地方上級 / ミクロ / ze-04
完全競争市場と余剰分析(課税・価格規制)
この単元でできるようになること
- 消費者余剰・生産者余剰・総余剰をグラフの三角形として捉え、直線の需要曲線・供給曲線から面積を計算できる
- 完全競争の均衡で総余剰が最大になる理由を、「需要価格 ≧ 供給価格の取引がすべて行われる」という言葉で説明できる
- 従量税を「供給曲線(または需要曲線)の平行移動」として扱い、課税後の価格・取引量・税収・死荷重を計算できる
- 税の負担(帰着)が法律上の納税者ではなく弾力性で決まることを説明できる
- 価格の上限規制・下限規制・補助金の効果を、超過需要・超過供給・死荷重の言葉で説明し、数値で求められる
試験での位置づけ
需要と供給(ze-01)で求めた均衡に「面積」の見方を加えるのがこの単元です。地方上級・国家一般職では、「従量税を課したときの死荷重を求めよ」「税収を求めよ」「買い手の負担額を求めよ」といった計算問題が出題されやすく、財政学(zf-02 租税の理論)でも同じ計算が「超過負担」の名前で出てきます。知識問題では税の帰着と弾力性の関係、価格規制の効果がよく問われます。ここでの余剰の考え方は、独占の死荷重(ze-05)、外部性の分析(ze-06)、関税の効果(ze-07)にそのまま使うので、三角形の面積を式で出せるようにしておくと後が楽になります。
1. 余剰とは何か
まずここだけ
消費者余剰は「買い手が払ってもよいと思った金額(需要価格)− 実際に払った金額」の合計です。グラフでは需要曲線と価格線の間の三角形になります。生産者余剰は「実際に受け取った金額 − 最低限受け取りたい金額(供給価格)」の合計で、価格線と供給曲線の間の三角形です。2 つを足したものが総余剰(社会的余剰)です。
需要曲線 P = 26 − Q、供給曲線 P = 2 + 3Q 均衡:26 − Q = 2 + 3Q → Q = 6、P = 20 消費者余剰 = (26 − 20) × 6 ÷ 2 = 18 生産者余剰 = (20 − 2) × 6 ÷ 2 = 54 総余剰 = 72
三角形の「高さ」は縦軸切片と均衡価格の差、「底辺」は均衡取引量です。需要曲線を P = … の形(逆需要関数)に直しておくと縦軸切片がすぐ読めます。
ここまでできれば十分
完全競争の均衡では総余剰が最大になります。理由は、均衡取引量までは「需要価格 ≧ 供給価格」、つまり買い手の評価が売り手の費用を上回る取引がすべて行われ、それを超える取引(評価が費用を下回る)は行われないからです。均衡より取引量が少なくても多くても、総余剰は減ります。この減少分が死荷重(厚生損失・超過負担)です。
価格が均衡と違っていても、取引量が同じなら総余剰は同じです。価格は消費者余剰と生産者余剰の分け方を変えるだけで、合計は取引量で決まります。
2. 従量税の効果
まずここだけ
1 単位あたり t 円の従量税を売り手に課すと、売り手は「税込みで今までの供給価格 + t」を受け取らないと同じ量を売らないので、供給曲線が t だけ上に平行移動します。買い手に課した場合は需要曲線が t だけ下に移動しますが、結果はまったく同じです。
需要曲線 P = 34 − Q、供給曲線 P = 4 + 2Q、売り手に t = 12 の従量税。 課税前:34 − Q = 4 + 2Q → Q = 10、P = 24 課税後:34 − Q = 4 + 2Q + 12 → Q = 6 買い手の価格 = 34 − 6 = 28(4 上がった) 売り手の受取価格 = 28 − 12 = 16(8 下がった)
買い手の価格と売り手の受取価格の差がちょうど税額 12 になっています。
ここまでできれば十分
課税後に計算するものは 3 つです。
| 求めるもの | 計算 | 上の例 |
|---|---|---|
| 税収 | 税額 × 課税後の取引量 | 12 × 6 = 72 |
| 死荷重 | (課税前の取引量 − 課税後の取引量)× 税額 ÷ 2 | (10 − 6) × 12 ÷ 2 = 24 |
| 負担の分かれ方 | 買い手の値上がり幅 : 売り手の値下がり幅 | 4 : 8 = 1 : 2 |
税収を「税額 × 課税前の取引量」で計算する間違いが多いので注意してください。死荷重は、取引されなくなった 4 単位について「需要価格 − 供給価格」を積み上げた三角形です。税収は政府に移るだけで社会全体から消えるわけではないので、死荷重には含めません。
負担の比 1 : 2 は、需要曲線の傾き 1 と供給曲線の傾き 2 の比になっています。傾きが急な(弾力性が小さい)側ほど多く負担するという一般的な性質の表れです。逃げ場のない側に税は乗る、と覚えると忘れません。
もう一歩(発展)
