地方上級 / 経営学 / zo-01
経営学説の流れ(テイラー・ファヨール・人間関係論・バーナード・サイモン)
この単元でできるようになること
- テイラーの科学的管理法(課業管理・差別出来高給・機能別職長制)と、フォードのフォードシステム(移動組立法・大量生産)を、それぞれのキーワードで説明できる
- ファヨールの管理過程論(5 つの管理機能・14 の管理原則)を、テイラーとの違い(工場の現場 vs. 経営者の仕事)で説明できる
- ホーソン実験で何が分かり、それがなぜ人間関係論(非公式組織・社会人モデル)につながったのかを説明できる
- バーナードの組織の 3 要素・権限受容説・組織均衡と、サイモンの限定合理性・満足化・決定前提を区別して説明できる
- 1960 年代のコンティンジェンシー理論(バーンズ=ストーカー・ウッドワード・ローレンス=ローシュ)が「唯一最善の組織はない」と主張した中身を説明できる
試験での位置づけ
経営学は国家一般職で 5 問、地方上級(全国型など)でも 2〜3 問程度が出題される選択科目で、そのうち学説史はもっとも出題されやすい柱です。問われ方はほぼ決まっていて、「人名 → 主張」「主張 → 人名」「用語 → 中身」の 5 択正誤文です。誤答の作り方も定番で、別の人物のキーワードをはめ込む(例:ファヨールの 14 原則をテイラーのものとして書く)、結論を逆にする(例:ホーソン実験は作業条件の重要性を証明した)、要素を 1 つ入れ替える(例:組織の 3 要素を「共通目的・規則・階層」にする)の 3 パターンです。この単元では「誰が・何を・どの概念で」を対にして押さえます。行政学の zq-01 と人名がかなり重なる(テイラー・ファヨール・バーナード・サイモン・メイヨー)ので、両方受ける人はまとめて覚えると負担が減ります。動機づけとリーダーシップの学説は zo-02、戦略論は zo-03 で扱います。
1. 科学的管理法とフォードシステム ── 「経済人」の時代
まずここだけ
経営学の出発点は 20 世紀初めのアメリカの工場です。当時の工場は職長の経験と勘で運営される成り行き管理で、労働者は賃率を切り下げられないよう申し合わせて手を抜く組織的怠業が広がっていました。テイラーは『科学的管理法の原理』(1911 年)で、これを「科学」で置き換えようとしました。柱は次の 4 つです。
| キーワード | 中身 |
|---|---|
| 課業管理 | 時間研究・動作研究で「1 日の公正な作業量(課業)」を科学的に決め、標準の作業方法・道具・時間を定める |
| 差別出来高給制 | 課業を達成した者には高い賃率、達成できなかった者には低い賃率を適用する |
| 機能別職長制 | 1 人の万能職長ではなく、計画・検査・修繕など機能ごとに専門の職長を置く |
| 計画と執行の分離 | 作業の計画は計画部が担い、労働者は執行に専念する |
テイラーの人間観は「人は経済的な報酬で動く」という経済人モデルで、のちに人間関係論から批判されることになります。
ここまでできれば十分
科学的管理法の周辺の人物も出題されます。ギルブレス(夫妻)は動作研究を発展させ、動作の基本要素(サーブリッグ)に分解して無駄を省きました。ガントは作業の進み具合を横棒で示すガントチャートを考案し、差別出来高給に代えて「課業達成に賞与をつける」課業賞与制を提案しました。
フォードは自動車会社の経営者として、科学的管理法の考え方を工場全体に広げました。これがフォードシステム(フォーディズム)です。
- 製品の単一化(T 型フォード 1 車種に絞る)と部品の標準化・互換性
- 移動組立法(ベルトコンベアで作業者の前に車体を流し、作業者は動かない)
- 少品種の大量生産によって単価を下げ、高賃金・低価格を両立させる(日給 5 ドル)
試験では「テイラー=・差別出来高給」「フォード=移動組立法・大量生産・高賃金低価格」を取り違えさせる肢が定番です。テイラーは「1 人の作業の科学化」、フォードは「工場全体の流れ作業化」と押さえます。
もう一歩(発展)
は労働組合から「人間を機械のように扱う」と批判され、1912 年にはアメリカ議会の特別委員会で調査を受けました。テイラー自身は「精神革命」(労使が対立ではなく協調して生産性を上げる)を説きましたが、経済人モデルの限界は次の人間関係論で明らかになります。
2. ファヨールの管理過程論 ── 経営者の仕事を分解する
まずここだけ
