地方上級 / 地理 / zj-09

更新 2026-09-14

産業と地誌(農業・資源・工業・各州の特色)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

地方上級・国家一般職の地理では、この単元の内容が「農業形態と分布」「資源・エネルギーの統計」「各州の特色(とくに東南アジア・ヨーロッパ・アメリカ・オセアニア)」として 5 択の正誤文で問われます。統計の順位は年によって入れかわるため、試験では長く変わらない特徴(ブラジルのコーヒー・コートジボワールのカカオ・オーストラリアの鉄鉱石など)が使われます。選択肢の細工は「農業形態と地域の入れかえ」「資源と国の入れかえ」「地域統合の名前の入れかえ(ASEAN・USMCA・MERCOSUR)」が中心なので、「地域 ── 気候 ── 農業 ── 資源 ── 工業」の 1 行で州ごとに整理しておくのが近道です。zj-08 の自然地理が前提で、中学の g-04g-06g-08g-09、高校の gt-04gt-05 が土台です。


1. 世界の農業 ── 気候と結びつけて

まずここだけ

農業は「誰のために作るか」「どれだけ資本と土地を使うか」で 3 つに分けます。

区分農業形態気候・地域特徴
自給的焼畑農業熱帯(Af・Aw)のアフリカ・東南アジア・アマゾン森を焼いて灰を肥料に。イモ類・雑穀
自給的遊牧乾燥帯・寒帯羊・ヤギ・ラクダ・トナカイ
自給的オアシス農業砂漠ナツメヤシ・小麦。カナート(地下水路)
自給的アジア式稲作モンスーンアジアの沖積平野労働集約的・小規模。土地生産性は高いが労働生産性は低い
自給的アジア式畑作華北・デカン高原・パンジャブ小麦・雑穀・綿花
商業的地中海式農業Cs夏に乾燥に強いオリーブ・ブドウ・柑橘類、冬に小麦。羊・ヤギ
商業的混合農業Cfb・Cfa のヨーロッパ・北米コーンベルト穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育を組み合わせる。三圃式から発展
商業的酪農冷涼な Cfb・Df。北海沿岸・五大湖周辺・ニュージーランド乳牛。大都市近くは生乳、遠くはバター・チーズ
商業的園芸農業大都市近郊・オランダ野菜・花・果物。近郊農業と輸送園芸
企業的企業的穀物農業BS〜Cfa の半乾燥地。北米グレートプレーンズ・カナダ・アルゼンチンのパンパ・ウクライナ・オーストラリア大型機械で小麦を大規模栽培。労働生産性が非常に高い
企業的企業的牧畜乾燥した草原。アメリカ西部・アルゼンチン・オーストラリア肉牛・羊の大規模放牧。フィードロット
企業的プランテーション熱帯・亜熱帯の旧植民地単一の商品作物(コーヒー・カカオ・天然ゴム・茶・バナナ・油やし)を輸出向けに大規模栽培 → モノカルチャー経済

ここまでできれば十分

主な農産物と生産上位国(2020 年代前半の FAO 統計にもとづく。順位は年により入れかわるので「上位の顔ぶれ」を覚える)

農産物上位国覚え方
中国・インド・バングラデシュ・インドネシアモンスーンアジアに集中。輸出はインド・タイ・ベトナム
小麦中国・インド・ロシア・アメリカ輸出はロシア・アメリカ・カナダ・フランス・オーストラリア
とうもろこしアメリカ・中国・ブラジルアメリカのコーンベルト。飼料・バイオ燃料
大豆ブラジル・アメリカ・アルゼンチン南北アメリカに集中
コーヒーブラジル・ベトナムテラローシャ。ベトナムはロブスタ種
カカオコートジボワール・ガーナギニア湾岸
中国・インド・ケニア
天然ゴムタイ・インドネシア東南アジア
油やし(パーム油)インドネシア・マレーシア
綿花中国・インド・アメリカレグール(デカン高原)
羊(頭数)中国・インド・オーストラリア羊毛の輸出はオーストラリアが上位

「日本の食料自給率(カロリーベース)は 40%弱で先進国の中で低い」(農林水産省・2020 年代前半)も選択肢に出ます。


2. 資源・エネルギー

まずここだけ

資源の分布は大地形(zj-08)と対応します。石炭=古期造山帯、石油=新期造山帯の周辺と大陸棚、鉄鉱石=安定陸塊

資源生産上位国(2020 年代前半)要点
石炭中国・インド・インドネシア・オーストラリア中国が世界の半分程度を生産し、消費も最大
原油アメリカ・サウジアラビア・ロシアシェールオイルの開発でアメリカが首位に。埋蔵はペルシア湾岸・ベネズエラに偏る
天然ガスアメリカ・ロシアLNG の輸出はカタール・オーストラリア・アメリカ
鉄鉱石オーストラリア・ブラジルピルバラ地区・カラジャス。日本の輸入先もこの 2 国が大半
銅鉱チリ・ペルー・コンゴ民主共和国アンデス山脈(新期造山帯)
ボーキサイトギニア・オーストラリア・中国熱帯・亜熱帯のラトソル地域。アルミニウムの原料。近年はギニアが首位
レアアース中国生産・埋蔵とも中国が大きな割合

