地方上級 / 労働法 / zr-03
労働組合法(労働三権・不当労働行為・団体交渉・労働協約・争議行為)
この単元でできるようになること
- 憲法 28 条の労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)と、公務員に対する制限の判例の流れ(全逓東京中郵 → 都教組 → 全農林警職法)を説明できる
- 労働組合法上の「労働組合」の要件(2 条・5 条)と、ユニオン・ショップ協定の効力を判例つきで言える
- 団体交渉の当事者・誠実交渉義務・「使用者」の範囲(朝日放送事件)を事例で判断できる
- 労働協約の規範的効力(16 条)と一般的拘束力(17 条・18 条)を数字(4 分の 3・大部分・3 年・90 日)とともに区別できる
- 争議行為の正当性(主体・目的・手段・手続)と使用者のロックアウトの扱い、ノーワーク・ノーペイの原則を説明できる
- の 4 類型(7 条 1 号〜4 号)と労働委員会の救済手続(申立期間・再審査・取消訴訟)、労働関係調整法の斡旋・調停・仲裁・緊急調整の違いを答えられる
試験での位置づけ
労働組合法は地方上級・国家一般職の労働法で、労働基準法と並ぶ主要領域です。出題は不当労働行為の類型の当てはめ、労働協約の効力(16 条・17 条)、争議行為の正当性の判例、労働委員会の手続が中心です。作り方は、「支配介入」と「不利益取扱い」の号を入れかえる、「4 分の 3」を「過半数」にする、「労働協約は口頭でも成立する」と書く(誤り・書面が必要)、「政治ストも正当」と書く(誤り)、「仲裁裁定に拘束力はない」と書く(誤り・労働協約と同一の効力)、といったものです。公務員の労働三権は憲法(zh-06)と重なるので、判例の結論と年を正確に押さえておきます。
1. 労働三権と公務員 ── 憲法 28 条から
まずここだけ
憲法 28 条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と定めます。ここから団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)の労働三権が導かれ、労働組合法がその具体化です。労働組合法は、正当な団体交渉や争議行為について刑事免責(1 条 2 項・刑法 35 条の正当行為として扱う。ただし暴力の行使はいかなる場合も正当な行為と解釈されない)、民事免責(8 条・正当な争議行為による損害の賠償請求はできない)、不利益取扱いからの保護(7 条 1 号)の 3 つを用意しています。
労働組合法の「労働者」(3 条)は、賃金・給料その他これに準ずる収入によって生活する者で、労働基準法(zr-01)の「使用される者」より広く、失業者も含みます。最高裁は、新国立劇場運営財団事件(最判平成 23 年 4 月 12 日)で合唱団員を、INAX メンテナンス事件(同日)で業務委託契約の修理技術者を、事業組織への組み込み・契約内容の一方的決定・報酬の労務対価性などから労働組合法上の労働者に当たるとしました。
ここまでできれば十分
公務員の労働三権は職種によって制限の程度が違います。
| 区分 | 団結権 | 団体交渉権(協約締結権) | 争議権 |
|---|---|---|---|
| 警察職員・消防職員・自衛隊員・海上保安庁職員・刑事施設職員 | × | × | × |
| 非現業の一般職公務員(国・地方) | ○(職員団体) | 交渉はできるが労働協約の締結はできない | × |
| 現業職員(行政執行法人の職員・地方公営企業の職員など) | ○(労働組合) | ○(協約締結も可) | × |
すべての公務員に争議行為が禁止されている点が共通で、争議行為をあおる行為には罰則があります(国家公務員法 110 条、地方公務員法 61 条など)。この一律禁止が憲法 28 条に反しないかについて、最高裁の判断は揺れたのち確定しました。
- 全逓東京中郵事件(最大判昭和 41 年 10 月 26 日):公務員の労働基本権の制限は合理性の認められる必要最小限度にとどめるべきで、刑事制裁はやむを得ない場合に限られるとした
- 都教組事件(最大判昭和 44 年 4 月 2 日):あおり行為の処罰規定を、違法性の強い争議行為の・違法性の強いあおり行為に限定して解釈した(二重のしぼり論)
