地方上級 / 地学 / zn-10

更新 2026-09-14

気象と天文(大気・海洋・太陽系・恒星)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

地方上級・国家一般職の地学は 1 問程度で、zn-09(固体地球)と並んでこの単元から出題されやすく、とくに日本の天気(気団・前線)太陽系の惑星の分類は正誤問題の定番です。計算は湿度・飽和水蒸気量(中学 s2-09 の範囲)や気温の逓減率程度で、あとは知識です。時事(記録的猛暑・線状降水帯・エルニーニョ・日本の探査機)と絡めた出題もあるので、ニュースの用語を教科書の言葉に翻訳できるようにしておくと得です。高校の地学基礎(eb-05eb-09)と中学理科(s2-09s2-10s3-07)の範囲です。


1. 大気の構造と熱収支

まずここだけ

大気は高さによる気温の変わり方で 4 層に分けます。

高さのめやす気温特徴
対流圏地表〜約 11 km上ほど低い(100 m につき約 0.65℃)雲・雨などの気象現象はここだけ。空気の対流
成層圏〜約 50 km上ほど高いオゾン層が紫外線を吸収して加熱
中間圏〜約 80 km上ほど低い大気中で最も低温になる層の上端
熱圏80 km〜上ほど高いオーロラ・流星。電離層

対流圏と成層圏の境目が圏界面(対流圏界面)で、赤道付近で高く極付近で低くなります。大気の組成は窒素約 78%・酸素約 21%・アルゴン約 0.9%で、二酸化炭素は約 0.04%(2026 年時点で 400 ppm 台)です。

ここまでできれば十分

地球の熱収支:太陽からの放射は波長の短い可視光線が中心で大気を素通りして地表を暖め、暖まった地表は波長の長い赤外線を出します。大気中の水蒸気・二酸化炭素・メタンなどはこの赤外線を吸収して再び地表へ返すので、地表の温度が保たれます。これが温室効果で、温室効果がなければ地球の平均気温は約 −18℃ になると見積もられています(実際は約 15℃)。

太陽放射のうち約 3 割は雲や地表で反射されて宇宙へ戻ります(この割合をアルベドといい、雪や氷は大きい)。

気温の逓減率を使った計算:

地上 20℃ のとき、高さ 2,000 m の気温は 20 − 0.65 × 20 = 7℃ 空気のかたまりが上昇して雲ができるまで(乾燥断熱減率)は 100 m につき約 1℃、雲ができてから(湿潤断熱減率)は約 0.5℃ 下がる

フェーン現象:湿った空気が山を越えると、風上側では雲をつくりながら 0.5℃/100 m でゆっくり冷え、風下側では雲がないので 1℃/100 m で速く暖まる。だから山を越えた空気はもとより高温で乾燥します。

20℃ の空気が 2,000 m の山を越える(風上は 1,000 m から雲):1,000 m まで −10℃ → 10℃、山頂まで −5℃ → 5℃、風下で +20℃ → 25℃

もう一歩(発展)

湿度と露点:湿度(%)= 空気 1 m³ 中の水蒸気量 ÷ その気温の飽和水蒸気量 × 100。空気を冷やしていって水蒸気が飽和に達する温度が露点で、露点が高いほど水蒸気量が多いことを表します。

気温 25℃(飽和水蒸気量 23.1 g/m³)で水蒸気量 12.8 g/m³ の空気 → 湿度 = 12.8 ÷ 23.1 × 100 ≒ 55%。露点は飽和水蒸気量が 12.8 g/m³ になる 15℃


2. 気圧・前線と日本の天気

まずここだけ

高気圧低気圧
中心の空気下降気流上昇気流 → 雲・雨
地上の風(北半球)時計回りに吹き出す反時計回りに吹き込む
天気晴れくもり・雨

風が北半球で右にそれるのは転向力(コリオリの力)のためです。等圧線の間隔が狭いほど風は強くなります。

前線は性質の違う空気(気団)の境目です。

前線動き雲・雨通過後
温暖前線暖気が寒気の上にはい上がる乱層雲。広い範囲に長く弱い雨気温が上がる。南寄りの風
寒冷前線寒気が暖気の下にもぐり込む積乱雲。狭い範囲に短く強い雨・雷・突風気温が下がる。北寄りの風
停滞前線動かない長雨(梅雨前線・秋雨前線)──
閉塞前線寒冷前線が温暖前線に追いつく低気圧の衰弱──

温帯低気圧は中心の南東に温暖前線、南西に寒冷前線をもち、偏西風に流されて西から東へ進みます。だから日本の天気は西から変わるのです。

ここまでできれば十分

日本の天気を決める気団は 4 つです。

気団性質季節
シベリア気団寒冷・乾燥
小笠原気団温暖・湿潤
オホーツク海気団寒冷・湿潤梅雨・秋雨
揚子江(長江)気団温暖・乾燥春・秋(移動性高気圧)
季節特徴
西高東低の気圧配置。シベリア高気圧から北西の季節風。日本海側は雪、太平洋側は乾燥した晴れ
春・秋移動性高気圧と温帯低気圧が交互に通り、天気が周期的に変わる
梅雨オホーツク海気団と小笠原気団の間に梅雨前線(停滞前線)
南高北低。小笠原高気圧(太平洋高気圧)におおわれ蒸し暑い。南東の季節風
秋雨前線と台風

