地方上級 / 社会 / zk-08

更新 2026-09-14

環境・人口・情報化と現代社会

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

社会科学(社会)のこの単元は、時事と結びつきやすい分野です。出題では「会議・条約の名前と年と内容」の組み合わせ「法律名と定めた内容」の入れかえが中心で、細かい数字より「順番」と「何を決めたか」が問われます。環境と人口は地理(人文科学)とも重なり、情報化の法律は憲法の新しい人権(zk-01)とつながります。制度は改正されやすいので、本文の記述は 2026 年 9 月時点のもので、最新は環境省・総務省・消費者庁などの公表資料で確認してください。


1. 地球環境問題 ── 会議と条約の流れ

まずここだけ

地球環境問題への国際的な取り組みは、4 つの節目で押さえます。

会議・協定決めたこと
1972 年国連人間環境会議(ストックホルム)スローガン「かけがえのない地球」。人間環境宣言。UNEP(国連環境計画)の設立
1992 年国連環境開発会議(地球サミット)(リオデジャネイロ)持続可能な開発」を基本理念に。気候変動枠組条約生物多様性条約の署名、行動計画「アジェンダ 21」
1997 年京都議定書(COP3・京都)先進国だけに温室効果ガスの数値目標(日本は 1990 年比 −6%、2008〜12 年)。途上国に義務なし。米国は批准せず。2005 年発効
2015 年パリ協定(COP21・パリ)途上国を含むすべての国が削減目標を自分で決めて提出(5 年ごとに見直し)。世界の平均気温上昇を産業革命前より 2℃ より十分低く、1.5℃ に抑える努力。2016 年発効

京都議定書とパリ協定の違いは「誰に義務があるか(先進国だけ ↔ 全部の国)」と「目標の決め方(条約で割り当て ↔ 各国が自主的に提出)」です。

ここまでできれば十分

このほかの会議も年と場所で並べます。2002 年ヨハネスブルグ(持続可能な開発に関する世界首脳会議・リオ+10)、2012 年リオ+20、2015 年の国連サミットで採択された SDGs(持続可能な開発目標)(17 の目標・2030 年まで)。

個別の問題ごとの条約は、「何を守るか」で覚えます。

条約中身
ラムサール条約1971 年水鳥の生息地として重要な湿地の保護
ワシントン条約1973 年絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引の規制
ウィーン条約・モントリオール議定書1985 年・1987 年オゾン層の保護。フロンの生産・消費の規制
バーゼル条約1989 年有害廃棄物の国境を越える移動の規制
生物多様性条約1992 年生物多様性の保全。遺伝子組換え生物の移動を扱うカルタヘナ議定書(2000 年)、遺伝資源の利益配分を扱う名古屋議定書(2010 年)
砂漠化対処条約1994 年砂漠化と干ばつへの対処

「オゾン層はモントリオール、温暖化は京都・パリ」「湿地はラムサール、取引はワシントン、ごみはバーゼル」の対応をまず固めます。

もう一歩(発展)

地球温暖化の主な原因は二酸化炭素などの温室効果ガスで、日本は 2050 年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロにする)を宣言し、2030 年度に 2013 年度比 46% 削減という目標を掲げています。手段として、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT・2012 年)、炭素税排出量取引(カーボン・プライシング)などがあります。

酸性雨(硫黄酸化物・窒素酸化物が原因で国境を越える)、熱帯林の減少、海洋プラスチックごみ、生物多様性の損失も、原因物質と影響を組で押さえてください。


2. 日本の公害と環境政策

まずここだけ

高度経済成長期の四大公害病は、地域・原因物質の組み合わせで問われます。

公害病地域原因物質
水俣病熊本県(水俣湾)工場排水中の有機水銀
新潟水俣病新潟県(阿賀野川流域)有機水銀
イタイイタイ病富山県(神通川流域)鉱山排水中のカドミウム
四日市ぜんそく三重県(四日市市)石油化学コンビナートの亜硫酸ガス(硫黄酸化物)

