高1 / 歴史総合 / ht-01
近代化への問い(18 世紀のアジアと世界・産業革命)
この単元でできるようになること
- 18 世紀の世界でアジアの帝国(清・ムガル・オスマン)が豊かで、ヨーロッパはアジアの産物(茶・綿布・陶磁器)を銀で買っていたという構図を説明できる
- 江戸時代の日本の「鎖国」(四つの口)と、天下泰平のもとでの経済・文化の成熟を説明できる
- 大西洋三角貿易とプランテーション・奴隷貿易が、ヨーロッパの富の蓄積とアメリカ・アフリカに何をもたらしたかを説明できる
- がイギリスで最初に起きた理由と、技術(紡績機・蒸気機関・鉄道)・社会(工場制・労働問題・都市化)の変化を説明できる
- 「近代化とは何か」という問いを、交通・貿易・産業・人口・生活の変化から考えられる
入試での位置づけ
歴史総合は「近代化・大衆化・グローバル化」の 3 つの視点で 18 世紀以降の日本と世界を同時に見る科目です。共通テストでは資料(グラフ・地図・手紙)を読んで因果を選ぶ問題が中心。この単元は出発点で、「18 世紀はアジアが中心、産業革命で逆転」「三角貿易の 3 辺」「産業革命の前提条件(資本・労働力・資源・市場・技術)」が問われます。
1. 18 世紀のアジアの繁栄
まずここだけ
| 帝国 | 状況 | ヨーロッパとの関係 |
|---|---|---|
| 清(中国) | 康熙・雍正・乾隆帝の最盛期。人口 約 3 億(世界の 3 分の 1)、茶・絹・陶磁器を輸出。貿易は広州 1 港に限定(公行が独占) | イギリスが茶を大量に輸入 → 銀が中国へ流出(→ ht-03 アヘン戦争の背景)。マカートニー使節(1793)は自由貿易を求めるが拒否 |
| ムガル帝国(インド) | 18 世紀に衰退、地方勢力が分立 | 綿布(キャラコ)が世界商品。イギリス東インド会社がプラッシーの戦い(1757)でフランスを破り、ベンガルの徴税権を得て支配を広げる |
| オスマン帝国 | 三大陸にまたがる。18 世紀にロシア・オーストリアに押される | コーヒー・チューリップがヨーロッパへ |
| 江戸幕府(日本) | 「鎖国」= 四つの口(長崎:オランダ・中国、対馬:朝鮮(朝鮮通信使)、薩摩:琉球、松前:アイヌ)。銀・銅の輸出、生糸・砂糖・薬の輸入 → 国産化(生糸・砂糖・朝鮮人参)。人口 約 3,000 万で安定、寺子屋で識字率が高い、三都(江戸 100 万・大坂・京都)、蘭学(『解体新書』1774) | オランダ風説書で世界情勢を把握。18 世紀末からロシア船(ラクスマン 1792)が来航 |
ポイント:18 世紀の世界貿易の中心はアジア。ヨーロッパは新大陸の銀でアジアの商品を買っていた(銀の流れ:アメリカ → ヨーロッパ → アジア)。
2. ヨーロッパと大西洋世界
まずここだけ
- 主権国家と絶対王政(ルイ 14 世「朕は国家なり」)、重商主義(輸出を増やし金銀をため、植民地を確保)
- 大西洋三角貿易:
- ヨーロッパ → アフリカ:武器・綿布・雑貨
- アフリカ → アメリカ:奴隷(16〜19 世紀に 1,000 万人以上)
- アメリカ → ヨーロッパ:砂糖・タバコ・綿花・コーヒー(プランテーション) → ヨーロッパ(特にイギリス:リヴァプール)に富が蓄積し産業革命の資本に。アフリカは人口を失い発展が遅れ、アメリカには人種差別の構造が残る
- 砂糖・茶・コーヒーの大衆化(生活革命:イギリスの「砂糖入り紅茶」はアジアの茶+カリブの砂糖)
- 啓蒙思想(ロック・モンテスキュー・ルソー:社会契約説・人民主権・三権分立)が市民革命の土台に(→ ht-02)
- 英仏植民地戦争:七年戦争(1756〜63)でイギリスが勝ち、北米・インドで優位に。戦費で財政難 → アメリカ植民地への課税 → 独立戦争(ht-02)
3. 産業革命
まずここだけ
なぜイギリスで最初か(5 条件):
- 資本:三角貿易・植民地・毛織物業でためた資金
- 労働力:第 2 次囲い込み(農業革命:ノーフォーク農法)で土地を失った農民が都市へ
- 資源:石炭・鉄鉱石が国内に豊富
- 市場:植民地(インド・北米)と国内の中産階級
- 技術・制度:科学の発達、特許制度、政治の安定(名誉革命後の立憲体制)、インドの綿布への需要(輸入代替)
| 分野 | 発明 | 人 |
|---|---|---|
| 紡績・織布(綿工業) | 飛び杼(1733)、ジェニー紡績機(ハーグリーヴズ 1764)、水力紡績機(アークライト)、ミュール紡績機(クロンプトン)、力織機(カートライト 1785) | 綿工業から始まった(マンチェスター) |
