地方上級 / 化学 / zn-06
無機と有機の基礎(気体・金属・有機化合物)
この単元でできるようになること
- 主な気体(水素・酸素・二酸化炭素・アンモニア・塩素・塩化水素・硫化水素・二酸化硫黄・窒素酸化物)の色・におい・水への溶け方・捕集法・製法・検出法を表で言える
- 金属の性質をイオン化傾向と結びつけ、アルカリ金属・アルミニウム・鉄・銅のそれぞれの特徴と炎色反応を答えられる
- 有機化合物を官能基で分類し、アルコール → アルデヒド → カルボン酸の酸化の流れと、エステル・油脂・高分子の関係を説明できる
- 5 択の正誤問題で「どこが入れかわっているか」を見つけられる
試験での位置づけ
地方上級・国家一般職の化学は 1〜2 問で、理論化学(zn-04・zn-05)と並んで無機・有機の知識問題が出題されやすい分野です。計算はほとんどなく、「気体の性質」「金属の性質」「有機化合物の分類」を表のまま覚えているかが問われます。選択肢は 5 つの短い文で、そのうち 1 つの要素(色・捕集法・反応の相手)を入れかえた誤り文が並びます。高校の化学基礎の範囲(cb-01〜cb-10)を土台に、ここでは「試験で並べられやすい比較」に絞ってまとめます。
1. 気体の性質 ── 表を 1 枚で持つ
まずここだけ
気体の問題は、色・におい・水への溶け方・空気より重いか軽いかの 4 点でほぼ決まります。
| 気体 | 色・におい | 水への溶け方と液性 | 捕集法 | 主な製法 | 検出・特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 水素 H₂ | 無色・無臭 | 溶けにくい | 水上置換 | 亜鉛に希硫酸 | 最も軽い気体。燃えて水になる |
| 酸素 O₂ | 無色・無臭 | 溶けにくい | 水上置換 | 過酸化水素水に酸化マンガン(IV)(触媒) | 火のついた線香が炎を上げて燃える |
| 窒素 N₂ | 無色・無臭 | 溶けにくい | 水上置換 | 液体空気の分留 | 空気の約 78%。反応しにくい |
| 二酸化炭素 CO₂ | 無色・無臭 | 少し溶けて弱酸性 | 下方置換(水上置換も可) | 石灰石に希塩酸 | 石灰水を白く濁らせる |
| アンモニア NH₃ | 無色・刺激臭 | 非常によく溶けて塩基性 | 上方置換 | 塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを加熱 | 濃塩酸を近づけると白煙(塩化アンモニウム) |
| 塩化水素 HCl | 無色・刺激臭 | 非常によく溶けて強酸性 | 下方置換 | 塩化ナトリウムに濃硫酸を加えて加熱 | アンモニアで白煙 |
| 塩素 Cl₂ | 黄緑色・刺激臭 | 溶けて酸性・漂白作用 | 下方置換 | 酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加えて加熱 | ヨウ化カリウムデンプン紙を青くする。有毒 |
| 硫化水素 H₂S | 無色・腐卵臭 | 溶けて弱酸性 | 下方置換 | 硫化鉄(II)に希硫酸 | 酢酸鉛紙を黒くする。還元性。有毒 |
| 二酸化硫黄 SO₂ | 無色・刺激臭 | 溶けて弱酸性 | 下方置換 | 銅に濃硫酸を加えて加熱 | 漂白作用・還元性。硫化水素と反応して硫黄 |
| 一酸化窒素 NO | 無色 | 溶けにくい | 水上置換 | 銅に希硝酸 | 空気に触れるとすぐ二酸化窒素(赤褐色)になる |
| 二酸化窒素 NO₂ | 赤褐色・刺激臭 | 溶けて酸性 | 下方置換 | 銅に濃硝酸 | 有毒。硝酸の原料 |
捕集法の決め方:水に溶けにくい → 水上置換(最も純粋に集まる)。水に溶けやすく空気より軽い → 上方置換(実質アンモニアだけ)。水に溶けやすく空気より重い → 下方置換。
