地方上級 / 地理 / zj-08
自然地理(地形・気候・土壌と植生)
この単元でできるようになること
- 大地形を「プレートの境界の種類 → 新期造山帯・古期造山帯・安定陸塊」の順に説明し、代表的な山脈・資源と結びつけられる
- 小地形(扇状地・三角州・自然堤防・リアス海岸・フィヨルド・カルスト・氷河地形など)を、できた原因と土地利用で区別できる
- ケッペンの気候区分を「気温の条件 → 降水の条件」の 2 段階で判定し、雨温図から気候区を読み取れる
- 土壌と植生を「気候帯に対応する成帯土壌」と「岩石に対応する間帯土壌」に分けて、代表例と農業の関係を説明できる
試験での位置づけ
地方上級・国家一般職の地理では、自然地理は「地形の成因と例」「ケッペンの気候区分と雨温図」「土壌・植生と農業」が 5 択の正誤文でよく問われます。選択肢の細工は「成因の入れかえ(リアス海岸を氷河地形にする)」「気候区の条件の入れかえ(Cs の夏と冬の降水を逆にする)」「土壌と分布地域の入れかえ(チェルノーゼムを熱帯にする)」が中心なので、用語 1 つにつき「成因・分布・利用」の 3 点をセットで覚えるのが近道です。中学の g-02・g-07、高校の gt-02・gt-03 が土台で、zj-09 の産業と地誌へつながります。
1. 大地形 ── プレートと造山帯
まずここだけ
地球の表面は十数枚のプレートに分かれて動いており、その境界で地震・火山・山脈ができます(プレートテクトニクス)。
| 境界の種類 | 動き | できるもの | 例 |
|---|---|---|---|
| 狭まる境界(沈み込み) | 海洋プレートが大陸プレートの下に沈む | 海溝・弧状列島・火山 | 日本列島・アンデス山脈 |
| 狭まる境界(衝突) | 大陸プレートどうしがぶつかる | 大山脈(火山は少ない) | ヒマラヤ山脈 |
| 広がる境界 | プレートが離れる | 海嶺・地溝帯 | 大西洋中央海嶺・アイスランド・アフリカ大地溝帯 |
| ずれる境界 | 横にすれちがう | 横ずれ断層 | サンアンドレアス断層 |
大地形は、造山運動を受けた時代で 3 つに分けます。
| 区分 | 時代 | 特徴 | 例 | 資源 |
|---|---|---|---|---|
| 新期造山帯 | 中生代末〜新生代 | 高く険しい。地震・火山が多い | 環太平洋造山帯(日本・アンデス・ロッキー)、アルプス=ヒマラヤ造山帯 | 石油・銅・銀 |
| 古期造山帯 | 古生代 | 侵食されてなだらか | アパラチア・ウラル・スカンディナヴィア・グレートディヴァイディング | 石炭 |
| 安定陸塊 | 先カンブリア時代 | 長く侵食された平原・高原。楯状地と卓状地 | カナダ楯状地・バルト楯状地・ブラジル高原・デカン高原 | 鉄鉱石 |
ここまでできれば十分
「ウラル山脈は新期造山帯」「アパラチアで石油」のような入れかえが典型的な誤答です。古期造山帯=石炭(古生代の森林が起源)、安定陸塊=鉄鉱石(先カンブリア時代の縞状鉄鉱層)、新期造山帯=石油・銅という対応は資源の分布(zj-09)でも使います。楯状地は先カンブリア時代の岩石が露出した地域、卓状地はその上に古生代以降の地層がほぼ水平に積もった地域です。
2. 小地形 ── 成因と土地利用
まずここだけ
河川がつくる地形は上流から下流へ順に覚えます。
| 地形 | 場所 | 成因 | 土地利用 |
|---|---|---|---|
| V 字谷 | 山地 | 下方への侵食(下刻) | ── |
