地方上級 / 経済 / zk-05
財政と金融(予算・租税・日本銀行)
この単元でできるようになること
- 財政の 3 つの機能(資源配分・所得再分配・経済安定化)を、具体的な政策の例から見分けられる
- 予算が「誰が作り・どこで議決し・どう検査されるか」を憲法・財政法の条文で説明できる
- 租税を「国税か地方税か」「直接税か間接税か」で分類し、累進課税と消費税の逆進性を計算つきで説明できる
- 国債の 2 つの原則(建設国債の原則・市中消化の原則)とプライマリーバランスの意味を説明できる
- 日本銀行の 3 つの役割と金融政策の手段を、「景気が悪いときにどちらへ動かすか」まで答えられる
- 信用創造の計算(預金 × 1 / 準備率)ができる
試験での位置づけ
教養試験の社会科学(経済)では、財政・金融は zk-04 の需要供給と並ぶ主戦場です。出題の形は「制度の説明文 5 つから正しいものを選ぶ」ものが多く、建設国債と赤字国債の根拠法の違い、買いオペと売りオペの向き、直接税と間接税の分類のように、似た用語を入れかえた誤答が並びます。専門試験では財政学(zf-01 財政の機能と予算制度、zf-02 租税、zf-03 公債)とマクロ経済学(za-04 貨幣と金融政策)に分かれて深く問われるので、この単元でその土台を作ります。制度の数値は 2026 年 9 月時点のもので、最新は財務省・日本銀行の公表資料で確認してください。
1. 財政の役割 ── 3 つの機能
まずここだけ
財政とは、政府(国と地方公共団体)が税を集めて支出する経済活動のことです。財政には次の 3 つの機能があるとされます(マスグレイブの整理)。
| 機能 | 内容 | 政策の例 |
|---|---|---|
| 資源配分の調整 | 市場では供給されにくい公共財・公共サービスを政府が供給する | 道路・国防・警察・教育 |
| 所得の再分配 | 税と社会保障を通じて、所得の格差を小さくする | 累進課税、生活保護、年金、相続税 |
| 経済の安定化 | 景気の波を小さくする | 不況時の公共事業、減税、失業給付 |
ここまでできれば十分
経済の安定化には 2 つの型があります。
- ビルト・イン・スタビライザー(自動安定化装置):制度そのものに組みこまれていて、政府が何もしなくても働く仕組み。好況で所得が増えると累進課税で税負担が自動的に重くなり、不況で失業が増えると失業給付が自動的に増えて消費を支えます
- フィスカル・ポリシー(裁量的財政政策):政府がその都度判断して行う政策。不況時に公共事業を増やす・減税する、好況時に公共事業を減らす・増税する、というケインズ政策がこれにあたります
「自動か、その都度の判断か」で見分けるのが型です。金融政策と財政政策を組み合わせて景気を調整することをポリシー・ミックスといいます。
2. 予算 ── 作る・議決する・検査する
まずここだけ
国の予算は、内閣が作成して国会に提出し(憲法 86 条)、国会の議決で成立します。予算は衆議院に先に提出しなければならず(衆議院の先議権、憲法 60 条 1 項)、参議院が衆議院と異なる議決をして両院協議会でも一致しないとき、または参議院が受け取ってから 30 日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決になります(60 条 2 項)。
会計年度は 4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで。決算は会計検査院が検査したうえで、内閣が国会に提出します(憲法 90 条)。会計検査院は内閣から独立した機関です。
ここまでできれば十分
予算にはいくつかの種類があります。
| 名前 | 内容 |
|---|---|
| 一般会計 | 国の基本的な歳入・歳出を扱う本体の予算 |
| 特別会計 | 特定の事業や資金を区分して経理するもの(年金、国債整理基金、交付税など)。「第二の財布」として肥大化が問題になり、統廃合が進められてきた |
| 政府関係機関予算 | 政府系金融機関などの予算 |
