地方上級 / 化学 / zn-05
理論化学(mol・濃度・酸と塩基・酸化還元)
この単元でできるようになること
- 物質量(mol)を中心に、質量・粒子の数・気体の体積を相互に変換できる
- 質量パーセント濃度とモル濃度を区別し、水溶液をつくる・薄める計算ができる
- 酸・塩基の定義と価数・強弱を言え、pH と中和の量的関係(酸の H⁺ = 塩基の OH⁻)を使える
- 酸化数を求め、反応のどちらが酸化剤・還元剤かを判定できる
- 塩の水溶液の液性、中和滴定の指示薬の選び方を説明できる
試験での位置づけ
地方上級・国家一般職の化学で計算問題が出るとすればこの単元です。mol の換算・モル濃度・中和の計算・pH は 1 問で完結する形で出題されやすく、酸化還元は「酸化数の増減」「酸化剤はどれか」の正誤で問われます。使う数字は「22.4 L」「6.0 × 10²³」「1 価・2 価」のような決まった値ばかりなので、換算の道筋を 1 枚の図として持っておけば、計算そのものは中学の比例計算です。高校の化学基礎(cb-04〜cb-09)の範囲がそのまま出ます。zn-04 の原子量・反応式の係数が前提です。
1. 物質量(mol)── 換算のハブ
まずここだけ
1 mol は粒子 6.0 × 10²³ 個(アボガドロ定数)の集まりです。「1 ダース = 12 個」と同じ数え方の単位で、原子・分子・イオンの何でも数えられます。
mol を真ん中に置くと、3 つの量をすべて mol 経由で結べます。
| 量 | mol との関係 |
|---|---|
| 粒子の数 | mol × 6.0 × 10²³ |
| 質量(g) | mol × モル質量(原子量・分子量・式量に g/mol をつけた値) |
| 気体の体積(標準状態 0℃・1 気圧) | mol × 22.4 L(気体の種類によらない) |
水 H₂O(分子量 18)36 g → 36 ÷ 18 = 2 mol → 分子 1.2 × 10²⁴ 個、水素原子はその 2 倍の 2.4 × 10²⁴ 個 酸素 O₂(分子量 32)8 g → 8 ÷ 32 = 0.25 mol → 標準状態で 0.25 × 22.4 = 5.6 L
原子量・分子量・式量は ¹²C = 12 を基準にした相対質量で単位はありません。分子量は原子量の和(H₂O = 1 × 2 + 16 = 18)、イオン結晶や金属のように分子をつくらない物質では組成式で同じ計算をして式量と呼びます(NaCl = 23 + 35.5 = 58.5)。
ここまでできれば十分
反応式の係数は mol の比なので、反応の量の計算は「mol に直す → 係数の比で相手の mol を出す → 求める単位に戻す」の 3 段です。
メタン CH₄(分子量 16)8 g を完全燃焼させたとき、生じる二酸化炭素は標準状態で何 L か。 CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O。メタン 8 ÷ 16 = 0.5 mol → CO₂ も 0.5 mol(係数 1 : 1)→ 0.5 × 22.4 = 11.2 L
同じ反応で必要な酸素は? 係数比 1 : 2 なので 1.0 mol → 32 g、または 22.4 L
気体の密度は 分子量 ÷ 22.4(g/L)です。分子量が空気の平均分子量 約 29 より大きい気体(CO₂ 44・Cl₂ 71)は空気より重く、小さい気体(H₂ 2・NH₃ 17・CH₄ 16)は軽くなります。zn-06 の捕集法の根拠です。
もう一歩(発展)
同温・同圧で同体積の気体は、種類によらず同数の分子を含みます(アボガドロの法則)。だから気体どうしの反応では、体積の比 = 係数の比として直接計算できます。
水素 10 L と酸素 10 L を反応させると(2H₂ + O₂ → 2H₂O)、水素 10 L に対して酸素は 5 L しか使われず、酸素が 5 L 余る
2. 濃度 ── 「何を分母にするか」
まずここだけ
| 濃度 | 定義 | 単位 |
|---|---|---|
| 質量パーセント濃度 | 溶質の質量 ÷ 溶液の質量 × 100 | % |
| モル濃度 | 溶質の物質量 ÷ 溶液の体積 | mol/L |
どちらも分母は「溶液(溶質 + 溶媒)」で、溶媒(水)だけではありません。
水 80 g に塩化ナトリウム 20 g を溶かす → 20 ÷ (80 + 20) × 100 = 20%(25% ではない) 水酸化ナトリウム NaOH(式量 40)4 g を水に溶かして 500 mL にする → 4 ÷ 40 = 0.1 mol、0.1 ÷ 0.5 L = 0.2 mol/L
ここまでできれば十分
溶質の量は薄めても変わらないので、希釈は「モル濃度 × 体積 = 一定」で解けます。
2.0 mol/L の塩酸 50 mL を水で薄めて 200 mL にする → 2.0 × 50 = c × 200 → c = 0.5 mol/L