テイラーが工場の現場を見たのに対し、フランスの鉱山会社の社長だったファヨールは『産業ならびに一般の管理』(1916 年)で経営者・管理者の仕事を体系化しました。企業の活動を技術・商業・財務・保全・会計・管理の 6 つに分け、そのうち管理活動を次の 5 つの要素(管理機能)に分けました。
予測(計画)・組織・命令・調整・統制
管理を「計画してから統制するまでの過程」とみるので管理過程論と呼び、これを引き継いだ人々を管理過程学派と呼びます(ギューリックの POSDCoRB もこの系統です。zq-01)。ファヨールは、管理は工場長だけでなくすべての階層に必要で、上位になるほど管理の比重が大きくなると考え、管理教育の必要性を説きました。
ここまでできれば十分
ファヨールは経験から導いた14 の管理原則も示しました。全部を暗記する必要はありませんが、試験でよく取り上げられるものを押さえます。
| 原則 | 中身 |
|---|---|
| 分業 | 専門化によって能率を高める |
| 権限と責任 | 権限には責任が伴う |
| 命令の一元性 | 部下は 1 人の上司からだけ命令を受ける(テイラーの機能別職長制とは反対) |
| 指揮の一元性 | 同じ目的の活動には 1 人の責任者と 1 つの計画 |
| 個人利益の全体利益への従属 | 組織の利益を個人の利益に優先させる |
| 集権化 | 集権と分権の程度は状況による |
| 階層組織 | 命令の系統は上から下へ連なる。ただし横の連絡(渡り板)も認める |
| 従業員の安定 | 人の入れ替わりが多いと非能率 |
| 創意 | 部下の創意を引き出す |
| 団結 | 従業員の一体感を保つ |
「命令の一元性」はファヨールの原則であり、テイラーの機能別職長制(1 人の労働者が複数の職長から指示を受ける)と正反対だという点は、両者を対比させる肢でよく問われます。
もう一歩(発展)
同じ時期のドイツではウェーバーが近代官僚制(規則・階層・文書主義・専門性・没人格性)を「合理的支配」の型として論じました。官僚制の逆機能(マートンの目的の転移、グールドナーの懲罰型官僚制)とあわせて zq-02 で扱いますが、経営学でも「官僚制は合理的である一方、硬直化を招く」という文脈で出ます。
3. ホーソン実験と人間関係論 ── 「社会人」の発見
まずここだけ
ホーソン実験は、1924〜32 年にアメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われた一連の調査です。途中からハーバード大学のメイヨーとレスリスバーガーが加わりました。
| 実験 | 何をしたか | 分かったこと |
|---|---|---|
| 照明実験 | 照明を明るくしたり暗くしたりする | 照明を暗くしても生産性が下がらない。物理的条件では説明できない |
| 継電器組立実験 | 休憩・賃金・時間を変える | 条件を元に戻しても生産性は上がり続けた。「見られている」「選ばれた」という意識と仲間意識が要因 |
| 面接調査 | 従業員 2 万人余りに聞き取り | 不満の原因は客観的条件より感情・人間関係にある |
| バンク配線作業観察 | 集団作業を観察 | 仲間内で「1 日これだけ」という非公式の作業基準があり、出来高給があってもそれ以上働かない |
結論は、生産性を左右するのは作業条件や賃金より職場の人間関係・非公式組織(インフォーマル組織)・モラール(士気)だというものでした。人間を「感情と仲間意識で動く社会人」とみるこの立場を人間関係論と呼び、科学的管理法の経済人モデルへの対抗軸になりました。
ここまでできれば十分
試験で狙われるのは結論の向きです。「ホーソン実験は作業条件の改善が生産性を高めることを証明した」「出来高給の有効性を裏づけた」は逆で、誤りです。もう 1 つ、人間関係論の限界も問われます。人間関係論は「良い人間関係を作れば生産性が上がる」と考えましたが、その後の研究では両者が結びつかない例も多く、また人間を「仲間に流される存在」とみる点が単純だと批判されました。この批判から、個人の欲求や自己実現に注目する行動科学(マズロー・マグレガー・ハーズバーグなど。zo-02)が生まれます。
もう一歩(発展)
人間関係論に先立って、フォレットは対立の解決法として「妥協」でも「抑圧」でもない統合を説き、命令は人ではなく状況が発する(状況の法則)と論じました。テイラー流の管理と人間関係論をつなぐ位置にいる人物として出題されます。
4. バーナードとサイモン ── 近代組織論
まずここだけ