- 全農林警職法事件(最大判昭和 48 年 4 月 25 日):判例変更。公務員の地位の特殊性と職務の公共性、勤務条件が国会の法律・予算で決まること(財政民主主義)、争議行為に市場の抑制力がないこと、人事院などの代償措置があることを理由に、争議行為の一律禁止とあおり行為の処罰は合憲とした
この流れは憲法の単元(zh-06)でも出ますが、労働法では「現在は全農林警職法事件の立場(一律禁止合憲)」という結論と、「団体交渉権は非現業でも交渉自体はできるが協約締結権がない」という区別を押さえてください。
2. 労働組合の要件とユニオン・ショップ
まずここだけ
労働組合法 2 条の「労働組合」は、労働者が主体となって自主的に、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体またはその連合団体です。但書が 4 つの除外を定めます。
| 号 | 除外されるもの | 補足 |
|---|---|---|
| 1 号 | 役員、雇入れ・解雇・昇進・異動に直接の権限を持つ監督的地位の労働者、人事の機密に接する監督的地位の労働者など使用者の利益を代表する者の参加を許すもの | 課長などの肩書きではなく実質で判断 |
| 2 号 | 団体の運営のための経費について使用者の経理上の援助を受けるもの | 例外:労働時間中の有給での協議・交渉、福利基金への寄附、最小限の広さの事務所の供与 |
| 3 号 | 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの | |
| 4 号 | 主として政治運動または社会運動を目的とするもの | 政治活動を「従」として行うことは妨げられない |
1 号・2 号は「自主性」の要件、3 号・4 号は「目的」の要件です。これに加えて 5 条は、労働委員会の資格審査で 2 条と 5 条 2 項(規約の必要記載事項:役員は直接無記名投票で選挙、同盟罷業は直接無記名投票の過半数で決定、など)に適合すると立証しなければ、労働組合法の手続に参与できず救済も受けられないとします。適合した組合を法適合組合と呼びます。
ここまでできれば十分
2 条・5 条を満たさない組合(法適合組合でない組合)でも、憲法 28 条の保障は受けるので、民事免責・刑事免責や団体交渉の当事者になることは認められます(憲法上の労働組合)。ただし、労働委員会への不当労働行為の救済申立てや労働協約の地域的拡張適用など、労働組合法の手続は使えません。5 条 1 項但書により、組合が資格審査を通らなくても個々の労働者に対する 7 条 1 号の保護は否定されません。
ユニオン・ショップ協定は、採用された労働者に組合加入を義務づけ、組合員でなくなった者を使用者が解雇する協定です。7 条 1 号但書は、その組合が工場事業場の労働者の過半数を代表する場合に限ってこの協定の締結を認めます。判例は効力を絞っています。
- 三井倉庫港運事件(最判平成元年 12 月 14 日):ユニオン・ショップ協定のうち、協定を締結した組合以外の組合に加入している者や、脱退後に別組合に加入した者について使用者の解雇義務を定める部分は、労働者の組合選択の自由と他の組合の団結権を侵害し、民法 90 条により無効
- 日本食塩製造事件(最判昭和 50 年 4 月 25 日):組合からの除名が無効であれば、それを理由とするユニオン・ショップ協定に基づく解雇も客観的に合理的な理由を欠き無効
チェック・オフ(組合費を賃金から控除して組合に渡す)は労働基準法 24 条の全額払原則の問題で、済生会中央病院事件(最判平成元年 12 月 11 日)は労使協定が必要だとし、エッソ石油事件(最判平成 5 年 3 月 25 日)はさらに各組合員の個別の委任が必要で、組合員が委任を撤回すれば使用者は控除をやめなければならないとしました。
もう一歩(発展)
組合活動の正当性は、使用者の施設管理権との関係で問題になります。国鉄札幌運転区事件(最判昭和 54 年 10 月 30 日)は、労働者は使用者の許諾なしに企業施設を組合活動に利用する権利を当然には持たず、使用者の許諾を得ないビラ貼りは、許諾しないことが権利濫用と認められる特段の事情がない限り正当な組合活動に当たらないとしました。
3. 団体交渉 ── 誰と、何を、どう交渉するか
まずここだけ
