地方上級 / 経済 / zk-06

更新 2026-09-14

国民所得と景気・国際経済

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

社会科学(経済)のうち、この単元は「国民経済の大きさを測る」「景気の動きをとらえる」「海外とのつながりを見る」という 3 つのまとまりからなります。出題では、GDP の計算問題(含む・含まない、名目と実質)、景気循環の波の名前と周期円高・円安の影響比較生産費説の計算が定番で、選択肢の入れかえで誤答を作られやすい分野です。専門試験では za-01(GDP と国民所得統計)、za-08(国際マクロ)、ze-07(国際貿易)でさらに深く問われます。統計の数値は年によって変わるので、本文の数字は 2026 年 9 月時点のもので、最新は内閣府・財務省の公表資料で確認してください。


1. 国民所得 ── 経済の大きさを測る

まずここだけ

GDP(国内総生産)は、「一定期間(ふつう 1 年)に国内で新しく生み出された付加価値の合計」です。付加価値とは、売上から原材料などの中間生産物の費用を引いたもので、二重に数えないための工夫です。

農家が小麦を 30 で製粉業者に売り、製粉業者が小麦粉を 50 でパン屋に売り、パン屋がパンを 100 で消費者に売った。 付加価値は 30 + (50 − 30) + (100 − 50) = 100(最終生産物の価格と同じ)。30 + 50 + 100 = 180 ではない

GDP に含まれるかどうかは「新しく生み出された財・サービスか」「市場で取引されたか(または市場価格で評価できるか)」で決まります。

含まれる含まれない
新しく建てた住宅、新車の販売中古住宅・中古車の売買(過去に数えた)
持ち家の帰属家賃(自分の家に自分で家賃を払っているとみなす)、農家の自家消費家庭内の家事労働、ボランティア(市場で取引されない)
公務員の給与などの政府サービス株式・土地の売買益(生産ではなく資産の移転)
中古車の販売に伴う仲介手数料(新しいサービス)年金や生活保護などの移転所得

ここまでできれば十分

国民所得の指標は、GDP から順に引いていく流れで覚えます。

指標
GNI(国民総所得)(かつての GNP)GDP + 海外からの所得 − 海外への所得(= GDP + 海外からの純所得)
NNP(国民純生産)GNI − 固定資本減耗(機械などの減価償却)
NI(国民所得)NNP − 間接税 + 補助金

GDP 500、海外からの所得 30、海外への所得 10、固定資本減耗 80、間接税 40、補助金 5 のとき GNI = 500 + 30 − 10 = 520、NNP = 520 − 80 = 440、NI = 440 − 40 + 5 = 405

「国内(Domestic)」は場所、「国民(National)」は人で区切ります。日本国内で働く外国人の所得は日本の GDP に入り、海外で働く日本人の所得は日本の GNI に入ります。

三面等価の原則:国民所得は「生産」「分配(誰の所得になったか)」「支出(何に使われたか)」の 3 つの面から見ることができ、3 つは事後的に等しくなります。支出面の GDP は「民間消費 + 民間投資 + 政府支出 + (輸出 − 輸入)」です。

もう一歩(発展)

名目と実質:名目 GDP はその年の価格で測ったもの、実質 GDP は物価の変動を取り除いたものです。2 つの比がGDP デフレーターで、物価の動きを表します。

GDP デフレーター = 名目 GDP ÷ 実質 GDP × 100 名目 GDP 550 兆円、デフレーター 110 なら、実質 GDP = 550 ÷ 110 × 100 = 500 兆円

経済成長率は「今年の GDP − 前年の GDP」÷ 前年の GDP × 100 で、ふつう実質 GDP で測ります。前年 500 兆円 → 今年 515 兆円なら、成長率は 15 ÷ 500 × 100 = 3%です。名目成長率 − 物価上昇率 ≒ 実質成長率、という関係も押さえておくと便利です。

フローとストック:GDP は 1 年間の「流れ」(フロー)、国富(土地・建物・機械などの実物資産と対外純資産の合計。金融資産は国内で相殺されるので含まない)はある時点の「蓄え」(ストック)です。


2. 景気と物価

まずここだけ

景気は「好況 → 後退 → 不況 → 回復」の 4 つの局面を繰り返します(景気循環)。周期の長さで 4 つの波が知られています。

波の名前周期主な原因
キチンの波約 40 か月(3〜4 年)在庫投資
ジュグラーの波約 10 年設備投資
クズネッツの波約 20 年建築(住宅・建設)
コンドラチェフの波約 50 年技術革新