ここまでできれば十分

エネルギー:一次エネルギーの構成は国によって大きく違います。フランスは原子力の割合が高く(発電量の 6〜7 割程度)、ノルウェー・ブラジル・カナダは水力、中国・インドは石炭、中東諸国は石油・天然ガスが中心です。日本は東日本大震災後に原子力の割合が下がり、火力(LNG・石炭)が発電の 7 割前後を占めています(資源エネルギー庁「エネルギー白書」2020 年代前半。最新の値は白書で確認)。

OPEC(石油輸出国機構)は 1960 年に産油国が結成し、1973 年の石油危機で原油価格の決定権をメジャー(国際石油資本)から取り戻しました。再生可能エネルギーでは、風力はデンマーク・ドイツ・中国、太陽光は中国が大きく伸びています。


3. 工業の立地と工業地域

まずここだけ

工業立地論(ウェーバー):工場は輸送費と労働費が最小になる場所に立地します。

立地の型理由
原料指向原料が重く、製品になると軽くなるセメント(石灰石)・パルプ・製糖
市場指向製品が重い・かさばる・鮮度が大事ビール・清涼飲料・印刷・出版
労働力指向労働費の割合が高い繊維・電子部品の組立
臨海(交通)指向原料を輸入に頼る日本の鉄鋼・石油化学
集積指向関連工場が集まると有利自動車
電力指向大量の電力を使うアルミニウム精錬(水力の豊富な地域)

ここまでできれば十分

世界の工業地域の移り変わりは「石炭・鉄鉱石の産地 → 臨海部 → 新興地域(知識・ハイテク)」の流れで覚えます。

国・地域伝統的な工業地域新しい工業地域
イギリスミッドランド(バーミンガム)・ランカシャー(マンチェスター・綿工業)ロンドン周辺
ドイツルール工業地域(石炭+ライン川の水運)南部(ミュンヘン・シュトゥットガルト)
フランスロレーヌ(鉄鉱石)トゥールーズ(航空機)
アメリカ五大湖周辺(ピッツバーグ鉄鋼・デトロイト自動車)= 衰退してラストベルトと呼ばれるサンベルト(北緯 37 度以南)・シリコンヴァレー(サンノゼ周辺・ICT)
中国東北地方(アンシャン鉄鋼)沿海部の経済特区(シェンチェンなど、1980 年〜)・「世界の工場」
インドコルカタ(ジュート)・ムンバイ(綿)バンガロール(ICT・ソフトウェア)
EU──ブルーバナナ(青いバナナ:ロンドン〜北イタリアの経済の中心軸)・第三のイタリア(中小企業の集積)

アジア NIEs(韓国・台湾・ホンコン・シンガポール)は 1970〜80 年代に輸出指向型工業化で成長し、続いて ASEAN 諸国、中国、インドへと工業化が広がりました(雁行型の発展)。BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)は 2000 年代に注目された新興国の総称です。


4. 各州の特色 ── 比較で押さえる

まずここだけ

自然産業民族・宗教地域統合
東アジアモンスーン中国:改革・開放(1978〜)・経済特区・一人っ子政策(1979〜2015)・西部大開発漢民族が約 9 割。55 の少数民族──
東南アジア熱帯・モンスーンプランテーション(天然ゴム・油やし)→ 輸出指向型工業化。シンガポールは中継貿易・金融多民族。仏教(タイ・ミャンマー)・イスラーム(インドネシア・マレーシア)・カトリック(フィリピン)ASEAN(1967 結成。2025 年に東ティモールが加わり 11 か国。最新は外務省資料で確認)
南アジアモンスーン・デカン高原インド:緑の革命・ICT(バンガロール)。人口は中国を抜いて世界最多(2023 年国連推計)ヒンドゥー教(インド)・イスラーム(パキスタン・バングラデシュ)。カーストSAARC
西アジア・北アフリカ乾燥帯石油(ペルシア湾岸)。オアシス農業イスラーム・アラビア語(イラン・トルコ・イスラエルは非アラブ)OPEC・アラブ連盟
ヨーロッパCfb・Cs・Df混合農業・酪農・地中海式。ルール・ブルーバナナゲルマン(北・プロテスタント)・ラテン(南・カトリック)・スラブ(東・正教)EU(27 か国・ユーロ・シェンゲン協定)
サハラ以南アフリカ熱帯・サバナ・サヘルモノカルチャー(カカオ・銅・原油)。砂漠化多部族。直線的な国境(植民地時代の名残)AU(アフリカ連合・2002)
北アメリカ中央平原・ロッキー適地適作:春小麦(北)・冬小麦(南)・コーンベルト・綿花地帯(コットンベルト)・酪農(五大湖)・地中海式(カリフォルニア)。アグリビジネス・穀物メジャー移民国家。ヒスパニックの増加USMCA(NAFTA の後継・2020)
中南米アンデス・アマゾンブラジル:コーヒー・大豆・鉄鉱石・バイオエタノール。アンデス高地の高山都市(ラパスなど)ブラジルはポルトガル語、他はスペイン語。カトリック。メスチーソ(白人と先住民の混血)MERCOSUR(南米南部共同市場)
オセアニア乾燥(豪の内陸)・Cfb(NZ)豪:鉄鉱石(西部ピルバラ)・石炭(東部)・羊(グレートアーテジアン盆地の掘り抜き井戸)・小麦。NZ:酪農・牧羊豪は白豪主義を 1970 年代に廃止 → 多文化主義。先住民アボリジニ・マオリAPEC(1989・日本も参加)

