地方上級 / 物理 / zn-02
力学(運動・力のつり合い・エネルギー)
この単元でできるようになること
- 等加速度直線運動の 3 公式を「時間が分かっているか」で使い分け、v–t グラフの面積で距離を出せる
- 自由落下・鉛直投げ上げを、g = 9.8 m/s² を入れた等加速度運動として計算できる
- 力のつり合い(重力・垂直抗力・張力・弾性力・摩擦力)を図に描き、運動方程式 ma = F を立てられる
- 仕事・位置エネルギー・運動エネルギーを計算し、力学的エネルギー保存則で速さや高さを求められる
- 慣性の法則・作用反作用・つり合いの違いを、文章の正誤問題で見分けられる
試験での位置づけ
公務員試験の自然科学「物理」は、地方上級で 1〜2 問、国家一般職でも 1 問程度の出題で、そのうち力学が最も出題されやすい分野です。範囲は高校の物理基礎(等加速度運動・力と運動・仕事とエネルギー)が中心で、公式に数値を入れる計算問題と、「慣性の法則の説明として妥当なもの」のような文章の正誤問題が半々くらいです。
計算では重力加速度を 9.8 m/s² とする問題がほとんどですが、問題文で「10 m/s² とする」と指定されることもあります。問題文の指定を優先してください。この単元では公式を「いつ使うか」の判断基準とともに整理します。1 つ 1 つを丁寧に練習したい場合は高校物理基礎の pb-01〜pb-06 に進んでください。
1. 等加速度直線運動 ── 3 公式と v–t グラフ
まずここだけ
初速度 v₀、加速度 a で t 秒たったときの速度 v と変位 x は、次の 3 本で決まります。
① v = v₀ + at ② x = v₀t + ½at² ③ v² − v₀² = 2ax ← 時間 t を使わない
使い分けの基準は 1 つ、「時間 t が分かっている(聞かれている)か」です。t が登場しない問題(「止まるまでに進む距離は」など)は ③ が最短です。
20 m/s で走る車が加速度 −4 m/s² で減速して止まるまでの距離 0 − 20² = 2 × (−4) × x → x = 50 m
ここまでできれば十分
v–t グラフ(横軸に時間、縦軸に速度)は、傾きが加速度、グラフと横軸の間の面積が移動距離です。減速して止まる問題は「三角形の面積」で暗算できます。
20 m/s から 5 秒で止まる → 面積 = ½ × 5 × 20 = 50 m
単位換算:1 m/s = 3.6 km/h。72 km/h = 20 m/s のような換算が問題文にまぎれていることがあります。
相対速度:A から見た B の速度 = B の速度 − A の速度。同じ向きなら差、逆向きなら和になります。
2. 落体の運動 ── g = 9.8 を入れるだけ
まずここだけ
自由落下は「初速度 0、加速度 g = 9.8 m/s²(下向き)」の等加速度運動です。
t 秒後の速さ v = gt、落下距離 y = ½gt² 2 秒後:v = 19.6 m/s、y = ½ × 9.8 × 4 = 19.6 m
質量は関係しません。重い物体も軽い物体も(空気抵抗を無視すれば)同じ速さで落ちます。重力 mg を質量 m で割ると加速度は g になるからです。
ここまでできれば十分
鉛直投げ上げは、上向きを正として初速度 v₀、加速度 −g の等加速度運動です。
最高点では速度 0(加速度は g のまま) 最高点までの時間 t = v₀/g、最高点の高さ h = v₀²/(2g) v₀ = 19.6 m/s → t = 2 秒、h = 19.6²/(2 × 9.8) = 19.6 m
投げ上げてから元の高さに戻るまでの時間は、最高点までの時間の 2 倍(上りと下りは対称)です。「最高点で速度が 0 だから加速度も 0」は誤りで、加速度は常に下向きに 9.8 m/s² です。
3. 力のつり合いと運動方程式
まずここだけ
物体にはたらく力を図に描く(力の図示)ことが出発点です。よく出る力は次の 5 つです。
| 力 | 大きさ | 向き |
|---|---|---|
| 重力 | mg | 鉛直下向き |
| 垂直抗力 N | 面が押す力(つり合いから決まる) | 面に垂直 |
| 張力 T | 糸が引く力(つり合いから決まる) | 糸の方向 |
| 弾性力 | kx(フックの法則) | 自然長に戻す向き |
| 摩擦力 | 最大静止摩擦力 μN、動摩擦力 μ’N | 運動(しようとする向き)と逆 |
静止しているなら力の合計が 0(つり合い)。ばねにおもりをつるして静止しているなら kx = mg です。
ばね定数 98 N/m のばねに 0.5 kg のおもり → 98 × x = 0.5 × 9.8 = 4.9 → x = 0.05 m = 5 cm
ここまでできれば十分
動いているなら運動方程式 ma = F(F は力の合計)。
なめらかな床の上の 4 kg の物体を 8 N で引く → 4a = 8 → a = 2 m/s² あらい床(動摩擦係数 0.1)なら、摩擦力 0.1 × 4 × 9.8 = 3.92 N が逆向き → 4a = 8 − 3.92 → a = 1.02 m/s²
2 物体をつないだ問題は、「全体で 1 つの運動方程式 → 加速度」「片方だけで運動方程式 → 張力」の 2 段で解きます。
