高1 / 古文 / jg-08
古文読解の型(主語の判定・省略・敬語からの人物関係・和歌の解釈)
この単元でできるようになること
- 古文で省略されやすい主語を、敬語・接続助詞・心情語・会話の流れから判定できる
- 「て」は主語が続く/「を・に・ば・ど」は主語が変わりやすいという接続助詞の法則を使える
- 会話文の範囲(「〜と」「〜とて」「〜など」)と心内文(「〜と思ふ」)を切り出し、誰の言葉かを決められる
- 指示語・省略された目的語を補い、本文と選択肢を「主語・敬語・助動詞・単語」の 4 点で照合して正誤を決められる
- リード文(前書き)・注・設問文から場面を組み立て、共通テスト古文の解き方の手順を実行できる
入試での位置づけ
古文の失点の大半は「誰が誰に何をしたか」の取り違え。単語・文法を知っていても主語の判定ができないと選択肢が絞れません。この単元は jg-01〜07 の知識を読解の手順に組み立てる仕上げで、共通テストの本文(900〜1,200 字)を15 分で読む型を作ります。
1. 読む前に ── リード文・注・設問を先に見る
まずここだけ
- リード文(前書き):登場人物・人間関係・場面・直前の出来事が書いてある。人物名に印をつけ、身分の上下(帝 > 大臣 > 中将 > 女房)を確認
- 注:人物の呼び名(「宮」= 誰、「殿」= 誰)・地名・官職・和歌の説明。注番号の位置で難所の見当がつく
- 設問:傍線部の場所と問われ方(解釈・主体・心情・和歌・理由)を確認 → 読みながら該当箇所で立ち止まる
- 出典:ジャンル(物語/日記/説話/随筆)で読み方を変える(物語 = 人物関係、日記 = 作者の心情、説話 = 教訓)
2. 主語の判定 ── 5 つの手がかり
まずここだけ
| 手がかり | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ① 敬語 | 尊敬語の動作主は身分の高い人、敬語なしは身分の低い人・作者、最高敬語(せ給ふ・おはします)は天皇・皇族。謙譲語の受け手は高い人 | 「参り給ふ」→ 主語は貴人、相手はさらに上 |
| ② 接続助詞 | 「て・で・つつ」= 主語は変わらない(同じ人の動作が続く)。「を・に・ば・ど・ども・が」= 主語が変わりやすい(別の人の反応) | 「男、文を書きて送るに、女、返事せず」→ 書く・送る = 男、返事せず = 女 |
| ③ 心情語・知覚語 | 「思ふ・うれし・悲し・見る・聞く」は視点人物(多くは主人公・作者) | 「あはれと思ふ」→ 視点人物 |
| ④ 会話文 | 「〜」と言ふ/とて/などの直前が会話の終わり。話し手は会話の中の敬語で決まる(相手に「給ふ」を使えば相手が上) | 「『いかで参らむ』と申せば」→ 申す(謙譲)の主語は下位の人 |
| ⑤ 文脈・常識 | 場面(通い婚なら男が通う、女は家で待つ)、動作の自然さ(「垣間見る」のは男、「几帳の内にゐる」のは女)、指示語(この・かの・さ)が指すもの |
主語の変わり目のサイン:「〜を」「〜に」「〜ば」の直後に敬語の有無が変わるなら別人。同じ敬語のレベルが続くなら同じ人。 省略された主語を補う練習:文ごとに「(誰が)」を鉛筆で書きこむ。
3. 会話文・心内文の切り出し
まずここだけ
- 会話の終わり:「〜」と(言ふ・のたまふ・申す・思ふ)、「〜」とて、「〜」など、「〜」とぞ・となむ。終わりからさかのぼって始まりを探す(「いかに」「いかで」「な〜そ」「〜ばや」「〜かし」「給へ(命令)」など会話らしい語が始まり)
- 会話の始まりのサイン:人物名+「、」、「〜と言ふやう」「〜に言ふ」「〜のたまはく」、呼びかけ(「や」「な」)
- 心内文:「〜と思ふ」「〜と思して」「〜とおぼゆ」の前。地の文と区別して、誰の心の中かを決める
- 会話文の中の敬語は話し手からの敬意:話し手が相手に尊敬語・自分に謙譲語・丁寧語(侍り・候ふ)→ 話し手は目下。逆に敬語を使わず命令形なら目上
- 引用の「と」と格助詞の「と」(〜とともに)を区別
4. 選択肢の切り方 ── 4 点照合
まずここだけ
解釈・内容一致の選択肢は、次の 4 点を本文と照合して1 つでも違えば×:
- 主語(誰が):本文の主語判定と一致するか
- 敬語・人物関係(誰に):「〜申し上げた」の相手が合うか
- 助動詞・助詞:打消(ず)・完了(ぬ)・推量(む・べし)・反実仮想(まし)・可能・受身・使役・願望(ばや・なむ)・仮定と確定(ば)が訳に反映されているか。選択肢の語尾(〜ない/〜てしまった/〜だろう/〜たい)に注目
- 単語:古文単語の意味(うつくし = かわいい、あさまし = 驚きあきれる)が現代語の意味にすり替えられていないか
