地方上級 / 地理 / zj-09
産業と地誌(農業・資源・工業・各州の特色)
この単元でできるようになること
- 世界の農業を「自給的・商業的・企業的」の 3 つに分け、代表的な農業形態(地中海式・混合・酪農・企業的穀物・プランテーションなど)を気候と結びつけて説明できる
- 主な農産物・鉱産資源・エネルギー資源について、生産の上位国と偏在の理由(気候・大地形)を説明できる
- 工業の立地(原料指向・市場指向・労働力指向・臨海指向)と、世界の主な工業地域の移り変わりを説明できる
- 各州(アジア・ヨーロッパ・アフリカ・北米・中南米・オセアニア)の自然・産業・民族・地域統合の特色を、比較の形で押さえる
試験での位置づけ
地方上級・国家一般職の地理では、この単元の内容が「農業形態と分布」「資源・エネルギーの統計」「各州の特色(とくに東南アジア・ヨーロッパ・アメリカ・オセアニア)」として 5 択の正誤文で問われます。統計の順位は年によって入れかわるため、試験では長く変わらない特徴(ブラジルのコーヒー・コートジボワールのカカオ・オーストラリアの鉄鉱石など)が使われます。選択肢の細工は「農業形態と地域の入れかえ」「資源と国の入れかえ」「地域統合の名前の入れかえ(ASEAN・USMCA・MERCOSUR)」が中心なので、「地域 ── 気候 ── 農業 ── 資源 ── 工業」の 1 行で州ごとに整理しておくのが近道です。zj-08 の自然地理が前提で、中学の g-04〜g-06・g-08・g-09、高校の gt-04・gt-05 が土台です。
1. 世界の農業 ── 気候と結びつけて
まずここだけ
農業は「誰のために作るか」「どれだけ資本と土地を使うか」で 3 つに分けます。
| 区分 | 農業形態 | 気候・地域 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 自給的 | 焼畑農業 | 熱帯(Af・Aw)のアフリカ・東南アジア・アマゾン | 森を焼いて灰を肥料に。イモ類・雑穀 |
| 自給的 | 遊牧 | 乾燥帯・寒帯 | 羊・ヤギ・ラクダ・トナカイ |
| 自給的 | オアシス農業 | 砂漠 | ナツメヤシ・小麦。カナート(地下水路) |
| 自給的 | アジア式稲作 | モンスーンアジアの沖積平野 | 労働集約的・小規模。土地生産性は高いが労働生産性は低い |
| 自給的 | アジア式畑作 | 華北・デカン高原・パンジャブ | 小麦・雑穀・綿花 |
| 商業的 | 地中海式農業 | Cs | 夏に乾燥に強いオリーブ・ブドウ・柑橘類、冬に小麦。羊・ヤギ |
| 商業的 | 混合農業 | Cfb・Cfa のヨーロッパ・北米コーンベルト | 穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育を組み合わせる。三圃式から発展 |
| 商業的 | 酪農 | 冷涼な Cfb・Df。北海沿岸・五大湖周辺・ニュージーランド | 乳牛。大都市近くは生乳、遠くはバター・チーズ |
| 商業的 | 園芸農業 | 大都市近郊・オランダ | 野菜・花・果物。近郊農業と輸送園芸 |
| 企業的 | 企業的穀物農業 | BS〜Cfa の半乾燥地。北米グレートプレーンズ・カナダ・アルゼンチンのパンパ・ウクライナ・オーストラリア | 大型機械で小麦を大規模栽培。労働生産性が非常に高い |
| 企業的 | 企業的牧畜 | 乾燥した草原。アメリカ西部・アルゼンチン・オーストラリア | 肉牛・羊の大規模放牧。フィードロット |
| 企業的 | プランテーション | 熱帯・亜熱帯の旧植民地 | 単一の商品作物(コーヒー・カカオ・天然ゴム・茶・バナナ・油やし)を輸出向けに大規模栽培 → モノカルチャー経済 |
ここまでできれば十分
主な農産物と生産上位国(2020 年代前半の FAO 統計にもとづく。順位は年により入れかわるので「上位の顔ぶれ」を覚える)
| 農産物 | 上位国 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 米 | 中国・インド・バングラデシュ・インドネシア | モンスーンアジアに集中。輸出はインド・タイ・ベトナム |