団体交渉の労働者側の当事者は労働組合(上部団体も、単位組合も)で、交渉権限は組合の代表者または組合から委任を受けた者にあります(6 条)。使用者側の当事者は、労働契約上の雇用主が中心ですが、判例はそれより広く見ます。
朝日放送事件(最判平成 7 年 2 月 28 日):雇用主以外の事業主であっても、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に、労働者の基本的な労働条件等について現実的かつ具体的に支配・決定することができる地位にある場合は、その限りで労働組合法 7 条の「使用者」に当たる
請負会社の従業員を自社のスタジオで自社の指示のもと働かせていた放送局が、就労時間や作業環境について団交を拒んだ事案で、放送局はその範囲では使用者だと判断されました。労働基準法の使用者(zr-01)とは別の概念です。
義務的団交事項は、組合員の賃金・労働時間・安全衛生・人事など労働条件その他の待遇に関する事項と、団体的労使関係の運営(団交のルール・組合事務所など)に関する事項です。経営や生産に関する事項(いわゆる経営専権事項)も、労働条件に影響する限りで義務的団交事項になります。
ここまでできれば十分
使用者には誠実交渉義務があります。交渉の席に着くだけでは足りず、自らの主張の根拠を説明し、必要な資料を示し、合意の可能性を探る態度が求められます。これを欠く形式的な交渉は団交拒否(7 条 2 号)に当たります。ただし、十分に交渉して合意の見込みがなくなった行き詰まりの状態なら、交渉を打ち切っても団交拒否ではありません。
団交拒否に対する救済は、労働委員会への不当労働行為の救済申立て(後述)が中心ですが、裁判所で団体交渉を求めうる地位にあることの確認を求めることもできます(国鉄事件 最判平成 3 年 4 月 23 日)。使用者に交渉を命ずる仮処分は消極的に解されています。
複数の組合が並立する場合、使用者はそれぞれの組合と交渉する義務を負い、中立保持義務があります。一方の組合だけを優遇する交渉態度は支配介入(7 条 3 号)になりえます(日産自動車事件 最判昭和 60 年 4 月 23 日)。
4. 労働協約 ── 規範的効力と一般的拘束力
まずここだけ
労働協約は、労働組合と使用者(またはその団体)との間の労働条件その他に関する合意で、書面に作成し、両当事者が署名または記名押印することで効力を生じます(14 条)。口頭の合意は労働協約ではありません(都南自動車教習所事件 最判平成 13 年 3 月 13 日:書面化されていない合意には規範的効力が認められない)。有効期間は 3 年が上限で、これを超える定めは 3 年の定めとみなされます(15 条 1 項・2 項)。期間の定めのない協約は、署名または記名押印した文書で 90 日前に予告すれば解約できます(15 条 3 項・4 項)。
規範的効力(16 条):労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効になり、無効になった部分は協約の基準によります。労働契約に定めがない部分も同じです。労働基準法 13 条と同じ「無効+置きかえ」の構造です。協約のうち、組合と使用者の関係を定める部分(団交のルール、組合事務所の貸与、平和条項など)は債務的部分で、当事者間の契約としての効力(債務的効力)を持つだけです。
効力の順位は 法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約で、就業規則は労働協約に反してはなりません(労働基準法 92 条)。
ここまでできれば十分
協約は本来組合員だけを拘束します。これを組合員以外に広げるのが一般的拘束力です。
| 種類 | 条 | 要件 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 事業場単位の一般的拘束力 | 17 条 | 1 つの工場事業場に常時使用される同種の労働者の 4 分の 3 以上が 1 つの協約の適用を受けるに至ったとき | その事業場の他の同種の労働者にも当然に協約が適用される(手続不要) |
| 地域単位の一般的拘束力 | 18 条 | 1 つの地域の同種の労働者の大部分が 1 つの協約の適用を受けるに至ったとき | 協約当事者の双方または一方の申立て → 労働委員会の決議 → 厚生労働大臣または都道府県知事の決定(公告)により、その地域の他の同種の労働者と使用者にも適用 |