4 つの裁判はいずれも 1970 年代前半に患者側が勝訴しました。

ここまでできれば十分

環境法の流れは「公害対策基本法(1967 年)→ 環境基本法(1993 年)」が軸です。公害対策基本法は当初「経済との調和」条項があり、1970 年の「公害国会」で削除されました。1971 年に環境庁(2001 年から環境省)が設置され、1993 年の環境基本法で地球環境問題まで含めた枠組みに変わりました。

環境政策の原則として、汚染を出した者が費用を負担する汚染者負担の原則(PPP)、大気汚染防止法・水質汚濁防止法での無過失責任(過失がなくても損害を賠償)、工場ごとの濃度ではなく地域全体の排出量を抑える総量規制、開発の前に環境への影響を調べる環境アセスメント(環境影響評価法・1997 年)があります。

循環型社会形成推進基本法(2000 年)は、廃棄物の扱いの優先順位を定めています。

発生抑制(リデュース)→ 再使用(リユース)→ 再生利用(リサイクル)→ 熱回収 → 適正処分

「3R の中ではリデュースが最優先」がポイントです。個別法として、容器包装リサイクル法(1995 年)、家電リサイクル法(1998 年)、食品リサイクル法(2000 年)、自動車リサイクル法(2002 年)、小型家電リサイクル法(2012 年)などがあります。


3. 人口問題

まずここだけ

世界人口は 2022 年に 80 億人を超えました(国連推計)。増加の中心は発展途上国で、医療の普及で死亡率が下がる一方、出生率が高いままなので人口が急増します(人口爆発)。一方で先進国は少子高齢化が進み、人口が減る国も出ています。

人口の変化は人口転換のモデルで説明されます。

多産多死(出生率も死亡率も高い)→ 多産少死(医療の普及で死亡率だけ下がり人口が急増)→ 少産少死(出生率も下がり人口が安定・減少)

人口ピラミッドは、多産多死・多産少死の段階が富士山型、少産少死に向かうと釣り鐘型、さらに少子化が進むとつぼ型になります。

人口 5,000 万人の国で、出生率が 1,000 人あたり 30 人(30‰)、死亡率が 10‰ なら、自然増加率は 20‰、自然増加数は 5,000 × 20 ÷ 1,000 = 100 万人

ここまでできれば十分

日本の人口の要点は zk-07 でも扱ったとおり、高齢化率が 7%(1970 年)→ 14%(1994 年)→ 21%(2007 年)を超え、総人口は 2008 年をピークに減少に転じています。地域では、大都市への過密(東京一極集中)と地方の過疎が同時に進み、65 歳以上が住民の半数を超えて共同生活の維持が難しくなった集落は限界集落と呼ばれます。

人口減少への対応として、地方創生、外国人労働者の受け入れ(2019 年の特定技能制度など)、多文化共生の取り組みが進められています。


4. 情報化社会と法律

まずここだけ

情報通信技術(ICT)の発達で、IoT(モノのインターネット)・ビッグデータAI を活用する社会(政府はSociety 5.0 と呼ぶ)が進む一方、情報を使える人と使えない人の格差(デジタル・デバイド)、個人情報の流出、フェイクニュース、サイバー攻撃などの課題があります。

情報に関する主な法律は「何を守る法律か」で分けます。

法律要点
個人情報保護法(2003 年制定)個人情報を扱う事業者に利用目的の特定・安全管理・本人の同意のない第三者提供の禁止などを義務づけ。2015 年改正で個人情報保護委員会を設置
情報公開法(1999 年制定)誰でも行政機関に行政文書の開示を請求できる。「知る権利」という言葉は法律には明記されていない
不正アクセス禁止法(1999 年制定)他人の ID・パスワードを使うなどしてコンピュータに侵入する行為を処罰
プロバイダ責任制限法(2001 年制定)ネット上の権利侵害について、プロバイダの損害賠償責任を限定し、発信者情報の開示請求を認める
マイナンバー法(2013 年制定)住民全員に 12 桁の番号を付け、社会保障・税・災害対策の分野で利用(2016 年から)
サイバーセキュリティ基本法(2014 年)国のサイバーセキュリティ戦略の基本。2021 年には行政のデジタル化を進めるデジタル庁が発足

