地方上級 / 経営学 / zo-05

更新 2026-09-20

企業形態とコーポレートガバナンス・日本的経営(株式会社・所有と経営の分離・M&A・日本的経営)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

経営学の中で、学説史・組織論・戦略論が「人名と理論」を問うのに対し、この単元は「制度と数字」を問います。地方上級・国家一般職では、(1)株式会社の機関(監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の違い)、(2)所有と経営の分離の学説(バーリ=ミーンズとバーナムとガルブレイスの取り違え)、(3)M&A の用語(TOB・MBO・LBO・ポイズンピル・ホワイトナイト)、(4)日本的経営(三種の神器・メインバンク・株式持ち合い)、(5)財務指標の計算(ROE・損益分岐点)が定番です。誤答の型は「制度の要件を 1 つずらす」(監査等委員会の委員は取締役でなく監査役とする、持株会社の解禁を 1947 年とする)、「用語の定義を入れ替える」(MBO と LBO、CSR と CSV)、「学説の人名を入れ替える」(テクノストラクチュアをバーナムとする)の 3 つです。株式会社の基本は zk-04(社会科学)と重なり、情報の非対称性(エージェンシー問題の前提)は ze-06、戦後の日本経済の流れは zx-01、労働法の雇用形態は zr-04 で扱います。制度の内容は 2026 年 9 月時点のものです(最新は e-Gov 法令検索で確認してください)。


1. 企業形態と株式会社の機関

まずここだけ

会社法(2005 年制定・2006 年施行)は、会社を株式会社持分会社(合名・合資・合同)の 2 つに分けます。違いは出資者(社員)の責任です。

会社出資者の責任特徴
合名会社全員が無限責任家族経営など小規模。出資者自身が経営
合資会社無限責任社員と有限責任社員の両方有限責任社員は出資のみ
合同会社(日本版 LLC)全員が有限責任会社法で新設。定款で利益配分や運営を自由に決められる
株式会社全員が有限責任株式を発行して広く資金を集める。所有と経営が分離しやすい

会社法では有限会社を新たに作れなくなり(既存のものは特例有限会社として存続)、株式会社の最低資本金制度が廃止されました(資本金 1 円でも設立できる)。「合同会社は無限責任社員がいる」「合名会社は全員が有限責任」「有限会社は現在も新設できる」は誤りです。

有限責任とは、株主が会社の債務について出資した額を限度にしか責任を負わないことです。これによって多くの人が安心して出資でき、大きな資本を集められます。株式は原則として自由に譲渡できます。

ここまでできれば十分

株式会社の機関は、会社の規模と株式の譲渡制限によって組み合わせが変わります。

機関役割
株主総会最高の意思決定機関(必置)。取締役の選任・解任、定款変更、合併などを決める。議決権は原則 1 株 1 票
取締役・取締役会業務執行の決定。取締役会は取締役 3 人以上で構成し、代表取締役を選ぶ。公開会社は取締役会が必置
監査役・監査役会取締役の職務執行を監査する。監査役会は監査役 3 人以上で、半数以上が社外監査役
会計監査人公認会計士または監査法人。大会社は必置
会計参与取締役と共同で計算書類を作る(会社法で新設。任意)

用語の定義です。公開会社は、発行する株式の全部または一部に譲渡制限がない会社で、上場しているかどうかとは別の概念です(全株に譲渡制限があるのが非公開会社)。大会社資本金 5 億円以上または負債総額 200 億円以上の会社です。取締役の任期は原則 2 年(非公開会社は定款で最長 10 年まで)、監査役の任期は 4 年です。

監査の仕組みは 3 種類から選びます。ここが最も出題されます。

監査する機関特徴
監査役会設置会社監査役会(監査役 3 人以上・半数以上が社外)日本の伝統的な型。監査役は取締役会の議決権を持たない
監査等委員会設置会社取締役で構成する監査等委員会(3 人以上・過半数が社外取締役2014 年改正(2015 年施行)で新設。監査役は置かない。監査する側が取締役会の議決権を持つ
指名委員会等設置会社指名・監査・報酬の 3 委員会(各 3 人以上・過半数が社外取締役2002 年商法改正で「委員会等設置会社」として導入、2014 年改正で現在の名称に。業務執行は執行役が担い、取締役会は監督に専念。監査役は置かない

