地方上級 / 生物 / zn-08
体の調節と生態系(恒常性・免疫・生態系)
この単元でできるようになること
- 体液(血液・組織液・リンパ液)と血液の成分のはたらき、肝臓・腎臓の役割を言える
- 自律神経(交感神経・副交感神経)とホルモンの対応表から、血糖・体温の調節のしくみを説明できる
- 自然免疫と獲得免疫(体液性・細胞性)のちがい、ワクチンと血清療法のちがいを説明できる
- 生態系の食物連鎖・生態ピラミッド・炭素と窒素の循環、バイオームと遷移の流れを言える
- 生物多様性の保全・外来生物・地球温暖化の論点を、用語の正誤で判断できる
試験での位置づけ
地方上級・国家一般職の生物では、zn-07(細胞・代謝・遺伝)と並んでこの単元から 1 問出題されやすく、とくにホルモンと自律神経による調節、免疫、生態系の物質循環は正誤問題の定番です。計算はほとんどなく、「どの器官が・何を・どちら向きに」という対応関係の暗記が得点を分けます。高校の生物基礎(bb-05〜bb-09)の範囲がそのまま出ます。時事と結びついた出題(感染症・ワクチン・外来生物・温暖化)も見られるので、用語を新聞記事の言葉と結びつけておくと得です。
1. 体液と恒常性 ── 肝臓と腎臓
まずここだけ
体の内部環境(体液)を一定に保つはたらきを恒常性(ホメオスタシス)といいます。体液は血液・組織液・リンパ液の 3 つです。
| 血液の成分 | はたらき |
|---|---|
| 赤血球 | ヘモグロビンで酸素を運ぶ。核がない(哺乳類) |
| 白血球 | 免疫(食作用・抗体の産生)。核がある |
| 血小板 | 血液凝固(傷口をふさぐ) |
| 血しょう | 液体成分。栄養分・老廃物・ホルモン・二酸化炭素を運ぶ |
ヘモグロビンは酸素濃度が高く二酸化炭素濃度が低い肺で酸素と結合し、酸素濃度が低い組織で酸素を放します。血液を放置して固まった液体の上ずみが血清です。
ここまでできれば十分
| 器官 | 主なはたらき |
|---|---|
| 肝臓 | 血糖の調節(グルコース ⇔ グリコーゲン)・有害なアンモニアを尿素に変える・胆汁をつくる・解毒・体温の発生・タンパク質の合成 |
| 腎臓 | 血液をろ過して尿をつくる。糸球体 → ボーマンのうでろ過(原尿)→ 細尿管(腎細管)で再吸収 |
腎臓のろ過では、タンパク質や血球のような大きな成分はこし出されません。原尿に出たグルコースは健康なら 100% 再吸収され、水も大部分が再吸収されます。尿に糖が出るのは、血糖値が高すぎて再吸収が追いつかない状態です。
原尿が 1 日 170 L できても、尿は約 1.5 L。水の約 99% が再吸収される計算
濃縮率(尿中の濃度 ÷ 血しょう中の濃度)が大きい物質ほど再吸収されにくい物質です。尿素は濃縮され、グルコースは尿に出ないので濃縮率 0 です。
2. 自律神経とホルモン ── 対応表で覚える
まずここだけ
自律神経は意思と無関係に内臓をはたらかせる神経で、中枢は間脳の視床下部。交感神経と副交感神経は同じ器官に対して逆向きにはたらきます。
| 交感神経(活動・緊張) | 副交感神経(休息) | |
|---|---|---|
| 心臓の拍動 | 促進 | 抑制 |
| 血圧 | 上げる | 下げる |
| 瞳孔 | 拡大 | 縮小 |
| 気管支 | 拡張 | 収縮 |
| 消化管の運動・消化液 | 抑制 | 促進 |
| 神経伝達物質 | ノルアドレナリン | アセチルコリン |
「闘うか逃げるか」の場面で必要なことが交感神経(心臓を速く、瞳孔を開く、消化は後回し)と覚えると、表を暗記しなくても再現できます。
ここまでできれば十分
ホルモンは内分泌腺から血液中に分泌され、決まった標的器官だけにはたらきます。神経より遅いが長く続くのが特徴です。
| 内分泌腺 | ホルモン | はたらき |
|---|---|---|
| 視床下部 | 放出ホルモン | 脳下垂体を調節 |
| 脳下垂体前葉 | 成長ホルモン・甲状腺刺激ホルモン・副腎皮質刺激ホルモン | 成長・他の内分泌腺の調節 |
| 脳下垂体後葉 | バソプレシン | 腎臓での水の再吸収を促進(尿を減らす) |
| 甲状腺 | チロキシン | 代謝を促進 |
| 副甲状腺 | パラトルモン | 血液中のカルシウム濃度を上げる |
| すい臓ランゲルハンス島 | インスリン(B 細胞)/グルカゴン(A 細胞) | 血糖を下げる/上げる |
| 副腎髄質 | アドレナリン | 血糖を上げる・心拍促進 |
| 副腎皮質 | 糖質コルチコイド・鉱質コルチコイド | 血糖を上げる・Na⁺ の再吸収促進 |
血糖の調節で問われるのは「下げるホルモンはインスリンだけ」という点です。上げるほうはグルカゴン・アドレナリン・糖質コルチコイドと複数あります。
