多様性:森林・湿地・干潟・サンゴ礁などいろいろな生態系があること
減少の原因:
| 原因 | 内容・例 |
|---|---|
| 外来生物 | 人が持ちこんだ生物が在来種を食べる・競争する。オオクチバス・ブルーギル・アライグマ・マングース・セイヨウタンポポ・ヒアリ。特定外来生物は法律で規制 |
| 乱獲 | 獲りすぎで絶滅(ニホンオオカミ・ニホンカワウソ、トキは回復中) |
| 生息地の破壊・分断 | 開発・道路で個体群が小さく孤立 → 近親交配で遺伝的多様性が減り絶滅しやすい |
| 地球温暖化 | 分布の変化、サンゴの白化 |
| 里山の放置 | 手入れがなくなり遷移が進んで里山の生物が減る |
保全の取り組み:
- 絶滅危惧種をレッドリスト(環境省)に載せて保護
- 国立公園・世界自然遺産(知床・白神山地・屋久島・小笠原・奄美)、ラムサール条約(湿地)
- 環境アセスメント(開発前に影響を調査)
- 生態系サービス:生態系から人が受ける恵み(食料・水・木材、気候調節、レクリエーション)→ 保全の理由
- SDGs(持続可能な開発目標)
5. よくある間違い
- 分解者を「動物」だけと思う(中心は菌類・細菌)
- エネルギーが循環すると思う(循環しない。熱として出ていく)
- 植物が大気の N₂ を直接吸収すると思う(窒素固定が必要)
- 硝化と脱窒を逆にする(硝化:NH₄⁺ → NO₃⁻、脱窒:NO₃⁻ → N₂)
- 生物濃縮で「低次の生物ほど濃い」と思う(高次ほど濃い)
- 外来生物を「海外から来た生物すべて」と思う(人が持ちこんだもの。国内移動でも外来)
- キーストーン種を「個体数が多い種」と思う(少なくても影響が大きい種)
6. 自己チェック
- 生産者・消費者・分解者と作用・環境形成作用を言えるか
- 炭素の循環(光合成・呼吸・分解・燃焼)を描けるか
- 窒素固定・硝化・脱窒とその生物を言えるか
- 「エネルギーは循環しない」を説明できるか
- キーストーン種・生物濃縮・富栄養化を例つきで言えるか
- 生物多様性の 3 レベルと減少の原因 4 つを言えるか
7. 小テストへ
→ 小テスト(bb-09)
関連する単元
- 前提:bb-02 光合成・呼吸、bb-08 植生とバイオーム、s3-07 生態系(中学)
- 次に進む:eb-09 地球環境
- ここで使う考え方が出てくる:c-08 環境(中学公民)、g-08 資源(中学地理)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』── 「生物基礎」(4) ウ 生態系とその保全
- 環境省「レッドリスト」「特定外来生物等一覧」(https://www.env.go.jp/nature/)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/science/bb-09/ / 更新 2026-09-12