色のある気体は 3 つだけ:塩素(黄緑)・二酸化窒素(赤褐)・オゾン(淡青)。それ以外は無色です。
ここまでできれば十分
「銅に硝酸・硫酸」で何が出るかは入れかえ問題の定番です。
| 反応 | 発生する気体 |
|---|---|
| 銅 + 希硝酸 | 一酸化窒素 NO |
| 銅 + 濃硝酸 | 二酸化窒素 NO₂ |
| 銅 + 熱濃硫酸 | 二酸化硫黄 SO₂ |
| 亜鉛 + 希硫酸 | 水素 H₂ |
銅は水素よりイオン化傾向が小さいので、希硫酸や希塩酸には溶けません。酸化力のある酸(硝酸・熱濃硫酸)にだけ溶けます。
もう一歩(発展)
乾燥剤との相性:アンモニア(塩基性)を濃硫酸(酸性)で乾かすと反応して吸収されてしまいます。アンモニアの乾燥にはソーダ石灰(塩基性)を使います。同様に、塩化カルシウムはアンモニアと化合物を作るので不可。「酸性の気体には酸性・中性の乾燥剤、塩基性の気体には塩基性の乾燥剤」と覚えます。
2. 金属の性質 ── イオン化傾向でつなぐ
まずここだけ
金属の反応性はイオン化傾向(陽イオンになりやすさ)の順に並べると整理できます。
Li > K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H₂) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au
| 範囲 | 水との反応 | 酸との反応 |
|---|---|---|
| Li・K・Ca・Na | 常温の水と反応して水素を出す | 溶ける |
| Mg | 熱水と反応 | 溶ける |
| Al・Zn・Fe | 高温の水蒸気と反応 | 希酸に溶けて水素を出す |
| Ni・Sn・Pb | 反応しない | 希酸に溶ける(Pb はほとんど溶けない) |
| Cu・Hg・Ag | 反応しない | 硝酸・熱濃硫酸(酸化力のある酸)にだけ溶ける |
| Pt・Au | 反応しない | 王水(濃硝酸 1 : 濃塩酸 3)にだけ溶ける |
ここまでできれば十分
個別の金属の「これだけ」:
| 金属 | 試験で問われやすい特徴 |
|---|---|
| ナトリウム Na | 軟らかい・水と激しく反応・石油中に保存・炎色反応は黄色 |
| カルシウム Ca | 常温の水と反応。酸化カルシウム(生石灰)は水と発熱して消石灰に。炎色反応は橙赤 |
| アルミニウム Al | 軽い・両性元素(酸にも強塩基にも溶ける)・濃硝酸には不動態で溶けない・ボーキサイトから溶融塩電解で得る・テルミット反応 |
| 亜鉛 Zn | 両性元素・トタン(鉄の表面を亜鉛でめっき)・乾電池の負極 |
| 鉄 Fe | 鉄鉱石をコークスで還元して製鉄・濃硝酸で不動態・鉄(II)イオンは淡緑色、鉄(III)イオンは黄褐色・ブリキ(鉄の表面をスズでめっき) |
| 銅 Cu | 電気・熱をよく通す(銀に次ぐ)・湿った空気で緑青・硫酸銅(II)水溶液は青色・青銅(Sn との合金)、黄銅(Zn との合金) |
| 銀 Ag | 電気・熱伝導性が金属中で最大・硫化水素で黒ずむ・ハロゲン化銀は感光性 |
| 金 Au | 展性・延性が最大・王水以外に溶けない |
| 水銀 Hg | 常温で唯一の液体金属・他の金属と合金(アマルガム)を作る |
両性元素(酸にも強塩基の水溶液にも溶ける)は Al・Zn・Sn・Pb(「ああ、すんなり」)。不動態(濃硝酸で表面に酸化被膜ができて溶けなくなる)は Al・Fe・Ni。
炎色反応:
| 元素 | Li | Na | K | Cu | Ca | Sr | Ba |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 色 | 赤 | 黄 | 赤紫 | 青緑 | 橙赤 | 紅(深赤) | 黄緑 |
