地方上級 / 経営学 / zo-02

更新 2026-09-19

組織とモチベーション・リーダーシップ(マズロー・ハーズバーグ・マグレガー・コンティンジェンシー理論)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

モチベーション理論とリーダーシップ論は、経営学の中で学説史(zo-01)と並んでよく問われる分野です。人名が多いので、出題は「人名 → 理論の中身」「理論の中身 → 人名」の 5 択が中心で、誤答は別の理論のキーワードを当てる(例:ハーズバーグの衛生要因をマズローの安全欲求として書く)、結論を逆にする(例:衛生要因を満たすと満足が生まれる)、組み合わせを 1 つずらす(例:SL 理論の 4 つの型の順番)の 3 通りです。組織構造は「事業部制の長所・短所」「マトリックス組織の特徴」を問う肢が定番です。行政学の zq-02(行政組織と官僚制)と一部重なり、社会学の zy-03(社会集団・家族・組織)ともつながります。


1. モチベーションの内容理論 ── 何が人を動かすか

まずここだけ

マズロー欲求段階説(欲求 5 段階説)が土台です。人間の欲求は次の 5 段階をなし、低次の欲求が満たされると、次の高次の欲求が行動を動機づけると考えました。

段階欲求
1(最低次)生理的欲求食事・睡眠
2安全の欲求身体の安全・雇用の安定
3社会的欲求(所属と愛の欲求)仲間・職場への所属
4承認(尊厳)の欲求認められたい・地位
5(最高次)自己実現の欲求自分の可能性を発揮したい

1〜4 を欠乏欲求(満たされるとそれ以上動機づけない)、5 を成長欲求(満たされてもさらに求め続ける)と分けます。

ここまでできれば十分

マズローを修正・発展させた理論を対で覚えます。

人名理論中身・マズローとの違い
アルダファERG 理論欲求を存在(E)・関係(R)・成長(G)の 3 つに整理。複数の欲求が同時に働くことがあり、高次の欲求が満たされないと低次の欲求に戻る(退行)ことも認める
ハーズバーグ二要因理論(動機づけ―衛生理論)職務満足を生む動機づけ要因(達成・承認・仕事そのもの・責任・昇進・成長)と、不満を防ぐだけの衛生要因(会社の方針・監督・給与・対人関係・作業条件)は別物。衛生要因を満たしても不満が減るだけで満足は生まれない
マグレガーX 理論・Y 理論X 理論=人は本来仕事を嫌い、命令と統制が必要。Y 理論=人は条件次第で自ら目標に向かって働き、責任を引き受ける。マグレガーはY 理論にもとづく管理(目標による管理・自己統制)を勧めた
アージリス未成熟―成熟理論人は未成熟(受動・依存・短期的視野)から成熟(能動・自立・長期的視野)へ成長するが、命令一元化や分業などの公式組織の原理が人を未成熟にとどめる。対策として職務拡大や参加的リーダーシップ
マクレランド達成動機理論人の欲求を達成欲求・権力欲求・親和欲求に分け、達成欲求の高い人は適度に難しい目標と早いフィードバックを好むとした

ハーズバーグは職務充実(仕事の中身を深め、責任や裁量を増やす)を勧めました。仕事の種類を横に広げる職務拡大との違いは、肢の入れ替えに使われます。

試験でもっとも狙われるのはハーズバーグです。「給与は動機づけ要因である」「衛生要因を改善すれば満足が高まる」はどちらも誤りで、給与は衛生要因、衛生要因は不満を減らすだけです。

もう一歩(発展)

シャインは、人間観の変遷を経済人 → 社会人 → 自己実現人 → 複雑人と整理しました。複雑人とは「人の動機は状況や成長段階によって変わるので、決まった型はない」という見方で、コンティンジェンシー理論の人間観にあたります。


2. モチベーションの過程理論 ── 動機づけはどう決まるか

まずここだけ

内容理論が「何が」を問うのに対し、過程理論は「どのようにしてやる気が決まるか」を説明します。代表はブルーム期待理論です。

動機づけの強さ = 期待 × 道具性 × 誘意性

掛け算なので、どれか 1 つがゼロなら動機づけはゼロになります。ポーター=ローラーはこれを発展させ、業績 → 報酬 → 満足の流れに「報酬の公平さ」を組み込みました。

ここまでできれば十分

人名理論中身
アダムス公平理論人は自分の「貢献(投入)に対する報酬(成果)」の比率を他人と比べ、不公平と感じると貢献を減らしたり比較対象を変えたりして公平を回復しようとする
ロック目標設定理論あいまいな目標や「できるだけ頑張れ」より、具体的で困難な目標のほうが動機づけを高める。目標の受容とフィードバックが条件
デシ内発的動機づけ仕事そのものの面白さから生じる内発的動機づけに対し、金銭などの外的報酬を与えると内発的動機づけが弱まることがある(アンダーマイニング効果)。デシ=ライアンの自己決定理論では自律性・有能感・関係性が内発的動機づけを支える