バーナードは電話会社の社長で、『経営者の役割』(1938 年)を書きました。組織を「2 人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力の体系」と定義し、組織が成り立つための3 要素を挙げました。
共通目的・協働意欲(貢献意欲)・コミュニケーション(伝達)
そのほかのキーワードは次のとおりです。
| キーワード | 中身 |
|---|---|
| 権限受容説 | 命令が権限をもつかは、発する側の地位ではなく受け手が受け入れるかで決まる |
| 無関心圏 | 部下が中身を問わずに受け入れる命令の範囲。ここに入る命令は疑われない |
| 組織均衡 | 組織が与える誘因(賃金・地位・やりがい)が、参加者の貢献以上であるとき、参加者は組織にとどまり組織は存続する |
| 有効性と能率 | 有効性=組織の目的が達成される度合い、能率=参加者の個人的な動機が満たされる度合い。両方が必要 |
| 公式組織と非公式組織 | 非公式組織は公式組織に伴って生じ、コミュニケーションや結束を助ける |
ここまでできれば十分
サイモンはバーナードの考えを引き継ぎ、『経営行動』(1947 年)で組織を意思決定の体系としてとらえ直しました。
- 限定合理性(限定された合理性):人は知識・時間・計算能力に限りがあり、すべての選択肢を比べることはできない
- 満足化:だから人は最善(最適化)ではなく、「これで十分」という基準を満たす案を選ぶ。この人間像を経営人(管理人)と呼び、経済学の経済人(最適化)と対比する
- 決定前提:意思決定は「何を目指すか」の価値前提と「どうすればできるか」の事実前提からなる。科学の対象になるのは事実前提
- 組織均衡論:バーナードの誘因と貢献の考えを精密化した(バーナード=サイモン理論)
サイモンはマーチと共著『オーガニゼーションズ』(1958 年)を書き、さらに『経営の意思決定』(1960 年)で意思決定を定型的意思決定(繰り返し起きるので手続きで処理できる)と非定型的意思決定(新しい問題で判断が要る)に分けました。意思決定の過程は情報活動 → 設計活動 → 選択活動(→ 検討活動)の順で進むとしました。
サイアート=マーチ『企業の行動理論』(1963 年)は、企業を「目標の異なる参加者の連合体」とみて、企業の意思決定の 4 つの特徴を挙げました。
| 特徴 | 中身 |
|---|---|
| コンフリクトの準解決 | 部門ごとの目標の対立は完全には解けず、順番に処理してごまかしながら進む |
| 不確実性の回避 | 長期予測より短期の対応や業界慣行で不確実性をかわす |
| 問題志向の探索 | 問題が起きてから、その近くで解決策を探す |
| 組織学習 | 経験によって目標や手続きを調整する |
また、余裕資源(組織スラック)が対立を緩め、環境変化への備えになると論じました。
もう一歩(発展)
「バーナード=サイモンの近代組織論」と「テイラー・ファヨールの伝統的管理論」の違いは、組織を機械とみるか、人の意思決定と協働の体系とみるかです。試験では「サイモンは人間を完全に合理的とみた」「バーナードは権限が上司の地位に由来するとした」のように、近代組織論の核心を逆にした肢が出ます。
ドラッカーも同じ時代の人物として出題されます。『現代の経営』(1954 年)で目標による管理(MBO)(上司が命令するのではなく、部下が自分で目標を設定し自己統制する)を提唱し、「事業の目的は顧客の創造」であり、そのための基本機能はマーケティングとイノベーションだと述べました。「知識労働者」「マネジメント」の語を広めた人物でもあります。
5. コンティンジェンシー理論 ── 唯一最善の組織はない
まずここだけ
1960 年代に登場したコンティンジェンシー理論(条件適合理論・状況適合理論)は、「どんな状況にも通用する最善の組織や管理はなく、環境や技術に適合した組織が有効だ」と主張しました。伝統的管理論も人間関係論も「これが最善」を探していたので、その否定です。
| 研究者 | 対象 | 結論 |
|---|---|---|
| バーンズ=ストーカー(1961 年) | イギリスの電機産業など | 安定した環境では機械的組織(規則・階層・明確な職務)、変化の激しい環境では有機的組織(柔軟・水平的な連絡・職務の再定義)が適合する |
| ウッドワード(1965 年) | イギリス南東部の製造業約 100 社 | 生産技術(単品・小バッチ生産/大量生産/装置生産)によって、業績のよい企業の組織構造(階層数・統制範囲など)が異なる |