17 条は自動的、18 条は行政決定が必要、という違いが定番です。17 条の拡張適用は、別の組合に加入している労働者には及ばないと解するのが通説・裁判例です。未組織労働者への適用について、朝日火災海上保険(高田)事件(最判平成 8 年 3 月 26 日)は、協約による労働条件の不利益変更を未組織労働者に及ぼすことが、その者の受ける不利益の程度・内容、協約の締結経緯などに照らして著しく不合理と認められる特段の事情があるときは、拡張適用されないとしました。
協約による労働条件の不利益変更:組合員については、朝日火災海上保険(石堂)事件(最判平成 9 年 3 月 27 日)が、協約が特定の組合員をことさら不利益に扱うことを目的として締結されたなど、労働組合の目的を逸脱して締結された場合でない限り、賃金・退職金を不利益に変更する協約も組合員を拘束するとしました。「有利原則」(労働契約のほうが有利ならそれを優先する)は日本では一般に認められていません。
もう一歩(発展)
有効期間中は協約で決めた事項について争議行為をしないという平和義務が生じます(相対的平和義務)。平和義務に違反する争議行為は債務不履行にはなりますが、それだけで直ちに刑事免責・民事免責を失うわけではないとするのが判例(弘南バス事件 最判昭和 43 年 12 月 24 日:平和義務違反の争議行為への参加を理由とする懲戒処分は許されない)です。
5. 争議行為 ── 正当性の 4 つの物差し
まずここだけ
争議行為は、労働関係調整法 7 条で「同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者がその主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するもの」と定義されます。正当な争議行為には刑事免責・民事免責・不利益取扱いの禁止という保護がありますが、正当でなければ保護はありません。正当性は 4 つの面から判断します。
| 物差し | 正当 | 正当でない |
|---|---|---|
| 主体 | 労働組合(憲法上の組合を含む) | 組合の統制を離れた一部組合員による山猫スト |
| 目的 | 労働条件の維持改善など、使用者が処理できる事項 | 政治スト(国の政策に反対するストなど・全農林警職法事件)。純粋な同情ストも消極 |
| 手段・態様 | 労務の不提供(スト・怠業)、平和的説得によるピケッティング | 暴力(1 条 2 項)、生産管理(使用者の意思を排除して工場を占拠し経営する行為・山田鋼業事件 最大判昭和 25 年 11 月 15 日)、実力による就労阻止 |
| 手続 | 組合規約に基づく決定、公益事業の 10 日前予告(労調法 37 条) | 予告違反は労調法上の違反。平和義務違反は債務不履行 |
朝日新聞西部本社事件(最大判昭和 27 年 10 月 22 日)は、争議手段は業務の正常な運営を阻害する行為でよいが、使用者側の業務を積極的に妨害したり、その営業施設を占有したりすることは許されないとしました。御國ハイヤー事件(最判平成 4 年 10 月 2 日)は、ストライキ中の組合員がタクシーを占有して会社の運行を阻止した行為について、ストは労務の不提供にとどまるべきで、使用者の営業を実力で阻止することは正当性の範囲を超えるとしています。
ここまでできれば十分
賃金との関係:ストライキに参加した労働者は労務を提供していないので、その期間の賃金請求権はありません(ノーワーク・ノーペイの原則)。三菱重工長崎造船所事件(最判昭和 56 年 9 月 18 日)は、スト期間中の家族手当のカットも、就業規則・慣行に基づくものである限り許されるとしました。組合の一部の組合員だけがストをして他の組合員が働けなくなった場合(部分スト)、働けなかった組合員には賃金請求権も休業手当請求権もないのが原則です(ノースウエスト航空事件 最判昭和 62 年 7 月 17 日・zr-01 参照)。
ロックアウト(作業所閉鎖):使用者の争議対抗手段です。丸島水門事件(最判昭和 50 年 4 月 25 日)は、労使間の勢力の均衡が破れ使用者側が著しく不利な圧力を受ける場合に、衡平の見地から対抗防衛手段として相当と認められるロックアウトは正当で、その期間中の賃金支払義務を免れるとしました。先制的・攻撃的なロックアウトは正当性を欠き、賃金支払義務は残ります。