「リアカー無き K 村、動力借るとするもくれない馬力」の語呂で覚える人が多い組み合わせです。
もう一歩(発展)
非金属元素もひとことずつ:ハロゲン(F・Cl・Br・I)は原子番号が小さいほど酸化力が強い(F₂ > Cl₂ > Br₂ > I₂)ので、臭化カリウム水溶液に塩素を通すと臭素が遊離します。フッ化水素酸はガラスを溶かすのでポリエチレン容器に保存。硫黄には斜方硫黄・単斜硫黄・ゴム状硫黄の同素体、炭素にはダイヤモンド・黒鉛・フラーレンの同素体があります。リンの同素体では黄リンが自然発火するので水中に保存します。
3. 有機化合物の基礎 ── 官能基で分類する
まずここだけ
有機化合物は炭素の骨格に官能基(性質を決める原子団)がついたものとして分類します。
| 官能基 | 名前 | 化合物の分類 | 例 | 性質 |
|---|---|---|---|---|
| −OH | ヒドロキシ基 | アルコール(鎖式)/フェノール類(ベンゼン環に直結) | エタノール/フェノール | アルコールは中性、フェノールは弱酸性 |
| −CHO | アルデヒド基(ホルミル基) | アルデヒド | アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド | 還元性(銀鏡反応・フェーリング液を還元) |
| >C=O | ケトン基(カルボニル基) | ケトン | アセトン | 還元性なし |
| −COOH | カルボキシ基 | カルボン酸 | 酢酸、ギ酸 | 弱酸性。ギ酸はアルデヒド基も持ち還元性あり |
| −COO− | エステル結合 | エステル | 酢酸エチル、油脂 | 果実のような香り。加水分解でカルボン酸とアルコールに戻る |
| −NH₂ | アミノ基 | アミン | アニリン | 弱塩基性 |
| −NO₂ | ニトロ基 | ニトロ化合物 | ニトロベンゼン、TNT | 爆発性のものが多い |
| −SO₃H | スルホ基 | スルホン酸 | ベンゼンスルホン酸 | 強酸性 |
酸化の流れ(第一級アルコール → アルデヒド → カルボン酸)が最も問われやすい部分です。
エタノール C₂H₅OH ──酸化──→ アセトアルデヒド CH₃CHO ──酸化──→ 酢酸 CH₃COOH
飲酒後の「悪酔い」の原因物質がアセトアルデヒドである、という形で出ることもあります。
ここまでできれば十分
炭化水素の分類:
| 分類 | 一般式 | 結合 | 例 | 反応 |
|---|---|---|---|---|
| アルカン | CₙH₂ₙ₊₂ | 単結合のみ(飽和) | メタン CH₄、プロパン C₃H₈ | 置換反応(光で塩素と) |
| アルケン | CₙH₂ₙ | 二重結合 1 つ | エチレン C₂H₄ | 付加反応(臭素水を脱色)、付加重合 |
| アルキン | CₙH₂ₙ₋₂ | 三重結合 1 つ | アセチレン C₂H₂ | 付加反応。カーバイドに水を加えて発生 |
| 芳香族 | ── | ベンゼン環 | ベンゼン C₆H₆、トルエン | 不飽和だが置換反応が起こりやすい |
アルカンの完全燃焼は CₙH₂ₙ₊₂ + (3n+1)/2 O₂ → n CO₂ + (n+1) H₂O。メタン 1 mol の燃焼に酸素 2 mol、プロパン 1 mol に酸素 5 mol です。
身近な有機化合物:
| 物質 | 覚えておく点 |
|---|---|
| メタン | 天然ガスの主成分。温室効果ガス |
| エチレン | 植物ホルモン(果実の成熟)。ポリエチレンの原料 |
| エタノール | 酒の成分。糖のアルコール発酵で生じる。消毒 |
| 酢酸 | 食酢の成分。純粋なものは冬に凍る(氷酢酸) |
| 酢酸エチル | 酢酸とエタノールのエステル。果実臭。溶剤 |