ひっかけの型:①主語のすり替え ②肯定と否定の入れかえ ③現代語の意味で訳す ④本文にない因果や心情を足す(「〜だから」「〜と後悔して」)⑤程度の誇張(「必ず」「まったく」)⑥時制(〜した/〜しよう)。 心情問題:心情語(うれし・つらし・あはれ・恥づかし)と直前の出来事をセットにする。「なぜ」は直前のば・ければ(〜ので)を探す。
5. 和歌の設問の解き方
ここまでできれば十分
- 誰が誰に詠んだか(贈歌・返歌・独詠)を本文から決める
- 掛詞・縁語・序詞を探す(jg-06)。ひらがなの語に印
- 句切れと助動詞で心情(けり = 詠嘆、らむ = 原因推量、まし = 反実仮想、ばや = 願望)
- 本文の場面と対応する語(歌の「松」が本文の「待つ女」など)を結ぶ
- 返歌は贈歌の語を受けて受け入れ/拒絶/切り返しのどれかを決める
- 選択肢は「掛詞の両方の意味」「詠み手の立場」が反映されているものを選ぶ
6. 共通テスト古文の手順(15 分)
まずここだけ
| 手順 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| ① リード文・注・出典・設問 | 2 分 | 人物と身分に印、場面を把握 |
| ② 本文を主語を補いながら通読 | 5 分 | 「て」は続く、「を・に・ば」で変わる。会話の範囲に括弧。心情語に印 |
| ③ 語句の解釈(設問 1) | 2 分 | 単語+文法(助動詞の訳)で選ぶ。現代語の意味は疑う |
| ④ 内容・心情・理由(設問 2〜3) | 4 分 | 傍線部の前後 2〜3 行を 4 点照合 |
| ⑤ 和歌・全体(設問 4〜5) | 2 分 | 掛詞と詠み手、本文の場面と対応。複数資料(文章+鑑賞文)は資料の主張を先に読む |
時間切れ対策:設問 1(語句)は本文を全部読まなくても解ける → 先に。内容一致は選択肢の主語だけで消せることが多い。
7. 練習 ── 主語判定(自作の短文)
ここまでできれば十分
例文(自作):「中将、姫君の御もとに文を奉り給ひて、返り事を待ち給ふに、姫君、恥づかしがりて書き給はず。乳母、『はや書き給へ』と申せば、いささか書きて奉る。」
- 「奉り給ひて」:謙譲(奉る → 姫君へ)+尊敬(給ふ → 中将へ)→ 主語は中将
- 「て」→ 「待ち給ふ」も中将
- 「に」で主語転換 → 「恥づかしがりて書き給はず」は姫君(尊敬あり)
- 「『はや書き給へ』と申せば」:会話の中の「給へ」は乳母から姫君への尊敬、「申す」は乳母の謙譲 → 話し手は乳母(目下)
- 「ば」で転換 → 「書きて奉る」は姫君(乳母に言われて書き、中将に差し上げる。ここでは姫君に敬語がないのは省略的な表現) → 選択肢「中将が恥ずかしがって返事を書かなかった」は主語のすり替えで×
8. よくある間違い
- 主語が書いていないので前の文の主語のままにする(「を・に・ば」で変わることが多い)
- 「て」の前後で主語を変える(「て」は同じ主語が続く)
- 会話文の敬語を作者からの敬意とする(話し手から)
- 尊敬語がついているのに身分の低い人を主語にする
- 選択肢の現代語訳で助動詞(打消・完了・推量)を見落とす
- 心情の理由を傍線部の後ろに探す(多くは前の「〜ば」「〜ければ」)
- 和歌の掛詞の片方だけで選択肢を選ぶ
- リード文を読まずに本文に入る(人物関係が分からず時間を失う)
- 語句問題を最後に回す(本文全体を読まなくても解ける。先に)
- 「あはれ」「をかし」などプラスの心情語をマイナスに取る(文脈で確認)
9. 自己チェック
- 主語判定の 5 つの手がかりを言えるか
- 「て」は続く/「を・に・ば・ど」は変わる、の法則を例文で使えるか
- 会話文の終わりのサインと、話し手の決め方を言えるか
- 選択肢の 4 点照合とひっかけの型 6 つを言えるか
- 和歌の設問の 6 手順を言えるか
- 共通テスト古文の 15 分の手順を言えるか
10. 小テストへ
→ 小テスト(jg-08)
関連する単元
- 前提:jg-01 単語、jg-02〜04 活用と助動詞、jg-05 敬語、jg-06 和歌と古典常識、jg-07 文学史
- 次に進む:jk-01 漢文の基礎、jn-01 評論の読み方
- ここで使う考え方が出てくる:jn-04 複数資料の読み取り(古文と鑑賞文の組み合わせ)
参考資料
- 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編』── 「古典探究」(古典の読解)
- 大学入試センター「令和 7 年度 大学入学共通テスト 国語 問題」の構成(古文は文章+鑑賞文や複数資料の形式。問題文は転載しない)。例文はすべて自作
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/daigaku/japanese/jg-08/ / 更新 2026-09-13