「監査等委員会の委員は監査役である」「指名委員会等設置会社は 2 つの委員会からなる」「指名委員会等設置会社にも監査役を置く」はいずれも誤りです。指名委員会等設置会社は、監督(取締役会)と執行(執行役)の分離というアメリカ型のガバナンスを取り入れたもので、監査等委員会設置会社はその中間形として作られました。

もう一歩(発展)

2019 年改正(2021 年 3 月施行)で、監査役会設置会社のうち公開会社かつ大会社で有価証券報告書を提出する会社には社外取締役の設置が義務になりました。株主総会資料の電子提供制度(2022 年 9 月施行)もこの改正によるものです。社外取締役は、その会社や子会社の業務執行取締役・使用人でなく、過去 10 年間もそうでなかったこと等が要件で、経営者から独立した立場で監督することが期待されます。


2. 所有と経営の分離 ── バーリ=ミーンズからガルブレイスまで

まずここだけ

株式会社が大きくなると株式が多くの株主に分散し、株主は経営に関心を持たなくなります。一方で経営は専門の経営者が担うようになり、所有(株主)と経営(経営者)が分離します。この現象を実証したのがバーリ=ミーンズ『近代株式会社と私有財産』(1932 年)です。アメリカの 200 大企業を調べ、株式の分散によって、大株主が存在しない企業では株式をほとんど持たない経営者が実質的に支配する経営者支配が広がっていることを示しました。支配の型は、完全所有支配 → 過半数所有支配 → 法的手段による支配 → 少数所有支配 → 経営者支配の順に、株式の分散が進むにつれて移るとされます。

ここまでできれば十分

人名主著(年)主張
バーリ=ミーンズ『近代株式会社と私有財産』(1932 年)株式の分散による経営者支配を実証
バーナム『経営者革命』(1941 年)資本家に代わって経営者階級が社会を支配するようになる(経営者革命
ガルブレイス『新しい産業国家』(1967 年)大企業の意思決定は個人でなく、専門知識をもつ技術者・管理者の集団テクノストラクチュアが行う
マリスボーモル経営者企業の理論経営者は利潤最大化でなく成長率(マリス)や売上高(ボーモル)の最大化を目指す

経営者支配の企業では、経営者が株主の利益(利潤)よりも自分の地位や報酬に結びつく企業の規模や成長を優先するおそれがあります。これが経営者の裁量の問題で、次の節のコーポレートガバナンスにつながります。試験では「テクノストラクチュアはバーナム」「経営者革命はガルブレイス」のような人名の入れ替えが定番です。

もう一歩(発展)

所有と経営の分離には 2 つの側面があります。機能の分離(経営という機能を専門家が担う)はどの大企業にも起きますが、支配の分離(株主が経営者を交代させる力を失う)は株式の分散の程度によります。日本では戦後、株式持ち合いによって「安定株主」が経営者を支える構造ができ、アメリカとは違う形の経営者支配が成立しました(第 5 節)。


3. コーポレートガバナンス ── 経営者をだれがどう監督するか

まずここだけ

コーポレートガバナンス(企業統治)とは、経営者が株主をはじめとする利害関係者の利益に沿って経営するように監督・規律づけする仕組みです。理論の土台はエージェンシー理論です。

ジェンセン=メックリング(1976 年)は、株主(プリンシパル・依頼人)が経営者(エージェント・代理人)に経営を委ねる関係を分析しました。両者の利害は一致せず、株主は経営者の行動を完全には観察できない(情報の非対称性ze-06)ため、経営者が自分の利益を優先するエージェンシー問題が生じます。これを抑えるためにかかる費用がエージェンシー・コストで、株主が経営者を監視するモニタリング・コスト、経営者が株主の利益に反しないことを示すためのボンディング・コスト、それでも残る損失(残余損失)の 3 つからなります。ストック・オプション(自社株を一定価格で買える権利)で経営者の報酬を株価に連動させるのは、利害を一致させてエージェンシー・コストを下げる工夫です。

ここまでできれば十分

日本の制度の流れです。

出来事
2014 年 2 月スチュワードシップ・コード策定(金融庁)。機関投資家が投資先企業と対話し議決権を適切に行使する責任を定める。2017 年・2020 年改訂
2015 年 6 月コーポレートガバナンス・コード策定(金融庁・東京証券取引所)。上場会社が守るべき原則。独立社外取締役を2 名以上選任することなどを求める
2018 年 6 月同コード改訂。政策保有株式(持ち合い株)の縮減方針の開示など
2021 年 6 月同コード改訂。プライム市場の上場会社に独立社外取締役を3 分の 1 以上選任することなどを求める
2026 年 7 月同コード改訂(5 年ぶり)。補充原則を廃止して原則を絞り込む(プリンシプル化)、有価証券報告書の株主総会前の開示、成長投資と経営資源の配分についての説明、取締役会事務局の強化。プライム市場の独立社外取締役 3 分の 1 以上は維持され、支配株主をもつ会社には過半数を求める