食後に血糖値が上がる → すい臓の B 細胞がインスリンを分泌 → 肝臓・筋肉でグルコースをグリコーゲンに合成、細胞のグルコース取りこみを促進 → 血糖値が下がる 空腹で血糖値が下がる → グルカゴン・アドレナリンがグリコーゲンを分解 → 血糖値が上がる
糖尿病は、インスリンが分泌されない(Ⅰ型)か、分泌されてもはたらきにくい(Ⅱ型)ために血糖値が下がらない病気です。
体温の調節(寒いとき):視床下部が感知 → 交感神経で皮膚の血管を収縮させ放熱を減らす、立毛筋を収縮 → チロキシン・アドレナリンで代謝を上げ発熱を増やす。暑いときは汗と皮膚血管の拡張で放熱します。
もう一歩(発展)
ホルモンの分泌量はフィードバックで調節されます。チロキシンが増えすぎると、視床下部と脳下垂体が感知して甲状腺刺激ホルモンの分泌を減らし、チロキシンが減る(負のフィードバック)。結果が原因にもどって作用を抑える、というしくみで、恒常性の基本です。
3. 免疫 ── 自然免疫と獲得免疫
まずここだけ
| 段階 | 内容 | 担い手 |
|---|---|---|
| 物理的・化学的防御 | 皮膚・粘膜・胃酸・涙のリゾチーム | ── |
| 自然免疫 | 病原体を見つけしだい食作用で分解。生まれつき・特異性が低い | 好中球・マクロファージ・樹状細胞・NK 細胞 |
| 獲得免疫(適応免疫) | 特定の異物(抗原)を認識して攻撃。記憶が残る | リンパ球(T 細胞・B 細胞) |
獲得免疫は 2 種類に分かれます。
| 体液性免疫 | 細胞性免疫 | |
|---|---|---|
| 主役 | B 細胞 → 形質細胞(抗体産生細胞) | キラー T 細胞 |
| 武器 | 抗体(免疫グロブリンというタンパク質)を血液中に出す | 感染細胞・がん細胞を直接こわす |
| 例 | 細菌の毒素の中和・ウイルスの無力化 | 移植された臓器の拒絶反応・ウイルス感染細胞の排除 |
どちらもヘルパー T 細胞が司令塔で、樹状細胞から抗原の情報を受け取って(抗原提示)B 細胞やキラー T 細胞を活性化します。
ここまでできれば十分
免疫記憶:一度出会った抗原には記憶細胞が残り、2 回目は速く大量に抗体がつくられます(二次応答)。はしかに一度かかると再びかかりにくいのはこのためです。
| ワクチン(予防接種) | 血清療法 | |
|---|---|---|
| 入れるもの | 弱毒化・無毒化した抗原 | できあがった抗体(他の動物につくらせた) |
| 目的 | 前もって記憶細胞をつくる(予防) | 今起きている中毒・感染を止める(治療。ヘビ毒・破傷風) |
| 効果の続き方 | 長い | 短い(抗体は分解される) |
免疫の異常:
| 名前 | 内容 |
|---|---|
| アレルギー | 無害な物質(花粉・食物)に免疫が過剰に反応。急激で全身性のものがアナフィラキシー |
| 自己免疫疾患 | 自分の細胞や組織を攻撃(関節リウマチ・Ⅰ型糖尿病など) |
| エイズ(AIDS) | HIV がヘルパー T 細胞に感染して破壊 → 獲得免疫全体がはたらかず日和見感染が起こる |
ABO 式血液型の輸血が問題になるのも免疫(抗原抗体反応)です。A 型の赤血球には A 抗原、血清には抗 B 抗体があり、B 型の血液を入れると凝集します。
もう一歩(発展)
白血球の表面には個人ごとに違う HLA(ヒト白血球抗原)があり、臓器移植でこれが合わないとキラー T 細胞が移植片を異物として攻撃します(拒絶反応)。だから移植では HLA の一致と免疫抑制剤が必要です。
4. 生態系 ── つながりと循環
まずここだけ
生態系は、ある地域の生物(生物的環境)とそれを取り巻く光・水・土壌など(非生物的環境)のまとまりです。
| 役割 | 生物 | はたらき |
|---|---|---|
| 生産者 | 植物・植物プランクトン | 光合成で無機物から有機物をつくる |
| 消費者 | 動物(一次 → 二次 → 三次) | 他の生物を食べて有機物を得る |
| 分解者 | 菌類・細菌 | 遺体・排出物の有機物を無機物に分解する |
食べる・食べられるの関係が食物連鎖、それが網目状に複雑につながったものが食物網です。栄養段階ごとの個体数・生物量・エネルギー量を積み上げると、ふつう上ほど小さい生態ピラミッドになります。
ここまでできれば十分
炭素の循環:大気中の CO₂ → 光合成で有機物 → 食物連鎖で移動 → 呼吸で CO₂ にもどる。化石燃料の燃焼は、長い時間かけて地中に固定された炭素を一気に大気にもどしている。
窒素の循環:大気中の N₂ は多くの生物が直接使えない → 窒素固定細菌(根粒菌・アゾトバクター・一部のシアノバクテリア)が NH₄⁺ に → 硝化菌が NO₃⁻ に → 植物が吸収してタンパク質に(窒素同化)→ 分解者がもどす → 脱窒素細菌が N₂ にして大気へ。