質量パーセント濃度 → モル濃度の変換には密度が要ります。溶液 1 L(1,000 mL)を考えると迷いません。
質量パーセント濃度 98%、密度 1.8 g/cm³ の濃硫酸(分子量 98)のモル濃度 溶液 1 L の質量 = 1.8 × 1,000 = 1,800 g → 硫酸の質量 = 1,800 × 0.98 = 1,764 g → 1,764 ÷ 98 = 18 mol/L
3. 酸と塩基 ── 定義・価数・強弱・pH
まずここだけ
| 定義 | 酸 | 塩基 |
|---|---|---|
| アレニウス | 水に溶けて H⁺ を出す | 水に溶けて OH⁻ を出す |
| ブレンステッド・ローリー | H⁺ を与える | H⁺ を受け取る(アンモニア NH₃ も塩基) |
価数は 1 分子が出せる H⁺(または OH⁻)の数、強弱は電離度(溶けたうちどれだけ電離するか)の大小です。「強い = 濃い」ではありません。
| 1 価 | 2 価 | 3 価 | |
|---|---|---|---|
| 強酸 | 塩酸 HCl・硝酸 HNO₃ | 硫酸 H₂SO₄ | ── |
| 弱酸 | 酢酸 CH₃COOH | 炭酸 H₂CO₃・シュウ酸 (COOH)₂・硫化水素 H₂S | リン酸 H₃PO₄ |
| 強塩基 | 水酸化ナトリウム NaOH・水酸化カリウム KOH | 水酸化カルシウム Ca(OH)₂・水酸化バリウム Ba(OH)₂ | ── |
| 弱塩基 | アンモニア NH₃ | 水酸化銅(Ⅱ) Cu(OH)₂ など | ── |
ここまでできれば十分
pH は水素イオン濃度 [H⁺] = 10⁻ⁿ mol/L のときの n です。25℃ では [H⁺][OH⁻] = 10⁻¹⁴ なので、pH + pOH = 14。
0.01 mol/L の塩酸(電離度 1)→ [H⁺] = 10⁻² → pH 2 0.1 mol/L の水酸化ナトリウム → [OH⁻] = 10⁻¹ → pOH 1 → pH 13 0.1 mol/L の酢酸(電離度 0.01)→ [H⁺] = 0.1 × 0.01 = 10⁻³ → pH 3(同じ濃度でも塩酸より pH が大きい)
pH が 1 小さいと [H⁺] は 10 倍。pH 2 の塩酸を水で 10 倍に薄めると pH 3、100 倍で pH 4 です。ただし酸を薄めていってもpH 7 を超えて塩基性になることはなく、7 に近づくだけです。
中和の量的関係:酸の出す H⁺ の mol = 塩基の出す OH⁻ の mol。
酸の価数 × 濃度 × 体積 = 塩基の価数 × 濃度 × 体積
0.1 mol/L の硫酸(2 価)20 mL を中和する 0.2 mol/L の NaOH(1 価)は何 mL か 2 × 0.1 × 20 = 1 × 0.2 × V → V = 20 mL
強弱は関係しません。弱酸でも中和には価数分の塩基が要ります。
もう一歩(発展)
塩の液性:中和でできた塩を水に溶かしたときの液性は、「もとの酸と塩基のうち強いほうの性質」が残ります。
| もとの組み合わせ | 液性 | 例 |
|---|---|---|
| 強酸 + 強塩基 | 中性 | NaCl・Na₂SO₄・KNO₃ |
| 強酸 + 弱塩基 | 酸性 | NH₄Cl・CuSO₄ |
| 弱酸 + 強塩基 | 塩基性 | CH₃COONa・Na₂CO₃・NaHCO₃ |
例外は NaHSO₄(硫酸水素ナトリウム)で、名前は「酸性塩」(H が残った塩)である上に、水溶液も酸性です。一方 NaHCO₃ も酸性塩ですが水溶液は弱い塩基性。「酸性塩」という分類名と水溶液の液性は別物です。
中和滴定の指示薬は、中和点の液性に変色域が合うものを選びます。
| 組み合わせ | 中和点 | 指示薬 |
|---|---|---|
| 強酸 + 強塩基 | 中性付近(pH が急に大きく変わる) | フェノールフタレイン・メチルオレンジのどちらでも可 |
| 弱酸 + 強塩基 | 塩基性 | フェノールフタレイン(無色 → 赤) |
| 強酸 + 弱塩基 | 酸性 | メチルオレンジ(赤 → 黄) |
4. 酸化と還元 ── 酸化数で機械的に判定する
まずここだけ
| 見方 | 酸化 | 還元 |
|---|---|---|
| 酸素 | 受け取る | 失う |
| 水素 | 失う | 受け取る |
| 電子 | 失う | 受け取る |
| 酸化数 | 増える | 減る |
酸化と還元は同時に起こります。相手を酸化する(自分は還元される)物質が酸化剤、相手を還元する(自分は酸化される)物質が還元剤です。「酸化剤は自分が還元される」の言い回しにひっかからないこと。
酸化数の決め方:
- 単体の原子は 0(H₂・O₂・Fe・Cl₂)
- 化合物中の H は +1、O は −2(例外:過酸化水素 H₂O₂ の O は −1)