| 財政投融資 | 国債の一種である財投債などで調達した資金を、政策金融機関や地方公共団体に融資する。かつては郵便貯金・年金積立金が自動的に預け入れられていたが、2001 年の改革でこの預託制度は廃止され、必要な額を財投債で調達する仕組みになった。「第二の予算」と呼ばれる |
年度の途中で当初予算を変えるのが補正予算、年度開始までに予算が成立しないときに数か月分だけ組むのが暫定予算です(成立した本予算に吸収されます)。
一般会計の中身は、歳出では社会保障関係費が最大(およそ 3 分の 1)で、次いで国債費(国債の元利払い)、地方交付税交付金が続きます。歳入は税収のほかに公債金(国債の発行収入)に大きく頼っており、歳入に占める公債金の割合を公債依存度といいます。
3. 租税 ── 分類と公平
まずここだけ
税は 2 つの軸で分類します。
| 直接税(納める人と負担する人が同じ) | 間接税(納める人と負担する人が違う) | |
|---|---|---|
| 国税 | 所得税・法人税・相続税・贈与税 | 消費税・酒税・たばこ税・関税・揮発油税 |
| 地方税 | 住民税(道府県民税・市町村民税)・事業税・固定資産税・自動車税 | 地方消費税・地方たばこ税・入湯税 |
固定資産税は市町村税、事業税は都道府県税です。日本の直接税と間接税の比率(直間比率)は直接税の割合が高い型でしたが、消費税の導入と税率引き上げで間接税の割合が高まってきました。
ここまでできれば十分
租税の原則は「公平・中立・簡素」の 3 つでまとめられます。公平にはさらに 2 つの考え方があります。
- 垂直的公平:負担する力が大きい人ほど多く負担する。→ 累進課税(所得税・相続税)
- 水平的公平:同じ負担する力の人は同じだけ負担する。→ 所得の種類によって捕捉率が違う問題(給与所得者は源泉徴収でほぼ全額把握されるが、自営業者・農家は把握しきれない「クロヨン」問題)は水平的公平の問題
超過累進税率の計算は、「所得全体に最高税率をかける」のではなく、「区分ごとの部分にそれぞれの税率をかけて足す」のが型です。
課税所得 300 万円、税率が「200 万円まで 10%、200 万円を超える部分 20%」のとき 200 × 0.1 + (300 − 200) × 0.2 = 20 + 20 = 40 万円(300 × 0.2 = 60 万円ではない)
消費税は所得にかかわらず同じ税率なので、所得が低い人ほど所得に対する負担の割合が重くなります。これを逆進性といいます。
年 200 万円を使う人と 1,000 万円を使う人がともに 10% の消費税を払うと、税額は 20 万円と 100 万円。所得がそれぞれ 250 万円・2,000 万円なら、負担率は 8% と 5% で、所得の低い人のほうが重い
消費税は 1989 年に 3% で導入され、1997 年 5%、2014 年 8%、2019 年 10%(飲食料品と定期購読の新聞は軽減税率 8%)と引き上げられてきました。10% のうち 2.2% 分は地方消費税です。
もう一歩(発展)
戦後日本の税制の土台は、1949 年のシャウプ勧告(直接税中心・所得税の総合課税)で作られました。その後、所得税の最高税率の引き下げと消費税の導入(1989 年)で、直接税中心から間接税へ比重を移す流れが続いています。近年の税収では、消費税が所得税・法人税を上回って最大の税目になった年度が続いています。
4. 国債 ── 2 つの原則とプライマリーバランス
まずここだけ
国の借金である国債には、財政法の 2 つの原則があります。
- 建設国債の原則(財政法 4 条):国の歳出は原則として税収などでまかない、国債を発行できるのは公共事業費などに充てる建設国債に限られる(4 条ただし書)
- 市中消化の原則(財政法 5 条):国債は民間の金融機関などに買ってもらう。日本銀行による直接引受けは原則禁止(歯止めなく通貨が増えてインフレを招いた戦前の反省から)
したがって、公共事業以外の歳出の不足を埋める赤字国債(特例国債)は財政法では発行できず、その年度限りの特例法を作って発行しています。1975 年度以降、赤字国債の発行が常態化しました(1990〜93 年度は発行なし)。
ここまでできれば十分
プライマリーバランス(基礎的財政収支)は、「国債の発行収入と国債費(過去の借金の元利払い)を除いて、その年の政策のための支出をその年の税収などでまかなえているか」を見る指標です。