ここまでできれば十分

アメリカの適地適作は地図で問われます。北から春小麦地帯(ノースダコタなど)→ コーンベルト(アイオワ・イリノイ)→ 冬小麦地帯(カンザス)→ コットンベルト(南部)、西部のグレートプレーンズは企業的牧畜・センターピボットによる灌漑、カリフォルニアは地中海式農業(果樹・野菜)、五大湖周辺は酪農です。

ヨーロッパの地域統合:ECSC(1952)→ EEC(1958)→ EC(1967)→ EU(1993)。通貨統合(ユーロ)とシェンゲン協定(域内の国境検査の廃止)が柱ですが、ユーロを導入していない加盟国(スウェーデン・ポーランドなど)、シェンゲン非加盟の加盟国(アイルランド)もあり、「全加盟国がユーロを使う」は誤りです。イギリスは 2020 年に離脱しました。

オーストラリア:人口は南東部の沿岸(シドニー・メルボルン)に集中。首都はキャンベラ。1970 年代に白豪主義をやめてアジアからの移民を受け入れ、貿易相手も中国・日本などアジアが中心になりました。鉄鉱石は北西部のピルバラ地区、石炭は東部のグレートディヴァイディング山脈沿い(古期造山帯)です。

もう一歩(発展)

人口:世界人口は約 80 億人(2022 年に到達・国連)。人口ピラミッドは「富士山型(多産多死・発展途上国)→ 釣鐘型(少産少死・先進国)→ つぼ型(少子高齢化)」と移り変わります(人口転換)。都市問題:発展途上国では首位都市(プライメートシティ)への一極集中とスラム、先進国ではインナーシティ問題・スプロール現象・ドーナツ化。


5. よくある間違い

間違い正しくは
地中海式農業は夏に小麦、冬にオリーブ夏の乾燥に強いオリーブ・ブドウ・柑橘類、冬の雨で小麦
混合農業は家畜だけを飼う穀物・飼料作物の栽培と家畜の飼育の組み合わせ
アジア式稲作は労働生産性が高い土地生産性は高いが労働生産性は低い(小規模・労働集約)
コーヒーの最大生産国はコロンビアブラジル(2 位はベトナム)。カカオはコートジボワール
鉄鉱石の最大産出国は中国オーストラリア(次いでブラジル)。中国は石炭・レアアース
セメント工業は市場指向原料指向(石灰石の産地)。市場指向はビール・清涼飲料
ラストベルトはアメリカ南部の新興工業地域衰退した五大湖周辺の旧工業地域。新興地域はサンベルト
EU の全加盟国がユーロを使う非導入国がある。シェンゲン協定にも非加盟国がある
ブラジルの公用語はスペイン語ポルトガル語。中南米の他の多くの国はスペイン語
オーストラリアの鉄鉱石は東部、石炭は西部鉄鉱石は北西部(ピルバラ)、石炭は東部

6. 覚え方の型

  1. 農業形態は「気候区 → 農業形態 → 代表地域 → 作物」の順に、zj-08 の気候区分に貼りつけて覚える
  2. 統計は1 位の国と「なぜそこか」だけ確実に(ブラジル=コーヒー・大豆、コートジボワール=カカオ、アメリカ=とうもろこし・原油、オーストラリア=鉄鉱石、チリ=銅、中国=石炭・レアアース・米・小麦)。順位の入れかわりは気にしない
  3. 工業は「原料が重いか、製品が重いか、労働費が高いか」で立地の型を判定する
  4. 州ごとに「自然 ── 産業 ── 民族・宗教 ── 地域統合」の 1 行を作り、隣の州と比べる

7. 小テストへ

→ 小テスト(zj-09

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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