地方上級 / 物理 / zn-03
波動・電気(波の性質・オームの法則・電力)
この単元でできるようになること
- 波の基本量(波長・振動数・周期・速さ)を v = fλ の 1 本の式でつなぎ、反射・屈折・回折・干渉のちがいを言える
- 音の三要素(高さ・大きさ・音色)を波の量に対応させ、うなり・反射音(往復)の計算ができる
- オームの法則 V = RI と直列・並列の合成抵抗で、回路の電流・電圧を求められる
- 電力 P = VI・電力量・ジュール熱を、単位(W・J・kWh)を間違えずに計算できる
- 電磁波を波長の順に並べ、家庭の配線が並列である理由を説明できる
試験での位置づけ
地方上級・国家一般職の物理は 1〜2 問で、力学(zn-02)が最もよく問われ、次に波動と電気が出題されやすい分野です。波動は「用語の正誤」(回折・屈折・ドップラー効果など)が中心で、計算は v = fλ と反射音の往復程度です。電気はオームの法則・合成抵抗・電力の計算 1 問が定番で、中学(s2-01・s2-02)と高校の物理基礎(pb-08〜pb-10)の範囲を超えることはほとんどありません。公式の数は少ないので、単位を見て式を選ぶ習慣をつければ得点源にできます。
1. 波の基本 ── v = fλ を 1 本だけ覚える
まずここだけ
波を表す量は 4 つです。
| 量 | 記号・単位 | 意味 |
|---|---|---|
| 波長 | λ(ラムダ)・m | 山から次の山までの長さ |
| 振動数 | f・Hz | 1 秒間に振動する回数 |
| 周期 | T・s | 1 回振動するのにかかる時間。T = 1/f |
| 振幅 | A・m | 振れ幅(山の高さ)。波の速さには関係しない |
これらをつなぐ式は 1 本だけです。
v = fλ(1 秒に f 個の波が出て、1 個の長さが λ だから、1 秒に fλ 進む)
振動数 5 Hz、波長 0.4 m の波 → v = 5 × 0.4 = 2 m/s 音速 340 m/s、振動数 170 Hz の音の波長 → λ = 340 ÷ 170 = 2 m
横波と縦波:媒質の振動方向が進行方向と垂直なのが横波(光・弦の波・地震の S 波)、平行なのが縦波(音・地震の P 波)。縦波は密な部分と疎な部分がくり返すので疎密波ともいいます。
ここまでできれば十分
波に起こる 4 つの現象は、名前の入れかえで問われます。
| 現象 | 何が起こるか | 身近な例 |
|---|---|---|
| 反射 | 境界ではね返る。入射角 = 反射角 | やまびこ・鏡 |
| 屈折 | 別の媒質に入るとき速さが変わり、進む向きが変わる。振動数は変わらない | 水中の棒が曲がって見える・浅瀬で波の向きが変わる |
| 回折 | 障害物の背後やすき間の先に回り込む。波長が長いほど目立つ | 塀の向こうの声が聞こえる・AM ラジオが山かげでも入る |
| 干渉 | 2 つの波が重なって強め合い・弱め合う | シャボン玉の色・ノイズキャンセリング |
重なった波は、重なっている間だけ変位が足し合わされ(重ね合わせの原理)、通り過ぎればそれぞれ元の形で進みます(波の独立性)。「重なった波は打ち消し合って消える」は誤りです。
定常波(定在波):同じ振幅・振動数の波が逆向きに進んで重なると、まったく振動しない節と、大きく振動する腹が交互にできる、進まない波になります。隣り合う節と節の間隔は波長の半分です。弦楽器の弦や気柱(管楽器)の音は定常波です。
もう一歩(発展)
ドップラー効果:音源と観測者が近づくと音は高く(振動数が大きく)、遠ざかると低く聞こえます。救急車のサイレンが通り過ぎた瞬間に低くなるのがこれです。星の光でも同じことが起こり、遠ざかる銀河の光は波長が長い側(赤い側)にずれます(赤方偏移)。
2. 音 ── 三要素と「往復」
まずここだけ
