地方上級 / 生物 / zn-07

更新 2026-09-14

細胞・代謝・遺伝

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

地方上級・国家一般職の生物は 1〜2 問で、「細胞と代謝」「遺伝」「体の調節」「生態系」の 4 つの柱から出題されやすく、この単元はそのうち前半 2 つを扱います。高校の生物基礎(bb-01bb-04)の範囲がそのまま土台です。細胞小器官の「名前 → はたらき」、光合成と呼吸の「場所 → 物質の出入り」、遺伝の「交配 → 分離比」のように、対応関係を 1 対 1 で覚えているかが問われます。計算は塩基の割合と分離比だけで、あとは知識の正誤判断です。


1. 細胞の構造 ── 名前とはたらきを 1 対 1 で

まずここだけ

構造はたらき動物植物
DNA を核膜で包む。核小体がある
細胞膜リン脂質の二重層。物質の出入りを選ぶ(選択的透過性
ミトコンドリア呼吸で ATP をつくる。独自の DNA をもつ
葉緑体光合成。クロロフィルを含む。独自の DNA をもつ×
細胞壁セルロースが主成分。細胞の形を保つ×
液胞細胞液(アントシアンなどの色素・老廃物)を蓄える。植物で発達小さい
リボソームタンパク質の合成(翻訳の場)
小胞体・ゴルジ体タンパク質の輸送・加工・分泌
リソソーム分解酵素を含み、不要物を分解
中心体細胞分裂のときに紡錘糸の起点になる一部の植物のみ

植物細胞にだけあるものは「葉緑体・細胞壁・発達した液胞」の 3 つ。これだけで動物と植物の区別の問題は解けます。

ここまでできれば十分

原核細胞と真核細胞

原核細胞真核細胞
核膜ない(DNA は細胞質中にむき出し)ある
ミトコンドリア・葉緑体ないある(植物は葉緑体も)
リボソームあるある
大きさ小さい(1〜10 µm)大きい(10〜100 µm)
細菌(大腸菌・乳酸菌)・シアノバクテリア動物・植物・菌類(酵母・カビ)・原生生物

「原核生物にはリボソームもない」は誤りの定番です。リボソームはすべての細胞にあります。ミトコンドリアと葉緑体が独自の DNA をもち、分裂で増えることは、もとは別の原核生物が細胞内に取りこまれたとする細胞内共生説の根拠です。


2. 代謝 ── 酵素・光合成・呼吸

まずここだけ

生体内の化学反応をまとめて代謝といい、単純な物質から複雑な物質をつくる同化(光合成など。エネルギーを吸収)と、複雑な物質を分解する異化(呼吸など。エネルギーを放出)に分けます。エネルギーの受けわたしは ATP(アデノシン三リン酸)が担い、ATP → ADP + リン酸 の分解でエネルギーが出ます。

酵素は生体内の触媒で、主成分はタンパク質です。

性質内容
基質特異性決まった相手(基質)にしかはたらかない(アミラーゼはデンプンだけ)
最適温度ヒトの酵素は 35〜40℃ 付近。高温にするとタンパク質が変性して失活し、冷やしても戻らない
最適 pHペプシン(胃)は pH 2 付近、トリプシン(すい液)は pH 8 付近、だ液アミラーゼは pH 7 付近
くり返し使える反応の前後で酵素自身は変化しない

ここまでできれば十分

光合成と呼吸は逆向きの反応として対で覚えます。

光合成呼吸
反応式6CO₂ + 12H₂O → C₆H₁₂O₆ + 6O₂ + 6H₂OC₆H₁₂O₆ + 6O₂ + 6H₂O → 6CO₂ + 12H₂O
場所葉緑体細胞質基質とミトコンドリア
エネルギー光エネルギーを吸収して有機物に蓄える有機物を分解して ATP を取り出す
段階チラコイド(光を吸収・水を分解して O₂)→ ストロマ(CO₂ から有機物:カルビン回路)解糖系(細胞質基質)→ クエン酸回路(マトリックス)→ 電子伝達系(内膜)
ATP──グルコース 1 分子から最大 38 ATP(教科書の値)