2 つのコードは法律ではなく、「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない理由を説明するか)の方式をとります。「コーポレートガバナンス・コードは会社法の一部である」「違反すると罰則がある」は誤りです。スチュワードシップ・コードは投資家側、コーポレートガバナンス・コードは企業側の行動原則で、2 つが「車の両輪」と呼ばれます。

内部統制は、業務の有効性・財務報告の信頼性・法令遵守・資産の保全を確保するために会社の中に作る仕組みです。会社法は大会社に内部統制システムの基本方針を決めることを義務づけ、金融商品取引法は上場会社に財務報告に係る内部統制の内部統制報告書の提出(2008 年 4 月以降に始まる事業年度から。いわゆる J-SOX)を義務づけています。アメリカのエンロン事件(2001 年)を受けたSOX 法(2002 年)が背景です。

CSR・CSV・ESGの区別も出題されます。

用語中身
CSR(企業の社会的責任)企業が法令遵守・環境・人権・地域などに配慮する責任。利益活動とは別に行う社会貢献(寄付・ボランティア)を含む
CSV(共通価値の創造)ポーター=クレイマー(2011 年)。社会的な課題の解決を本業の戦略として行い、社会の価値と企業の利益を同時に生む。CSR が「利益の一部を社会に還元する」なら、CSV は「社会課題の解決そのもので利益を出す」
ESG環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)。投資家がこの 3 つを考慮して投資先を選ぶのがESG 投資。2006 年に国連が責任投資原則(PRI)を示したことが広がるきっかけ
ステークホルダー株主・従業員・顧客・取引先・地域社会など企業の利害関係者。株主だけを重視する株主主権論に対し、全体の利益を考えるのがステークホルダー論

もう一歩(発展)

ガバナンスの仕組みは内部(取締役会・監査役・社外取締役・報酬設計)と外部(株式市場での敵対的買収の脅威・メインバンクの監視・機関投資家の対話・格付け)に分けられます。経営者が業績を上げないと買収されて交代させられるという圧力を企業支配権市場といい、アメリカ型ガバナンスの中心です。日本は長くメインバンクと株式持ち合いによる内部型のガバナンスでしたが、持ち合い解消と機関投資家の増加で市場型へ移ってきました。


4. M&A ── 合併・買収と防衛策・持株会社

まずここだけ

M&Aは Mergers(合併)and Acquisitions(買収)で、内部成長に対し「時間を買う」外部成長の手段です(zo-03)。

手法中身
合併複数の会社が 1 つになる。一方が存続し他方を吸収する吸収合併と、全社が消滅して新会社を作る新設合併
買収株式を取得して支配する株式取得、または事業だけを買う事業譲渡。会社は消滅しない
TOB(株式公開買付け)買付期間・価格・株数を公告し、市場外で不特定多数の株主から株式を買い集める。金融商品取引法は、議決権の一定割合を超えて株式を取得する場合に TOB を義務づける。この基準は長く「市場外で 3 分の 1 超」だったが、2024 年改正(2026 年 5 月 1 日施行)で 30 %超に引き下げられ、取引所の市場内で買い進める場合も対象になった
MBO(マネジメント・バイアウト)経営陣が自社の株式を買い取って独立する。上場廃止して長期の経営を行う目的にも使われる
LBO(レバレッジド・バイアウト)買収先の資産や将来の収益を担保に借入して買収資金を調達する。少ない自己資金で大きな買収ができる
株式交換・株式移転現金でなく自社株を対価にして完全子会社化(1999 年商法改正で導入)

「MBO は買収先の資産を担保に借り入れる手法」「LBO は経営陣による買収」と入れ替えた肢が定番です。友好的買収に対し、経営陣の同意なく仕掛けるのが敵対的買収です。