| 音の要素 | 決める量 |
|---|---|
| 高さ | 振動数(大きいほど高い) |
| 大きさ | 振幅(大きいほど大きい) |
| 音色 | 波形(同じ高さ・大きさでも楽器で違う) |
音の速さは空気中で約 340 m/s(15℃ 付近)で、気温が高いほど速くなります。音は媒質がないと伝わらないので真空中では聞こえません。水中や鉄の中では空気中より速く伝わります(液体・固体のほうが速い)。
ここまでできれば十分
反射音(やまびこ)は往復を忘れないこと。
崖に向かって声を出し、2 秒後に反射音が聞こえた。崖までの距離は? 音が進んだ距離 = 340 × 2 = 680 m。これは往復分なので崖までは 340 m
うなり:振動数がわずかに違う 2 つの音を同時に鳴らすと、音が周期的に大きくなったり小さくなったりします。1 秒間のうなりの回数は振動数の差です。
440 Hz と 444 Hz → 1 秒に 4 回のうなり
弦の振動:弦を短く・細く・強く張るほど高い音が出ます(ギターで音を高くするときの操作を思い出せば向きを間違えません)。
3. オームの法則と合成抵抗
まずここだけ
V = RI(電圧 V ボルト = 抵抗 R オーム × 電流 I アンペア)
20 Ω の抵抗に 6 V → I = 6 ÷ 20 = 0.3 A 2 A 流れて 10 V かかっている抵抗 → R = 10 ÷ 2 = 5 Ω
抵抗の大きさは導線の長さに比例し、断面積に反比例します(R = ρL/S。ρ は抵抗率で物質ごとの値)。長さ 2 倍・断面積 2 倍なら抵抗はもとと同じです。金属は温度が上がると抵抗が大きくなります。
ここまでできれば十分
| 接続 | 電流 | 電圧 | 合成抵抗 |
|---|---|---|---|
| 直列 | どこも同じ | 抵抗の比に分かれる | R = R₁ + R₂(どの抵抗より大きくなる) |
| 並列 | 抵抗の逆比に分かれる | どちらも同じ | 1/R = 1/R₁ + 1/R₂(どの抵抗より小さくなる) |
並列 2 本のときは R = R₁R₂/(R₁ + R₂)(積 ÷ 和)が速いです。
6 Ω と 3 Ω を並列 → 6 × 3 ÷ (6 + 3) = 2 Ω 同じく直列 → 6 + 3 = 9 Ω
直列回路の電圧の分け方:12 V の電源に 2 Ω と 4 Ω を直列につなぐと、電流は 12 ÷ 6 = 2 A で共通。2 Ω には 4 V、4 Ω には 8 V。電圧は抵抗の比 2 : 4 に分かれると覚えると、電流を出さずに答えられます。
もう一歩(発展)
直列と並列の組み合わせは、並列部分を先に 1 本の抵抗にまとめてから直列に足します。
3 Ω に、6 Ω と 3 Ω の並列部分を直列につなぐ → 並列部分 = 6 × 3 ÷ 9 = 2 Ω。全体 = 3 + 2 = 5 Ω
回路を流れる電流が分かれば、各部分の電圧は V = RI で順に出せます。
4. 電力・電力量・ジュール熱 ── 単位で式を選ぶ
まずここだけ
電力 P = VI(単位 W ワット)。V = RI を使うと P = I²R = V²/R とも書ける
100 V で 5 A 流れる電気ストーブ → P = 100 × 5 = 500 W 10 Ω に 20 V → P = 20² ÷ 10 = 40 W
電力量(=発生する熱量)は 電力 × 時間です。単位の組み合わせを表で押さえます。
| 電力の単位 | 時間の単位 | 電力量の単位 |
|---|---|---|
| W | 秒 | J(1 W × 1 s = 1 J) |
| W | 時間 | Wh |
| kW | 時間 | kWh(電気料金の単位) |
1,000 W のドライヤーを 30 分 → 1 kW × 0.5 h = 0.5 kWh 同じものを J で → 1,000 W × 1,800 s = 1,800,000 J(= 1.8 × 10⁶ J)