酸素を使わない分解発酵です。酵母のアルコール発酵(グルコース → エタノール + CO₂)、乳酸菌の乳酸発酵(グルコース → 乳酸)はどちらもグルコース 1 分子あたり 2 ATP しかつくれません。激しい運動で筋肉に乳酸がたまるのも同じしくみ(解糖)です。

もう一歩(発展)

光合成の速度は、光の強さ・CO₂ 濃度・温度のうち最も不足している要因(限定要因)で決まります。光を強くしても速度が上がらなくなる点が光飽和点、光合成による CO₂ 吸収と呼吸による CO₂ 放出がつり合って見かけ上の出入りがゼロになる光の強さが光補償点です。陰生植物は陽生植物より光補償点・光飽和点が低く、弱い光でも生育できます。


3. DNA と遺伝情報 ── 相補性と 3 塩基 1 アミノ酸

まずここだけ

DNA はヌクレオチド(リン酸・糖・塩基)が鎖になり、2 本の鎖が二重らせんを作っています(ワトソンとクリック、1953 年)。塩基は A(アデニン)・T(チミン)・G(グアニン)・C(シトシン)の 4 種で、A は T と、G は C と水素結合で対になります(相補性)。

相補性から、A の数 = T の数、G の数 = C の数(シャルガフの規則)。 ある DNA で A が 20% なら T も 20%、残り 60% を G と C で分けて G = C = 30%

DNARNA
デオキシリボースリボース
塩基A・T・G・CA・U(ウラシル)・G・C
2 本鎖1 本鎖
役割遺伝情報を保存mRNA(情報を写す)・tRNA(アミノ酸を運ぶ)・rRNA(リボソームの成分)

ここまでできれば十分

遺伝情報の流れ DNA → RNA → タンパク質セントラルドグマといいます。

段階場所(真核細胞)内容
複製DNA の 2 本鎖がほどけ、それぞれを鋳型に新しい鎖ができる(半保存的複製。メセルソンとスタールの実験)
転写DNA の一方の鎖を鋳型に mRNA が合成される(RNA ポリメラーゼ)
翻訳細胞質のリボソームmRNA の塩基 3 つ(コドン)が 1 つのアミノ酸を指定し、tRNA が運んだアミノ酸がつながる

コドンは 4³ = 64 通りあり、アミノ酸は 20 種類なので、1 つのアミノ酸を複数のコドンが指定します。開始コドンは AUG(メチオニン)、終止コドンは 3 つ。

100 個のアミノ酸からなるタンパク質を指定する mRNA の塩基は 100 × 3 = 300 塩基、対応する DNA は 300 塩基対。

ゲノムは生物が持つ遺伝情報 1 組で、ヒトゲノムは約 30 億塩基対、遺伝子の数は約 2 万個です。ゲノムのすべてが遺伝子ではなく、タンパク質を指定する部分はごく一部です。


4. 細胞分裂と遺伝の法則

まずここだけ

体細胞分裂減数分裂
目的体をつくる・成長・修復配偶子(精子・卵)をつくる
分裂の回数1 回連続 2 回
できる細胞2 個4 個
染色体数2n → 2n(変わらない2n → n(半減)
特徴──相同染色体が対になり(対合)、乗換えで遺伝子の組み合わせが変わる

ヒトの染色体は 46 本(23 対)。精子・卵は 23 本で、受精して 46 本に戻ります。

細胞周期は 間期(G₁ 期 → S 期(DNA 複製)→ G₂ 期)→ M 期(分裂期)のくり返しで、各時期の長さは、観察したときにその時期にある細胞の数に比例します。

細胞周期 20 時間、観察した 200 個のうち分裂期の細胞が 20 個 → 分裂期は 20 × 20/200 = 2 時間

ここまでできれば十分

メンデルの法則(エンドウの実験、1865 年):

