地方上級 / 財政学 / zf-02

更新 2026-09-14

租税の理論と日本の税制

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

財政学の中で、租税は理論と制度の両方が問われる単元です。地方上級・国家一般職では、「租税原則を唱えた人物と原則の組み合わせ」「累進税と逆進税の見分け」「転嫁と帰着(弾力性)」「日本の税収の構成」を入れかえた正誤問題が出題されやすい形です。理論の部分はミクロ経済学の余剰分析(ze-04)とつながり、制度の部分は社会科学の財政(zk-05)や高校の公共(kk-06)の知識に、根拠となる考え方が乗ってくるイメージです。公債(zf-03)や地方財政(zf-04)を学ぶ前提にもなります。


1. 租税原則 ── 「よい税」とは何か

まずここだけ

税のあるべき姿を整理したものを租税原則といいます。人物と原則の組み合わせで問われます。

人物原則特徴
アダム・スミス(18 世紀)公平・明確・便宜・最小徴税費の 4 原則「政府は小さく」。納税者の側から見た原則
ワグナー(19 世紀)財政政策上・国民経済上・公正・税務行政上の4 大原則(9 原則)「収入の十分性・可動性」を先頭に置く。政府の役割拡大を前提にした原則
マスグレイブ(20 世紀)十分性・公平・負担配分・中立性(超過負担の最小化)・経済安定成長・明確性・徴税費用の最小公平と中立性(資源配分をゆがめない)をあわせて重視

覚え方の軸は「スミスは納税者の立場、ワグナーは国家の立場、マスグレイブは公平と効率の両立」です。

ここまでできれば十分

公平には 2 つの考え方があります。

さらに応能原則の中で、

中立性は「税が人の行動をゆがめない」こと。人頭税がもっとも中立的ですが、公平性を欠きます。公平と中立(効率)はしばしば対立する、という見方が財政学の基本です。

もう一歩(発展)

「何に課税するか」(課税ベース)の理論では、包括的所得税(ヘイグ=サイモンズの所得概念:一定期間の消費 + 純資産の増加を所得とみなし、すべてを合算して累進課税する)と、支出税(消費に課税し、貯蓄は課税しないので貯蓄に中立)が対比されます。日本の所得税は総合課税を原則としつつ、利子・配当・株式譲渡益などは分離課税という混合型です。


2. 累進・比例・逆進と平均税率・限界税率

まずここだけ

種類平均税率は所得が増えると…
累進税上がる所得税・相続税
比例税変わらない法人税(基本税率部分)・住民税の所得割
逆進税下がる消費税(所得に対する負担率で見た場合)

消費税の税率は誰でも同じ 10% ですが、所得の低い人ほど所得のうち消費に回す割合が高いので、所得に対する負担率は低所得者ほど高くなります。これが「消費税は逆進的」の意味で、税率そのものが下がるわけではありません。

ここまでできれば十分

日本の所得税は超過累進税率です。所得全体に高い税率をかけるのではなく、区分(ブラケット)を超えた部分だけに高い税率をかけます。

例:課税所得 0〜300 万円が 10%、300 万円超が 20% の 2 段階とする。課税所得 500 万円の税額は 300 × 0.1 + (500 − 300) × 0.2 = 30 + 40 = 70 万円 平均税率 = 70 ÷ 500 = 14%、限界税率 = 20%

限界税率が平均税率より高いとき、所得が増えれば平均税率は上がる(累進)。限界税率 > 平均税率 ⇔ 累進 と覚えると判定が速くなります。

実際の日本の所得税は 5% から 45% までの7 段階(2026 年 9 月時点。復興特別所得税を除く)で、これに住民税の所得割 10%(比例)が加わります。控除額や区分の境目は改正されるので、最新は国税庁の資料で確認してください。


3. 転嫁と帰着 ── 誰が本当に負担するのか

まずここだけ

法律上の納税者(納税義務者)と、実際に負担する人(担税者)は同じとは限りません。税の負担が価格を通じて他の人に移ることを転嫁、最終的に誰が負担するかが決まることを帰着といいます。

ここまでできれば十分

従量税をかけたとき、買い手と売り手の負担の割合は弾力性で決まり、誰に課税するかには関係しません

弾力性が小さい(逃げられない)側ほど多く負担する 買い手の負担 : 売り手の負担 = 供給の価格弾力性 : 需要の価格弾力性

例:需要の弾力性 1、供給の弾力性 3 のとき、1 個あたり 40 円の税は 買い手 40 × 3/(1 + 3) = 30 円、売り手 40 × 1/4 = 10 円

極端な場合は

もう一歩(発展)

税をかけると取引量が減り、誰の手にも入らない余剰の損失(超過負担・死荷重)が生まれます。三角形の面積なので、税率を 2 倍にすると超過負担はおよそ 4 倍(税率の 2 乗に比例)です。超過負担は弾力性が大きいほど大きいので、効率だけを考えるなら「弾力性の小さい財ほど高い税率」が望ましい、というのがラムゼイ・ルール(逆弾力性の命題)です。ただし生活必需品は弾力性が小さいため、この命題は公平の観点と対立します。計算の詳細は ze-04 で扱います。


4. 日本の税制の骨組み

まずここだけ

分け方内容
国税と地方税国税:所得税・法人税・消費税・相続税・酒税など/地方税:住民税(道府県民税・市町村民税)・事業税・固定資産税・地方消費税・自動車税など
直接税と間接税直接税:所得税・法人税・住民税・相続税など/間接税:消費税・酒税・たばこ税・揮発油税など
普通税と目的税目的税:使い道が決まっている税(都市計画税・入湯税など)

日本の国税収入は所得税・消費税・法人税の 3 つが柱で、この 3 つで国税収入の大部分を占めます。近年は消費税が最大の税目になっています(年により順位が入れかわるので、最新は財務省の「税収に関する資料」で確認)。

ここまでできれば十分

消費税のしくみ

所得税のしくみ

直間比率:直接税と間接税の比率。日本は戦後のシャウプ勧告(1949 年)以来、直接税中心の税制でしたが、消費税の導入・引上げで間接税の割合が高まってきました。

もう一歩(発展)


5. よくある間違い

間違い正しくは
消費税は税率が下がるので逆進税税率は一定。所得に対する負担率が低所得者ほど高いので逆進的
累進税では所得全体に高い税率がかかる超過累進:区分を超えた部分だけに高い税率
税を売り手に課すと売り手が負担する帰着は弾力性で決まり、法律上の納税者には関係ない
応益原則 = 累進課税累進は応能原則。応益はガソリン税・均等割など
所得控除と税額控除は同じ所得控除は高所得者ほど有利、税額控除は同額
アダム・スミスの原則は「収入の十分性」十分性を先頭に置いたのはワグナー。スミスは公平・明確・便宜・最小徴税費

6. 解き方の型

  1. 人物 → 原則は「スミス=納税者側 4 原則」「ワグナー=国家の十分性から始まる 9 原則」「マスグレイブ=公平と中立」で仕分ける
  2. 累進の判定は「平均税率が所得とともに上がるか」。計算問題は限界税率 > 平均税率 なら累進
  3. 帰着の問題は「弾力性の小さい側が多く負担」。負担比 = 相手側の弾力性の比
  4. 制度の正誤は「国税か地方税か」「直接税か間接税か」「控除は所得控除か税額控除か」の 3 点を先に確認する

7. 小テストへ

→ 小テスト(zf-02

関連する単元

参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
基礎から標準から発展から🖨 プリント

経済の単元一覧まぜこぜテスト公務員試験の勉強法