| 小麦 | 中国・インド・ロシア・アメリカ | 輸出はロシア・アメリカ・カナダ・フランス・オーストラリア |
| とうもろこし | アメリカ・中国・ブラジル | アメリカのコーンベルト。飼料・バイオ燃料 |
| 大豆 | ブラジル・アメリカ・アルゼンチン | 南北アメリカに集中 |
| コーヒー | ブラジル・ベトナム | テラローシャ。ベトナムはロブスタ種 |
| カカオ | コートジボワール・ガーナ | ギニア湾岸 |
| 茶 | 中国・インド・ケニア | |
| 天然ゴム | タイ・インドネシア | 東南アジア |
| 油やし(パーム油) | インドネシア・マレーシア | |
| 綿花 | 中国・インド・アメリカ | レグール(デカン高原) |
| 羊(頭数) | 中国・インド・オーストラリア | 羊毛の輸出はオーストラリアが上位 |
「日本の食料自給率(カロリーベース)は 40%弱で先進国の中で低い」(農林水産省・2020 年代前半)も選択肢に出ます。
2. 資源・エネルギー
まずここだけ
資源の分布は大地形(zj-08)と対応します。石炭=古期造山帯、石油=新期造山帯の周辺と大陸棚、鉄鉱石=安定陸塊。
| 資源 | 生産上位国(2020 年代前半) | 要点 |
|---|---|---|
| 石炭 | 中国・インド・インドネシア・オーストラリア | 中国が世界の半分程度を生産し、消費も最大 |
| 原油 | アメリカ・サウジアラビア・ロシア | シェールオイルの開発でアメリカが首位に。埋蔵はペルシア湾岸・ベネズエラに偏る |
| 天然ガス | アメリカ・ロシア | LNG の輸出はカタール・オーストラリア・アメリカ |
| 鉄鉱石 | オーストラリア・ブラジル | ピルバラ地区・カラジャス。日本の輸入先もこの 2 国が大半 |
| 銅鉱 | チリ・ペルー・コンゴ民主共和国 | アンデス山脈(新期造山帯) |
| ボーキサイト | ギニア・オーストラリア・中国 | 熱帯・亜熱帯のラトソル地域。アルミニウムの原料。近年はギニアが首位 |
| レアアース | 中国 | 生産・埋蔵とも中国が大きな割合 |
ここまでできれば十分
エネルギー:一次エネルギーの構成は国によって大きく違います。フランスは原子力の割合が高く(発電量の 6〜7 割程度)、ノルウェー・ブラジル・カナダは水力、中国・インドは石炭、中東諸国は石油・天然ガスが中心です。日本は東日本大震災後に原子力の割合が下がり、火力(LNG・石炭)が発電の 7 割前後を占めています(資源エネルギー庁「エネルギー白書」2020 年代前半。最新の値は白書で確認)。
OPEC(石油輸出国機構)は 1960 年に産油国が結成し、1973 年の石油危機で原油価格の決定権をメジャー(国際石油資本)から取り戻しました。再生可能エネルギーでは、風力はデンマーク・ドイツ・中国、太陽光は中国が大きく伸びています。
3. 工業の立地と工業地域
まずここだけ
工業立地論(ウェーバー):工場は輸送費と労働費が最小になる場所に立地します。
| 立地の型 | 理由 | 例 |
|---|---|---|
| 原料指向 | 原料が重く、製品になると軽くなる | セメント(石灰石)・パルプ・製糖 |
| 市場指向 | 製品が重い・かさばる・鮮度が大事 | ビール・清涼飲料・印刷・出版 |
| 労働力指向 | 労働費の割合が高い | 繊維・電子部品の組立 |
| 臨海(交通)指向 | 原料を輸入に頼る | 日本の鉄鋼・石油化学 |
| 集積指向 | 関連工場が集まると有利 | 自動車 |
| 電力指向 | 大量の電力を使う | アルミニウム精錬(水力の豊富な地域) |
ここまでできれば十分
世界の工業地域の移り変わりは「石炭・鉄鉱石の産地 → 臨海部 → 新興地域(知識・ハイテク)」の流れで覚えます。
| 国・地域 | 伝統的な工業地域 | 新しい工業地域 |
|---|---|---|
| イギリス | ミッドランド(バーミンガム)・ランカシャー(マンチェスター・綿工業) | ロンドン周辺 |
| ドイツ | ルール工業地域(石炭+ライン川の水運) | 南部(ミュンヘン・シュトゥットガルト) |
| フランス | ロレーヌ(鉄鉱石) | トゥールーズ(航空機) |