プライマリーバランス = 税収などの歳入(公債金を除く) − 政策的経費(国債費を除く歳出)
税収など 70 兆円、公債金 35 兆円、政策的経費 80 兆円、国債費 25 兆円なら PB = 70 − 80 = −10 兆円(赤字)。歳入 105 = 歳出 105 で帳尻は合っているが、借金なしでは政策的経費をまかなえていない
政府は PB の黒字化を財政健全化の目標に掲げています。普通国債の残高は 2020 年代に 1,000 兆円を超える水準にあり、国債費が歳出を圧迫して政策に使える予算が減る(財政の硬直化)、将来世代への負担の先送りが問題として指摘されます。
5. 金融 ── 銀行の働きと信用創造
まずここだけ
お金(通貨)には、価値の尺度・交換(決済)の手段・価値の貯蔵という 3 つの機能があります。資金の流れ方は 2 つです。
- 直接金融:企業が株式や社債を発行して、投資家から直接お金を集める(証券会社は仲介するだけ)
- 間接金融:預金者が銀行に預けたお金を、銀行が企業に貸す。日本は伝統的に間接金融が中心
「株式・社債 → 直接」「預金・貸出 → 間接」で見分けます。
ここまでできれば十分
信用創造:銀行は預かったお金の一部を支払準備として残し、残りを貸し出します。貸し出されたお金はまた別の銀行に預けられ、また貸し出され……と繰り返されるので、最初の預金の何倍ものお金(預金通貨)が生まれます。
最初の預金 100 万円、支払準備率 10% のとき 預金の総額 = 100 ÷ 0.1 = 1,000 万円 新しく作り出された預金(信用創造額)= 1,000 − 100 = 900 万円
「総額」を聞かれているのか「作り出された額(元の預金を引く)」を聞かれているのかで答えが変わるので、問題文をよく読んでください。
金融の自由化:かつて日本の金融は「護送船団方式」と呼ばれる手厚い規制の下にありましたが、1990 年代後半の日本版金融ビッグバンで、銀行・証券・保険の相互参入、金融持株会社の解禁、株式売買手数料の自由化などが進みました。金融機関の監督は 2000 年に発足した金融庁が担っています。
ペイオフ:金融機関が破綻したとき、預金保険制度で保護されるのは 1 金融機関につき預金者 1 人あたり元本 1,000 万円までとその利息です(利息のつかない決済用預金は全額保護)。2005 年に全面解禁されました。
6. 日本銀行と金融政策
まずここだけ
日本銀行は日本の中央銀行で、3 つの役割があります。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 発券銀行 | 日本銀行券(紙幣)を発行する唯一の銀行。硬貨は政府が発行する |
| 銀行の銀行 | 民間の金融機関から預金を受け入れ、貸し出す。個人や一般企業とは取引しない |
| 政府の銀行 | 国庫金(税金など)の出し入れ、国債の事務を扱う |
日本銀行は物価の安定を目的として金融政策を行います。政策は政策委員会(総裁・副総裁 2 名・審議委員 6 名の 9 名)の金融政策決定会合で決めます。1997 年の日本銀行法改正(1998 年施行)で、政府からの独立性が強められました。
ここまでできれば十分
金融政策の手段は、「不況のときはお金を増やして金利を下げる(金融緩和)、景気が過熱したらお金を減らして金利を上げる(金融引き締め)」の向きで整理します。
| 手段 | 緩和(不況時) | 引き締め(過熱時) |
|---|---|---|
| 公開市場操作(オペレーション) | 買いオペ:日銀が国債などを買い、代金として市場にお金を出す | 売りオペ:日銀が国債などを売り、市場からお金を吸収する |
| 政策金利の操作 | 引き下げ | 引き上げ |
| 預金準備率操作 | 引き下げ(貸せる額が増える) | 引き上げ |
現在の中心は公開市場操作で、預金準備率操作は 1991 年を最後に使われていません。日本銀行が金融機関に貸すときの金利は、かつては「公定歩合」と呼ばれ金融政策の中心でしたが、金利自由化後は「基準貸付利率」に名前を変え、政策金利ではなくなりました。