台風は熱帯低気圧のうち最大風速が約 17 m/s 以上のもので、前線をもたず、等圧線はほぼ同心円。エネルギー源は海面からの水蒸気の凝結熱で、上陸すると水蒸気の供給が絶たれて弱まります。進行方向の右側は台風自身の風と移動の向きが重なって風が強い(危険半円)。

もう一歩(発展)

線状降水帯は、積乱雲が次々と発生して線状に並び、同じ場所に数時間強い雨を降らせ続ける現象で、近年の豪雨災害で注目されています。ヒートアイランド現象は都市部の気温が周囲より高くなる現象で、人工排熱・アスファルト・緑地の減少が原因です。


3. 大気の大循環と海洋

まずここだけ

低緯度で暖められた空気が上昇し、高緯度で下降することで、地球規模の風の流れができます。

緯度帯循環・風地上の風向(北半球)
赤道〜緯度 30°ハドレー循環。地上では貿易風北東風
緯度 30°〜60°偏西風(上空で強い流れがジェット気流南西風
緯度 60°〜極極循環。極偏東風北東風

赤道付近は上昇気流で雨が多く(熱帯雨林)、緯度 30° 付近は下降気流で乾燥(砂漠が多い:サハラ・アラビア)。日本は偏西風帯にあるので、天気も飛行機の所要時間(東行きが短い)も西から東への流れの影響を受けます。

ここまでできれば十分

海流は主に風(貿易風・偏西風)に引きずられて、北半球では時計回り、南半球では反時計回りの大きな環流をつくります。

海流種類流れる場所
黒潮(日本海流)暖流日本の太平洋側を北上
親潮(千島海流)寒流千島列島沿いに南下。栄養塩が多く好漁場
対馬海流暖流日本海側を北上(黒潮の分流)
リマン海流寒流日本海側を南下

黒潮と親潮がぶつかる三陸沖は潮目(潮境)で、プランクトンが多く好漁場になります。

エルニーニョ現象:数年に一度、ペルー沖(太平洋東部の赤道域)の海面水温が平年より高くなる現象。貿易風が弱まって暖かい海水が東に広がるために起こり、日本では冷夏・暖冬になりやすいとされます。逆に水温が低くなるのがラニーニャ現象(日本は猛暑・寒冬になりやすい)。

もう一歩(発展)

海水の塩分は平均約 3.5%(35‰)で、最も多い塩類は塩化ナトリウム。深さ数百 m までの表層混合層の下に、水温が急に下がる水温躍層があり、その下の深層は 1〜2℃ で安定しています。北大西洋や南極周辺で冷やされて沈んだ海水が世界の深層をめぐる流れを深層循環(熱塩循環)といい、一周に千年以上かかります。


4. 太陽系と太陽

まずここだけ

太陽系の 8 惑星は太陽に近い順に 水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星(すい・きん・ち・か・もく・ど・てん・かい)。2 つのグループに分かれます。

地球型惑星木星型惑星
惑星水星・金星・地球・火星木星・土星・天王星・海王星
大きさ・質量小さい大きい
密度大きい(岩石・金属)約 4〜5.5 g/cm³小さい(水素・ヘリウムのガス)約 0.7〜1.7 g/cm³
自転周期長い短い(木星は約 10 時間)
衛星・環少ない・環なし多い・環をもつ(土星が代表だが 4 つとも環がある)

惑星ごとの特徴:金星は厚い二酸化炭素の大気による温室効果で表面温度約 460℃(最も高温)・自転が逆向き、火星は赤い(酸化鉄)・極冠・過去に水が流れた跡、木星は最大の惑星で大赤斑、土星は密度が水より小さく目立つ環、天王星は自転軸がほぼ横倒し。水星は大気がほとんどなく昼夜の温度差が非常に大きい。

太陽系にはほかに、火星と木星の間の小惑星帯、海王星の外側の太陽系外縁天体(冥王星は 2006 年に準惑星に分類変更)、細長い楕円軌道の彗星(氷と塵。太陽に近づくと尾ができ、尾は太陽と反対側にのびる)があります。小惑星リュウグウの試料を持ち帰った探査機「はやぶさ 2」(2020 年帰還)も出題材料です。

ここまでできれば十分

太陽は水素の核融合(水素 4 個 → ヘリウム 1 個)で輝く恒星で、質量は太陽系全体の 99.8% 以上を占めます。

部分特徴
中心核約 1,600 万 K。核融合の場
光球目に見える表面。約 6,000 K(5,800 K)。黒点(周囲より低温で約 4,000 K・強い磁場)、粒状斑
彩層光球の外側の薄い層。プロミネンス(紅炎)が吹き上がる
コロナ最も外側。100 万 K 以上の高温。皆既日食のときに見える