- 単原子イオンの酸化数 = イオンの電荷(Na⁺ は +1、Cl⁻ は −1)
- 化合物全体で 合計 0、多原子イオンでは合計 = 電荷
H₂SO₄ の S:(+1) × 2 + x + (−2) × 4 = 0 → x = +6 KMnO₄ の Mn:(+1) + x + (−2) × 4 = 0 → x = +7 NH₃ の N:x + (+1) × 3 = 0 → x = −3 Cr₂O₇²⁻ の Cr:2x + (−2) × 7 = −2 → x = +6
ここまでできれば十分
2Cu + O₂ → 2CuO:Cu は 0 → +2(酸化された・還元剤)、O は 0 → −2(還元された・酸化剤) Zn + Cu²⁺ → Zn²⁺ + Cu:Zn が電子を失って酸化され、Cu²⁺ が電子を受け取って還元される。イオン化傾向の大きい金属が電子を渡す側
代表的な酸化剤・還元剤:
| 酸化剤(自分は還元される) | 還元剤(自分は酸化される) |
|---|---|
| 過マンガン酸カリウム KMnO₄(Mn +7 → +2、赤紫 → ほぼ無色) | ナトリウム Na・亜鉛 Zn などの金属 |
| 二クロム酸カリウム K₂Cr₂O₇(Cr +6 → +3、橙 → 緑) | 硫化水素 H₂S(S −2 → 0) |
| 塩素 Cl₂・オゾン O₃ | シュウ酸 (COOH)₂ |
| 濃硝酸・熱濃硫酸 | 二酸化硫黄 SO₂(ふつうは還元剤。H₂S に対しては酸化剤) |
過酸化水素 H₂O₂ は相手によって酸化剤にも還元剤にもなります(O が −1 という中間の酸化数のため)。
もう一歩(発展)
酸化還元反応は電池と電気分解の土台です。電池ではイオン化傾向の大きい金属が負極で酸化され(電子を出す)、電子は導線を通って正極に流れます(電流の向きは逆で正極 → 負極)。電気分解では電源の負極につないだ陰極で還元、陽極で酸化が起こります。詳しくは zn-06 で扱います。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 質量パーセント濃度の分母は水の質量 | 分母は溶液(水 + 溶質)の質量 |
| 22.4 L は気体 1 g の体積 | 標準状態で気体 1 mol の体積。種類によらない |
| 強酸 = 濃い酸 | 強弱は電離度、濃い薄いは濃度。薄い塩酸も強酸 |
| 弱酸の中和には塩基が少なくてすむ | 中和に必要な量は価数と mol だけで決まり、強弱は関係しない |
| pH 2 の塩酸を 10 倍に薄めると pH 1 | 薄めれば [H⁺] は 1/10 で pH 3。薄めても 7 は超えない |
| 酸化剤は酸化される物質 | 酸化剤は相手を酸化し、自分は還元される |
| 酸化数が減ったら酸化 | 酸化数が増えたら酸化、減ったら還元 |
| NaHCO₃ は酸性塩だから水溶液も酸性 | 水溶液は弱い塩基性。酸性塩は「H が残った塩」という分類名 |
| 化合物中の O はいつも −2 | 過酸化水素 H₂O₂ では −1 |
6. 解き方の型
- 量の計算は「与えられた量を mol に直す → 係数の比 → 求める単位に戻す」の 3 段で書く。22.4 は気体、6.0 × 10²³ は個数のときだけ
- 濃度は分母を確認する(溶液の質量か、溶液の体積か)。薄める問題は 濃度 × 体積 = 一定
- pH は [H⁺] = 10⁻ⁿ の n。塩基は pOH を出して 14 から引く。弱酸は濃度 × 電離度
- 中和は「価数 × 濃度 × 体積」を両辺に書く。強弱は無視
- 酸化還元は酸化数を書き込み、増えた側が酸化された(=還元剤)。「酸化剤は自分が還元される」を口に出して確認する
7. 小テストへ
→ 小テスト(zn-05)
関連する単元
- 前提:zn-04 物質の構成と変化(原子量・反応式の係数)、s3-04 酸・アルカリ・中和、s2-06 酸化と還元(中学理科)
- 高校の土台:cb-04 物質量、cb-05 溶液の濃度、cb-06 化学反応式と量的関係、cb-07 酸と塩基、cb-08 中和反応と塩・中和滴定、cb-09 酸化と還元
- 次に進む:zn-06 無機と有機の基礎(気体・金属・電池)
- 割合の計算そのものは zs-13 割合・比・濃度
参考資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 理科編」── 化学基礎「物質の変化とその利用」
- 高等学校「化学基礎」教科書(物質量と化学反応式・酸と塩基・酸化還元反応の各章)
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(自然科学)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/shizen/zn-05/ / 更新 2026-09-14