争議行為と第三者:正当な争議行為によって使用者や第三者が損害を受けても、組合や組合員に賠償請求はできません(8 条)。組合が正当でない争議行為をした場合、組合自身の不法行為責任のほか、指導した組合幹部や参加した組合員の責任も問題になります。
6. 不当労働行為と労働委員会
まずここだけ
7 条は使用者を名あて人として、次の 4 つの行為を禁止します(労働者側の行為を禁止する規定はありません)。
| 号 | 類型 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 号 | 不利益取扱い・黄犬契約 | 組合員であること、組合に加入し結成しようとしたこと、組合の正当な行為をしたことを理由とする解雇その他の不利益取扱い。組合に加入しないこと・脱退することを雇用条件とすること(黄犬契約)。但書でユニオン・ショップ協定を許容 |
| 2 号 | 団体交渉拒否 | 雇用する労働者の代表者との団体交渉を正当な理由なく拒むこと。不誠実な交渉も含む |
| 3 号 | 支配介入・経費援助 | 組合の結成・運営を支配し介入すること。運営経費の経理上の援助(例外は 2 条 2 号但書と同じ) |
| 4 号 | 報復的不利益取扱い | 労働委員会への申立て・再審査の申立て、労働委員会の調査・審問・争議調整で証拠を示し発言したことを理由とする解雇その他の不利益取扱い |
支配介入の例:組合結成の中心人物の配転、組合脱退の勧奨、組合員への個別の説得工作、対立組合への便宜供与の差別。使用者の言論も、組合の運営に影響を与える威嚇や利益誘導を含めば支配介入になります。プリマハム事件(最判昭和 57 年 9 月 10 日)は、ストライキ突入直前に社長名で出した「組合の方針は会社を破滅に導く」旨の声明文の掲示を支配介入と認めました。山岡内燃機事件(最判昭和 29 年 5 月 28 日)は、支配介入が成立するために組合活動に現実の影響が生じたことは必要でないとしています。
ここまでできれば十分
労働委員会は、使用者委員・労働者委員・公益委員の各同数で組織される三者構成の行政委員会で、中央労働委員会(国)と都道府県労働委員会があります(19 条)。不当労働行為の審査は公益委員が行い、労使委員は参与します。
救済手続の流れは次のとおりです。
- 申立て:労働組合または労働者が、行為の日(継続する行為はその終了日)から 1 年以内に申し立てる(27 条 2 項)。申立人になれるのは組合と労働者で、使用者は申立てできない
- 調査・審問:労働委員会が事実を調べ、当事者に和解を勧めることもできる
- 命令:救済の全部・一部を認容する救済命令または棄却命令を書面で発する(27 条の 12)。交付の日から効力を生ずる
- 再審査:都道府県労働委員会の命令に不服なら、15 日以内に中央労働委員会へ再審査を申し立てられる(27 条の 15)
- 取消訴訟:使用者は命令の交付の日から 30 日以内に取消しの訴えを提起できる(27 条の 19・不変期間)。中労委に再審査を申し立てたときは、その中労委の命令に対してのみ訴えを提起できる。労働組合・労働者側も行政事件訴訟法により取消訴訟を提起できる
- 緊急命令:使用者が取消訴訟を提起した場合、受訴裁判所は労働委員会の申立てにより、判決確定まで命令の全部または一部に従うよう命ずることができる(27 条の 20)
命令が確定した後にこれに違反すると50 万円以下の過料(作為を命ずる命令なら、不履行が 5 日を超えた日数 1 日につき 10 万円が加算・32 条)、確定判決によって支持された救済命令に違反すると 1 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金(28 条)です。
救済命令の内容は労働委員会の裁量に委ねられます。第二鳩タクシー事件(最大判昭和 52 年 2 月 23 日)は、解雇された労働者の原職復帰とバックペイ(解雇期間中の賃金相当額の支払)を命ずるに当たり、その間に他で働いて得た中間収入を控除するかどうかは労働委員会の合理的な裁量に委ねられるが、控除しないことが合理性を欠く場合は違法になるとしました。