| 扇状地 | 谷の出口 | 流れが弱まり砂礫が堆積 | 扇央は水が地下にしみこみ水無川・果樹園、扇端は湧水で集落・水田 |
| 氾濫原 | 中〜下流 | 洪水時に土砂が堆積 | 自然堤防(微高地・砂)に集落・畑、後背湿地(低地・粘土)に水田 |
| 三角州 | 河口 | 細かい土砂が堆積 | 低湿で水害を受けやすい。水田・都市 |
海岸の地形は「沈水(海面上昇・土地の沈降)か離水(海面低下・土地の隆起)か」で分けます。
| 地形 | 沈水/離水 | 成因 | 例 |
|---|---|---|---|
| リアス海岸 | 沈水 | 山地の谷に海水が入る。のこぎり状 | 三陸海岸・志摩半島・スペイン北西岸 |
| フィヨルド | 沈水 | 氷河が削った U 字谷に海水が入る。奥行きが深い | ノルウェー・チリ南部・ニュージーランド南島 |
| エスチュアリー(三角江) | 沈水 | 河口がラッパ状に開く | テムズ川・ラプラタ川・エルベ川 |
| 海岸段丘 | 離水 | 海食台が隆起して階段状に | 室戸岬 |
| 砂嘴・砂州・陸繋島 | ── | 沿岸流が砂を運んで堆積 | 天橋立(砂州)・函館(陸繋島=トンボロ) |
ここまでできれば十分
氷河地形:U 字谷・カール(圏谷)・モレーン(堆石)・フィヨルド。「リアス海岸は氷河がつくった」は誤りで、リアス海岸は河川がつくった V 字谷が沈水したものです。
カルスト地形:石灰岩が雨水(二酸化炭素を含む)に溶けてできる。ドリーネ(すり鉢状のくぼ地)→ ウバーレ(ドリーネがつながったもの)→ ポリエ(溶食盆地)、地下には鍾乳洞。山口県の秋吉台、スロベニアのカルスト地方。
乾燥地形:ワジ(ふだんは水のない川)、メサ・ビュート(テーブル状・塔状の残丘)、外来河川(湿潤地域に源をもち砂漠を流れる。ナイル川・ティグリス川)。
火山地形:カルデラ(火口部が陥没してできた大きなくぼ地。阿蘇)、成層火山(富士山)、楯状火山(ハワイのマウナロア)。
3. 気候 ── ケッペンの区分の判定手順
まずここだけ
ケッペンの気候区分は植生に対応するように気温と降水量で区分したものです。判定は 2 段階で行います。
第 1 段階:気温で大区分
| 記号 | 条件 | 名称 |
|---|---|---|
| A | 最寒月の平均気温が 18℃以上 | 熱帯 |
| C | 最寒月が −3℃以上 18℃未満 | 温帯 |
| D | 最寒月が −3℃未満、最暖月が 10℃以上 | 冷帯(亜寒帯) |
| E | 最暖月が 10℃未満 | 寒帯(ET ツンドラ:最暖月 0℃以上/EF 氷雪:0℃未満) |
| B | 降水量が蒸発量より少ない(樹木が育たない) | 乾燥帯(BW 砂漠/BS ステップ) |
B は気温より先に判定します(乾燥限界の式で決まる)。
第 2 段階:降水の季節配分で小区分
| 記号 | 意味 | 気候区の例 |
|---|---|---|
| f | 年中湿潤 | Af 熱帯雨林・Cfa 温暖湿潤・Cfb 西岸海洋性・Df 冷帯湿潤 |
| w | 冬に乾燥 | Aw サバナ・Cw 温暖冬季少雨・Dw 冷帯冬季少雨 |
| s | 夏に乾燥 | Cs 地中海性 |
| m | 弱い乾季(熱帯モンスーン) | Am |
C の 3 番目の記号:a は最暖月 22℃以上(Cfa 東京・上海・ニューヨーク)、b は 22℃未満で月平均 10℃以上の月が 4 か月以上(Cfb ロンドン・パリ)。
ここまでできれば十分
代表都市で覚えます。
| 気候区 | 都市 | 特徴 |
|---|---|---|
| Af | シンガポール・マナオス | 年中高温多雨。スコール |