| ベンゼン | 正六角形の平面構造。発がん性。置換反応 |
| フェノール | 弱酸性。塩化鉄(III)水溶液で紫色に呈色 |
| 油脂 | グリセリンと高級脂肪酸のエステル。水酸化ナトリウムでけん化するとセッケン |
| セッケン | 高級脂肪酸のナトリウム塩。弱塩基性。硬水中で沈殿 |
| 合成洗剤 | 中性。硬水でも使える |
もう一歩(発展)
高分子化合物:小さな分子(単量体)が多数つながったもの。二重結合が開いてつながる付加重合(ポリエチレン・ポリ塩化ビニル・ポリスチレン)と、水などがとれてつながる縮合重合(ナイロン 66・ポリエチレンテレフタラート PET)に分けます。天然高分子ではデンプン・セルロース(ともにグルコースが多数つながったもの)、タンパク質(アミノ酸がペプチド結合でつながったもの)、天然ゴムがあります。
4. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| アンモニアは下方置換で集める | 空気より軽く水に溶けやすいので上方置換 |
| 二酸化炭素は水に溶けないので水上置換だけ | 少し溶けるが水上置換も可。純度を求めなければ下方置換 |
| 銅は希塩酸に溶けて水素を出す | 銅は水素よりイオン化傾向が小さく、希塩酸・希硫酸には溶けない |
| アルミニウムは濃硝酸によく溶ける | 不動態になり溶けない(希酸には溶ける) |
| 塩素は無色 | 黄緑色。二酸化窒素は赤褐色 |
| ナトリウムの炎色反応は赤 | 黄色。赤は Li、赤紫は K、青緑は Cu |
| エタノールを酸化すると酢酸になり、それ以上は変わらない | エタノール → アセトアルデヒド → 酢酸の 2 段階 |
| アルケンは置換反応、アルカンは付加反応 | 逆。二重結合があるアルケンが付加、アルカンは置換 |
| 油脂はカルボン酸である | 油脂はグリセリンと脂肪酸のエステル |
5. 覚え方の型
- 気体は「色のある 3 つ(Cl₂ 黄緑・NO₂ 赤褐・O₃ 淡青)」「上方置換は NH₃ だけ」「水上置換は溶けにくい気体(H₂・O₂・N₂・NO・CO)」の 3 つの例外グループから固める
- 金属はイオン化傾向の列を書き、「常温の水と反応するのは Na まで」「希酸に溶けるのは H より左」「王水だけは Pt・Au」と区切り線を 3 本引く
- 両性元素「ああすんなり」(Al・Zn・Sn・Pb)と不動態「Al・Fe・Ni」は別のグループとして覚える
- 有機は「官能基 → 性質」を 1 対 1 で覚え、酸化の流れ「アルコール → アルデヒド → カルボン酸」を口で言えるようにする
- 5 択の正誤文は、文の中の「色・捕集法・反応の相手・酸性か塩基性か」の 4 か所に線を引き、1 か所ずつ表と照らす
6. 小テストへ
→ 小テスト(zn-06)
関連する単元
- 前提:cb-01 物質の構成(炎色反応・同素体)、cb-02 原子の構造・周期表、cb-03 化学結合、zn-04 物質の構成と変化
- 同じ考え方を使う:cb-09 酸化と還元、cb-10 金属のイオン化傾向・電池・電気分解、zn-05 理論化学
- 中学の土台:s1-05 気体の性質・水溶液と濃度・溶解度(中学理科)
参考資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 理科編」── 化学基礎・化学の内容
- 高等学校「化学基礎」「化学」教科書(無機物質・有機化合物の各章)
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(自然科学)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/shizen/zn-06/ / 更新 2026-09-14