不当労働行為は、労働委員会での救済のほか、裁判所で解雇無効の確認や損害賠償を求めることもできます。不当労働行為に当たる解雇は私法上も無効です(7 条は強行規定)。
もう一歩(発展)
不当労働行為意思:1 号・4 号の不利益取扱いには、組合活動などを理由とする使用者の意思が必要です。ただし、他の理由(勤務成績不良など)と組合嫌悪が競合する場合、組合活動がなければ不利益取扱いはなかったと言えれば不当労働行為が成立します。
使用者の言論の自由との関係では、使用者も意見表明の自由を持ちますが、組合の自主性を損なう内容・方法(威嚇・利益誘導・組合員個々への直接の働きかけ)であれば支配介入です。
7. 労働関係調整法 ── 斡旋・調停・仲裁・緊急調整
まずここだけ
労働関係調整法は、労働争議(労働関係の当事者間で主張が一致せず、争議行為が発生しているか発生するおそれがある状態・6 条)を労働委員会が調整するしくみを定めます。当事者の自主的解決が原則(4 条)で、調整はそれを助ける位置づけです。
| 手続 | 担当 | 開始 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 斡旋 | 労働委員会会長が指名する斡旋員(斡旋員候補者名簿から) | 関係当事者の双方または一方の申請、または職権 | 双方の主張の要点を確かめ、事件が解決するよう努める。解決案の提示は義務ではない |
| 調停 | 労使公益三者構成の調停委員会 | 原則双方の申請。公益事業などは一方の申請・職権・大臣や知事の請求でも可 | 調停案を作成して受諾を勧告する。受諾は当事者の自由(拘束力なし) |
| 仲裁 | 公益委員(または特別調整委員)3 人による仲裁委員会 | 原則双方の申請(協約に仲裁申請の定めがあれば一方でも可) | 仲裁裁定は書面で作成し、労働協約と同一の効力を持つ(34 条)。当事者を拘束する |
「斡旋は一方でも職権でも・調停と仲裁は原則双方」「調停案は拘束しない・仲裁裁定は拘束する」が問われます。
ここまでできれば十分
公益事業(8 条)は、運輸、郵便・信書便・電気通信、水道・電気・ガスの供給、医療・公衆衛生の各事業で公衆の日常生活に欠くことのできないものです。内閣総理大臣は国会の承認を経て、1 年以内の期間を限って他の事業を公益事業に指定できます。公益事業で争議行為をするには、少なくとも 10 日前までに労働委員会と厚生労働大臣または都道府県知事に通知しなければなりません(37 条)。
緊急調整(35 条の 2〜38 条):公益事業に関する事件、規模が大きい事件、特別の性質の事業に関する事件で、争議行為により国民経済の運行が著しく阻害され、または国民の日常生活が著しく危うくされるおそれが現実に存するときに、内閣総理大臣が中央労働委員会の意見を聴いて決定します。決定の公表があった日から 50 日間は争議行為ができません。
8. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 非現業の公務員には団体交渉権がまったくない | 交渉はできるが協約締結権がない。争議権はすべての公務員にない |
| 全農林警職法事件は公務員の争議行為の一律禁止を違憲とした | 合憲。二重のしぼり論(都教組事件)を変更した |
| 労働組合法上の労働者に失業者は含まれない | 「賃金等によって生活する者」なので失業者も含む |
| 使用者から最小限の事務所を借りている組合は自主性を欠く | 最小限の広さの事務所の供与は経理上の援助に当たらない(2 条 2 号但書) |
| ユニオン・ショップ協定に基づき、別組合に加入した労働者を解雇できる | その部分は無効(三井倉庫港運事件) |
| 労働協約は口頭の合意でも成立する | 書面+署名または記名押印が必要(14 条) |
| 労働協約の有効期間の上限は 5 年 | 3 年。期間の定めがなければ 90 日前の予告で解約 |
| 17 条の一般的拘束力は同種労働者の過半数が適用を受ければ生ずる | 4 分の 3 以上 |
| 18 条の地域的拘束力は要件を満たせば当然に生ずる | 労働委員会の決議と厚生労働大臣または知事の決定が必要 |
| 政治ストも労働者の団体行動なので正当 | 使用者が処理できない事項を目的とする政治ストは正当でない |
| ストライキ中も使用者は賃金を支払わなければならない | ノーワーク・ノーペイ。正当なロックアウト中も同様 |