「短いほうから 在庫 → 設備 → 建築 → 技術革新」と並べて覚えます。

ここまでできれば十分

物価が続けて上がるのがインフレーション、続けて下がるのがデフレーションです。原因で分けます。

物価の指標は、家計が買うものの価格を測る消費者物価指数(総務省)と、企業間で取引される財の価格を測る企業物価指数(日本銀行)です。景気の判断には、内閣府の景気動向指数や日本銀行の短観(企業短期経済観測調査)が使われます。


3. 戦後日本経済の流れ

まずここだけ

年号を細かく覚えるより、出来事の順番と因果を押さえます。

時期出来事中身
1940 年代後半傾斜生産方式石炭・鉄鋼に資源を集中して復興の土台をつくる
1949 年ドッジ・ラインインフレを止めるための緊縮財政。1 ドル = 360 円の単一為替レートを設定
1950 年〜朝鮮特需朝鮮戦争による米軍の需要で景気回復
1955〜73 年高度経済成長実質で年平均およそ 10% の成長。神武・岩戸・いざなぎ景気。1968 年に GNP が資本主義国で第 2 位に
1973 年第一次石油危機原油価格の高騰で「狂乱物価」。1974 年に戦後初のマイナス成長。高度成長が終わり安定成長へ
1985 年プラザ合意G5 がドル高是正で協調介入。急激な円高で円高不況 → 低金利政策
1986〜91 年バブル経済低金利で余った資金が株・土地に流れ、資産価格が実態を離れて上昇
1991 年〜バブル崩壊株価・地価の下落、金融機関の不良債権問題、長期の低成長(「失われた 10 年(20 年)」)。1990 年代後半からデフレ
2008 年リーマン・ショック米国発の世界金融危機。日本も大幅なマイナス成長
2013 年〜量的・質的金融緩和大規模な金融緩和・機動的な財政政策・成長戦略の組み合わせでデフレ脱却をめざす

ここまでできれば十分

高度経済成長の要因としては、高い貯蓄率と活発な設備投資、安価で豊富な労働力、技術導入、1 ドル = 360 円の固定相場(円安)による輸出の有利さ、安い原油、などが挙げられます。一方でこの時期には公害(四大公害病)や都市への人口集中、過疎などの問題も生じました。

プラザ合意 → バブル → 崩壊の流れは因果でつなぎます。円高不況への対策として金融緩和(低金利)を続けた結果、資金が株式・不動産に向かい資産価格が急騰、1989 年からの金融引き締めと 1990 年の不動産融資の総量規制でバブルが崩壊し、その後の不良債権が金融機関の経営を圧迫した、という筋です。


4. 国際経済 ── 貿易・為替・国際収支

まずここだけ

比較生産費説(リカード):各国がそれぞれ「相対的に得意な財」に特化して貿易すれば、両国とも利益を得られる、という自由貿易の根拠です。「絶対的にすべて得意」でも、より得意な方に特化します。

A 国は X 財 1 単位に 10 人、Y 財 1 単位に 20 人が必要。B 国は X 財に 40 人、Y 財に 50 人が必要(各国の労働者はそれぞれ 30 人・90 人で、どちらも X と Y を 1 単位ずつ作っている)。 A 国は両方とも少ない人数で作れる(絶対優位)が、比率で見ると A 国は X が Y の 1/2 の人数、B 国は X が Y の 4/5 の人数。A 国はX 財に比較優位、B 国はY 財に比較優位。 A 国が X に特化すると 30 ÷ 10 = 3 単位、B 国が Y に特化すると 90 ÷ 50 = 1.8 単位。特化前の合計(X 2 単位・Y 2 単位)に比べ、両財の合計生産量が増える(X + Y = 4 → 4.8)

これに対し、ドイツのリストは、発展の遅れた国の幼稚産業を守るために関税などで保護する保護貿易を主張しました。

ここまでできれば十分

円高・円安:1 ドル = 100 円 → 1 ドル = 80 円 になるのが円高(1 ドルを買うのに必要な円が減った = 円の価値が上がった)。数字が小さくなるのに「高」なので注意してください。

円高(例:120 円 → 100 円)円安(例:100 円 → 120 円)
日本の輸出不利(12,000 円の製品は 100 ドル → 120 ドルに値上がり)有利
日本の輸入有利(輸入品が安くなる)不利(輸入物価の上昇)
海外旅行有利不利
起こりやすい場面日本の金利が上がる、日本の輸出が増えて円の需要が増える日本の金利が下がる、輸入が増える

