地方上級 / ミクロ / ze-04

更新 2026-09-14

完全競争市場と余剰分析(課税・価格規制)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

需要と供給(ze-01)で求めた均衡に「面積」の見方を加えるのがこの単元です。地方上級・国家一般職では、「従量税を課したときの死荷重を求めよ」「税収を求めよ」「買い手の負担額を求めよ」といった計算問題が出題されやすく、財政学(zf-02 租税の理論)でも同じ計算が「超過負担」の名前で出てきます。知識問題では税の帰着と弾力性の関係、価格規制の効果がよく問われます。ここでの余剰の考え方は、独占の死荷重(ze-05)、外部性の分析(ze-06)、関税の効果(ze-07)にそのまま使うので、三角形の面積を式で出せるようにしておくと後が楽になります。


1. 余剰とは何か

まずここだけ

需要曲線 P=26−Q と供給曲線 P=2+3Q。消費者余剰 18 と生産者余剰 54 の三角形

消費者余剰は「買い手が払ってもよいと思った金額(需要価格)− 実際に払った金額」の合計です。グラフでは需要曲線と価格線の間の三角形になります。生産者余剰は「実際に受け取った金額 − 最低限受け取りたい金額(供給価格)」の合計で、価格線と供給曲線の間の三角形です。2 つを足したものが総余剰(社会的余剰)です。

需要曲線 P = 26 − Q、供給曲線 P = 2 + 3Q 均衡:26 − Q = 2 + 3Q → Q = 6、P = 20 消費者余剰 = (26 − 20) × 6 ÷ 2 = 18 生産者余剰 = (20 − 2) × 6 ÷ 2 = 54 総余剰 = 72

三角形の「高さ」は縦軸切片と均衡価格の差、「底辺」は均衡取引量です。需要曲線を P = … の形(逆需要関数)に直しておくと縦軸切片がすぐ読めます。

ここまでできれば十分

完全競争の均衡では総余剰が最大になります。理由は、均衡取引量までは「需要価格 ≧ 供給価格」、つまり買い手の評価が売り手の費用を上回る取引がすべて行われ、それを超える取引(評価が費用を下回る)は行われないからです。均衡より取引量が少なくても多くても、総余剰は減ります。この減少分が死荷重(厚生損失・超過負担)です。

価格が均衡と違っていても、取引量が同じなら総余剰は同じです。価格は消費者余剰と生産者余剰の分け方を変えるだけで、合計は取引量で決まります。


2. 従量税の効果

まずここだけ

従量税 t=12 で供給曲線が S から S' へ上に平行移動。税収 72 の長方形と死荷重 24 の三角形

1 単位あたり t 円の従量税を売り手に課すと、売り手は「税込みで今までの供給価格 + t」を受け取らないと同じ量を売らないので、供給曲線が t だけ上に平行移動します。買い手に課した場合は需要曲線が t だけ下に移動しますが、結果はまったく同じです。

需要曲線 P = 34 − Q、供給曲線 P = 4 + 2Q、売り手に t = 12 の従量税。 課税前:34 − Q = 4 + 2Q → Q = 10、P = 24 課税後:34 − Q = 4 + 2Q + 12 → Q = 6 買い手の価格 = 34 − 6 = 28(4 上がった) 売り手の受取価格 = 28 − 12 = 16(8 下がった)

買い手の価格と売り手の受取価格の差がちょうど税額 12 になっています。

ここまでできれば十分

課税後に計算するものは 3 つです。

求めるもの計算上の例
税収税額 × 課税後の取引量12 × 6 = 72
死荷重(課税前の取引量 − 課税後の取引量)× 税額 ÷ 2(10 − 6) × 12 ÷ 2 = 24
負担の分かれ方買い手の値上がり幅 : 売り手の値下がり幅4 : 8 = 1 : 2

税収を「税額 × 課税前の取引量」で計算する間違いが多いので注意してください。死荷重は、取引されなくなった 4 単位について「需要価格 − 供給価格」を積み上げた三角形です。税収は政府に移るだけで社会全体から消えるわけではないので、死荷重には含めません。