弾力性が極端な場合は結論がはっきりします。
| 状況 | 負担 | 死荷重 |
|---|---|---|
| 需要の弾力性がゼロ(垂直) | すべて買い手 | 生じない(取引量が変わらない) |
| 供給の弾力性がゼロ(垂直) | すべて売り手 | 生じない |
| 需要の弾力性が無限大(水平) | すべて売り手 | 生じる |
| 供給の弾力性が無限大(水平) | すべて買い手 | 生じる |
もう 1 つ、直線の需要曲線・供給曲線では死荷重は税額の 2 乗に比例します。取引量の減少も税額に比例するので、三角形の底辺と高さが両方 2 倍になるためです。税率を 2 倍にすると死荷重は 4 倍、一方で税収は取引量が減る分 2 倍より小さくなり、税率が高すぎる領域では税収がかえって減ります。
補助金は従量税の逆で、供給曲線を s だけ下に動かします。取引量は均衡より増え、買い手の価格は下がり売り手の受取価格は上がりますが、均衡を超えた取引(評価 < 費用)が行われる分だけ補助金でも死荷重が生じます。政府の支出は s × 補助後の取引量です。
3. 価格規制の効果
まずここだけ
政府が価格を決めてしまう規制には、上限と下限があります。効果があるのは均衡価格より低い上限と均衡価格より高い下限だけで、逆向きに設定しても均衡は変わりません。
| 規制 | 例 | 起きること |
|---|---|---|
| 上限価格(最高価格) | 家賃規制、公共料金の抑制 | 需要 > 供給 の超過需要。取引量は供給量まで減る |
| 下限価格(最低価格) | 最低賃金、農産物の支持価格 | 供給 > 需要 の超過供給。取引量は需要量まで減る |
需要曲線 D = 80 − 2P、供給曲線 S = 2P − 24、上限価格 24。 均衡:80 − 2P = 2P − 24 → P = 26(上限 24 は均衡より低いので拘束力あり) P = 24 で需要 = 32、供給 = 24 → 超過需要 8。実際の取引量は 24
ここまでできれば十分
どちらの規制も取引量が均衡より少なくなるので、死荷重が生じます。上限規制では、買い手の価格は下がりますが品不足になり、行列・抽選・闇市場といった価格以外の配分が起こります。下限規制で政府が売れ残りを買い上げる場合(農産物の価格支持)、その費用は「下限価格 × 超過供給」です。最低賃金は労働市場の下限規制で、超過供給は失業として現れます。
4. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 税収 = 税額 × 課税前の取引量 | 課税後の取引量を使う |
| 売り手に課した税は全額買い手に転嫁される | 分かれ方は弾力性で決まる。誰に課しても同じ |
| 死荷重には税収も含まれる | 税収は政府に移るだけ。死荷重は誰の手にも渡らない部分 |
| 補助金なら総余剰が増える | 均衡を超えた取引の分だけ死荷重が生じる |
| 均衡より高い上限価格で超過需要 | 均衡より高い上限は拘束力がなく、何も起きない |
| 最低賃金は上限規制 | 賃金の下限規制。超過供給(失業)が生じる |
5. 解き方の型
- 需要曲線・供給曲線を P = … の形にそろえ、課税前の均衡(P、Q)を出す
- 従量税は供給曲線に「+ t」(買い手課税なら需要曲線に「− t」)を付けて、もう一度均衡を解く
- 買い手の価格は需要曲線に課税後の Q を代入、売り手の受取価格はそこから t を引く
- 税収 = t × 課税後 Q、死荷重 = (課税前 Q − 課税後 Q) × t ÷ 2
- 価格規制は「拘束力があるか」を先に確かめ、規制価格を両方の曲線に代入して差をとる
- 答えが出たら「買い手価格 − 売り手価格 = 税額」で検算する
6. 小テストへ
→ 小テスト(ze-04)
関連する単元
- 前提:ze-01 需要と供給・弾力性、ze-03 生産者理論(供給曲線 = 限界費用曲線)
- 次に進む:ze-05 独占・寡占とゲーム理論(独占の死荷重)、ze-06 市場の失敗(外部性と課税)、ze-07 国際貿易(関税の余剰分析)
- 同じ考え方を使う:zf-02 租税の理論と日本の税制(超過負担・転嫁と帰着)、kk-05 市場経済のしくみ(高校公共)
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(ミクロ経済学・財政学)
- 各都道府県・政令指定都市の職員採用試験受験案内(専門試験の出題分野)
- 標準的なミクロ経済学の教科書(余剰分析・租税の帰着・価格規制の章)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/keizai/ze-04/ / 更新 2026-09-14