| 団交拒否は 7 条 3 号、支配介入は 7 条 2 号 | 団交拒否は 2 号、支配介入は 3 号、不利益取扱いは 1 号、報復は 4 号 |
| 不当労働行為の救済は使用者も労働委員会に申し立てられる | 申立人は労働組合と労働者のみ |
| 救済命令の取消訴訟は交付から 3 か月以内 | 30 日以内(不変期間)。再審査は 15 日以内 |
| 仲裁裁定に当事者を拘束する効力はない | 労働協約と同一の効力。拘束力がないのは調停案 |
| 緊急調整は厚生労働大臣が決定する | 内閣総理大臣が中労委の意見を聴いて決定。50 日間争議禁止 |
9. 覚え方の型
- 公務員は「警察・消防・自衛隊・海保・刑事施設=三権なし/非現業=協約締結なし/現業=協約可/争議は全員×」+「中郵 → 都教組 → 全農林(合憲・48 年)」
- 2 条但書は「利益代表者・経理援助=自主性、共済のみ・政治主目的=目的」。事務所の最小限供与は OK
- 協約の数字は「3 年・90 日・4 分の 3・大部分+大臣決定」。効力は「規範的=無効+置きかえ、債務的=契約」
- 争議の正当性は「主体(山猫×)・目的(政治×)・手段(暴力×・生産管理×・占有×)・手続(公益 10 日前)」
- 7 条は「1 不利益・黄犬/2 団交拒否/3 支配介入・経費援助/4 報復」。名あて人は使用者だけ
- 労働委員会は「1 年以内に申立て → 命令 → 15 日で再審査 or 30 日で取消訴訟 → 緊急命令 → 確定違反は過料、判決支持後の違反は刑罰」
- 労調法は「斡旋(一方・職権 OK・拘束なし)/調停(双方原則・案は勧告)/仲裁(双方原則・協約と同じ効力)/緊急調整(総理・中労委意見・50 日)」
10. 小テストへ
→ 小テスト(zr-03)
関連する単元
- 前提:zh-06 社会権・参政権・国務請求権(憲法 28 条と公務員の労働基本権)、zr-01 労働基準法①(労働契約・就業規則・賃金)(労働協約と就業規則の効力順位・賃金全額払)
- 次に進む:zr-04 労働契約法と雇用関連法(個別労働紛争の解決手続との対比)
- 同じ考え方を使う:zg-09 行政事件訴訟法(救済命令の取消訴訟)、zk-07 労働と社会保障
参考資料
- 労働組合法(昭和 24 年法律第 174 号)1 条〜8 条・14 条〜19 条・27 条〜27 条の 20・28 条・32 条(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000174 )
- 労働関係調整法(昭和 21 年法律第 25 号)6 条〜12 条・17 条〜18 条・29 条〜35 条の 2・37 条・38 条(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/321AC0000000025 )
- 国家公務員法 98 条・108 条の 2・110 条、地方公務員法 37 条・52 条・61 条
- 中央労働委員会「不当労働行為審査制度の概要」「労働争議の調整」
- 最高裁判所判例集(最大判昭和 25 年 11 月 15 日・最大判昭和 27 年 10 月 22 日・最判昭和 29 年 5 月 28 日・最大判昭和 41 年 10 月 26 日・最大判昭和 44 年 4 月 2 日・最大判昭和 48 年 4 月 25 日・最判昭和 50 年 4 月 25 日・最大判昭和 52 年 2 月 23 日・最判昭和 54 年 10 月 30 日・最判昭和 56 年 9 月 18 日・最判昭和 57 年 9 月 10 日・最判昭和 60 年 4 月 23 日・最判平成元年 12 月 11 日・最判平成元年 12 月 14 日・最判平成 3 年 4 月 23 日・最判平成 4 年 10 月 2 日・最判平成 5 年 3 月 25 日・最判平成 7 年 2 月 28 日・最判平成 8 年 3 月 26 日・最判平成 9 年 3 月 27 日・最判平成 13 年 3 月 13 日・最判平成 23 年 4 月 12 日)
- 菅野和夫『労働法』、西谷敏『労働組合法』(教科書レベルの標準文献)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zr-03/ / 更新 2026-09-19