黒点の数は約 11 年周期で増減し、多いときほど太陽活動が活発です。フレア(太陽面の爆発)が起こると荷電粒子(太陽風)が大量に飛び、地球ではオーロラが活発になり、通信障害・停電(磁気嵐)が起こることがあります。

太陽と地球の平均距離約 1 億 5,000 万 km を 1 天文単位(au)といい、太陽の光が地球に届くまで約 8 分 20 秒です。

もう一歩(発展)

惑星の運動はケプラーの法則に従います。①惑星は太陽を 1 つの焦点とする楕円軌道を描く、②太陽と惑星を結ぶ線分が一定時間に描く面積は一定(近日点で速く、遠日点で遅い)、③公転周期の 2 乗は軌道長半径の 3 乗に比例する(遠い惑星ほど公転周期が長い。海王星は約 165 年)。地球の公転面に対して自転軸が約 23.4° 傾いていることが、季節の原因です。


5. 恒星と宇宙

まずここだけ

恒星の色は表面温度で決まります。

表面温度
青白高い(1 万 K 以上)リゲル・スピカ
約 1 万 Kシリウス・ベガ
約 6,000 K太陽
低い(3,000 K 台)ベテルギウス・アンタレス

「赤いほうが熱そう」は逆です。青白いほど高温

明るさは等級で表し、数字が小さいほど明るい(1 等星は 6 等星の 100 倍明るい。5 等級差で 100 倍、1 等級差で約 2.5 倍)。見た目の明るさが見かけの等級、すべての星を 10 パーセク(約 32.6 光年)に置いたときの明るさが絶対等級です。

距離の単位:

単位意味
天文単位(au)太陽〜地球の平均距離。約 1.5 億 km
光年光が 1 年に進む距離。約 9.5 兆 km
パーセク年周視差が 1 秒角になる距離。約 3.26 光年

ここまでできれば十分

横軸に表面温度(スペクトル型)、縦軸に絶対等級をとった図が HR 図で、恒星の大部分は左上(高温で明るい)から右下(低温で暗い)へ並ぶ主系列星です。太陽も主系列星。右上には低温なのに明るい赤色巨星、左下には高温なのに暗い白色矮星があります。

恒星の一生は質量で決まります。

質量一生
太陽程度星間ガスの収縮 → 主系列星(約 100 億年)→ 赤色巨星 → 外層を放出(惑星状星雲)→ 白色矮星
太陽の 8 倍以上主系列星(短い)→ 赤色超巨星 → 超新星爆発中性子星(さらに重いとブラックホール

質量が大きい星ほど明るく、燃料を速く使うので寿命は短い。鉄より重い元素は超新星爆発などでつくられ、宇宙にまき散らされます。

もう一歩(発展)

太陽系は約 2,000 億個の恒星からなる銀河系(天の川銀河)の中心から約 2.8 万光年の位置にあり、天の川は銀河系の円盤を内側から見た姿です。遠い銀河ほど速く遠ざかっている(ハッブルの法則)ことから宇宙は膨張しており、約 138 億年前のビッグバンから始まったと考えられています。その名残が宇宙背景放射です。


6. よくある間違い

間違い正しくは
成層圏では上ほど気温が低い成層圏は上ほど高い(オゾン層が紫外線を吸収)。低いのは対流圏・中間圏
温室効果は太陽の光を直接閉じこめる地表が出す赤外線を水蒸気・CO₂ が吸収して返す
寒冷前線は長く弱い雨寒冷前線は積乱雲で短く強い雨。長く弱いのは温暖前線
高気圧の中心は上昇気流高気圧は下降気流で晴れ。上昇気流は低気圧
冬は南高北低冬は西高東低。南高北低は夏
台風は前線をもつ台風(熱帯低気圧)は前線をもたない。前線をもつのは温帯低気圧
エルニーニョは海面水温が下がる現象ペルー沖の水温が上がる現象。下がるのはラニーニャ
木星型惑星は密度が大きいガスでできているので密度は小さい。大きいのは地球型
黒点は周囲より高温黒点は周囲より低温だから暗く見える
赤い星ほど高温青白い星ほど高温。赤い星は低温
等級の数字が大きいほど明るい数字が小さいほど明るい(1 等星 > 6 等星)
重い星ほど長生き重い星ほど寿命が短い

7. 覚え方の型

  1. 大気の 4 層は「気温が上ほど下がる・上がる・下がる・上がる」の交互。気象現象は対流圏だけ
  2. 前線は「温暖 = はい上がる = 広く長く弱い」「寒冷 = もぐり込む = 狭く短く強い」を対で言う
  3. 日本の四季は「冬 西高東低・北西風」「夏 南高北低・南東風」「梅雨 オホーツク海 vs 小笠原」の 3 場面
  4. 惑星は「地球型 = 小さい・重い密度・岩石」「木星型 = 大きい・軽い密度・ガス・環」の対比で 1 行にまとめる
  5. 恒星は「色 → 温度(青白が高温)」「等級 → 小さいほど明るい」「質量 → 大きいほど短命」の 3 つの向きを確認する

8. 小テストへ

→ 小テスト(zn-10

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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