| アメリカ | 五大湖周辺(ピッツバーグ鉄鋼・デトロイト自動車)= 衰退してラストベルトと呼ばれる | サンベルト(北緯 37 度以南)・シリコンヴァレー(サンノゼ周辺・ICT) |
| 中国 | 東北地方(アンシャン鉄鋼) | 沿海部の経済特区(シェンチェンなど、1980 年〜)・「世界の工場」 |
| インド | コルカタ(ジュート)・ムンバイ(綿) | バンガロール(ICT・ソフトウェア) |
| EU | ── | ブルーバナナ(青いバナナ:ロンドン〜北イタリアの経済の中心軸)・第三のイタリア(中小企業の集積) |
アジア NIEs(韓国・台湾・ホンコン・シンガポール)は 1970〜80 年代に輸出指向型工業化で成長し、続いて ASEAN 諸国、中国、インドへと工業化が広がりました(雁行型の発展)。BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)は 2000 年代に注目された新興国の総称です。
4. 各州の特色 ── 比較で押さえる
まずここだけ
| 州 | 自然 | 産業 | 民族・宗教 | 地域統合 |
|---|---|---|---|---|
| 東アジア | モンスーン | 中国:改革・開放(1978〜)・経済特区・一人っ子政策(1979〜2015)・西部大開発 | 漢民族が約 9 割。55 の少数民族 | ── |
| 東南アジア | 熱帯・モンスーン | プランテーション(天然ゴム・油やし)→ 輸出指向型工業化。シンガポールは中継貿易・金融 | 多民族。仏教(タイ・ミャンマー)・イスラーム(インドネシア・マレーシア)・カトリック(フィリピン) | ASEAN(1967 結成。2025 年に東ティモールが加わり 11 か国。最新は外務省資料で確認) |
| 南アジア | モンスーン・デカン高原 | インド:緑の革命・ICT(バンガロール)。人口は中国を抜いて世界最多(2023 年国連推計) | ヒンドゥー教(インド)・イスラーム(パキスタン・バングラデシュ)。カースト | SAARC |
| 西アジア・北アフリカ | 乾燥帯 | 石油(ペルシア湾岸)。オアシス農業 | イスラーム・アラビア語(イラン・トルコ・イスラエルは非アラブ) | OPEC・アラブ連盟 |
| ヨーロッパ | Cfb・Cs・Df | 混合農業・酪農・地中海式。ルール・ブルーバナナ | ゲルマン(北・プロテスタント)・ラテン(南・カトリック)・スラブ(東・正教) | EU(27 か国・ユーロ・シェンゲン協定) |
| サハラ以南アフリカ | 熱帯・サバナ・サヘル | モノカルチャー(カカオ・銅・原油)。砂漠化 | 多部族。直線的な国境(植民地時代の名残) | AU(アフリカ連合・2002) |
| 北アメリカ | 中央平原・ロッキー | 適地適作:春小麦(北)・冬小麦(南)・コーンベルト・綿花地帯(コットンベルト)・酪農(五大湖)・地中海式(カリフォルニア)。アグリビジネス・穀物メジャー | 移民国家。ヒスパニックの増加 | USMCA(NAFTA の後継・2020) |
| 中南米 | アンデス・アマゾン | ブラジル:コーヒー・大豆・鉄鉱石・バイオエタノール。アンデス高地の高山都市(ラパスなど) | ブラジルはポルトガル語、他はスペイン語。カトリック。メスチーソ(白人と先住民の混血) | MERCOSUR(南米南部共同市場) |
| オセアニア | 乾燥(豪の内陸)・Cfb(NZ) | 豪:鉄鉱石(西部ピルバラ)・石炭(東部)・羊(グレートアーテジアン盆地の掘り抜き井戸)・小麦。NZ:酪農・牧羊 | 豪は白豪主義を 1970 年代に廃止 → 多文化主義。先住民アボリジニ・マオリ | APEC(1989・日本も参加) |
ここまでできれば十分
アメリカの適地適作は地図で問われます。北から春小麦地帯(ノースダコタなど)→ コーンベルト(アイオワ・イリノイ)→ 冬小麦地帯(カンザス)→ コットンベルト(南部)、西部のグレートプレーンズは企業的牧畜・センターピボットによる灌漑、カリフォルニアは地中海式農業(果樹・野菜)、五大湖周辺は酪農です。
ヨーロッパの地域統合:ECSC(1952)→ EEC(1958)→ EC(1967)→ EU(1993)。通貨統合(ユーロ)とシェンゲン協定(域内の国境検査の廃止)が柱ですが、ユーロを導入していない加盟国(スウェーデン・ポーランドなど)、シェンゲン非加盟の加盟国(アイルランド)もあり、「全加盟国がユーロを使う」は誤りです。イギリスは 2020 年に離脱しました。