| ローレンス=ローシュ(1967 年) | プラスチック・食品・容器産業 | 環境の不確実性が高い産業ほど部門の分化が進み、同時に高い統合が必要。両立させた企業の業績がよい |
「コンティンジェンシー」という語を最初に使ったのはローレンス=ローシュです。
ここまでできれば十分
出題の型は「機械的組織と有機的組織の中身を入れ替える」「ウッドワードの結論を『技術に関係なく同じ組織が最善』とする」です。機械的組織=官僚制型・安定環境向き、有機的組織=柔軟・不安定環境向き、と対で押さえます。
コンティンジェンシー理論への批判もあります。「環境が組織を決める」という見方は、環境を選び働きかける経営者の役割を軽く見ている、という指摘です(チャイルドの戦略的選択論)。ここから経営戦略論(zo-03)に話がつながります。
6. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 差別出来高給制はフォードが導入した | テイラー。フォードは移動組立法・大量生産・高賃金低価格 |
| テイラーは命令の一元性を説いた | 命令の一元性はファヨールの原則。テイラーは機能別職長制(複数の職長) |
| 管理の 5 要素(計画・組織・命令・調整・統制)はテイラーが示した | ファヨール。テイラーは課業管理 |
| ホーソン実験は作業条件の改善が生産性を高めることを証明した | 逆。人間関係・非公式組織・モラールが生産性を左右することを見いだした |
| 人間関係論は経済人モデルにもとづく | 社会人モデル。経済人は科学的管理法 |
| 組織の 3 要素は「共通目的・規則・階層」 | 共通目的・協働意欲・コミュニケーション(バーナード) |
| バーナードは権限が上司の地位に由来するとした | 権限受容説。受け手が受け入れるかで決まる |
| サイモンは人間を完全に合理的とみて最適化を説いた | 限定合理性。最適化ではなく満足化 |
| 「組織スラック」「コンフリクトの準解決」はサイモン単独の概念 | サイアート=マーチ『企業の行動理論』 |
| 目標による管理はテイラーが提唱した | ドラッカー |
| コンティンジェンシー理論は「唯一最善の組織」を示した | 逆。環境や技術によって適合する組織は異なる |
| 機械的組織は変化の激しい環境に適合する | 逆。安定した環境に適合。変化の激しい環境には有機的組織 |
7. 覚え方の型
- 学説史を「科学的管理法(経済人)→ 人間関係論(社会人)→ 近代組織論(意思決定人)→ コンティンジェンシー理論(状況次第)」の 4 段で年代順に並べる。1910 年代・1930 年代・1940〜50 年代・1960 年代
- 人名にはキーワードを 1 つだけ結ぶ:テイラー=課業管理、ギルブレス=動作研究、ガント=ガントチャート、フォード=移動組立法、ファヨール=管理の 5 要素、メイヨー=ホーソン実験、バーナード=権限受容説、サイモン=満足化、サイアート=マーチ=組織スラック、ドラッカー=目標による管理、バーンズ=ストーカー=機械的/有機的、ウッドワード=技術、ローレンス=ローシュ=分化と統合
- 肢を読むときは「人名とキーワードが合っているか」→「結論の向きが逆になっていないか」→「要素が 1 つ入れ替わっていないか」の順に確かめる
- 対比で覚える組:テイラー(機能別職長制)vs. ファヨール(命令の一元性)/経済人 vs. 社会人/最適化 vs. 満足化/機械的 vs. 有機的
8. 小テストへ
→ 小テスト(zo-01)
関連する単元
- 前提:zq-01 行政学の理論(ウェーバー・ギューリック・サイモン・NPM)── 人名が重なる
- 次に進む:zo-02 組織とモチベーション・リーダーシップ、zo-03 経営戦略
- 同じ考え方を使う:zq-02 行政組織と官僚制、zo-04 マーケティングと生産・イノベーション
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(経営学)
- F. W. テイラー『科学的管理法』、H. ファヨール『産業ならびに一般の管理』、C. I. バーナード『経営者の役割』、H. A. サイモン『経営行動』(いずれも邦訳あり)
- 標準的な経営学の教科書(藤芳誠一・稲葉元吉ほか『経営学』、加護野忠男ほか『経営学入門』、井原久光『テキスト経営学』など)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/keizai/zo-01/ / 更新 2026-09-19