| Aw | バンコク・ダーウィン | 雨季と乾季。サバナ(疎林と草原) |
| BW | カイロ・リヤド | 年降水量がごく少ない |
| BS | テヘラン・ニアメ | 短い草原(ステップ)。チェルノーゼムなど肥沃な土壌の地域も |
| Cs | ローマ・サンフランシスコ・ケープタウン・パース | 夏乾燥・冬湿潤。大陸西岸の緯度 30〜45 度 |
| Cw | ホンコン・クンミン | 夏に多雨・冬に乾燥。モンスーンの影響 |
| Cfa | 東京・上海・ブエノスアイレス | 夏高温多湿。大陸東岸 |
| Cfb | ロンドン・パリ・ウェリントン | 偏西風と暖流で冬温和・夏冷涼。年較差が小さい |
| Df | モスクワ・シカゴ・札幌 | 冬は厳寒。タイガ |
| Dw | イルクーツク・ハルビン | 冬に極端に乾燥・寒冷。北半球の大陸東部(ユーラシア東部)にのみ分布 |
| ET | バロー(ウトキアグヴィク) | 短い夏にコケ類・地衣類 |
大気大循環:赤道低圧帯(上昇気流・多雨)→ 亜熱帯高圧帯(下降気流・乾燥=砂漠の帯)→ 偏西風 → 亜寒帯低圧帯 → 極高圧帯。Cs は夏に亜熱帯高圧帯に覆われ、冬に偏西風帯に入って雨が降る、と理解すると「夏乾燥」を忘れません。
海流:暖流は沿岸を温め湿らせ(北大西洋海流 → 西岸海洋性気候)、寒流は沿岸を冷やし乾燥させます(ペルー海流 → アタカマ砂漠、ベンゲラ海流 → ナミブ砂漠のような海岸砂漠)。
もう一歩(発展)
局地風:フェーン(山を越えて吹き下りる高温乾燥の風)、ボラ(アドリア海の寒冷な下降風)、ミストラル(ローヌ川谷の寒風)、シロッコ(サハラからの熱風)。エルニーニョ現象は太平洋赤道域東部の海面水温が平年より高くなる現象で、世界各地に異常気象をもたらし、日本では冷夏・暖冬の傾向とされます(逆がラニーニャ)。
4. 土壌と植生
まずここだけ
土壌は気候帯に対応してできる成帯土壌と、もとの岩石や地形に対応してできる間帯土壌に分けます。
| 成帯土壌 | 気候 | 色・性質 | 農業 |
|---|---|---|---|
| ラトソル | 熱帯(Af・Aw) | 赤色。鉄・アルミが残る。やせている | 焼畑・プランテーション |
| 砂漠土 | BW | 塩分が集まる | オアシス農業 |
| チェルノーゼム(黒土) | BS(ウクライナ〜西シベリア) | 黒色。腐植に富み非常に肥沃 | 小麦(世界の穀倉) |
| プレーリー土 | BS〜Cfa(北米) | 黒〜暗褐色。肥沃 | とうもろこし・小麦 |
| 褐色森林土 | 温帯(Cfa・Cfb) | 褐色。落葉広葉樹林の下 | 混合農業 |
| ポドゾル | 冷帯(Df・Dw) | 灰白色。酸性でやせている | 林業(タイガ) |
| ツンドラ土 | ET | 永久凍土の上。湿地 | トナカイ遊牧 |
| 間帯土壌 | 母岩 | 分布 | 農業 |
|---|---|---|---|
| テラロッサ | 石灰岩 | 地中海沿岸 | オリーブ・ブドウ |
| テラローシャ | 玄武岩 | ブラジル高原 | コーヒー |
| レグール | 玄武岩 | デカン高原 | 綿花 |
| レス(黄土) | 風で運ばれた細かい土 | 中国の黄土高原・ヨーロッパ中部 | 小麦 |
ここまでできれば十分
植生は気候帯に対応します。
| 気候 | 植生 | 呼び名 |
|---|---|---|
| Af | 常緑広葉樹の密林 | セルバ(アマゾン)・ジャングル(東南アジア) |