法則内容
顕性(優性)の法則対立形質の純系どうしを交配すると、雑種第一代 F₁ には顕性形質だけが現れる
分離の法則対になった遺伝子は配偶子ができるとき分かれて別々に入る
独立の法則異なる形質の遺伝子は互いに独立に配偶子に入る(同じ染色体上にある場合は成り立たない)

代表的な交配と分離比(A が顕性、a が潜性):

交配子の遺伝子型表現型の比
AA × aaすべて Aaすべて顕性
Aa × AaAA : Aa : aa = 1 : 2 : 1顕性 : 潜性 = 3 : 1
Aa × aa(検定交雑)Aa : aa = 1 : 1顕性 : 潜性 = 1 : 1
AaBb × AaBb──9 : 3 : 3 : 1(両方顕性 : A だけ : B だけ : 両方潜性)

Aa × Aa から 400 個体が生まれたとき、潜性形質を示す個体の期待値は 400 × 1/4 = 100 個体。 AaBb × AaBb から 320 個体なら、両方顕性は 320 × 9/16 = 180 個体

2017 年に日本遺伝学会が「優性・劣性」を「顕性・潜性」に改めましたが、試験の問題文には両方の言い方が残っています。同じ意味と覚えておけば十分です。

もう一歩(発展)

ABO 式血液型は遺伝子 A・B・O の 3 つで決まり、A と B は互いに共顕性(両方現れて AB 型)、O は A・B に対して潜性です。

血液型遺伝子型
A 型AA または AO
B 型BB または BO
AB 型AB
O 型OO

A 型(AO)と B 型(BO)の両親からは、AB・AO・BO・OO = 4 つの血液型がすべて生まれうる。 O 型の子が生まれたなら、両親はどちらも O の遺伝子をもつ(AO・BO など)。

伴性遺伝(赤緑色覚異常・血友病)は遺伝子が X 染色体上にあるため、X を 1 本しかもたない男性に現れやすいという特徴があります。


5. よくある間違い

間違い正しくは
呼吸は動物だけ、光合成は植物だけが行う植物も呼吸をしている(昼は光合成量が呼吸量を上回るだけ)
ミトコンドリアで光合成、葉緑体で呼吸逆。ミトコンドリア=呼吸、葉緑体=光合成
原核細胞にはリボソームがないリボソームはすべての細胞にある。ないのは核膜・ミトコンドリア
酵素は高温にすると壊れるが、冷ますと元に戻る高温での失活は元に戻らない(低温では活性が下がるだけで戻る)
DNA で A が 20% なら G も 20%A = T = 20%、G = C = 30%
塩基 1 つがアミノ酸 1 つに対応塩基 3 つ(コドン)で 1 つのアミノ酸
減数分裂で染色体数は 4 分の 1 になる2 回分裂して細胞は 4 個だが、染色体数は半分
Aa × Aa の子はすべて顕性顕性 : 潜性 = 3 : 1。すべて顕性になるのは AA × aa
A 型と B 型の両親から O 型は生まれないAO × BO なら 4 分の 1 で OO(O 型)が生まれる

6. 解き方の型

  1. 細胞小器官の問題は「植物だけ → 葉緑体・細胞壁・液胞」「原核にない → 核膜・ミトコンドリア」の 2 つの例外表で切る
  2. 光合成と呼吸は「場所・入る物質・出る物質・エネルギーの向き」の 4 点を対で書いてから選択肢を読む
  3. 塩基の割合は「A = T、G = C、合計 100%」の 2 本の式で解く。アミノ酸の数は塩基数 ÷ 3
  4. 分離比は遺伝子型を書き出し、配偶子を格子(パネットの方形)に並べて数える。9 : 3 : 3 : 1 は 3 : 1 の掛け算
  5. 5 択の正誤文は「場所・物質・数」のどれかが入れかわっていると疑って読む

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参考資料

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