負担の比 1 : 2 は、需要曲線の傾き 1 と供給曲線の傾き 2 の比になっています。傾きが急な(弾力性が小さい)側ほど多く負担するという一般的な性質の表れです。逃げ場のない側に税は乗る、と覚えると忘れません。

もう一歩(発展)

弾力性が極端な場合は結論がはっきりします。

状況負担死荷重
需要の弾力性がゼロ(垂直)すべて買い手生じない(取引量が変わらない)
供給の弾力性がゼロ(垂直)すべて売り手生じない
需要の弾力性が無限大(水平)すべて売り手生じる
供給の弾力性が無限大(水平)すべて買い手生じる

もう 1 つ、直線の需要曲線・供給曲線では死荷重は税額の 2 乗に比例します。取引量の減少も税額に比例するので、三角形の底辺と高さが両方 2 倍になるためです。税率を 2 倍にすると死荷重は 4 倍、一方で税収は取引量が減る分 2 倍より小さくなり、税率が高すぎる領域では税収がかえって減ります。

補助金は従量税の逆で、供給曲線を s だけに動かします。取引量は均衡より増え、買い手の価格は下がり売り手の受取価格は上がりますが、均衡を超えた取引(評価 < 費用)が行われる分だけ補助金でも死荷重が生じます。政府の支出は s × 補助後の取引量です。


3. 価格規制の効果

まずここだけ

上限価格 24 のとき需要 32・供給 24 で超過需要 8

政府が価格を決めてしまう規制には、上限と下限があります。効果があるのは均衡価格より低い上限均衡価格より高い下限だけで、逆向きに設定しても均衡は変わりません。

規制起きること
上限価格(最高価格)家賃規制、公共料金の抑制需要 > 供給 の超過需要。取引量は供給量まで減る
下限価格(最低価格)最低賃金、農産物の支持価格供給 > 需要 の超過供給。取引量は需要量まで減る

需要曲線 D = 80 − 2P、供給曲線 S = 2P − 24、上限価格 24。 均衡:80 − 2P = 2P − 24 → P = 26(上限 24 は均衡より低いので拘束力あり) P = 24 で需要 = 32、供給 = 24 → 超過需要 8。実際の取引量は 24

ここまでできれば十分

どちらの規制も取引量が均衡より少なくなるので、死荷重が生じます。上限規制では、買い手の価格は下がりますが品不足になり、行列・抽選・闇市場といった価格以外の配分が起こります。下限規制で政府が売れ残りを買い上げる場合(農産物の価格支持)、その費用は「下限価格 × 超過供給」です。最低賃金は労働市場の下限規制で、超過供給は失業として現れます。


4. よくある間違い

間違い正しくは
税収 = 税額 × 課税前の取引量課税後の取引量を使う
売り手に課した税は全額買い手に転嫁される分かれ方は弾力性で決まる。誰に課しても同じ
死荷重には税収も含まれる税収は政府に移るだけ。死荷重は誰の手にも渡らない部分
補助金なら総余剰が増える均衡を超えた取引の分だけ死荷重が生じる
均衡より高い上限価格で超過需要均衡より高い上限は拘束力がなく、何も起きない
最低賃金は上限規制賃金の下限規制。超過供給(失業)が生じる

5. 解き方の型

  1. 需要曲線・供給曲線を P = … の形にそろえ、課税前の均衡(P、Q)を出す
  2. 従量税は供給曲線に「+ t」(買い手課税なら需要曲線に「− t」)を付けて、もう一度均衡を解く
  3. 買い手の価格は需要曲線に課税後の Q を代入、売り手の受取価格はそこから t を引く
  4. 税収 = t × 課税後 Q、死荷重 = (課税前 Q − 課税後 Q) × t ÷ 2
  5. 価格規制は「拘束力があるか」を先に確かめ、規制価格を両方の曲線に代入して差をとる
  6. 答えが出たら「買い手価格 − 売り手価格 = 税額」で検算する

6. 小テストへ

→ 小テスト(ze-04

関連する単元

参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
基礎から標準から発展から🖨 プリント

経済の単元一覧まぜこぜテスト公務員試験の勉強法