エネルギーの流れは循環しません。太陽の光エネルギーが生産者に取りこまれ、各段階で熱として失われて、最後は生態系の外へ出ていきます。
生物濃縮:分解されにくい物質(DDT・PCB・有機水銀)が食物連鎖の上位ほど高濃度にたまる現象。水俣病はこの例です。
植生の遷移とバイオーム:
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 一次遷移 | 溶岩台地など土のない所から。地衣類・コケ植物 → 草原 → 陽樹林 → 陰樹林(極相) |
| 二次遷移 | 山火事跡や耕作放棄地など土と種子が残る所から。一次より速い |
日本のバイオームは南から 亜熱帯多雨林 → 照葉樹林(シイ・カシ)→ 夏緑樹林(ブナ・ミズナラ)→ 針葉樹林(トドマツ・エゾマツ)。標高が上がっても同じ順に変わり、森林ができなくなる高さが森林限界です。
もう一歩(発展)
生物多様性には遺伝子・種・生態系の 3 つのレベルがあります。生態系を安定させる要因として、食物網の複雑さやキーストーン種(数は少ないが生態系全体に大きな影響をもつ種。ラッコとウニとコンブの関係が例)が知られています。
外来生物(オオクチバス・アライグマ・セイヨウオオマルハナバチなど)は在来種を捕食・競争で減らし、日本では外来生物法で「特定外来生物」の飼育・輸入・放出が規制されています。絶滅危惧種はレッドリストにまとめられています。
地球温暖化の主因は CO₂ など温室効果ガスの増加で、サンゴの白化・生物の分布の変化などが問題になっています。オゾン層の破壊(フロン)や酸性雨(硫黄酸化物・窒素酸化物)とは原因物質が違うので、混ぜて出題されたら分けて考えてください。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 交感神経は消化を促進する | 交感神経は消化を抑制。促進するのは副交感神経 |
| 血糖を下げるホルモンはいくつもある | 下げるのはインスリンだけ。上げるのは複数 |
| ホルモンは神経を通って標的器官に届く | 血液に乗って全身をめぐり、受容体をもつ標的器官だけにはたらく |
| 腎臓の糸球体でグルコースはろ過されない | ろ過はされるが、細尿管で全部再吸収されるので尿に出ない |
| ワクチンは抗体を注射する | ワクチンは抗原。抗体を注射するのは血清療法 |
| 抗体をつくるのは T 細胞 | 抗体をつくるのは B 細胞(形質細胞)。T 細胞は司令塔と細胞性免疫 |
| HIV は B 細胞を破壊する | ヘルパー T 細胞を破壊するので免疫全体が弱る |
| エネルギーは生態系内を循環する | 循環するのは物質。エネルギーは熱として失われ一方向に流れる |
| 一次遷移の最初は草本 | 土のない所では地衣類・コケ植物が最初 |
| 温暖化の原因はフロン | フロンはオゾン層破壊。温暖化は CO₂ などの温室効果ガス |
6. 覚え方の型
- 自律神経は「闘うか逃げるか(交感)」の場面を思い浮かべて、器官ごとの向きをその場で導く
- ホルモンは「内分泌腺 → ホルモン → はたらき」の 3 列表で覚え、血糖は「下げる 1 つ、上げる 3 つ」
- 免疫は「自然(食作用)→ 獲得(体液性は B と抗体、細胞性はキラー T)」の 2 段構え。ワクチン=抗原、血清=抗体
- 生態系は「物質は回る、エネルギーは流れる」。窒素は固定 → 硝化 → 同化 → 脱窒の 4 語
- 環境問題は原因物質で切り分ける:CO₂ = 温暖化、フロン = オゾン層、SOx・NOx = 酸性雨
7. 小テストへ
→ 小テスト(zn-08)
関連する単元
- 前提:zn-07 細胞・代謝・遺伝、s2-08 血液の循環・排出・感覚と神経・運動、s3-06 生物の進化・生態系・食物連鎖(中学理科)
- 高校の土台:bb-05 体内環境、bb-06 体内環境の調節(自律神経・ホルモン・血糖)、bb-07 免疫、bb-08 植生の多様性と遷移・バイオーム、bb-09 生態系と物質循環・生物多様性の保全
- 地球環境問題の地学側は zn-10 気象と天文
参考資料
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 理科編」── 生物基礎「ヒトの体の調節」「生物の多様性と生態系」
- 高等学校「生物基礎」教科書(体内環境の維持・免疫・植生と遷移・生態系の各章)
- 環境省「特定外来生物等一覧」・「環境省レッドリスト」
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(自然科学)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/shizen/zn-08/ / 更新 2026-09-14