| 動力 | 蒸気機関の改良(ワット 1769〜) | 工場を川から解放 |
| 製鉄 | コークス製鉄法(ダービー) | |
| 交通 | 蒸気機関車(スティーヴンソン、1825 ストックトン=ダーリントン、1830 マンチェスター=リヴァプール)、蒸気船(フルトン 1807) | 「交通革命」:時間と距離の短縮 |
社会の変化:
- 工場制機械工業(問屋制家内工業・マニュファクチュアから)→ 産業資本家と労働者の 2 階級 → 資本主義社会
- 都市化(マンチェスター・バーミンガム)、労働問題(長時間・低賃金・女性と児童の労働・スラム・公害)→ ラダイト運動(機械打ちこわし 1810 年代)、工場法(1833)、労働組合、社会主義思想(オーウェン、マルクス『共産党宣言』1848)
- 「世界の工場」イギリス → 自由貿易を主張(アダム=スミス『国富論』1776、穀物法廃止 1846)→ 安い綿布がインドに流れ、インドの手織り綿布業が壊滅(逆転:綿布の輸入国から輸出国へ)
- 産業革命の波及:ベルギー・フランス(1830 年代)→ ドイツ・アメリカ(1850 年代〜)→ ロシア・日本(1880 年代〜)(後発国は国家主導)
- 人口の急増:イギリス 1750 年 約 600 万 → 1850 年 約 1,800 万(食料増産・衛生・医療)
「近代化」の中身:工業化・都市化・交通と通信の高速化(鉄道・電信)・国民国家・議会政治・学校教育・時計で管理される時間(時間規律)・自由貿易とグローバル経済。同時に格差・環境破壊・植民地支配もセット。
4. 年表
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1639 | 日本、ポルトガル船来航禁止(「鎖国」の完成 1641 出島) |
| 1689 | イギリス名誉革命(権利の章典)、清・ロシアがネルチンスク条約 |
| 1733〜 | イギリスで綿工業の技術革新が始まる |
| 1757 | プラッシーの戦い(イギリスがインド支配へ) |
| 1763 | 七年戦争終結(パリ条約)。イギリスが北米・インドで優位 |
| 1769 | ワットの蒸気機関改良 |
| 1774 | 『解体新書』 |
| 1776 | アダム=スミス『国富論』、アメリカ独立宣言 |
| 1792 | ラクスマン、根室来航 |
| 1793 | マカートニー、清へ(乾隆帝が拒否) |
| 1825 | 世界初の営業鉄道(イギリス) |
| 1833 | イギリス工場法(児童労働の制限) |
| 1846 | 穀物法廃止(自由貿易へ) |
5. よくある間違い
- 18 世紀にヨーロッパが世界一豊かだったとする(アジア(清・ムガル)が中心。逆転は産業革命後)
- 「鎖国」で日本が完全に閉じていたとする(四つの口で交易・情報あり)
- 三角貿易でアフリカから「産物」を運んだとする(奴隷。産物はアメリカから)
- 産業革命が製鉄・鉄道から始まったとする(綿工業から)
- 蒸気機関をワットが「発明」したとする(ニューコメンの機関を改良)
- 工場法を「労働者を守る完全な法」とする(児童労働の制限から始まった最初の一歩)
- 産業革命で生活がすぐ豊かになったとする(初期は労働者の生活は悪化。長期で向上)
- インドが綿布を「輸入し続けた」とする(もともと輸出国。イギリス製に押されて逆転)
6. 自己チェック
- 18 世紀の清・ムガル・オスマン・江戸の特徴と、銀の流れを言えるか
- 四つの口(長崎・対馬・薩摩・松前)と相手を言えるか
- 三角貿易の 3 辺と、各地域への影響を言えるか
- 産業革命がイギリスで起きた 5 条件を言えるか
- 紡績機 → 蒸気機関 → 鉄道 の発明と人名を言えるか
- 産業革命の社会問題と対応(ラダイト・工場法・労働組合・社会主義)を言えるか
7. 小テストへ
→ 小テスト(ht-01)
関連する単元
- 前提:h-06 江戸時代前期(中学)、h-12 世界史(中学)
- 次に進む:ht-02 市民革命と国民国家、ht-03 列強の進出とアジア
- ここで使う考え方が出てくる:gt-05 工業(立地の変化)、kk-05 市場経済(資本主義)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』── 「歴史総合」B 近代化と私たち (1) 近代化への問い、(2) 結び付く世界と日本の開国
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/social/ht-01/ / 更新 2026-09-13