| Aw | 疎林と長草の草原 | サバナ。リャノ(オリノコ)・カンポ(ブラジル高原) |
| BS | 短草草原 | ステップ。プレーリー(北米)・パンパ(アルゼンチン)は温帯草原 |
| Cs | 硬葉樹(オリーブ・コルクがし・月桂樹) | 夏の乾燥に耐える厚い葉 |
| Cfa | 照葉樹(シイ・カシ・クス) | 葉に光沢 |
| Cfb | 落葉広葉樹(ブナ・ナラ) | 冬に落葉 |
| Df・Dw | 針葉樹林 | タイガ |
| ET | コケ類・地衣類 | ツンドラ |
「地中海性気候の植生は照葉樹」「温暖湿潤気候は硬葉樹」は入れかえの典型です。硬葉樹=Cs、照葉樹=Cfa、落葉広葉樹=Cfb・Dfの南部と覚えます。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 古期造山帯は石油、新期造山帯は石炭 | 古期造山帯=石炭、新期造山帯=石油・銅、安定陸塊=鉄鉱石 |
| リアス海岸は氷河が削った谷 | 河川の V 字谷が沈水。氷河の U 字谷が沈水したのはフィヨルド |
| 扇状地の扇央に集落、扇端に果樹園 | 扇央は水無川で果樹園、扇端は湧水で集落・水田 |
| 自然堤防に水田、後背湿地に集落 | 自然堤防(微高地)に集落・畑、後背湿地に水田 |
| 地中海性気候は夏に雨が多い | 夏乾燥・冬湿潤(Cs の s は夏乾燥) |
| 西岸海洋性気候は年較差が大きい | 偏西風と暖流で年較差が小さい。年較差が大きいのは大陸東岸・内陸 |
| チェルノーゼムは熱帯の土 | ステップ気候(ウクライナ〜西シベリア)の黒土。熱帯はラトソル |
| ポドゾルは肥沃 | 冷帯の灰白色の酸性土でやせている。タイガの下 |
| テラローシャは綿花、レグールはコーヒー | テラローシャ(ブラジル)=コーヒー、レグール(デカン)=綿花 |
6. 覚え方の型
- 地形の用語は「成因(何が作った)── 例(どこ)── 利用(何に使う)」の 3 点で 1 行にする
- 気候区分は「B か → 最寒月の気温で A・C・D・E → 降水の季節で f・w・s」の順に判定する。雨温図は最寒月と最暖月の気温を先に読む
- Cs は「夏に亜熱帯高圧帯、冬に偏西風」と成因ごと覚える。Cfb は「偏西風+暖流=年較差小」
- 土壌は「成帯(気候)と間帯(岩石)」に分け、間帯土壌は「テラロッサ=石灰岩・地中海」「テラローシャ=玄武岩・コーヒー」「レグール=玄武岩・綿花」の 3 つを確実に
7. 小テストへ
→ 小テスト(zj-08)
関連する単元
- 前提:g-02 世界の地形と気候帯、g-07 日本の地形・気候・自然災害(中学地理)、gt-02 地形、gt-03 気候(地理総合)
- 次に進む:zj-09 産業と地誌(農業・資源・工業・各州の特色)
- 同じ考え方を使う:zn-09 地球の構造・地震・火山・岩石、zn-10 気象と天文(自然科学)、gt-09 自然災害と防災
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(人文科学)
- 各都道府県・政令指定都市の職員採用試験受験案内(教養試験の出題分野)
- 高等学校「地理総合」「地理探究」教科書(文部科学省検定済)の該当章
- 気象庁ウェブサイト「エルニーニョ/ラニーニャ現象とは」── 用語の定義の確認
- 『新詳高等地図』(帝国書院)── 地名・分布の確認
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/jinbun/zj-08/ / 更新 2026-09-14