地方上級 / 物理 / zn-02

更新 2026-09-14

力学(運動・力のつり合い・エネルギー)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

公務員試験の自然科学「物理」は、地方上級で 1〜2 問、国家一般職でも 1 問程度の出題で、そのうち力学が最も出題されやすい分野です。範囲は高校の物理基礎(等加速度運動・力と運動・仕事とエネルギー)が中心で、公式に数値を入れる計算問題と、「慣性の法則の説明として妥当なもの」のような文章の正誤問題が半々くらいです。

計算では重力加速度を 9.8 m/s² とする問題がほとんどですが、問題文で「10 m/s² とする」と指定されることもあります。問題文の指定を優先してください。この単元では公式を「いつ使うか」の判断基準とともに整理します。1 つ 1 つを丁寧に練習したい場合は高校物理基礎の pb-01pb-06 に進んでください。


1. 等加速度直線運動 ── 3 公式と v–t グラフ

まずここだけ

初速度 v₀、加速度 a で t 秒たったときの速度 v と変位 x は、次の 3 本で決まります。

v = v₀ + atx = v₀t + ½at²v² − v₀² = 2ax ← 時間 t を使わない

使い分けの基準は 1 つ、「時間 t が分かっている(聞かれている)か」です。t が登場しない問題(「止まるまでに進む距離は」など)は ③ が最短です。

20 m/s で走る車が加速度 −4 m/s² で減速して止まるまでの距離 0 − 20² = 2 × (−4) × x → x = 50 m

ここまでできれば十分

v–t グラフ(横軸に時間、縦軸に速度)は、傾きが加速度、グラフと横軸の間の面積が移動距離です。減速して止まる問題は「三角形の面積」で暗算できます。

20 m/s から 5 秒で止まる → 面積 = ½ × 5 × 20 = 50 m

単位換算:1 m/s = 3.6 km/h。72 km/h = 20 m/s のような換算が問題文にまぎれていることがあります。

相対速度:A から見た B の速度 = B の速度 − A の速度。同じ向きなら差、逆向きなら和になります。


2. 落体の運動 ── g = 9.8 を入れるだけ

まずここだけ

自由落下は「初速度 0、加速度 g = 9.8 m/s²(下向き)」の等加速度運動です。

t 秒後の速さ v = gt、落下距離 y = ½gt² 2 秒後:v = 19.6 m/s、y = ½ × 9.8 × 4 = 19.6 m

質量は関係しません。重い物体も軽い物体も(空気抵抗を無視すれば)同じ速さで落ちます。重力 mg を質量 m で割ると加速度は g になるからです。

ここまでできれば十分

鉛直投げ上げは、上向きを正として初速度 v₀、加速度 −g の等加速度運動です。

最高点では速度 0(加速度は g のまま) 最高点までの時間 t = v₀/g、最高点の高さ h = v₀²/(2g) v₀ = 19.6 m/s → t = 2 秒、h = 19.6²/(2 × 9.8) = 19.6 m

投げ上げてから元の高さに戻るまでの時間は、最高点までの時間の 2 倍(上りと下りは対称)です。「最高点で速度が 0 だから加速度も 0」は誤りで、加速度は常に下向きに 9.8 m/s² です。


3. 力のつり合いと運動方程式

まずここだけ

物体にはたらく力を図に描く(力の図示)ことが出発点です。よく出る力は次の 5 つです。

大きさ向き
重力mg鉛直下向き
垂直抗力 N面が押す力(つり合いから決まる)面に垂直
張力 T糸が引く力(つり合いから決まる)糸の方向
弾性力kx(フックの法則)自然長に戻す向き
摩擦力最大静止摩擦力 μN、動摩擦力 μ’N運動(しようとする向き)と逆

静止しているなら力の合計が 0(つり合い)。ばねにおもりをつるして静止しているなら kx = mg です。

ばね定数 98 N/m のばねに 0.5 kg のおもり → 98 × x = 0.5 × 9.8 = 4.9 → x = 0.05 m = 5 cm

ここまでできれば十分

動いているなら運動方程式 ma = F(F は力の合計)。

なめらかな床の上の 4 kg の物体を 8 N で引く → 4a = 8 → a = 2 m/s² あらい床(動摩擦係数 0.1)なら、摩擦力 0.1 × 4 × 9.8 = 3.92 N が逆向き → 4a = 8 − 3.92 → a = 1.02 m/s²