国際収支は、一定期間の外国との取引をまとめた統計です(2014 年から現在の形式)。

項目中身
経常収支貿易・サービス収支(財の輸出入、旅行・輸送など)+第一次所得収支(海外投資からの利子・配当など)+第二次所得収支(無償援助・送金など)
資本移転等収支資本形成のための無償資金協力など
金融収支直接投資・証券投資・外貨準備などの資産・負債の増減

近年の日本は、貿易収支が赤字になる年もある一方で、海外投資から得る第一次所得収支の黒字が大きく、経常収支は黒字が続いています。

もう一歩(発展)

国際通貨体制の流れ

  1. 1944 年 ブレトン・ウッズ協定:金と交換できるドルを基軸通貨とする固定相場制IMF(国際通貨基金・為替の安定と短期融資)と世界銀行(IBRD・復興と開発のための長期融資)を設立
  2. 1971 年 ニクソン・ショック:米国が金とドルの交換を停止。同年末のスミソニアン協定で 1 ドル = 308 円に切り上げて固定相場を維持しようとした
  3. 1973 年 主要国が変動相場制へ移行。1976 年のキングストン合意で変動相場制を正式に承認
  4. 1985 年 プラザ合意(ドル高是正)、1987 年 ルーブル合意(ドル安の行きすぎに歯止め)

貿易体制の流れ

  1. 1947 年 GATT(関税と貿易に関する一般協定):「自由・無差別・多角」の原則。ケネディ・ラウンド、東京ラウンド、ウルグアイ・ラウンド(1986〜94 年、農産物・サービス・知的財産権を対象に加え、WTO 設立を決定)
  2. 1995 年 WTO(世界貿易機関):GATT を発展させた国際機関。紛争処理の手続を強化。2001 年からのドーハ・ラウンドは合意に至らず停滞
  3. 2 国間・地域のFTA(自由貿易協定:関税撤廃)・EPA(経済連携協定:投資・人の移動なども含む)が広がる。日本は 2018 年発効の TPP11(CPTPP)、2022 年発効の RCEP に参加
  4. 地域統合の代表は EU(1993 年マーストリヒト条約発効で発足、1999 年に共通通貨ユーロ導入・2002 年から現金流通。英国は 2020 年に離脱)

5. よくある間違い

間違い正しくは
中古住宅の売買額は GDP に含まれる含まれない(過去に数えた)。仲介手数料は含まれる
主婦の家事労働は GDP に含まれる市場で取引されないので含まれない。帰属家賃・農家の自家消費は例外的に含まれる
NI = NNP + 間接税 − 補助金NI = NNP − 間接税 + 補助金(間接税は価格に上乗せされた分なので引く)
1 ドル = 100 円 → 120 円 は円高。1 ドルに必要な円が増えた = 円の価値が下がった
円高は日本の輸出に有利円高は輸出に不利、輸入に有利
ジュグラーの波の原因は在庫投資ジュグラーは設備投資(約 10 年)。在庫投資はキチン(約 40 か月)
比較生産費説は、絶対的に生産性が高い財に特化する説相対的に得意な財(比較優位)に特化する。すべてに絶対優位でも特化は起こる
第一次所得収支は海外への無償援助を含む無償援助は第二次所得収支。第一次は利子・配当などの投資収益
WTO は 1947 年に設立された1947 年はGATT。WTO は1995 年

6. 解き方の型

  1. GDP に含むかは「新しく生産されたか」「市場価格で評価できるか」の 2 つで判定。帰属家賃・自家消費・政府サービスは例外的に「含む」
  2. GDP → GNI(海外純所得を足す)→ NNP(固定資本減耗を引く)→ NI(間接税を引き補助金を足す)の順に計算する
  3. 実質 GDP = 名目 ÷ デフレーター × 100。成長率 = 増加分 ÷ 前年 × 100
  4. 為替は「1 ドルを買うのに必要な円が減れば円高」。円高 → 輸出不利・輸入有利、で表を埋める
  5. 比較生産費は「各国の中で X ÷ Y の比率を出し、小さい国が X に比較優位」。特化後の生産量は「労働者数 ÷ 必要人数」
  6. 年号を問う問題は、まず順番(ブレトン・ウッズ → ニクソン → スミソニアン → 変動相場制 → プラザ)を固定してから年を当てる

7. 小テストへ

→ 小テスト(zk-06

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
基礎から標準から発展から🖨 プリント

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