ここまでできれば十分

情報化と人権の関係では、憲法に明文のない新しい人権が問われます。プライバシーの権利は「私生活をみだりに公開されない権利」として『宴のあと』事件(東京地裁・1964 年)で認められ、今日では「自分の情報をコントロールする権利」と広く理解されています。知る権利は表現の自由(21 条)の受け手の側から導かれ、情報公開制度の根拠になります。通信の秘密は 21 条 2 項が直接保障しています。

知的財産権:著作権(著作者の死後 70 年まで保護。2018 年に 50 年から延長)・特許権・商標権など。ネット上の無断転載は著作権侵害になります。


5. 現代社会と消費者問題

まずここだけ

現代社会の特徴として、核家族化単独世帯の増加、女性の社会進出(1999 年男女共同参画社会基本法)、多文化共生、大衆社会化などが挙げられます。

消費者問題では、制度の名前と中身の対応が問われます。米国のケネディ大統領が 1962 年に示した消費者の 4 つの権利(安全を求める権利・知らされる権利・選ぶ権利・意見を聞いてもらう権利)が出発点です。

制度中身
クーリング・オフ訪問販売・電話勧誘販売などで契約してから一定期間(訪問販売は 8 日、マルチ商法などの連鎖販売取引は 20 日)なら無条件で解約できる。通信販売には適用されない
製造物責任法(PL 法)(1994 年制定)製品の欠陥で損害を受けたとき、メーカーの過失を証明しなくても賠償を求められる(無過失責任
消費者契約法(2000 年制定)事業者の不当な勧誘(うそ・断定的判断・困惑させる)による契約を取り消せる。消費者に一方的に不利な条項は無効
消費者基本法(2004 年)1968 年の消費者保護基本法を改正。消費者を「保護される者」から「権利をもつ自立した主体」へ
消費者庁(2009 年設置)消費者行政を一元的に担う。各地の消費生活センターと連携

2022 年 4 月から成年年齢が 18 歳に引き下げられ、18・19 歳は親の同意なしに契約できるようになった一方、未成年者取消権が使えなくなったため、若者の消費者被害への注意が呼びかけられています。


6. よくある間違い

間違い正しくは
京都議定書はすべての国に削減義務を課した義務は先進国だけ。すべての国が目標を出すのはパリ協定
パリ協定は各国に削減量を割り当てた各国が自主的に目標を決めて提出する
モントリオール議定書は温暖化対策オゾン層保護(フロン規制)。温暖化は京都・パリ
ワシントン条約は湿地の保護ワシントンは野生動植物の取引。湿地はラムサール
イタイイタイ病の原因は有機水銀カドミウム(富山・神通川)。有機水銀は水俣病・新潟水俣病
3R の優先順位はリサイクルが最上位リデュース(発生抑制)が最優先
環境基本法は 1967 年に制定された1967 年は公害対策基本法。環境基本法は1993 年
情報公開法に「知る権利」が明記されている明記されていない
クーリング・オフは通信販売にも使える通信販売には適用されない
PL 法ではメーカーの過失を証明する必要がある無過失責任。欠陥と損害を示せばよい
人口転換で人口が急増するのは多産多死の段階多産少死の段階(死亡率だけ先に下がる)

7. 解き方の型

  1. 環境の会議は「1972 ストックホルム → 1992 リオ → 1997 京都 → 2015 パリ」の順を先に固定し、内容(宣言・条約署名・先進国の義務・全員参加)を当てる
  2. 条約は「守る対象」で引く:湿地=ラムサール、取引=ワシントン、オゾン=モントリオール、有害廃棄物=バーゼル、多様性=生物多様性条約
  3. 四大公害病は「地域 → 原因物質」の 2 段で確かめる(水銀 2 つ、カドミウム 1 つ、亜硫酸ガス 1 つ)
  4. 人口の計算は「率(‰)× 人口 ÷ 1,000」。高齢化率は 7・14・21 の 3 段階で分類
  5. 情報の法律は「守るもの」で分ける:個人情報/行政文書の開示/不正侵入/ネットの権利侵害
  6. 消費者の制度は「日数(8 日・20 日)」「無過失(PL 法)」「取消し(消費者契約法)」「通販には適用なし(クーリング・オフ)」を選択肢ごとに確かめる

8. 小テストへ

→ 小テスト(zk-08

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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