ここまでできれば十分
抵抗で発生する熱をジュール熱といい、Q = I²Rt(= VIt = Pt)で計算します。
5 Ω の電熱線に 2 A を 60 秒 → Q = 2² × 5 × 60 = 1,200 J
家庭の配線は並列です。だから各器具にはいつも 100 V がかかり、1 つを消しても他は使えます。器具を増やすほど合成抵抗は小さくなり、幹線の電流の合計が増えるので、限度を超えるとブレーカーが落ちます。「たこ足配線が危ない」のは、1 本のコードに流れる電流が増えてジュール熱で発熱するからです。
家庭に届く電気は交流(向きが周期的に変わる。東日本 50 Hz・西日本 60 Hz)、乾電池は直流です。
もう一歩(発展)
電磁波は電場と磁場の振動が伝わる波で、真空中を光の速さ(約 3.0 × 10⁸ m/s)で進みます。波長の長い順に
電波 → 赤外線 → 可視光線(赤 → 紫)→ 紫外線 → X 線 → γ 線
波長が短いほど振動数が大きく、エネルギーも大きくなります。赤外線は熱を運ぶ(こたつ・リモコン)、紫外線は日焼け・殺菌、X 線はレントゲン、という用途との対応も問われます。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 振幅が大きいほど波の速さも速い | 速さは媒質で決まる。振幅は関係しない |
| 屈折すると振動数が変わる | 変わるのは速さと波長。振動数は変わらない |
| 波長が短いほど回折しやすい | 長いほど回折しやすい(低い音ほど回り込む) |
| 音は真空中でも伝わる | 媒質が必要。真空中では伝わらない(光は伝わる) |
| 反射音の距離 = 340 × 時間 | 往復なので÷ 2 |
| 並列にすると合成抵抗が大きくなる | 並列はどの抵抗より小さくなる。直列は和 |
| 直列では電圧がどこも同じ | 直列で同じなのは電流。電圧が同じなのは並列 |
| 1 kWh = 1,000 J | 1 kWh = 1,000 W × 3,600 s = 3.6 × 10⁶ J |
| 家庭の配線は直列 | 並列。だから 1 つ消しても他は使える |
6. 解き方の型
- 波の計算は「Hz か秒か」を見て f と T を区別し、v = fλ に代入する。反射音は往復
- 回路は「直列なら電流が共通、並列なら電圧が共通」と書いてから始める。並列部分は先に 1 本にまとめる
- 電力は与えられた量で式を選ぶ:V と I → VI、I と R → I²R、V と R → V²/R
- 電力量は単位を見る:J なら秒、kWh なら kW と時間
- 用語の正誤問題は「屈折 ⇔ 回折」「振動数 ⇔ 振幅」「直列 ⇔ 並列」の入れかえを疑う
7. 小テストへ
→ 小テスト(zn-03)
関連する単元
- 前提:s1-02 音の性質、s2-01 回路と電流・電圧・オームの法則、s2-02 電力・電力量・発熱量(中学理科)
- 高校の土台:pb-08 波の性質、pb-09 音、pb-10 電気(オームの法則・抵抗率・消費電力・交流)
- 同じ教科:zn-02 力学(運動・力のつり合い・エネルギー)
- 地震波(P 波・S 波)は zn-09 で扱う
参考資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 理科編」── 物理基礎「様々な物理現象とエネルギーの利用」
- 高等学校「物理基礎」教科書(波・音・電気の各章)
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(自然科学)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/shizen/zn-03/ / 更新 2026-09-14