オーストラリア:人口は南東部の沿岸(シドニー・メルボルン)に集中。首都はキャンベラ。1970 年代に白豪主義をやめてアジアからの移民を受け入れ、貿易相手も中国・日本などアジアが中心になりました。鉄鉱石は北西部のピルバラ地区、石炭は東部のグレートディヴァイディング山脈沿い(古期造山帯)です。
もう一歩(発展)
人口:世界人口は約 80 億人(2022 年に到達・国連)。人口ピラミッドは「富士山型(多産多死・発展途上国)→ 釣鐘型(少産少死・先進国)→ つぼ型(少子高齢化)」と移り変わります(人口転換)。都市問題:発展途上国では首位都市(プライメートシティ)への一極集中とスラム、先進国ではインナーシティ問題・スプロール現象・ドーナツ化。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 地中海式農業は夏に小麦、冬にオリーブ | 夏の乾燥に強いオリーブ・ブドウ・柑橘類、冬の雨で小麦 |
| 混合農業は家畜だけを飼う | 穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育の組み合わせ |
| アジア式稲作は労働生産性が高い | 土地生産性は高いが労働生産性は低い(小規模・労働集約) |
| コーヒーの最大生産国はコロンビア | ブラジル(2 位はベトナム)。カカオはコートジボワール |
| 鉄鉱石の最大産出国は中国 | オーストラリア(次いでブラジル)。中国は石炭・レアアース |
| セメント工業は市場指向 | 原料指向(石灰石の産地)。市場指向はビール・清涼飲料 |
| ラストベルトはアメリカ南部の新興工業地域 | 衰退した五大湖周辺の旧工業地域。新興地域はサンベルト |
| EU の全加盟国がユーロを使う | 非導入国がある。シェンゲン協定にも非加盟国がある |
| ブラジルの公用語はスペイン語 | ポルトガル語。中南米の他の多くの国はスペイン語 |
| オーストラリアの鉄鉱石は東部、石炭は西部 | 鉄鉱石は北西部(ピルバラ)、石炭は東部 |
6. 覚え方の型
- 農業形態は「気候区 → 農業形態 → 代表地域 → 作物」の順に、zj-08 の気候区分に貼りつけて覚える
- 統計は1 位の国と「なぜそこか」だけ確実に(ブラジル=コーヒー・大豆、コートジボワール=カカオ、アメリカ=とうもろこし・原油、オーストラリア=鉄鉱石、チリ=銅、中国=石炭・レアアース・米・小麦)。順位の入れかわりは気にしない
- 工業は「原料が重いか、製品が重いか、労働費が高いか」で立地の型を判定する
- 州ごとに「自然 ── 産業 ── 民族・宗教 ── 地域統合」の 1 行を作り、隣の州と比べる
7. 小テストへ
→ 小テスト(zj-09)
関連する単元
- 前提:zj-08 自然地理(地形・気候・土壌と植生)、g-04〜g-06 各州(中学地理)、gt-04 世界の農業、gt-05 資源・エネルギーと工業(地理総合)
- 同じ考え方を使う:g-08 日本の人口・資源・エネルギー、g-09 日本の産業、gt-06 人口・都市・村落、gt-07 生活文化・宗教・言語と国家、zk-01 以降の社会科学(国際経済・地域統合)
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(人文科学)
- 各都道府県・政令指定都市の職員採用試験受験案内(教養試験の出題分野)
- 高等学校「地理総合」「地理探究」教科書(文部科学省検定済)の該当章
- FAO(国連食糧農業機関)FAOSTAT ── 農産物の生産統計
- 資源エネルギー庁『エネルギー白書』── 一次エネルギー・電源構成
- 外務省ウェブサイト 各国・地域情勢、国際機関(EU・ASEAN)基礎データ ── 加盟国数の確認
- 『データブック オブ・ザ・ワールド』(二宮書店)── 各種統計の確認
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/jinbun/zj-09/ / 更新 2026-09-14