なめらかな床に A(3 kg)と B(4 kg)を糸でつなぎ、A を 21 N で引く 全体:(3 + 4)a = 21 → a = 3 m/s² B だけ:B を引く力は張力 T だけ → T = 4 × 3 = 12 N
作用反作用とつり合いの区別は正誤問題の定番です。作用反作用は「2 つの物体の間で互いに及ぼし合う力」(本が机を押す ⇔ 机が本を押す)。つり合いは「1 つの物体にはたらく複数の力の合計が 0」(本にはたらく重力と垂直抗力)。机の上の本の「重力と垂直抗力」は作用反作用ではありません。
もう一歩(発展)
斜面上の物体では、重力を斜面方向 mg sin θ と斜面に垂直な方向 mg cos θ に分解します。なめらかな斜面の加速度は g sin θ(θ = 30° なら 4.9 m/s²)で、質量によりません。摩擦のある斜面で静止している条件は mg sin θ ≦ μ mg cos θ、つまり tan θ ≦ μ です。
4. 仕事とエネルギー ── 保存則で「途中を飛ばす」
まずここだけ
仕事 W = Fs cos θ(θ は力と移動方向のなす角。同じ向きなら W = Fs、垂直なら 0) 位置エネルギー U = mgh 運動エネルギー K = ½mv² 単位はいずれも J(ジュール)= N·m。仕事率 P = W/t の単位は W(ワット)
質量 2 kg の物体が 3 m/s で動いている → K = ½ × 2 × 9 = 9 J 同じ物体を 5 m 持ち上げる → U = 2 × 9.8 × 5 = 98 J(持ち上げるのに要した仕事に等しい)
ここまでできれば十分
重力や弾性力だけが仕事をするとき(摩擦・空気抵抗がないとき)、力学的エネルギー K + U は一定です。落ちる途中の速さ、振り子の最下点の速さ、斜面をどこまで登るかは、この 1 本で途中の運動を飛ばして解けます。
高さ 10 m から静かにはなした小球の地面での速さ mgh = ½mv² → v = √(2gh) = √(2 × 9.8 × 10) = √196 = 14 m/s(質量は消える)
摩擦があるときは力学的エネルギーは保存されず、減った分が熱になります。「減少分 = 摩擦力 × 距離」という形で出題されます。
もう一歩(発展)
高校の「物理」(物理基礎の先)で扱う運動量保存則(衝突の前後で m₁v₁ + m₂v₂ が一定)や等速円運動・単振動も、地方上級でごくまれに出題されます。基礎科目の範囲を固めた上で余裕があれば、「運動量 mv の合計は衝突で変わらない/運動エネルギーは弾性衝突以外では減る」という 2 点だけ押さえておくと対応できます。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 最高点では速度も加速度も 0 | 速度は 0 だが加速度は下向きに 9.8 m/s² のまま |
| 重い物体の方が速く落ちる | 空気抵抗がなければ同時に落ちる(加速度は質量によらず g) |
| 机の上の本の重力と垂直抗力は作用反作用 | どちらも本にはたらく力なので「つり合い」。反作用は「本が机を押す力」 |
| 力を加え続けると一定の速さで動く | 力を加え続けると加速する。等速になるのは力の合計が 0 のとき |
| 仕事 = 力 × 距離(向きを見ない) | W = Fs cos θ。力と移動方向が垂直なら仕事は 0 |
| 速さを 2 倍にすると運動エネルギーも 2 倍 | ½mv² なので 4 倍 |
| 摩擦があっても力学的エネルギーは保存 | 摩擦力が負の仕事をするので減る(熱になる) |
6. 解き方の型
- 図を描き、はたらく力をすべて矢印で書き込む(重力・面からの力・糸・ばね・摩擦)
- 静止なら「力の合計 = 0」、動くなら「ma = 力の合計」。2 物体なら「全体 → 片方」の 2 段
- 等加速度運動は「t があるか」で ①②か③を選ぶ。減速して止まる問題は v–t グラフの三角形
- 「途中の速さ・到達する高さ」は力学的エネルギー保存で途中を飛ばす(摩擦がある場合だけ減少分を引く)
- 正誤問題は「慣性・作用反作用・つり合い」の定義に照らして 1 文ずつ判定する
7. 小テストへ
→ 小テスト(zn-02)
関連する単元
- 前提:s3-01 力の合成分解・速さ・運動、s3-02 仕事・仕事率・エネルギー(中学理科)
- 詳しく学ぶ(高校物理基礎):pb-01 速度と加速度、pb-02 落体の運動、pb-03 力のつり合い・作用反作用、pb-04 運動の法則、pb-05 摩擦力・圧力・浮力、pb-06 仕事と力学的エネルギー
- 次に進む:zn-03 波動・電気
- 同じ考え方を使う:zs-14 速さ(数的推理)
参考資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 理科編」── 物理基礎「物体の運動とエネルギー」の範囲
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野
- 各都道府県・政令指定都市の職員採用試験受験案内(教養試験の出題分野「自然科学」)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/shizen/zn-02/ / 更新 2026-09-14