出題の型は「外的報酬は内発的動機づけを常に高める」(逆)、「目標はやさしいほど動機づけを高める」(逆)です。


3. リーダーシップ論 ── 特性から行動へ、行動から状況へ

まずここだけ

リーダーシップ研究は、特性論(優れたリーダーに共通する資質を探す。決め手が見つからず行き詰まる)→ 行動論(有効なリーダーの行動の型を探す)→ 状況適合論(コンティンジェンシー理論)(状況によって有効なリーダーシップは異なる)の順に進みました。

行動論の研究は、ほぼすべてが「仕事(課題)への関心」と「人(人間関係)への関心」の 2 軸で整理できます。

研究2 軸の名前結論
アイオワ研究(レヴィンら)専制型・民主型・放任型民主型がもっとも良い(生産性・集団の雰囲気とも)
オハイオ州立研究構造づくり(仕事の組織化・指示)と配慮(信頼・思いやり)両方が高いリーダーが有効
ミシガン研究(リッカートら)職務中心型と従業員中心型従業員中心型が高業績
三隅二不二の PM 理論P 機能(目標達成)と M 機能(集団維持)両方が高い PM 型がもっとも良く、両方低い pm 型が最も悪い
ブレイク=ムートンのマネジリアル・グリッド業績への関心と人への関心を各 9 段階9・9 型(両方最大)が理想。1・1 型は無関心型、9・1 型は権威服従型、1・9 型はカントリークラブ型、5・5 型は中道型

リッカートはさらに、管理システムをシステム 1(独善的専制型)→ 2(温情的専制型)→ 3(相談型)→ 4(集団参加型)に分け、システム 4 がもっとも良いとしました。組織を「上司は上位集団の部下、部下集団のリーダー」として重なり合う集団の連なりとみる連結ピンの考え方もリッカートです。

ここまでできれば十分

行動論は「どんな状況でも良いリーダー行動がある」と考えましたが、状況適合論はそれを否定します。

人名理論中身
フィードラーコンティンジェンシー理論(状況適合理論)リーダーを LPC 得点(もっとも苦手な同僚をどう評価するか)で課題志向型(低 LPC)と人間関係志向型(高 LPC)に分ける。状況の好意性(リーダーと成員の関係・課題の構造化・地位の力)が非常に良いか非常に悪いときは課題志向型中程度のときは人間関係志向型が有効
ハーシー=ブランチャードSL 理論(状況的リーダーシップ論)部下の成熟度(レディネス)に応じて、教示的 → 説得的 → 参加的 → 委任的の順にスタイルを変える。成熟度が低いほど指示を多く、高いほど任せる
ハウスパス・ゴール理論リーダーの役割は部下が目標(ゴール)に至る道(パス)を示し障害を除くこと。指示型・支援型・参加型・達成志向型を、部下の特性と環境に応じて使い分ける

フィードラーの理論は「LPC の高低」と「状況の良し悪し」の組み合わせをずらした肢が定番です。「状況が中程度のときは課題志向型が有効」は誤りです。

もう一歩(発展)

1980 年代以降は、部下の意識を変えるリーダーシップが注目されました。


4. 組織構造 ── 職能別・事業部制・マトリックス

まずここだけ

組織の分け方は、大きく職能別組織事業部制組織の 2 つです。

職能別組織事業部制組織
分け方製造・販売・研究開発など機能ごと製品・地域・顧客ごとの事業部に分け、各事業部が製造から販売まで持つ
権限集権的。全社の調整はトップが行う分権的。事業部長が利益責任を負う(プロフィットセンター)
長所専門化による能率、設備や人員の重複がない市場への対応が速い、トップは全社戦略に専念できる、事業部長が経営者として育つ
短所部門間の調整に手間、利益責任があいまい、トップの負担が大きい設備や人員の重複、事業部間の対立(セクショナリズム)、短期的な利益に偏りやすい

事業部制は 1920 年代にデュポンGM(スローン)が導入し、日本では松下電器が早い例です。チャンドラーが「組織は戦略に従う」(zo-03)で分析したのはこの事業部制の成立です。