ここまでできれば十分

敵対的買収への防衛策です。名前と中身の対応が問われます。

防衛策中身
ポイズンピル(毒薬条項)買収者が一定割合の株式を取得したときに、既存株主に新株予約権を与えて買収者の持株比率を下げる。日本では事前警告型の買収防衛策として広まった
ホワイトナイト(白馬の騎士)友好的な第三者に株式を取得してもらい、敵対的買収者に対抗する
クラウンジュエル(焦土作戦)買収者の狙う重要な事業や資産を売却して、買収の魅力を失わせる
ゴールデンパラシュート買収されて経営陣が解任された場合に巨額の退職金を払う契約を結び、買収コストを上げる
パックマン・ディフェンス逆に買収者の株式を買い集めて買収を仕掛け返す
黄金株合併など重要事項に拒否権をもつ種類株式を友好的な株主に持たせる

日本では 2005 年のライブドアによるニッポン放送株の取得、2007 年のブルドックソース事件(最高裁が、株主総会の承認を得た新株予約権による防衛策を適法と判断)が転機となり、防衛策と株主の利益の関係が議論されました。

持株会社は、他の会社の株式を持って支配することを目的とする会社です。自ら事業を行わない純粋持株会社と、事業も行う事業持株会社があります。戦前の財閥の中核が持株会社だったため、独占禁止法(1947 年)は純粋持株会社を全面的に禁止していましたが、1997 年の独占禁止法改正で解禁されました(事業支配力が過度に集中する場合を除く)。金融持株会社や「○○ホールディングス」はこれ以降のものです。「持株会社は 1947 年に解禁された」「現在も全面禁止」は誤りです。

もう一歩(発展)

企業の結合の古典的な分類として、独立した企業が価格や生産量を協定するカルテル、合併で 1 社になるトラスト、持株会社が株式でピラミッド型に支配するコンツェルンがあります(zk-04)。戦前の日本の財閥はコンツェルンの典型で、戦後の財閥解体と持株会社禁止はこれを崩すためのものでした。無関係な事業を買収で寄せ集めた企業集団はコングロマリットと呼ばれ、ルメルトの研究(zo-03)では収益性が低いとされます。


5. 日本的経営 ── 三種の神器とその変化

まずここだけ

アベグレンは『日本の経営』(1958 年)で、日本の大企業の特徴として終身雇用・年功序列(年功制)・企業別労働組合を挙げました。OECD の対日労働報告書(1972 年)がこの 3 つを「三種の神器」と呼び、日本的経営の代名詞になりました。

要素中身機能
終身雇用新卒で採用し定年まで雇い続ける慣行(法律上の義務ではない)企業に特有の技能を長期に育てられる。従業員の忠誠心
年功序列年齢・勤続年数に応じて賃金と地位が上がる長く勤めるほど得になり、離職を抑える
企業別労働組合産業別・職種別でなく企業ごとに組織される組合労使協調的。春闘で横並びの賃上げ

「日本的経営は法律で定められた制度」「企業別組合は欧米に多い」「年功序列は成果に応じた賃金」は誤りです。アベグレンは 1958 年当時、これらを前近代的な遺物でなく日本独自の合理的な仕組みと評価しました。

ここまでできれば十分

企業間の関係にも日本的な特徴があります。

用語中身
メインバンク制企業が主要な取引銀行を 1 つ持ち、その銀行が融資の中心となるだけでなく、株式を保有し、役員を派遣し、経営が悪化したときは再建を主導する。間接金融中心の時代の日本型ガバナンス
株式持ち合い企業どうし・企業と銀行が互いの株式を持ち合う。安定株主を作り、敵対的買収を防ぎ経営者の地位を安定させた
企業集団(六大企業集団)三井・三菱・住友・芙蓉・三和・第一勧銀。持ち合い・社長会・メインバンクで結ばれた横のグループ
系列大企業と下請け・販売店との縦の長期取引関係(自動車の部品メーカー、家電の系列店など)。長期取引で品質と納期を安定させる一方、閉鎖的だと海外から批判された(日米構造協議 1989〜90 年)
稟議制担当者が起案した文書を関係者が回覧して押印し、上位者の決裁を得る意思決定方式。ボトムアップで合意を形成するが、時間がかかり責任が不明確になりやすい

1990 年代以降の変化です。バブル崩壊後、銀行は不良債権の処理と自己資本比率規制のために持ち合い株を売却し、株式持ち合いは解消が進みました。2001 年には銀行の株式保有を制限する法律も作られ、コーポレートガバナンス・コード(2018 年改訂)は政策保有株式の縮減方針の開示を求めています。代わって外国人投資家・機関投資家の持株比率が高まり、企業は株主重視の経営を求められるようになりました。雇用面では、日経連(現在の経団連)が 1995 年に『新時代の「日本的経営」』で、従業員を長期蓄積能力活用型・高度専門能力活用型・雇用柔軟型の 3 グループに分ける考え方を示し、成果主義賃金や非正規雇用の増加につながりました。