もう一歩(発展)
1990 年代以降の日本は長いデフレに直面し、日本銀行は通常の金利引き下げでは足りない「非伝統的」な政策を続けました。
- 1999 年 ゼロ金利政策
- 2001〜2006 年 量的緩和政策(操作目標を金利から日銀当座預金残高に変更)
- 2013 年 量的・質的金融緩和(物価上昇率 2% の目標、国債の大量買い入れ)
- 2016 年 マイナス金利政策(日銀当座預金の一部に −0.1%)、同年からは長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)も導入
- 2024 年 3 月、マイナス金利政策を解除し、17 年ぶりの利上げに転じた
マネーストック(世の中に出回っている通貨の総量。現金通貨と預金通貨など)とマネタリーベース(日銀が直接供給する通貨。現金と日銀当座預金)を区別してください。買いオペで増えるのは直接にはマネタリーベースで、それが信用創造を通じてマネーストックの増加につながる、という関係です。
7. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 予算は参議院に先に提出してもよい | 衆議院の先議(憲法 60 条)。法律案には先議権はない |
| 参議院が予算を 60 日以内に議決しなければ衆議院の議決が国会の議決になる | 30 日。60 日は法律案の「否決とみなす」期間 |
| 赤字国債は財政法 4 条ただし書で発行できる | 4 条ただし書は建設国債。赤字国債は特例法が必要 |
| 国債は日本銀行が引き受けて発行する | 市中消化の原則(財政法 5 条)。日銀引受けは原則禁止 |
| 買いオペは市場からお金を吸収する引き締め策 | 買いオペは日銀が買って代金を払うので市場のお金が増える(緩和) |
| 消費税は直接税 | 納める人(事業者)と負担する人(消費者)が違うので間接税 |
| 累進課税は所得全体に最高税率をかける | 区分ごとに税率をかけて足す(超過累進) |
| 日本銀行は硬貨も発行する | 硬貨は政府が発行。日銀が発行するのは紙幣 |
| ペイオフで保護されるのは元本 1,000 万円まで(利息は含まない) | 元本 1,000 万円とその利息 |
8. 解き方の型
- 財政の機能は「公共財を供給 → 資源配分」「格差を縮める → 所得再分配」「景気の波を小さく → 経済安定化」で当てはめ、安定化は「自動(ビルト・イン)か裁量(フィスカル)か」まで切る
- 予算・国債の問題は条文の数字(60 条・30 日、財政法 4 条・5 条)を確かめる
- 税は「誰が納めて誰が負担するか」で直接・間接を、「国か地方か」で国税・地方税を決める
- 金融政策は「お金を増やすのが緩和」と決めて、買いオペ・利下げ・準備率引き下げをそちら側にそろえる
- 信用創造は「預金 ÷ 準備率 = 総額」、「総額 − 最初の預金 = 作り出された額」
9. 小テストへ
→ 小テスト(zk-05)
関連する単元
- 前提:c-06 金融・財政・税・社会保障(中学公民)、kk-06 金融と財政(高校公共)、zk-04 市場経済と企業
- 次に進む:zk-06 国民所得と景気・国際経済、zk-07 労働と社会保障
- 同じ考え方を使う:zf-01 財政の機能と予算制度、zf-02 租税の理論と日本の税制、zf-03 公債と財政赤字(専門・財政学)、za-04 貨幣と金融政策(専門・マクロ経済学)
参考資料
- 日本国憲法 60 条・86 条・90 条、財政法 4 条・5 条、日本銀行法(e-Gov 法令検索)
- 財務省「日本の財政関係資料」、財務省「税制について考えてみよう」
- 日本銀行「日本銀行の目的と業務」「金融政策の概要」(日本銀行ウェブサイト)
- 預金保険機構「預金保険制度の概要」
- 標準的な政治経済の教科書(高校『政治・経済』教科書)
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(社会科学)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/shakai/zk-05/ / 更新 2026-09-14