2 物体をつないだ問題は、「全体で 1 つの運動方程式 → 加速度」「片方だけで運動方程式 → 張力」の 2 段で解きます。

なめらかな床に A(3 kg)と B(4 kg)を糸でつなぎ、A を 21 N で引く 全体:(3 + 4)a = 21 → a = 3 m/s² B だけ:B を引く力は張力 T だけ → T = 4 × 3 = 12 N

作用反作用とつり合いの区別は正誤問題の定番です。作用反作用は「2 つの物体の間で互いに及ぼし合う力」(本が机を押す ⇔ 机が本を押す)。つり合いは「1 つの物体にはたらく複数の力の合計が 0」(本にはたらく重力と垂直抗力)。机の上の本の「重力と垂直抗力」は作用反作用ではありません。

もう一歩(発展)

斜面上の物体では、重力を斜面方向 mg sin θ と斜面に垂直な方向 mg cos θ に分解します。なめらかな斜面の加速度は g sin θ(θ = 30° なら 4.9 m/s²)で、質量によりません。摩擦のある斜面で静止している条件は mg sin θ ≦ μ mg cos θ、つまり tan θ ≦ μ です。


4. 仕事とエネルギー ── 保存則で「途中を飛ばす」

まずここだけ

仕事 W = Fs cos θ(θ は力と移動方向のなす角。同じ向きなら W = Fs、垂直なら 0) 位置エネルギー U = mgh 運動エネルギー K = ½mv² 単位はいずれも J(ジュール)= N·m。仕事率 P = W/t の単位は W(ワット)

質量 2 kg の物体が 3 m/s で動いている → K = ½ × 2 × 9 = 9 J 同じ物体を 5 m 持ち上げる → U = 2 × 9.8 × 5 = 98 J(持ち上げるのに要した仕事に等しい)

ここまでできれば十分

重力や弾性力だけが仕事をするとき(摩擦・空気抵抗がないとき)、力学的エネルギー K + U は一定です。落ちる途中の速さ、振り子の最下点の速さ、斜面をどこまで登るかは、この 1 本で途中の運動を飛ばして解けます。

高さ 10 m から静かにはなした小球の地面での速さ mgh = ½mv² → v = √(2gh) = √(2 × 9.8 × 10) = √196 = 14 m/s(質量は消える)

摩擦があるときは力学的エネルギーは保存されず、減った分が熱になります。「減少分 = 摩擦力 × 距離」という形で出題されます。

もう一歩(発展)

高校の「物理」(物理基礎の先)で扱う運動量保存則(衝突の前後で m₁v₁ + m₂v₂ が一定)や等速円運動・単振動も、地方上級でごくまれに出題されます。基礎科目の範囲を固めた上で余裕があれば、「運動量 mv の合計は衝突で変わらない/運動エネルギーは弾性衝突以外では減る」という 2 点だけ押さえておくと対応できます。


5. よくある間違い

間違い正しくは
最高点では速度も加速度も 0速度は 0 だが加速度は下向きに 9.8 m/s² のまま
重い物体の方が速く落ちる空気抵抗がなければ同時に落ちる(加速度は質量によらず g)
机の上の本の重力と垂直抗力は作用反作用どちらも本にはたらく力なので「つり合い」。反作用は「本が机を押す力」
力を加え続けると一定の速さで動く力を加え続けると加速する。等速になるのは力の合計が 0 のとき
仕事 = 力 × 距離(向きを見ない)W = Fs cos θ。力と移動方向が垂直なら仕事は 0
速さを 2 倍にすると運動エネルギーも 2 倍½mv² なので 4 倍
摩擦があっても力学的エネルギーは保存摩擦力が負の仕事をするので減る(熱になる)

6. 解き方の型

  1. 図を描き、はたらく力をすべて矢印で書き込む(重力・面からの力・糸・ばね・摩擦)
  2. 静止なら「力の合計 = 0」、動くなら「ma = 力の合計」。2 物体なら「全体 → 片方」の 2 段
  3. 等加速度運動は「t があるか」で ①②か③を選ぶ。減速して止まる問題は v–t グラフの三角形
  4. 「途中の速さ・到達する高さ」は力学的エネルギー保存で途中を飛ばす(摩擦がある場合だけ減少分を引く)
  5. 正誤問題は「慣性・作用反作用・つり合い」の定義に照らして 1 文ずつ判定する

7. 小テストへ

→ 小テスト(zn-02

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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