もう一歩(発展)

メンバーシップ型とジョブ型は、日本的雇用を説明する近年の用語です。メンバーシップ型は「人に仕事をつける」雇用で、職務を限定せずに新卒一括採用し、配置転換や転勤をしながら長期に育てる日本の伝統的な型です。ジョブ型は「仕事に人をつける」雇用で、職務内容(ジョブ・ディスクリプション)を定めて、それに合う人を採用し職務に応じた賃金を払う欧米に多い型です。2020 年代に大企業でジョブ型の導入が広がりました。「ジョブ型は日本の伝統的な雇用」は逆です。労働法上の雇用形態は zr-04 で扱います。


6. 財務の基礎 ── 財務諸表と経営指標

まずここだけ

貸借対照表(B/S)は、ある時点の財政状態を示します。左側(借方)に資産、右側(貸方)に負債純資産を書き、資産 = 負債 + 純資産が常に成り立ちます。資産と負債はそれぞれ、1 年以内に現金化・返済するかどうかで流動固定に分けます。純資産の中心が株主の出資と利益の蓄積からなる自己資本で、負債は他人資本と呼ばれます。

損益計算書(P/L)は、一定期間の経営成績を示し、利益を段階的に計算します。

段階
売上総利益(粗利)売上高 − 売上原価
営業利益売上総利益 − 販売費及び一般管理費(本業のもうけ)
経常利益営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用(受取利息・支払利息など。本業以外を含む通常の活動のもうけ)
税引前当期純利益経常利益 + 特別利益 − 特別損失(固定資産の売却益・災害損失など臨時のもの)
当期純利益税引前当期純利益 − 法人税等

「支払利息は営業利益の計算で引く」「営業利益は本業以外のもうけを含む」は誤りです。このほか現金の出入りを営業・投資・財務の 3 つに分けて示すキャッシュ・フロー計算書があり、B/S・P/L と合わせて財務三表と呼ばれます。

ここまでできれば十分

経営指標の式と数値例です。

指標見るもの
ROE(自己資本利益率)当期純利益 ÷ 自己資本 × 100株主の出資がどれだけ利益を生んだか。株主が重視
ROA(総資産利益率)利益 ÷ 総資産 × 100会社の全資産がどれだけ利益を生んだか
自己資本比率自己資本 ÷ 総資産 × 100財務の安全性。高いほど借入への依存が小さい
流動比率流動資産 ÷ 流動負債 × 100短期の支払い能力。100 %を超えているかが目安
売上高利益率利益 ÷ 売上高 × 100売上のうちどれだけが利益として残るか
総資産回転率売上高 ÷ 総資産資産をどれだけ効率よく売上に変えたか

数値例:総資産 500、自己資本 200(負債 300)、売上高 1,000、当期純利益 20 の会社。ROE = 20 ÷ 200 = 10 %、ROA = 20 ÷ 500 = 4 %、自己資本比率 = 200 ÷ 500 = 40 %、売上高純利益率 = 20 ÷ 1,000 = 2 %、総資産回転率 = 1,000 ÷ 500 = 2 回。

ROE は売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ(総資産 ÷ 自己資本)に分解できます(デュポン分解)。上の例では 2 % × 2 × 2.5 = 10 %。借入を増やして自己資本を薄くすると(財務レバレッジを上げると)ROE は上がりますが、自己資本比率は下がり安全性は落ちます。「ROE が高いほど財務の安全性も高い」は誤りです。

損益分岐点は、利益がちょうどゼロになる売上高です。費用を、売上に関係なくかかる固定費(家賃・人件費など)と、売上に比例してかかる変動費(材料費など)に分けます。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率) (変動費率 = 変動費 ÷ 売上高)

数値例:固定費 600 万円、変動費率 0.4(売上の 40 %が変動費)なら、損益分岐点売上高 = 600 ÷(1 − 0.4)= 600 ÷ 0.6 = 1,000 万円。売上 1,000 万円のとき、変動費 400 万円 + 固定費 600 万円 = 1,000 万円で利益ゼロ、と検算できます。1 − 変動費率は限界利益率(売上が 1 円増えたとき利益がいくら増えるか)です。固定費が大きいほど、変動費率が高いほど損益分岐点は高くなります。

もう一歩(発展)