ここまでできれば十分

組織中身注意点
ライン組織とスタッフライン=命令系統にある部門、スタッフ=ラインを助言・補佐する部門(人事・経理・企画など)。合わせてライン・アンド・スタッフ組織スタッフは原則として命令権をもたない
マトリックス組織職能と製品(またはプロジェクト・地域)の2 つの系統を同時に持ち、成員は 2 人の上司をもつ資源を柔軟に使える反面、命令一元化の原則に反し、対立や責任の不明確が起きやすい
プロジェクト組織特定の課題のために一時的に編成し、終われば解散
カンパニー制事業部制をさらに進め、社内の事業部門を独立会社のように扱い、投資や人事の権限も与える。日本では 1994 年のソニーが早い例分社化・持株会社化の一歩手前
SBU(戦略事業単位)戦略策定のために事業をくくり直した単位。GE が導入組織図上の事業部と一致しないこともある
フラット組織中間管理層を減らし階層を少なくした組織。意思決定が速い反面、管理者 1 人の統制範囲が広がる
ネットワーク組織企業の枠を越えて対等な関係で結びつく。外部との提携やアウトソーシングを前提

ミンツバーグは組織を、単純構造・機械的官僚制・専門的官僚制・事業部制・アドホクラシー(臨機応変に編成される革新的組織)の 5 つの型に分けました。


5. 組織文化と組織学習

まずここだけ

シャイン組織文化を 3 つの層でとらえました。目に見える人工物(建物・服装・儀式)、その下の標榜された価値観(社是・方針)、いちばん深い基本的仮定(当たり前すぎて意識されない信念)です。文化を変えるには基本的仮定に届く必要があるとしました。シャインはキャリア・アンカー(キャリア選択で手放さない価値観・能力)の概念でも出題されます。

ここまでできれば十分

アージリス(とショーン)は組織学習を 2 種類に分けました。

センゲは『学習する組織』(1990 年)で、組織が学び続けるための 5 つの規律として、自己マスタリー・メンタルモデル・共有ビジョン・チーム学習・システム思考を挙げました。

野中郁次郎SECI モデルは、暗黙知と形式知の相互変換(共同化 → 表出化 → 連結化 → 内面化)で組織の知識が生まれるとするものです。「暗黙知を形式知に変える」のが表出化です。


6. よくある間違い

間違い正しくは
マズローは複数の欲求が同時に働くとした低次から順に。同時や退行を認めるのはアルダファの ERG 理論
ハーズバーグは給与を動機づけ要因とした給与は衛生要因。動機づけ要因は達成・承認・仕事そのもの・責任・昇進・成長
衛生要因を改善すれば満足が高まる不満が減るだけ。満足を生むのは動機づけ要因
マグレガーは X 理論にもとづく管理を勧めたY 理論。目標による管理・自己統制
アージリスは公式組織の原理が人を成熟させるとした逆。未成熟にとどめる
期待理論は「期待+道具性+誘意性」の足し算掛け算。1 つがゼロなら動機づけはゼロ
外的報酬は内発的動機づけを高める弱めることがある(デシ、アンダーマイニング効果)
PM 理論はブレイク=ムートンが提唱した三隅二不二。ブレイク=ムートンはマネジリアル・グリッド
フィードラーは状況が中程度のとき課題志向型が有効とした中程度のときは人間関係志向型。非常に良い・悪いときが課題志向型
SL 理論は部下の成熟度が高いほど指示を増やす逆。成熟度が高いほど委任する
変革型リーダーシップは報酬と引き換えに部下を動かすそれは交換型(取引型)。変革型はビジョンで価値観を変える
事業部制は設備の重複がなく集権的である逆。分権的で設備・人員の重複が短所。重複がないのは職能別組織
マトリックス組織は命令一元化の原則に沿う反する。成員は 2 人の上司をもつ
ダブルループ学習は前提を変えずに誤りを直すそれはシングルループ。ダブルループは前提そのものを問い直す

7. 覚え方の型

  1. モチベーション理論は「内容理論(何が)」と「過程理論(どうやって)」に分けてから人名を置く。内容=マズロー・アルダファ・ハーズバーグ・マグレガー・アージリス・マクレランド、過程=ブルーム・アダムス・ロック・デシ
  2. 人名にはキーワードを 1 つだけ結ぶ:マズロー=5 段階、アルダファ=ERG、ハーズバーグ=衛生要因、マグレガー=X・Y、アージリス=未成熟―成熟、マクレランド=達成欲求、ブルーム=期待×道具性×誘意性、アダムス=公平、ロック=目標設定、デシ=内発的
  3. リーダーシップ論は「特性 → 行動 → 状況」の 3 段。行動論はどれも「仕事」と「人」の 2 軸で、両方高いのが良い。状況論は「状況次第」
  4. 状況論の 3 人は何に合わせるかで区別する:フィードラー=状況の好意性、ハーシー=ブランチャード=部下の成熟度、ハウス=部下の特性と環境
  5. 組織構造は「職能別(集権・重複なし・調整が大変)vs. 事業部制(分権・重複あり・市場対応が速い)」の対で押さえ、マトリックスは「2 人の上司」

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参考資料

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