売上高に対する損益分岐点売上高の割合を損益分岐点比率といい、低いほど売上が減っても赤字になりにくい体質です。目標利益を出すために必要な売上高は、(固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)で求めます。上の例で目標利益 300 万円なら(600 + 300)÷ 0.6 = 1,500 万円です。


7. よくある間違い

間違い正しくは
合同会社には無限責任社員がいる全員が有限責任。無限責任と有限責任が混在するのは合資会社
有限会社は現在も新設できる会社法(2006 年施行)で新設できなくなった。既存のものは特例有限会社
公開会社とは上場会社のこと株式の全部または一部に譲渡制限がない会社。上場とは別の概念
大会社は資本金 1 億円以上資本金 5 億円以上または負債総額 200 億円以上
監査等委員会の委員は監査役取締役(3 人以上・過半数が社外取締役)。監査役は置かない
指名委員会等設置会社は指名と報酬の 2 委員会指名・監査・報酬の 3 委員会。業務執行は執行役
監査役会は全員が社外監査役半数以上が社外監査役
テクノストラクチュアはバーナムガルブレイス『新しい産業国家』。バーナムは経営者革命
経営者支配を実証したのはガルブレイスバーリ=ミーンズ『近代株式会社と私有財産』(1932 年)
エージェンシー理論で経営者がプリンシパル株主がプリンシパル(依頼人)、経営者がエージェント(代理人)
コーポレートガバナンス・コードは法律で罰則がある法律ではない。コンプライ・オア・エクスプレイン方式
スチュワードシップ・コードは上場企業向け機関投資家向け。企業向けはコーポレートガバナンス・コード
CSV は本業と切り離した社会貢献本業の戦略として社会課題を解決し利益も生む(ポーター=クレイマー)。それは CSR の社会貢献活動
ESG の G は GrowthGovernance(企業統治)
MBO は買収先の資産を担保に借り入れて買収するそれは LBO。MBO は経営陣による自社の買収
TOB は取引所の市場内で株式を買い集める市場外で公告して買い集める。TOB が義務になる基準は 2026 年 5 月から「議決権の 30 %超」(それまでは 3 分の 1 超)
ホワイトナイトは重要資産を売却する防衛策それはクラウンジュエル。ホワイトナイトは友好的な第三者に株式を取得してもらう
持株会社は 1947 年に解禁された1947 年の独占禁止法で禁止、1997 年改正で解禁
三種の神器は終身雇用・年功序列・メインバンク終身雇用・年功序列・企業別労働組合(アベグレン)
株式持ち合いは 1990 年代以降に広がった戦後に広がり、1990 年代以降は解消が進んだ
ジョブ型は日本の伝統的な雇用欧米型。日本の伝統はメンバーシップ型
支払利息は営業利益の段階で引く営業外費用。経常利益の段階で引く
ROE = 当期純利益 ÷ 総資産それは ROA。ROE は当期純利益 ÷ 自己資本
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 変動費率固定費 ÷(1 − 変動費率)

8. 解き方の型

  1. 会社の種類は「合名=全員無限、合資=混在、合同・株式=全員有限」の 1 行で切る
  2. 機関は「監査役会(監査役・半数以上社外)/監査等委員会(取締役・過半数社外・2015 年)/指名委員会等(3 委員会・執行役)」の 3 つを表で並べ、肢の「だれが」「何人」「いつから」を照合する
  3. 所有と経営の分離は年代順に「1932 バーリ=ミーンズ(経営者支配)→ 1941 バーナム(経営者革命)→ 1967 ガルブレイス(テクノストラクチュア)
  4. ガバナンスは「投資家側=スチュワードシップ(2014)、企業側=CG コード(2015・2021・2026 改訂・プライム 3 分の 1)」。CSR は責任、CSV は本業で共通価値、ESG は投資の物差し
  5. M&A の用語は「だれが(MBO=経営陣)、何を担保に(LBO=買収先の資産)、どこで(TOB=市場外)」で区別し、防衛策は「新株予約権=ポイズンピル、第三者=ホワイトナイト、資産売却=クラウンジュエル」
  6. 日本的経営は「三種の神器(雇用)+メインバンク・持ち合い・系列(企業間)」で、1990 年代以降は「解消・成果主義・ジョブ型」へ
  7. 計算問題は式を書いてから数字を入れる:ROE = 純利益 ÷ 自己資本、自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産、損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)。損益分岐点は「その売上高で変動費 + 固定費 = 売上高になるか」で検算する

9. 小テストへ

→ 小テスト(zo-05

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参考資料

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